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経理に携わる全ての人たちを、経営の“主役”に――freeeが挑む、もう1つのカスタマーサクセス

「ミスなくできて当たり前」の経理から、「経営にモノ申す」経理へ

カスタマーサクセス事例:カスタマーサクセスの夜明けとは
製品・サービス提供後も、顧客企業の成功を第一として積極的に伴走を続ける「カスタマーサクセス」を取り入れようとする動きが日本でも活発化し始めている。本連載ではカスタマーサクセスに取り組む企業とその立役者を連載形式で取り上げ、具体的な施策やうまく推進するための秘訣などを紹介する。


 「スモールビジネスを、世界の主役に」を事業ミッションに、2018年4月時点で実に100万もの事業所へ「クラウド会計ソフトfreee」を提供しているのが、freeeだ。同社では、顧客の従業員数によって、Emerging Small Business(個人事業主/小規模法人)、Small&Medium Business(中小企業)、Mid Market(中規模企業)と事業部を分けており、それぞれに10人前後のカスタマーサクセス担当を配置している。

 今回、お話を伺ったのは、SMB(Small&Medium Business)事業部のCustomer success マネージャーである山田健児氏。「100万もの事業所へ、私たちが提供するクラウド会計ソフトを継続的に利用していただけるよう活動するのはもちろんですが、freeeのカスタマーサクセスにはもう1つ、大きなミッションがあると思っています」と語る。それは、経理に携わる全ての人たちを、経営に示唆を与えられるような人材へと変えていくということ。「freeeを利用することが、そのきっかけになれれば」と言う山田氏に、もう1つのカスタマーサクセスに対する使命感を語っていただいた。

カスタマーサクセスは、ユーザーにとって「本質的(マジ)で価値ある」こと

――貴社は、いつからカスタマーサクセスに取り組まれていますか?

山田氏: 私たちのクラウドサービスを世の中にリリースした当初からカスタマーサクセスに取り組んでいます。freeeには2015年に制定された「本質的(マジ)で価値ある」という独自の価値基準があり、これは「ユーザーにとって本質的な価値があると自信を持って言えることをする」というもの。この価値基準がfreeeの社員には本当に浸透しているので、お客さまにとって「マジで価値ある」カスタマーサクセスを実践するのは、ごく自然な流れだったように思います。

 明確に取り組み始めたといえるのは、2016年に各事業部へカスタマーサクセス担当を配置した時。それまでは、営業担当がカスタマーサクセスまで含めて活動していました。

山田 健児 氏 freee株式会社 SMB事業部 Customer success マネージャー

――事業部によって、カスタマーサクセスの活動は異なりますか?

山田氏: 異なりますね。ユーザーの規模が大きいMid Market事業部では、訪問などでお客さまに対面し1対1で対応する、いわゆる“ハイタッチ”の顧客対応がメインになってきますし、個人事業主対応のEmerging Small Business事業部では顧客数がかなり多いので、メルマガなどで支援を行う“テックタッチ”の活動が中心になります。私が担当するSMB(Small&Medium Business)事業部は、その中間のような存在で、お客さまへ訪問するハイタッチもあれば、ユーザー会やセミナーなどを開催し、複数のユーザーに対面支援を行う“ロータッチ”も行い、メルマガ配信といったテックタッチも展開します。事業部によって活動が異なるので、全社で追うべきKPIはありつつも、事業部ごとのKPIも設定しています。

――SMB事業部のKPIはどこに設定されていますか?

山田氏: 事業貢献度をKPIに設定しています。具体的にはNet Revenue Retention Rate(売上継続率)です。これを最終的なKPIとして追っていて、活動の過程で、お客さまのサクセス度合いを測るようなスコアをつけていたり、利用状況を測るヘルススコアもつけていたり、さらにはお客さまの満足度データも取っています。これらは中間のKPIとして置いています。

メンバーそれぞれの強みを生かしたカスタマーサクセスを展開

――貴社では顧客の声をどのように集めて、それをどのように活用していらっしゃるのでしょうか?

山田氏: カスタマーサポートに、チャットや電話、メールによってお客さまの声が入ってくる仕組みが作られています。そこに集められたお客さまの声は、JIRA(プロジェクト管理ソフト)で管理しており、それをもとに毎週プロダクト側の責任者とカスタマーサクセスの責任者との打ち合わせの機会を設け、その場で改善や機能開発まで進めるかどうかを決めています。MRR(月間定額収益)やARR(年額定額収益)など私たちの事業に与えるインパクトを考慮することはもちろんなのですが、お客さまの業務に与えるインパクトを見て、改善や開発の優先順位を判断しています。つまり、業務が止まってしまうレベルなのか、代替で進めることはできるのか、内部統制上、問題がないかということをしっかりと見て、必要であればプロダクト改善に落としていくという流れです。

 SMB事業部としては、訪問、セミナー開催、メルマガ配信といった活動の中で、必ずアンケートを取り、お客さまの声を積極的に取りに行っています。また、お客さまの声だけではどうしても偏りが出てしまうこともありますので、お客さまとコミュニケーションを取ったfreeeのカスタマーサクセス担当の声も同時に集めるようにしています。カスタマーサクセス担当がfreeeの経営層やプロダクトの開発エンジニアを積極的に客先へ連れて行き、お客さまの声を直接“聞かせる”といったことも行っています。

――カスタマーサクセスの活動を仕組み化して効率的に顧客を支援していく方法もあるかと思いますが、貴社の場合はいかがですか?

山田氏: お客さまの利用状況をウォッチして、ヘルススコアによって点数化し、CRMに反映していく、そんな仕組みを作っています。NPS®(Net Promoter Score/顧客ロイヤルティーの指標)など顧客満足度のデータも取っていますが、NPS®とチャーン(解約)の相関や、NPSとアップセル/クロスセルの相関が見られなかったので、参考指標としています。ヘルススコアとチャーンは相関があるということは見えてきているので、ヘルススコアを見て、数値が下がりこのまま放っておくとお客さまはチャーンしてしまう、すぐにタッチしにいく、というサイクルを回しています。

 SMB事業部では、ヘルススコアとARRによって、お客さまを4象限に分けており、象限ごとにどういう対応をとるかを決めています。例えば、ヘルススコアが著しく低いお客さまに対しては、架電をしてお客さまのアポを取って、全3~4回のオンボーディング講習を実施するなど、カスタマーサクセスの打ち手はいくつか用意しています。ただ、あまり仕組み化ばかりを進めていくのも、「枠を超えて発想する」ことがモットーのfreeeらしくないなという気がしています。

――とおっしゃいますと?

山田氏: もちろん100万の事業所が利用しているというビジネスのスケールを考えると、経営の視点からは型化して誰でも業務を回せるように、というのは当たり前のことだと思います。一方で、人それぞれが持っている特性は違います。SMB事業部のカスタマーサクセスを担当するメンバーでいうと、IT系に強くて、freeeと他のクラウドサービスをAPIでつないでいくことを積極的に提案できるメンバーがいたり、お客さまの懐に飛び込んで、関係性を構築してファンを作ることを得意としているメンバーもいたり。ある程度汎用的なスキルを持つ必要はあると思いますが、人それぞれが持つ特性までも型化する必要はないと考えています。

 ファンを作っていくことはカスタマーサクセスでとても重要です。懐に飛び込んで、思想に共感していただいてファンになってくださるお客さまもいらっしゃいますし、クラウドでいろいろなシステムとつながることを見せることでファンになってくださるお客さまもいらっしゃいます。そのあたりは営業側から、お客さまの担当者や意思決定者の特性を聞いた上で、カスタマーサクセス担当をアサインするようにしています。

――カスタマーサポートに寄せられる声以外に、顧客の中には、まだfreeeへの要望として顕在化していない“声なき声”があると思います。その“声なき声”を集めるために工夫されていることは何かございますか?

山田氏: まだまだこれからだなと思っている部分です。今取り組んでいるのは、チャーンしてしまったお客さまに、なぜ解約するのかをヒアリングをするようにしています。これは、声なき声を集めるということでもありますが、できることなのにできないとの思い込みでチャーンされてしまうお客さまも少なくないので、その誤解を解くという目的もあります。

 お客さまのfreeeへの要望や期待を顕在化させるという意味では、半年に1回ぐらいのペースで開催しているユーザー会があると思っています。freeeのユーザー会は、お客さまに登壇していただき、4~50人のお客さまへ向けて、活用事例をプレゼンテーションしていただいています。またパネルディスカッションを通じて、他社ではどういう活用をしているかを知っていただき、聴講しているお客さまに「こんな使い方もあるのか」といった数々の気づきを提供できていると思います。

 ユニークなのは、ユーザー会を開いた時に、お客さまが自社の商売として提供しているものをケータリングとしてお出しするということもよくやっています。そうすることでお客さまのビジネスチャンスが広がります。そのようなユーザー間の横のつながりを作っていくこともユーザー会の狙いの1つですね。

ユーザー会が開催されるfreeeのコミュニケーションスペース

経営に示唆を与えられる経理に。経理に携わる全ての人を、経営の舞台へ上げていきたい

――ユーザーは経理部門をはじめとするバックオフィスの方々が中心になるかと思いますが、カスタマーサクセスを実践する上で、難しさみたいなことは感じていらっしゃいますか?

山田氏: 私もfreeeに入社する前の8年半、会計の仕事に就いていましたが、一般的にバックオフィスの方はあまり外に出て情報収集をしない方が多い印象でした。今のやり方で自分なりにできているからいいという方も多いです。その中で、freeeを利用していただくことの価値をどのように理解していただくか、難しさを感じることも正直あります。

 会計の世界は職人の世界なので、自分の使い慣れた会計ソフトにとてもこだわりがある方が少なくありません。例えば、突然管理部長が変わり、その方が職人として使ってきた会計ソフトへすぐに切り替えられてしまうこともあります。そういった場合、お客さまの人物相関図を作って対応を行うようにしています。この担当者はどういうマインドの方で、関係者にはどういう方がいて、意志決定者はどなたで、社内ではどういうポジションなのかをしっかりと明確にした上で、正面からぶつかるだけではなく、いろんなチャネルを使ってコミュニケーションを取るよう工夫しています。

 バックオフィスの方々は、ちゃんとミスなく業務を行って当たり前で、減点方式で評価されることが多々あります。今、任されている仕事をそつなく行う、でもそれだけだと10年、20年のスパンで見た時に、AIやRPAなどのテクノロジーに仕事が移っていき、任される仕事が減っていってしまうと思うのです。だから私は、経営示唆を与えられる経理人材を作っていきたい。それが、freeeのカスタマーサクセスのミッションにはあると思っています。経理の方々のマインドをどんどん変え、横のつながりにも積極的になっていただけるような、そんなきっかけにfreeeがなれるといい。その使命感はとてもあります。経理に携わる全ての人を、経営の舞台へ上げていく。難しいけど、やりがいは大いにあると思います。

――経理人材を、経営の舞台へ上げていく。カスタマーサクセス実践の先にある、大いなる目標ですね。そのための取り組みは何か始めていらっしゃいますか?

山田氏: はい。今、20人ぐらいのfreeeユーザー向けにAPI体験講座を開催しています。経理の方々を集めてGoogle Apps Script(GAS)を書いてもらう講座で、これによって、加点方式で評価されるスキルを身につけていただこうと考えています。例えば、freeeから毎月自動的にスプレッドシートにはきだす仕組みのプログラムなどを経理の方々に実践形式で学んでいただいています。スプレッドシートにいちいち手入力するなど手作業でやっていることを全部自動化する、そのスキルを経理の方が持っていると、業務も効率化され、経営に対する示唆をタイムリーに発信することができる環境も整います。この講座は、一歩先の経理を目指す上で、本当に価値がある取り組みだと思っています。

――最後に、お客さまからの「このひと言に感動した」という言葉を教えてください。

山田氏: たくさんあります。しいて挙げれば、「定時で帰れるようになりました」という声が今はうれしいです。freeeを利用することで、今まで残業し何時間もかけていた仕事がなくなって定時で帰れるようになりましたと言われた時は、素直にうれしく思います。でもこれからは、経理の方々のマインドが変わる瞬間に立ち会えるのは、もっとうれしいのだろうなと思います。まだまだ道半ばというところですが、例えば「営業利益率を何%改善しました」というような経営に関与した声がお客さまから上がってくる。そのひと言に感動することが目標です。


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