ROEとは?ROAとの違い、計算方法から経営指標としての見方を解説 | ITreview Labo
     

近年、株主や投資家が企業を評価するうえで、ROE(自己資本利益率)が重視されるようになってきました。ROEは企業の「稼ぐ力」や今後の「成長」を判断する材料となる指標です。しかし、ROEだけでは判断できないことや、ROEが高ければよいというわけではないことも知っておく必要があります。

本記事では、ROEの算出方法からROAとの違い、ROEが高いことの意味、そしてROEの注意点について解説します。

ROE(自己資本利益率)とは?

ROEは「Return On Equity」の略で、「自己資本利益率(株主資本利益率)」と訳されています。ROEは株主が投資した資金である自己資本を使ったことで、どれくらいの利益を生み出しているのかを示す指標です。つまり、企業の「稼ぐ力」を示します。ROEが高ければ投じた資金に対して稼ぎ出した利益が大きいと判断されるため、投資リターンが大きい企業であると評価されます。

このことから、機関投資家や投資信託などは、企業を評価する際にROEを重視しているのです。また、ROEが高い企業には高いリターンが期待できるため、投資資金が集まりやすくなり、自己資本が増加しやすくなります。自己資本が増え、さらなる投資が行えることで利益を稼ぎ出し、業績を向上させるという好循環が生まれやすくなります。この好循環により、株価が上昇を続ける可能性が高くなります。

ROEで何がわかるのか?

ROEは企業の稼ぐ力、つまり収益性を表す指標ですが、ROEから何がわかるのかについて 説明します。

倒産の可能性

ROEは自己資本比率の大きさで変化します。資本調達により集めた返済不要の自己資本比率が大きければ経営が安定しますし、小さければ不安定になります。一般的には、自己資本比率が70%以上であれば理想的な安定した企業で、40%以上であれば倒産しにくい企業といわれています。

成長速度

自己資本比率が100%の企業は無借金経営の状態にあるので、倒産リスクは小さく安定しています。一方で、自己資本比率を下げずに経営している状態であれば、利益も一定の範囲に止まります。自己資本比率が急に倍増することは難しいため、成長も緩やかになります。借入を行うことで新規ビジネスに挑んだり、既存のビジネス規模を拡大したりすれば、自己資本比率は下がるものの、成長速度は大きくなります。

株価

ROEが高い企業は安定した収益が期待できるため、投資家から好感されます。その結果、株価が上がる傾向があります。

当期純利益率の確認も重要

優良企業の条件は、ROEが高いだけでなく、業績が伸びていることや当期純利益率が高いことです。そのため、ROEを確認する際には、当期純利益率も合わせて確認する必要があります。

ROEの算出方法

ROEを算出する計算式は以下の通りです。

ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

式中の自己資本とは返済する必要のない資金です。たとえば株主が出資した分や事業で得た利益累計額、あるいは自社株式を購入した分などです。これらの資金を使って稼ぎ出した金額が当期純利益です。つまり、当期純利益が自己資本の何%になるのかを算出したものがROEです。たとえば自己資本が10億円で当期純利益が2億円だった場合のROEは20%ということになります。

当期純利益

ROEの計算で使われる当期純利益は、法人税までを支払った最終的な利益です。利益には営業利益や経常利益がありますが、株主や投資家へのリターンの1つである配当金の原資である当期純利益が、ROEの計算に使われます。

自己資本

自己資本はほぼ純資産を示します。正確には以下の計算で算出されます。

自己資本 = 純資産 - 新株予約権 - 非支配株主持分

純資産から新株予約権と非支配株主持分が除かれているのは、それぞれが未来の株主や連結子会社の資本のうち親会社の持分ではない分を示し、現在の株主とはいえないためです。

ROEとROAの違い

ROEに似た指標にROAがあります。ROE(Return On Equity)が返済する必要のない自己資本で、どれだけ効率よく利益を得ているのかを示す指標であるのに対し、ROA(Return on Assets)は、返済する必要のある他人資本も含めた総資産に対してどれだけ効率よく利益を上げているかを示す指標です。

つまり、ROEは投資家や株主から集めた自己資本を使ってどれだけ効率よく稼ぐ力があるかを示しているので、投資家や株主に重視されます。

これに対して、ROAは負債である他人資本も含む総資産を使ってどれだけ効率よく稼ぐ力があるかという総合的な経営効率を示しているので、経営者や従業員、債権者などに重視されます。このことから、ROEは異業種間の比較にも用いられますが、ROAは異業種間での比較には用いられません。

<出典:『ROE(自己資本利益率)、ROA(総資産利益率)とは? これらの数値から分かることとは?|転職ならdoda(デューダ)』

ROEの目安

ROEは企業を評価するうえで重要な指標ですが、その目安の値はどれくらいでしょうか。日本の上場企業がめざすべきROEは8%といわれています。しかし自己資本が少ない業種ではROEが高くなりやすいため、業種により標準値は異なってきます。

一般的には、10%を目標にする企業が多い傾向にあります。そのため、15%を超えれば優良企業と評価されます。また、日本企業のROEは他国の企業と比べると低めです。その理由は、内部留保の大きさが株主資本を大きくしているためだと考えられます。

<出典:経済産業省『事務局説明資料 2019年11月 経済産業政策局産業資金課』p7「日米欧上場企業のROE・ROAの推移」

ROEが高い企業で起きていること

ROEが高い企業は、どのような状態にあると考えられるのかについて解説します。

無駄な資産を利益に変えた

ROEが高くなった企業は、利益を生まない資産を見直して利益化している可能性があります。

例として、以下のような施策を実施していると考えられます。

受取手形に応じない
売掛金を早めに回収している
貸付金や未収入金、立替金などを積極的に回収している
不良在庫を処分してる
不要な資産を現金化あるいは損金化している

コストを削減した

ROEが高くなった企業は、相当なコスト削減の工夫や努力を行っている可能性があります。その結果ROEの分子である利益を向上させているのです。

例として、以下のような施策を実施していると考えられます。

仕入れ先の競争を促したり、仕入れ先を集中させたりすることで仕入コストを削減している
業務の自動化やプロセスの見直しにより人員を削減している
費用対効果を確認できない広告宣伝費を削減している

売上が伸びた

ROEが高くなった企業は、売上を伸ばしている可能性があります。

例として、以下のような施策を実施していると考えられます。

販売速度を上げることで仕入から販売までの期間を短縮している
売上に貢献していない資産を処分している

借入が増えた

ROEが高くなった企業は、借入を増やしている可能性があります。つまり、借入金や社債の割合を高めて自己資本の何倍もの総資本を事業に投下している状態では、自己資本の割合が低くなるためROEの分母が小さくなります。

このような経営状態を「財務レバレッジが上がった」と表現します。財務レバレッジを上げることは、より多くの他人資本を活用して利益を上げることなので、自己資本が少なくても大きなビジネスを展開できます。そのため、ROEを評価する際には、財務レバレッジを競合他社や同じ会社の過去の実績と比較するなどして、総合的な判断が必要になります。

利益率が上がった

ROEが高くなった企業は、利益率が上がっている可能性があります。

例として、以下の施策を実施していると考えられます。

付加価値を高めることで客単価を上げている
仕入方法や仕入れ値を見直すことで原価率を下げている
経費や役員報酬などを見直すことで販管費を下げている

ROEが高ければ優良企業とは限らない

ROEは株主や投資家が企業を評価する指標として重視していますが、注意しなければならない点もあります。実はROEが高ければ優良企業であると単純には評価できません。それは、ROEの分子や分母は、業績がよくなっていないときでも変化するためです。

具体的に見ていきましょう。

ROEが高い理由が、借入金額が大きい場合

企業が借入による他人資本で資金を調達して利益を上げている場合もROEは高くなります。この場合の評価としては、借入金を用いながらもビジネスを大きくして利益も上げていることは経営効率がよいと評価できますが、借入が増えていることによるリスクを注視する必要があります。

ROEが低い理由が、株主資本が大きい場合

ROEが低くても、安定した企業はあります。たとえば株主資本が大きい場合はROEの分母が大きくなるためROEは低くなります。特に創業年数が長い企業ほど内部留保も大きくなり、株主資本が大きくなりROEが低くなる傾向があります。

ROEが低い理由が、一時的に当期純利益が小さくなった場合

本業では大きな利益を出していても、一時的に当期純利益が小さくなったことでROEが低下する場合があります。たとえば自然災害などで特別損失を計上したときなど、企業側の事情ではない事象によるROE低下はやむを得ない現象といえます。

ROEが低い理由が、節税対策の場合

企業が節税対策として法人税を少なくするために、法人保険などを利用して当期純利益を会計上で小さくすることがあります。この場合、簿価上の利益が減ることで、ROEが低くなります。したがって、実際の利益とは乖離したROEとなります。

ROEを改善する方法

ROEを改善するには利益率を上げる以外にも方法があります。

資産の見直し

資産の見直しを行うことでROEを上げることができます。具体的には以下の施策を行います。

・滞留したままになっている売掛金や貸付金、未収入金、立替金などを回収する

・受取手形を受け取らない

・棚卸しを行い、不良在庫を処分する

・固定資産を早期に償却する

・不要な資産を現金化する

利益率の向上

ROEを上げるためには利益率を上げます。利益率を上げるためには商品・サービスの付加価値を高めて販売価格を上げる必要があります。

具体的には以下の施策を行います。

・顧客ニーズを調査し、その結果を反映させた商品・サービスの企画・開発を行う

・利益率の高い商品・サービスの販売に注力する

コストの削減

コスト削減することで利益率を上げ、ROEを上げることができます。

具体的には以下の施策を行います。

・技術力を高めることで製造原価を抑え、歩留まりを改善する

・仕入れ先の競争や集中化で仕入れコストを下げる

・業務の自動化を進めることで人員を削減する

総資産回転率の向上

総資産回転率を上げることでROEを上げることができます。総資産回転率とは「売上高÷総資産」ですから、売上を伸ばしながら、有給資産を処分するなどして総資産を減らすことで上げることができます。

財務レバレッジの向上

財務レバレッジを上げることでROEを上げることができます。財務レバレッジを上げるためには、積極的に借入を活用して、自己資本が少なくても事業を展開して収益性を高める必要があります。ただし、財務レバレッジを上げることは財務の健全性を損ない、利息の支払が増えるリスクへの注意も必要になります。

当期純利益の向上

当期純利益を上げることでROEを上げることができます。

当期純利益を上げるためには、以下の施策があります。

・販売単価を上げる

・仕入れ単価を下げる

・経費を節減する

・役員報酬を見直す

投資を積極的に行う

ROEは分母である自己資本を減らすことで上がります。そのため、設備投資などに積極的な投資を行うことで、自己資本を減らしてROEを上げることができます。しかし、ROEを上げるために設備投資が過度になってしまっては、財政基盤が弱くなるので本末転倒です。

配当を増やす

ROEの分母である自己資本を減らすには、株主や投資家に対する配当を増やす方法があります。配当を増やしてROEを上げることは、投資家に歓迎される施策です。

自社株買いを行う

自己資本を減少させる手法に、自社株買いがあります。自社株買いとは、市場に流通している自社の株を購入する手法で、資金が株主に戻る効果を持ちます。このとき、資金が株主に戻った分、自己資本が減少するため、ROEが増加します。ただし、純資産が減少することで経営基盤が弱体化するリスクがあります。

高収益企業を買収する

ROEの分子を増やすために、収益力のある企業をM&Aにより買収する方法があります。M&Aにより収益が上がるだけでなく、新しいビジネスが展開されるなどの相乗効果も期待できます。

まとめ

ROEは投資家を中心に、企業を評価するための重要な指標として注目されています。ただし、企業の評価はROEだけで決まるものではありません。ROEが上がっている場合は、なぜ上がっているのかまで見極めることで、総合的に評価する必要があります。

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