投稿 GA4の利用価値を最大化するために、マーケターが知っておくべきこと――GMPのセールスパートナーであるイー・エージェンシーに聞く は ITreview Labo に最初に表示されました。
]]>GA4自体は2020年から提供されているため、UAとGA4を併用してきた方も多いでしょう。しかし、これまでUAをメインで活用していた場合は、GA4を本格利用するにあたって注意しておくべき点もあります。サイト運営者としてどんなことを頭に入れておけばいいのか、Google マーケティング プラットフォーム(GMP)のセールス パートナーであり、Google アナリティクス 360国内トップクラスの販売実績を持つリセラーでもあるイー・エージェンシーの林氏と荒巻氏にお話を伺いました。
林氏:UAとGA4では、そもそも計測する概念自体が変わっています。UrchinをGoogleが買収しGoogle アナリティクスとしてリリースしたのが2005年と、非常に歴史があることもあり、Webを中心とした計測要件、計測設計になっています。対してGA4は、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットなど、さまざまなデバイスが普及していくなかで、ユーザーのそれらデバイス利用や行動変化にも対応できる仕組みになっています。これを「クロスデバイストラッキング」と言いますが、Webとアプリのユーザー行動をひもづけて見られるようになったことが大きな特徴と言えます。
データ事業本部データソリューション部カスタマーサクセス課 課長 林 紫織 氏
荒巻氏:もう1つGA4の特徴的なところとしては、UAのときは有料版でしか使えなかったBigQueryへのローデータのエクスポートが無料版でも利用できるようになったことが挙げられます。これによりGA4で計測した大規模データを詳細に、かつ高速に処理して分析することができます。GA4にはグラフ表示やレポート化の機能が標準的に用意されていますが、もっと高度に分析したい、自分たちで細かくカスタマイズして表示したい、他のデータと連携させたい、といったときに役立つものです。
荒巻氏:たとえばECサイトを運営している場合、マーケティング施策やプロモーション施策を打つ範囲はECサイト内やSNS、他サイトの広告だったりします。従来はそれらを訪れたユーザーの行動を見て次の施策を考える、というのが基本でした。ところが最近はECサイトだけでなく、独自にスマートフォン用のECアプリを開発して運用しているケースも多くなってきています。
そこでGA4を活用すると、アプリでこういう使い方をしているユーザーは、サイトの方ではこういう購買行動をしている、といった行動分析が可能になります。GA4によってサイト内だけでなく、アプリなども含めた計測が可能になるわけで、サイト運営者にとっては打てる施策の幅が広がることが大きなポイントだと思います。
林氏:運用の観点で言いますと、これまでWebの担当者とアプリの担当者を分けている企業が多かったのですが、GA4をきっかけにWebとアプリの運用を統合していくような流れもありそうです。また、今まではUAの標準機能で自社サイトのデータを個別に分析していたところを、無料版のGA4でも利用できるようになったBigQueryへのデータエクスポートを活用することにより、統合的にデータ分析していくように変えることも可能になります。ユーザー行動の分析の仕方と合わせて、マーケティングの方向性を変えていくいいチャンスでもあると思っています。
荒巻氏:まずは得られる情報量が増えること、そしてGoogle社と直接的にコミュニケーションを取れることです。GA4はまだ発展途上の部分もあり、日進月歩で進化しているのですが、今後どんな改善や追加機能があるのかといったロードマップのような情報を我々は持っています。お客様がデータ分析したり、施策を打っていこうとしたりするときに、我々のもつ情報をもとに最適な方法、最適なタイミングで提案が受けられる、というのは1つのメリットかと思います。
加えて、我々はGoogle社にお客様のご意見・ご要望を直接エスカレーションし、それに対する回答をフィードバックすることも可能です。そんな風にGoogle社の公式見解を正確に把握してお伝えできるのは、GMPのセールスパートナーならではと言えます。
データ事業本部データソリューション部データインテグレーション1課 課長 荒巻 裕司氏
林氏:UAやGA4はそれこそ大変多くの方が利用していますから、インターネット上には情報があふれていて、何が本当で、自社にとってどれが有益な情報かを判断するのが難しい場合があります。また、GA4の最適な運用方法が変わる可能性もありますので、それに合わせて自社の戦略をどう変えていくべきか、その都度正しい方向性で検討していく必要もあります。それが可能になるのが、私たちGMPのセールスパートナーに依頼するメリットでもあります。
林氏:GMPのセールスパートナーとしてのスタンスが変わることはありませんが、GA4になったことで、お客様のデータ活用の幅をもっと広げ、私たち自身のできることの幅も広げないといけない、ということを自覚するようになりました。これまでの方法論に固執するのではなく、違う視点で見たときにもっとできることがあるのではないか、UAの運用方法を踏襲するのではなく、GA4ならではの新しい運用・活用方法を探っていった方がいいのではないかなど、考えるべきことがたくさんあります。
UAは10年以上前にリリースされたツールで、その後は言ってみればリフォームと増築を繰り返して機能を増やしてきたところがあります。GA4でそれがリセットされたわけですから、お客様のサイト分析やマーケティング戦略も一緒に基礎から見直せるいい機会です。そういった側面からも、私たちがきめ細かく対応しながら伴走できるのかなと思います。
荒巻氏:たしかに、どのお客様もいったんスタート地点に戻っているような状態ではあります。でも、そもそも何のために分析が必要だったのか、というところから改めて議論して、本当に意味のあるデジタルマーケティングの取り組みをお客様と一緒に歩んでいけるのはうれしいことです。我々がお客様の前に立って導いていくような役割は、これまで以上に重要になってきていると感じています。
林氏:メリットで言うと、やはり直接コストが抑えられることだと思います。ただ、各機能の使い方やデータの意味、分析の方法など、わからないことがあったときに調べる時間が余計にかかりますし、わからないまま進めて後日確かめると正しく計測できていなかった、みたいなこともありえます。そんな風にアクシデントでリカバリーが必要になったときの手間を考えると、運用をGMPのセールスパートナーにお任せしてしまった方が結果的なコストは低く済みますし、実際に「最初からお願いしておけば良かった」というお声をいただくことも少なくありません。
荒巻氏:企業自身が学びながら使っていくことになると思うので、GA4に関する知識が身に付く、という点は利点になるのかなと思います。しかし、分析していくときに、この数字は本当に正しいのかどうか、といったデータ検証に時間を浪費し、本当に必要な分析にまで手が回らない、なんてことになる可能性もあります。お客様には本来の業務や必要な分析にのみ注力していただき、それ以外のことは我々のようなGMPのセールスパートナーにお任せいただいた方が、結果的に業務を効率良く回せるようになると思います。
林氏:GMPのセールスパートナーは現在日本に9社あります。それぞれで得意分野が異なりますので、たとえば広告戦略を重視するなら広告に強いパートナーを、SEOを強化したいならそれに強いパートナーを、マーケティング基盤をしっかり作り上げたいということでしたらそれが得意なパートナーを、という感じで選択されると良いかと思います。
林氏:弊社は、GMPのセールスパートナーになった歴史も古く、Google アナリティクスに関する知識を豊富に有している人材が揃っています。また、弊社のお客様はECサイト、メディア、BtoB、人材、インフラ、送客ビジネス、メーカーなど、幅広い業種に渡ります。そのため、それぞれのサイトの目的に合った最適なGoogleアナリティクスの利用方法や設定方法について、豊富なナレッジを持っております。
豊富な知識と経験を元に、Google アナリティクスのデータをコアとしたデータづくりのプロフェッショナルとして、デジタルマーケティングの基盤構築やその活用を、貴社のビジネスに寄り添ってご支援できます。
GA4の周辺やIT関連の用語には難しいものが多く、日々技術も進化していて、キャッチアップするのは大変です。しかし、そうした専門的な領域であっても、弊社はお客様がわかりやすい平易な言葉でかみ砕いて伝えられる、というのを得意としています。マーケターかエンジニアかに関わらず、誰にでもわかりやすい言葉で説明できるところは弊社の強みではないかと思います。
荒巻氏:順調にサイトやアプリが成長していけば、無料版のGA4だと何かと利用上限に達してしまうことが多くなります。外部ツールとの連携に制約が生じてしまったり、計測項目を増やせなかったりなど、自社サービスの拡大に分析が追いつかなくなることも考えられます。その場合、GA4の運用方法を工夫して無料のままでも使い続けられるようにするか、もしくは有料版に切り替えるか、というような判断を迫られるかもしれません。
その点、当社では他のお客様の実例も担当者レベルでしっかり把握していますから、それをもとに最適な運用方法などをアドバイスできます。ここまでは運用でカバーし、これ以上は有料版に切り替えるなど、他のお客様での例を参考に判断基準をお伝えすることもできますから、最小限のコストで必要十分なデータ分析が可能になるはずです。
また、UAとGA4はそもそも別のツールである、ということを理解していただくことも大事です。同じような計測項目なのに、UAとGA4とで数値に差があって悩んでしまうお客様も実際にいらっしゃいました。GA4はコンセプトの異なる新しいツールですから、その比較自体が時間の無駄にもなりかねません。データにこだわることは重要ではあるものの、データに囚われないようにすることはもっと大事だと考えていただければ。
林氏:UAとGA4とでデータの見え方が変わったために、上司に納得してもらえる資料が作れなくなった、というお客様もいらっしゃいました。同じ項目名でも計測要件が変わっていたり、わかりにくい項目があったりするので、その点を社内で指摘されがちです。しかし、それを改めて説明するのには時間がいくらあっても足りません。私たちの方ではそんな時のために、社内説得に役立つ資料や説明用のレポートなども用意していますので、お気軽にご相談いただければと思います。
株式会社イー・エージェンシー
データ事業本部データソリューション部カスタマーサクセス課 課長 林 紫織 氏(左)
データ事業本部データソリューション部データインテグレーション1課 課長 荒巻 裕司氏(右)
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]]>投稿 手軽にECサイトを始められる時代、だからこそ事前に注意しておくべきことも――ECサイト構築を手がけるCuonに聞く は ITreview Labo に最初に表示されました。
]]>ところが、そうした汎用のECプラットフォームでは、ECサイトが成長していくに従って運用が困難になったり、多機能ゆえの悩みにぶつかったりするケースもあるのだとか。そんな困った事態に陥らないようにする方法はあるのでしょうか。ECプラットフォームの導入・運用・カスタマイズから、フルスクラッチでのECサイト構築まで手がけるCuon社の後藤氏と寺崎氏に、ECを始めるにあたって押さえておくべきポイントについて伺いました。
寺崎氏:商材を販売して購入者に配送する、といったオーソドックスなECはすでにコモディティ化しています。Shopifyのような汎用的なプラットフォームがあるので、スタートアップや新規事業としてECを新たに始める企業は、そういったツールを使うのが今は主流です。近年はデジタル商材を扱うことも増え、2、3年前からは定額課金のサブスクリプションも一般的になってきています。実際に当社でもそのような企業のお手伝いをさせていただくことが頻繁にあります。
一方で、最初は汎用プラットフォームでスモールスタートし、事業が大きくなってきたところでスクラッチ開発する、という流れも多くなってきています。企業の基幹システムや店舗・倉庫の在庫情報などと連携するような複雑なシステムになる場合は、最初からスクラッチ開発して作り込んでいくこともあります。
寺崎氏:まずツール選択のポイントとしては、自身がECで実現したいことをそのツールで本当にできるのか、拡張性が十分に高いかどうかを確認しておくことだと思います。ただ、昨今広く使われているツールはだいたいひと通りの機能を備えていますので、その点で不足を感じることは最初はあまりないかもしれません。それらを満たしたうえで、最後にチェックするのが利用料などのコストになります。
後藤氏:ECサイトを運用していくうえでは、全体的なサービスのグランドデザインや商品のターゲット顧客の属性をしっかりプランし、定めることが大切です。そのためにも顧客に訴求したいサービス・商品にフォーカスして、小さく始めること。加えて、迅速にサービスを始めることもビジネスの観点では重要ですので、それらの点を踏まえて、当社では汎用プラットフォームを利用する場合にShopifyをおすすめしています。
寺崎氏:一番のメリットは、迅速にECサイトを立ち上げられることです。顧客のビジネスの成長に合った段階的な契約プランが用意されており、海外発のグローバルなツールということで、そのグローバルの実績に裏付けされた豊富なライブラリやプラグインが揃っていて、必要に応じて機能を追加していけます。
また、技術的な面ではヘッドレスコマースと呼ばれる仕組みを採用し、顧客が見る画面と裏側のシステムとが分離されていることから、柔軟にカスタマイズしてマーケットの変化にも対応しやすくなります。楽天市場など国内の大手ECモールと連携する機能もあり、多角的な販売戦略をネット上で展開できるのも強みだと思います。
ただ、プラグインなどでさまざまな機能を追加していけるものの、実現したい内容によっては既存のプラグインだとカバーできないことももちろんあります。プラグイン1つ1つの設定が独立しているため、管理面で煩雑になりやすいのも弱点です。汎用的に作られているがゆえの問題ですが、意外とかゆいところに手が届かず、拡張していくにしたがって運用の手間が増える可能性があります。
寺崎氏:必要な機能が不足している、という場合には、Shopifyはプラグインを独自に作成して好きな機能を加えることができるので、当社がその開発をお手伝いさせていただくことがあります。プラグイン開発には、まさに当社が得意としているRubyやRuby on Railsといった言語・フレームワークが利用できますので、コストを抑えながら使い勝手のよいカスタマイズ方法をご提案できるかと思います。
また、プラグインなどを利用したカスタマイズだけでは対応が難しかったり、商材や業務に沿った最適なECサイトを実現したい場合には、スクラッチのオーダーメイド開発をご提案させていただきます。そうすることで、事業者様にとって本当に必要な機能を自在に扱えるようなECサイトに仕上げることが可能です。
後藤氏:事業者様はECサイトを作ることではなく、あくまでも商品やサービスを販売することが目的かと思います。その目的に対してはShopifyでスピーディにスタートできます。しかしビジネスをより大きくしていく段階になったときは、標準だと対応しきれない部分の追加開発を行い、それでも不足するならスクラッチで開発することになります。
当社には要件定義から設計、開発、運用・保守まで、一気通貫でご支援できるフルスタックエンジニアが多数在籍していますから、少人数のチームで小回りよく対応していけます。場合によっては企画段階から技術的視点でアドバイスさせていただくことも可能です。
後藤氏:ある企業のデジタル商材のECサイトですね。スクラッチで開発した場合は、要件定義から完成まで9カ月ほどかかると想定される内容でしたが、Shopifyを利用して、ご要望に合わせてプラグインを追加開発する形にしたことで、3.5カ月ほどの短期間でローンチできました。
寺崎氏:追加開発したプラグインの1つは決済機能を実現するものでした。Shopify自体も標準でいくつかの決済事業者に対応していますし、既存のプラグインでさらに追加することもできますが、このときはサブスクリプションサービスの支払い方法として既存にない自動継続課金や掛け払いの仕組みが必要でした。あわせて、外部サイトにある商品に関するレビュー情報などを引っ張ってきて商品と一緒に掲載する、というような機能も実装しました。
寺崎氏:ECと気付くことなく買い物が終わっている、みたいな顧客体験になっていくかもしれません。現在の「カートに入れて購入手続きし、商品を受け取る」という形ではなく、リアルでの買い物に自然とECが溶け込んでいく、顧客体験がリアルに近づいていく、というような感覚ですね。
たとえばアパレルショップでは、店内に設置されたタブレットやスマートフォンを使って注文するというスタイルが増えてきています。せっかく実店舗に行っても自分にフィットするサイズや気に入る色が在庫しておらず、結局取り寄せるケースが少なくないと思いますが、店内で希望の商品に近いものを試着した後、あえてタブレットやスマートフォンから注文する手順にして、リアルな体験と通信販売をシームレスに融合させている。そういった買い物体験は今後ますます広がるのではないでしょうか。
後藤氏:最近我々が手がけた案件のなかには、スクールのコース申込みをECサイトからできるようにする、というものもありました。リアルの講座申込みにECを利用するのは珍しいと思いましたが、いずれこうした手法は当たり前になって、日常に溶け込んでいくのだろうと感じています。動画配信で商品を紹介して販売するようなライブコマースもメジャーになりつつありますし、昨今話題のAIチャットを用いた対話型の買い物体験も今後は発展していきそうですよね。
寺崎氏:ECサイトを立ち上げたい事業者様に対しては、当社がこれまでに培ってきたECサイト構築のノウハウをもとに、スクラッチ開発、カスタマイズ、汎用プラットフォームの導入・運用、といった松竹梅のメニューでお届けできます。すでにECサイトを開設しているものの、運用が伸び悩んでいるお客様には、他の事業者様の実例や改善手法など、我々が肌感覚で知っているところをご提案することも可能です。
後藤氏:ECのトレンドの移り変わりは早く、確実に先が読めるものではありませんから、そのときにトレンドをしっかり捉えながら、まずは小さく始めることがやはり大事です。そのうえで顧客の特性や購買履歴を分析しながら運営することが求められます。その点、Shopifyはグローバルなプラットフォームで、マーケットのトレンドが随時取り込まれていきますし、十分な分析機能もあります。このあたりは国産ツールにはないアドバンテージではないでしょうか。無料のプランもあり、1人で立ち上げることもできますので、ぜひ一度試してみていただければ。
◆お話を伺った方
株式会社Cuon 後藤 進 氏、 寺崎 洋 氏
投稿 手軽にECサイトを始められる時代、だからこそ事前に注意しておくべきことも――ECサイト構築を手がけるCuonに聞く は ITreview Labo に最初に表示されました。
]]>投稿 技術支援を受けてローコード開発で業務改善~大企業も活用するパートナーの価値とは は ITreview Labo に最初に表示されました。
]]>今回は、サービスプロバイダーの技術支援を受けながら、ローコード開発ツール「Wagby EE」でアプリケーション開発に取り組んでいる積水化学工業株式会社(以下:積水化学工業)でデジタルを活用した業務改善を推進する堀平良氏と、技術支援を提供するソフトウェア・パートナー社の滝澤好道氏にお話を伺い、サービスプロバイダーの技術支援のリアルに迫ります。
堀氏:2017年に「WannaCry」というWindowsをターゲットにしたランサムウェアが横行しました。それまで.NETベースのアプリケーションをたくさん作ってきていたのですが、そういったWindows系のアプリケーションから脱却したいと考えていました。ただ、一から作り直すとなると費用も時間も相当かかります。既存のアプリケーションを置き換える手段としてちょうど「ローコード」という言葉が出てきた頃で、試験研究的にやってみようとなったのが2018年から2019年ぐらいでした。
WannaCryの収束とともにローコード開発が縮小気味になった時期もありましたが、システムを簡単に作れる点は非常に評価できると考えていました。当時、たまたま相談があった部門のアプリケーションをローコードで作ってみたところ、大好評だったことから、本格的にローコード開発に取り組むようになりました。
堀氏:そうですね。もちろんいろいろなツールを研究しましたが、中でもWagby EEが一番当社に合っていると判断しました。ポイントにしたのは大きく2点で、1つ目は国産へのこだわりでした。比較検討したツールには海外産のものもありましたが、海外では企業買収が多く、ユーザーの立場からすると長く使えるツールかどうかという点が評価のポイントでした。
2つ目はツールが生成する成果物についてです。Wagby EEは、一般的にはローコード開発ツールに位置付けられていますが、個人的にはJavaのソース生成ツールだと思っています。自分たちの手の届かない範囲でアプリケーションができあがってしまうことは避けたい、将来的に仮にWagby EEがなくなったとしても、自分たちで作ったアプリケーションを運用できるようにしたいという考えがありました。
堀氏:いくつかありますが、経理業務の自動化・効率化がそのうちのひとつです。当社は海外を含めて関連会社が200社近くありますが、連結決算に向けて会計上の仕訳の情報などを毎月集める必要があります。この業務にWagby EEで作成したアプリケーションを使用しています。経理では他にも、期末の繁忙期に手作業でExcelに転記して集計していたような業務を、現在はWagby EEでシステム化しています。
堀氏:ツールのライセンスを買って実際に触ってみて気づいたことですが、自分たちで一からアプリケーションを作り上げるのがやはり大変だったためです。ローコードで効率的にアプリケーションを作りたいわけですが、自分たちでツールのマニュアルを調べながら作っていくとどうしても効率が悪くなる。ローコードに求めているのは生産性ですから、そこはツールの使い方に関するノウハウ・知見のあるパートナーにお手伝いいただきたいと考えました。
堀氏:既に様々なツールを利用してきていますので、導入に当たって頼れる企業がいるということは知っていました。ツールによってはメーカーに直接相談するよりも、間に入る販売代理店やサービスプロバイダーへ相談した方が親身になって対応してくれることも多いので、メーカーに直で支援を依頼するよりも親身になって相談に乗ってくれると感じています。Wagby EEの構築パートナーについては候補が数社あったと記憶していますが、ソフトウェア・パートナー社は当社の考え方を違和感なく理解いただけたことが大きかったです。実際には、まずPoCをやってみて、試験導入で問題がないことを確認して本導入という流れでしたが、最初からサポートいただいています。
滝澤氏:弊社では独自のサービスとして、「技術支援サービス」を提供しています。お客様の課題に対して弊社のエンジニアが何時間動くかによる時間精算の契約で、お客様からの依頼内容に応じて対応する人員をアサインし、チームでフレキシブルに対応するサービスです。年間有効な時間数をプリペイドで購入していただき、ご依頼が発生するたびに時間見積もりをします。見積もり内容をご承諾いただけたら初めて着手するという流れです。Wagby EEというローコード開発ツールを展開している立場として、お客様を後方支援できる体制は絶対に必要だという考えで作ったサービスです。
堀氏:この契約形態は非常に助かっています。Wagby EEの設計に関する助言だけでなく、たとえば、Wagby EEのリリース作業を自動化するために、「Wagby EEのリリース作業を自動化するためのスクリプトを書いてほしい」、といったインフラレベルの相談にも対応してもらっています。時間契約の中で柔軟に対応してもらえる点がとてもありがたいです。また、Wagby EEのライセンスに関しても、メーカーではなくソフトウェア・パートナー社との契約です。ライセンスも含めて窓口が一本化できるのは、正規パートナーのメリットですね。
滝澤氏:そうです。根本的な企画・設計はすべて積水化学工業でされており、あくまで技術的なご支援だけを提供しました。たとえば、Wagby EEでどのように設計すればある機能を実現できるのか、といったような課題が出た場合に、ご依頼に応じて助言するなどのご支援をしてきました。分業がはっきりしていたことは、成功したポイントだったと思います。
開発が進んで課題が立て込んできた時期は、頻繁に認識合わせの会議を開いて情報を共有していました。課題によっては双方の技術者同士で行うこともありましたし、関係者を集めて複数の課題をその場で一気にさばいていくような形式で行ったこともありました。
滝澤氏:はい、そうです。そこが純国産のツールである利点ですし、メーカーにフィードバックしてよりよい製品にしていくことは、我々としても自信を持って製品を販売していく上で重要であると考えています。機能改善だけではなく、顧客からの要望で追加された機能も多くあります。
堀氏:ワークフロー周りで、当初はできなかったことがパラメータひとつで簡単にできるようになったこともありましたし、ユーザー権限の挙動などについても要望が取り入れられて改善しました。システムを作り上げた後、メーカーへ訪問して見てもらい、ツールの改善点をメーカーと協議したこともあります。
堀氏:はい。経理の集計作業については大幅に工数を削減することができましたし、海外の関連会社からの会計情報の収集についてもこの1年で大きく進んでいます。また、開発工数についても、弊社の従来の手法で開発した場合の試算結果と比べて大幅に削減できたことがわかりました。
Wagby EEに関しても支援のおかげである程度は社内で対応できるようになってきていまして、今でもカスタマイズを続けていますが、ソフトウェア・パートナー社には引き続き相談に乗っていただいています。
滝澤氏:ご相談の質は明らかに上がっていまして、我々としても「ちょっとお調べします」ということが最近多くなっていますね。元々、技術支援サービスは、お客様がノウハウを蓄積して自分たちでツールを使えるようになったならば、契約を打ち切っていただいてかまわないというコンセプトで始めていますので、理想的な状態だと思っています。
堀氏:ちょうど先日もWagby EEで作ったアプリケーションと他システムの連携についてご相談したところです。アプリケーションのセキュリティに関しても、我々の目線で相談に応じていただいて強固なセキュリティを実現しました。システム開発に関する一般的な常識と、それをローコードでどう実装するか、両者の間を取り持ってくれるのが、ソフトウェア・パートナー社のようなサービスプロバイダーだと思っています。
インタビューの中で、もっとも印象に残ったのは、「ローコード開発においては成果責任は顧客の側にあると考えます。将来的にアプリケーションを運用保守していくのは自分たちなので、できあがったものについては必ず十分に説明を受けて自分たちの技術にしてきている」という堀氏の言葉でした。そのような顧客の想い・意図をソフトウェア・パートナー社が汲み取り、両社二人三脚で開発を進めたからこそ、期待した成果が得られたのだと感じました。
一方で、今回の積水化学工業のようなローコード専門の開発体制が存在しない企業も数多く存在します。滝澤氏によれば、たとえば初期開発は受託で行い、顧客が独力でアプリケーションの維持・保守ができるように指導して引き渡すといったように、顧客の要望や体制にあわせて柔軟に対応されているそうです。サービスプロバイダーの支援によるローコード開発は、情シスのない中小企業にも有力な選択肢の一つになるのではないでしょうか。
◆お話を伺った方
積水化学工業株式会社 デジタル変革推進部 情報システムグループ 担当係長 堀 平良 氏
株式会社ソフトウェア・パートナー 営業企画部 マネージャー 滝澤 好道 氏
投稿 技術支援を受けてローコード開発で業務改善~大企業も活用するパートナーの価値とは は ITreview Labo に最初に表示されました。
]]>投稿 IT導入にサービスプロバイダーは必要か?開発現場の頼れるパートナーの意義【ローコード開発編】 は ITreview Labo に最初に表示されました。
]]>そこで、今回はローコード開発の専門家であるソフトウェア・パートナー社より住谷和洋氏、滝澤好道氏、矢澤直人氏に「サービスプロバイダー(パートナー)を活用する意義」をテーマにお話を伺いました。
――いわゆる「ローコード開発パートナー」とは、どのような存在なのでしょうか?
滝澤氏:ローコード、ノーコードはホットなキーワードになっており、さまざまなツールが登場しています。全くコードを書く必要がないノーコード開発の一方で、ローコード開発では適宜コードを書くことが前提になります。そのため、運用にあたってプログラミングを理解している人材が必要になります。私たちのようなローコード開発を手掛けるサービスプロバイダーは、導入するツールの特性を生かしてお客様の要望に合わせて最適な解を模索するパートナーとなるのが役割です。
――実際、ローコード開発でシステムを早く作りたいというニーズは増えているのでしょうか?
滝澤氏:はい。お客様からは、「ローコード開発」で検索されて当社に問い合わせていると聞きます。コストを下げて手早くシステムを作りたいというご相談が多いですね。国策にもなっている通り、DXを推進する企業が急速に増えています。業務改革に合わせてシステムを柔軟に変更できるように、ローコード開発環境の構築が求められていると感じます。
矢澤氏:日本企業の中には、「自分たちのシステムは自前で持つべき」「データは自社でしっかり管理するべきだ」という考え方が根強くあります。こうしたニーズにマッチする手法がローコード開発なのだと思います。ただ、開発を正しく進めるためには相応のスキルが必要です。システム開発を担う部署や人材に対して、ツールの使い方や開発における考え方などを装着することも私達のサポート範囲です。
――前項で「開発現場でのツール運用の適正化」に触れました。ツールを自社の努力で導入するよりも効率的に見えます。
住谷氏:IT製品ではツールの特性を知って、適切に使うということが最重要です。特に開発に関連するツールの場合、インプットから自社ですべてやろうと思うと相当の時間がかかります。一刻も早く活用するなら、パートナーを通してツールの導入から開発手法までのレクチャーを受けたほうがスムーズです。
滝澤氏:私たちがツールとして主に利用するWagby EEは、生成されたソースコードに対してJavaでコードを書ければカスタマイズができます。しかし、お客様の中には、Wagby EEの標準機能でできるはずのことなのに、知らずにコードを書いてしまったという事例もあります。そのため、機能の適切な解説とケーススタディは意識しています。
――ITreviewの貴社のページには、お客からのレビューに「自社の状況に合わせた建設的な提案がよかった」という文言が見られます。現場感のあるアドバイスもパートナーに頼るメリットでしょうか。
矢澤氏:そうですね。ツールの仕様というのを熟知した上で、お客様のやりたいことを伺って、「それならこのやり方が良い」というご提案は常に行っています。ローコード開発の場合、ツール内の仕様は固まっています。そのため時には、お客様の要望に対応できない要件がでてきます。そんな時に、しっかりと代案をご提示できるのは、様々な開発現場を見てきたパートナー企業に依頼するメリットと言えるのかもしれません。
住谷氏:他にも弊社では、稼働環境のご提案やサービスもご提供しています。システムをローコード開発で作られて、実際にそれを社内で動かす時に、動作環境をどうするかというようなご相談にも対応しています。ただ作る・導入するだけではなく、システムを動かすために必要な体制を構築しているのです。
――長期的にサポート契約を継続し、パートナーとして伴走しているお客様が多いとお伺いしました。お客様から選ばれる要因はどのようにお考えでしょうか。
滝澤氏:10年近くサポート契約を更新していただいているお客様もいらっしゃいます。本来はツールを導入して、ツールを使いこなせるようになればサポートは要りません。それでも契約を継続されているというのは、いざという時に頼れる先があるという安心材料として弊社を頼りにしていただいているのだと思います。
矢澤氏:どのような技術サポートをしているのかと言えば、例えば、ツールを新バージョンにバージョンアップしたい、そのツール強化をサポートしてほしいというご相談を受けることがあります。あとは、新しいシステムを立ち上げたいがどういうシステムがいいのかというご相談に対し、設計のご支援をしたりすることもあります。他にも「導入したツールの標準機能では対応が難しい要件があり、カスタマイズをお願いしたい」とご依頼いただくこともあります。
滝澤氏:お客様企業のエンジニアもツールを使ううちに、何ができる何ができないということが分かってきます。私たちとしてもいただいた課題を見て、これは現状のツールだけでは難しいので、他のツールを組み合わせてはどうでしょうというお話をさせていただくケースもあります。
――「ローコード開発パートナー」に対するニーズは今後も伸びていくと予測されていますか?
滝澤氏: そうですね。今までスクラッチ開発でしかできなかったことが、なるべくコードを書かずにできるようになってきたということで、ローコード開発が台頭してきています。今後はローコード開発がもっとシェアを伸ばしていくのではないかという予測はあります。それに呼応して、私たちのような「ローコード開発パートナー」の存在価値を理解し、頼りにしてくださるお客様も増えていくのではないでしょうか。
とはいえ、完全にスクラッチ開発がなくなって、ローコード開発に置き換わるということではないでしょう。例えば、銀行の勘定系システムなどは、システム開発にローコード開発を適用してはいけないと思います。やはり適材適所。何でもローコード開発を適用するのではなく、システムの用途に合わせて最適な解決策をご提示することが私たちの役割です。
――課題の整理と解決に向けたソリューションはワンセットですね。ローコード開発に対する貴社の展望をお聞かせください。
住谷氏:弊社では現在30~40%ぐらいのエンジニアがローコード開発を行っています。今後の市場拡大を見据えて、基本的にはスクラッチ開発を見据えた技術者の育成をした上で、ローコード開発を行える人材を増やしていこうと考えているところです。そうすることでお客様の要望に対して、幅広く応えられる体制がつくれると考えています。
滝澤氏:情報システムは業務を遂行するための道具にしかすぎません。業務に合わせてシステムを自由に手早く改変できるという面では、ローコード開発ツールは非常に良い選択だと思います。「ローコード開発パートナー」を上手く利用しながら、日本全国の企業があるべき情報システムの姿を実現できるようになっていければ、私たちとしてもこんな嬉しいことはありません。
IT人材の不足が叫ばれている昨今、システム開発の現場では慢性的に人材不足が課題となっています。そのため新たに自社で開発体制を整える、維持するということは難易度が高い課題です。これらを踏まえ、自社の開発環境であったり、事業の流れを理解しているパートナー企業に頼ることは、短期的な業務効率化はもちろん、長期的な事業運用の観点からも有意義なのではないでしょうか。
◆お話を伺った方
株式会社ソフトウェア・パートナー
取締役社長 住谷 和洋 氏
営業企画部 マネージャー 滝澤 好道 氏
システムソリューション部 主任 矢澤 直人 氏
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