デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)の投資利益率(ROI:Return On Investment)は、投資コストに対する定量的効果と定性的効果を金額換算し、指定の計算式に当てはめて計算します。

測定項目 内容 評価軸となるもの(例)
定量的効果(数値化しやすい項目) 業務時間の削減 作業時間一件当たりの処理時間
人件費の削減 人件費総額工数削減によるコスト
業務量の増加率 処理件数月・一人当たりの対応件数
問い合わせ対応の効率化 対応件数平均対応時間
研修コストの削減 研修・教育にかかるコスト
システム活用率の向上 ログイン率システム利用率
プロセスの完了率 タスク完了率離脱率
定性的効果(数値化に工夫が必要な項目) ヒューマンエラーの減少 エラー件数修正回数
DX推進の加速 デジタルツール利用率業務デジタル化率
従業員体験(EX)の向上 従業員の満足度働きやすさ
変革スピードの向上 事業モデル・企業文化などが変革するスピード感
新人オンボーディング期間の短縮(即戦力化にかかる時間) 独り立ちまでの日数

※ヒューマンエラーの減少や新人オンボーディング期間の短縮は、件数や日数として測定すること自体は可能ですが、その経済的価値を算出する際に工夫が必要なため、本記事では定性的な効果として整理しています。

ROI評価の基本計算式

DAP導入におけるROIは、以下の計算式で算出します。

ROI(%) = (得られた利益 – 投資コスト) ÷ 投資コスト × 100

DAP導入のROIは、業務時間削減・問い合わせ削減などの定量的効果と、従業員体験向上・DX推進加速などの定性的効果を整理し、金額換算できるものを投資コストと比較して評価します。

計算式の「得られた利益」とは、DAP導入によって削減できたコストや短縮できた日数、向上した生産性を金額換算した合計額のことです。投資コストは、ライセンス費用や初期費用、運用に要する人件費など、DAP導入と運用に必要な総コストのことです。

一般的なIT投資では、売上増加やコスト削減といった特定の成果を利益として算出する傾向にあります。

ITツールの定着を促すDAPでは、利益の内訳が多層的なため、定量的な効果と定性的な効果の両方を組み合わせて整理すると、導入効果をより把握しやすくなります。

定量的に測れる効果(数値化しやすい項目)

DAP導入で定量的に測定できる主な効果は、以下の通りです。

  • 業務時間の削減
  • 人件費の削減
  • 業務量の増加率
  • 問い合わせ対応の効率化
  • 研修コストの削減
  • システム活用率の向上
  • プロセスの完了率

上記の項目は、時間や金額、件数といった具体的な数値を基に算出します。ROIを評価する際は、最初にこれらの数値として把握できる効果を整理することが重要です。

定性的だが重要な効果(数値化に工夫が必要な項目)

DAP導入のROI評価では、以下の定性的な効果も把握する必要があります。

  • ヒューマンエラーの減少
  • DX推進の加速
  • 従業員体験(EX)の向上
  • 変革スピードの向上
  • 新人オンボーディング期間の短縮(即戦力化にかかる時間)

これらは、業務時間や人件費の削減のように直接的な数値を算出するのが難しく、導入効果を測定しにくいとされています。

例えば、従業員体験(EX)の向上は、DAPに対する評価軸が従業員一人ひとりで異なるため、一律の数値で効果を測定するのは困難です。

これらの項目は、満足度調査やアンケート、インタビューの他、利用ログやエラー発生率なども組み合わせてスコア化すると良いでしょう。定量的に測定できる効果を主な評価指標とし、定性的な効果は補足的な評価軸として整理するのがポイントです。

ROI評価のステップ

DAP導入におけるROI評価は、現在の課題とKPIを定め、導入前後の変化を測定し、効果を金額換算して継続的に改善する流れで進めます。

具体的なステップは、以下の通りです。

  • 現状の課題とKPIを明確化
  • DAP導入後に改善したい指標を設定
  • 導入前後でデータを比較
  • 効果を金額換算してROIを算出
  • 改善サイクル(PDCA)の実行

現状の課題とKPIを明確化

まずは、自社が抱えている業務上の課題とDAP導入の重要業績評価指標(Key Performance Indicator:KPI)を明確にしましょう。KPIとは、各プロセスが目標に対してどれくらい達成しているかを評価するための指標です。

業務上の課題には「導入したITツールが使いこなせていない」「社内ヘルプデスクに問い合わせが殺到している」などが挙げられます。

課題を整理した後は、効果を測定するための指標として、KPIの項目を設定します。例えば、「社内問い合わせ件数」や「システムの活用率」などです。

DAP導入後に改善したい指標を設定

KPIの項目を定めた後は、それぞれに対して達成すべき目標値を設定します。数値目標の例としては、「3カ月以内にシステム活用率を60%から75%へ引き上げる」「問い合わせ件数を月100件から80件に減らす」といったイメージです。

具体的な数値を決めておけば、DAP導入後のROIを客観的なデータに基づいて算出しやすくなります。

導入前後でデータを比較

DAPの導入効果を正確に把握するため、事前に設定した指標に基づいて導入前後のデータを比較します。

具体的には、業務時間や問い合わせ件数の多さなど、自社の課題がDAP導入前と比べてどの程度改善できているかを分析します。

データの比較は、DAPの利用状況が安定してから実施すると良いでしょう。比較のタイミングは導入から3〜6カ月後が目安ですが、業務内容や利用状況によって適した時期は異なります。自社の運用が定着した段階で評価を行うことが重要です。

効果を金額換算してROIを算出

データの比較で得られた効果を金額に換算し、ROIを算出します。金額換算は、DAP導入で得た効果をコスト削減や売上増加として評価する方法が一般的です。

例えば、業務時間の削減は、削減した時間に人件費単価を掛けることで金額に換算できます。問い合わせ件数の減少率は、削減した件数に1件当たりの対応コストを掛けると算出できます。

業務時間の削減:削減時間×人件費単価
問い合わせ削減:削減した件数×1件当たりの平均対応コスト

従業員体験(EX)の向上は、定着率の改善や離職率低下に大きく寄与しますが、これらは直接的に数値化しにくい評価項目です。数値化する際は、離職者数の減少によって削減できた採用費や再教育コストとして換算すると、効果を把握しやすくなります。

全ての効果を金額換算したら、以下の計算式に数値を当てはめてROIを算出しましょう。

ROI(%) = (得られた利益 – 投資コスト) ÷ 投資コスト × 100

例えば、年間の利益が300万円、年間の投資コストが200万円であれば、ROIは「(300万円-200万円)÷200万円×100」で50%になります。

改善サイクル(PDCA)の実行

算出したROIに基づき、DAPの効果測定を継続的に実施します。

DAPは導入して終わりではなく、測定→改善→再測定のサイクルを継続的に繰り返すことで目標達成に近づいていきます。具体的には、ROIを算出した後に未達KPIの原因を特定し、ガイドの表示やタイミング、内容などを見直すことが重要です。

目標値に届かなかった項目は、操作ガイドの表示タイミングや内容を見直し、システムの改善を目指しましょう。ユーザーからフィードバックを収集すると、実際の業務でつまずいているポイントや操作で迷いやすい画面を把握できます。

デジタルアダプションプラットフォームのROI評価では定量的・定性的データを有効活用しよう

DAPのROIは、導入前後のKPIを比較し、定量的効果を金額換算した上で、定性的効果も補足的に評価する方法で算出します。業務時間やコスト削減といった定量データに加え、従業員体験やDX加速などの定性データを組み合わせた多層的な評価を行いましょう。算出したROIに基づきPDCAサイクルを回すことで、投資対効果の改善を目指せます。

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