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顧客の状況に合わせて適切なタッチ、ベルフェイスに見るカスタマーサクセスの仕組み化

緻密に計画されたヘルススコアと、スコアに基づく打ち手フローを聞いた

本連載:カスタマーサクセスの夜明けとは
製品・サービス提供後も、顧客企業の成功を第一として積極的に伴走を続ける「カスタマーサクセス」を取り入れようとする動きが日本でも活発化し始めている。本連載ではカスタマーサクセスに取り組む企業とその立役者を連載形式で取り上げ、具体的な施策やうまく推進するための秘訣などを紹介する。


  “インサイドセールスの強化”へと営業のスタイルを転換する企業が増えている。そのインサイドセールスを支援する企業として、営業に特化したオンライン商談システム「bellFace(ベルフェイス)」を提供するのがベルフェイス株式会社だ。

 2019年4月時点での有料契約社数は約1,000社。ベルフェイスのサイトに掲載されている事例には「年間で1万件の商談増加」「1人1日14件商談実施」など、顧客の成功の言葉が所せましと並んでいる。そういった顧客の成功を導き出しているのが、カスタマーサクセスを担当する11人の面々だ。彼らはどのようにして顧客の成功を支援しているのか? 1,000社もの顧客に対し、どのように仕組み化して、カスタマーサクセスを実践しているのか? カスタマーサクセスマーケティングチーム/マネージャー 小林泰己氏にお話を伺った。

創業1年目の苦い経験から、方向転換。代表が「カスタマーサクセスを事業の中心に置く」と宣言

――貴社は、どのような経緯でカスタマーサクセスに取り組まれることになったのでしょうか?

小林氏: ベルフェイスの創業は、2015年4月。それから半年ぐらいで今のプロダクト「bellFace」をローンチしています。創業当初は、「いいプロダクトを市場に投入すれば、きっと売れていく」という考えで走り始め、一方でカスタマーサクセスの重要性には気付いていませんでした。当時、売れることは売れるのですが、思いのほか解約があり、せっかく頑張って獲得したお客さまが離れていく。契約後のお客さまが継続して利用いただけるよう支援する、カスタマーサクセスが何よりも大事と身を持って知りました。そこで2016年に方向転換。代表が「カスタマーサクセスを事業の中心に置く」と宣言し、契約継続率が改善。以来ずっとカスタマーサクセスが会社の中心にいます。従業員数64人の会社で、そのうちの11人がカスタマーサクセス担当です。企業全体の従業員数に対してカスタマーサクセスのメンバーが11人というのは、それだけカスタマーサクセスに力を入れているということの表れだと思います。

小林 泰己 氏 ベルフェイス株式会社 カスタマーサクセスマーケティングチーム/マネージャー

――カスタマーサクセス担当の方々は、どのように役割を分担されていますか?

小林氏:訪問などでお客さまに対面し1対1で対応する、いわゆる“ハイタッチ”の顧客対応を実践していくのが6人。セミナーやユーザー会などを通じて1対n(複数)の対面支援を行う“ロータッチ”担当と、メルマガなどで非対面の1対nの支援を行う“テックタッチ”担当が同じチームで3人。ハイタッチチーム、ロー&テックタッチチームのほかに、ベルフェイス導入時に立ち上げを行うオンボーディングチームが2人という体制です。オンボーディングチームは、bellFaceの初期設定や、なぜインサイドセールスをやるのかといった目的と、目指すゴールを明確にする2カ月の導入支援プログラムを実施しています。いずれかのチームが欠けても私達のカスタマーサクセスはなりたちません。役割の違う全てのチームがそろってはじめてカスタマーサクセスが実現します。

全社に対して、ハイ、ロー、テック全てのタッチを実践。顧客の状況に合わせて適切なタッチを可能にする仕組みとは?

――例えば、契約金額の大きさなどでハイタッチを行うお客さま、ロータッチを行うお客さま……というふうに顧客を分けてカスタマーサクセスを実践していくケースもあるかと思います。貴社の場合は?

小林氏: 私たちは現在、ハイタッチするのは契約金額の大きいお客さまだけ、といった顧客のすみわけはしていません。契約いただいたお客さま全社にハイタッチしていますし、ロータッチ、テックタッチも全社に対して行っています。つまり、1,000社全社に対して、全てのタッチを実践しています。顧客数が増えて、どこかで変わらなければならない時期が来るとは思っていますが、今の顧客数とメンバーのバランスを見ると、全タッチできる。できるのだったら、やっぱり1対1の対面でハイタッチしたほうがいいと考えています。

――それでもハイタッチ担当の方は、1人150社以上を受け持つことになります。大変ではないでしょうか

小林氏: はい。確かに、がむしゃらに全てのお客さまと相対していたら、ハイタッチのカスタマーサクセス担当は疲弊するでしょうね。私たちは、全社に対して効率良くハイタッチできるように、そしてどのカスタマーサクセス担当も標準的にお客さまを成功に導ける支援ができるように、「ヘルススコア」と「打ち手フロー」という仕組みを運用しています。

 私たちのヘルススコアは、Aスコア、Bスコア、Cスコアと3つのスコアでお客さまの状況を可視化しています。AスコアはApplication。ベルフェイスへの「接続数」「稼働ID数」「発行ID数」の3項目があり、お客さまがベルフェイスをどれだけ使っているかをポイント化しています。BスコアはBaseで、人を見ています。「推進者のやる気」「スタープレイヤーの有無」「複数のスタープレイヤー」の3項目でスコアリングします。CスコアはContentsで、「イベントへの参加数」「コンテンツへの接触」など、私たちが提供するコンテンツにどれだけ継続的に興味を示してくれているかを見ています。

ベルフェイスが活用しているヘルススコア

――利用状況を見るAスコアと、イベントへの関心度を見るCスコアは、カスタマーサクセス実践企業において一般的なスコアリング項目かと思いますが、推進者やスタープレイヤーといった「人」を見るBスコアは独特ですね。

小林氏: そうですね。ベルフェイスはインサイドセールスの支援ツール。これまでの訪問というスタイルの営業をインサイドセールスに変えていくというのは、会社の中で大きな動きだと思います。既存の文化を変えると言いますか、かなり力がいることなので、やはり推進者が前のめりになっていただかないと浸透していかないのではないかと思います。そういう意味で、私たちは推進者のやる気というのを重要視しています。

 この3つのスコアの合計によって、顧客を「Success」「Growth」「Rescue」「Mogura(土に潜ったら上がってこない)」と4階層に分類しています。例えば、今「Growth」の層に分類されているお客さまのAスコアが下がってきたら、カスタマーサクセス担当はこういう打ち手を行うべき、Bスコアが下がってきたら、この打ち手……という「打ち手フロー」も作成して運用しています。お客さまの階層とスコアに合わせて、Yes/Noで進んでいくと、やるべき打ち手に必ず行きつくというもの。ヘルススコアとこの打ち手フローによって仕組み化できているから、全社へのハイタッチを実現できていると言っても過言ではないと思います。

ヘルススコアによって顧客の“声なき声”を把握し、打ち手フローで先回り対応が可能に

――貴社では顧客の声をどのように集めて、それをどのように活用していらっしゃるのでしょうか?

小林氏: お客さまからの要望の声を、ハイタッチ担当は1対1の対話の中でお伺いします。ロータッチ担当は、セミナーやイベント後のアンケートなどでお客さまの声はある程度集められます。ただ、まだはっきり要望として顕在化していない、顧客の“声なき声”があります。カスタマーサクセス担当は、むしろこの“声なき声”を把握することが重要で、私たちは先ほど申し上げたヘルススコアによって、顧客の中に潜む声をできるだけ明確に把握し、打ち手フローによって先回りした対応を行うようにしているのです。

ヘルススコアに応じた打ち手をフロー化

 お客さまとの対話で得られた声はCRMに記録し、プロダクトに対する要望は、チャットツールでプロダクト企画事業部と共有するようにしています。プロダクト企画事業部はそれを見て、改善するのか、新機能として開発するのか、あるいは改善の優先度などを判断し、それをカスタマーサクセスへフィードバックします。カスタマーサクセス担当はそれでお客さまとまたやりとりします。

 プロダクト改善や機能追加などの要望以外に、インサイドセールスへの取り組み方についてお問い合わせをいただくことも少なくありません。私たちは、インサイドセールスをうまくやるにはこうやるべきだというノウハウをまとめた「教本」を出版しており、ハイタッチ担当はインサイドセールスについてのご相談に対して、会社ごとに教本の内容をアレンジして伝えています。

――カスタマーサクセスのKPIはどこに設定していますか?

小林氏: まずKGIを継続率とアップセルによる売り上げに設定しています。そのKGIを達成するため、メンバーは日々のTO DOを設定。これまでのKPIはそのTO DOの消化率でした。カスタマーサクセス担当のTO DOはどこにつながっているのかといえば、やはりヘルススコアです。ですからこの4月からは、ヘルススコアの達成率がKPIになる予定です。ヘルススコアを半年間運用してみて、何点以下だとやはり解約率が高い、何点以上キープするとほぼ継続する、何点以上だとアップセルのチャンスがある、そういったラインが明確に見えてきたことを実感しています。そうなるとカスタマーサクセス担当の活動も明確で、解約ゾーンまで行っているお客さまへは点数を落とさないような活動をし、継続するゾーンにいるお客さまに対しては、1つ上のアップセルゾーンにまで上げる行動をします。ヘルススコアによって、カスタマーサクセス担当の活動が数字で語れるようになっていますね。

お客さまの成功事例は、カスタマーサクセス担当が取材し、編集し、配信する

――カスタマーサクセスを実践する企業の多くは、ユーザー会やユーザーコミュニティーを大切に考えていらっしゃいます。貴社の場合は、いかがですか?

小林氏: はい。私たちもユーザー向けイベントには力を入れています。3カ月に1回のペースで開催するようにしており、2017年の夏ぐらいまでは5~60人に参加いただいていました。そこから堅調に右肩上がりし、2019年1月に開催したイベントへの参加者は600人にまで跳ね上がりました。ヘルススコア運用のおかげで、イベントを開催すると顧客にどう影響があるのか? が可視化できます。顧客に良い影響を与えることが分かっていれば、イベントを継続的に開催し、拡大していくことも判断ができます。これも、ヘルススコア運用の効果の1つです。

 私たちは成功事例というものをとても大事にしています。B2Bビジネスなので、成功事例が増えるほど、お客さまに提供できる情報・知識が増え、支援につながります。私たちが特長的なのは、お客さまの成功事例をカスタマーサクセス担当が作っているということ。そもそもお客さまがなぜ成功したのかということは、カスタマーサクセス担当がいちばんよく知っていますので、取材も編集もカスタマーサクセス担当が行っています。

――つまり、成功事例作成の目的が、新規のお客さまを獲得することではなく、既存顧客の継続率を上げることになっていると?

小林氏: そうです。インサイドセールスというのは、まだ新しい概念です。ベルフェイスを使ってインサイドセールスをすることに対して、不安を抱いてほしくないという思いがあります。この会社がインサイドセールスで成功しているということをシャワーのように配信し続けることが、既存のお客さまを後押しするという考えから、成功事例の作成をカスタマーサクセス担当が行っています。

 成功事例で取り上げたユーザーに、ユーザー向けイベントで登壇していただいたり、また他の企業へ訪問し講演いただいたり、ワークショップをやる際に講師になっていただいたり。成功事例が全ての起点になっていて、質の高い成功事例を話してもらって、お客さまの成功が波及していくようなことを実践しています。

 成功事例は毎月3本更新するようにしていますので、カスタマーサクセス担当は1カ月に4~5件、取材を行っています。カスタマーサクセスが真ん中にある会社なので、成功事例の取材にも、最近は、セールスもプロダクト担当もマーケティング担当も同席するようにしています。やっぱりお客さまの声を直接聞くと、取れる情報が多いと感じます。同席することで、マーケティング担当が今後発信していくコンテンツにエッセンスが加わったり、プロダクト担当が新しい機能を開発する際に考えることが増えたり、そういう効果を狙っています。

カスタマーサクセス担当が描く成功のサイクルをマーケティング担当、セールス担当とともに回す

――貴社はカスタマーサクセスが事業の中心にありますが、カスタマーサクセスが大切だと理解していても、なかなかそこまでたどり着けないでいる企業も少なくありません。そのような企業に向けて、カスタマーサクセスの理念を社内へ浸透させるためのヒントになるようなことがあれば、お聞かせください。

小林氏: 私たちが幸せだったのは、代表を始め創業メンバーが2年目に、カスタマーサクセスをやるべきだと旗を振ってくれたことです。経営層がカスタマーサクセスの重要性に気付かないのであれば、解約率などの数字を持って半年、1年、粘り強く会話していくしかありません。大変なことですが、お客さまの声が届かない経営者に、カスタマーサクセスの声を通じてお客さまの声を届けるのだという気概を持って、カスタマーサクセスやりませんかと現場から突き上げていくしかないと思います。

 カスタマーサクセスの理念を社内に浸透させる工夫として私たちが行っているのは、カスタマーサクセスが描く成功のサイクルをマーケティング、セールス、カスタマーサクセスでぐるぐる回しているということが挙げられると思います。カスタマーサクセスは、顧客をさまざまなデータから分析し、成功させやすいターゲットと成功させることが難しい非ターゲットに分けています。それをマーケティングへ伝え、マーケティングはターゲットのリードを取ることをKPIの1つとして設定しています。

 カスタマーサクセスが推薦するターゲットのリードを取ったほうがいいという力学を働かせておけば、セールスに流れてくるリードは自ずとターゲットが多くなります。セールスが獲得する契約も成功させやすいお客さまが多くなり、それをカスタマーサクセスがどんどん成功させていく。そういった仕組みを回すことで、私たちの会社では、カスタマーサクセスの重要性や理念がより浸透しているのではないかと思います。


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