【2025年】産業用ファイアウォールのおすすめ10製品(全12製品)を徹底比較!満足度や機能での絞り込みも
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産業用ファイアウォールの基礎知識
産業用ファイアウォールとは、工場やプラントなどの制御システム(OT環境)をサイバー攻撃から保護するためのセキュリティ機器のことです。従来のITネットワークで使用されるファイアウォールとは異なり、産業用ネットワークの通信特性やリアルタイム性を考慮して設計されています。
特に近年は、スマートファクトリー化の進展に伴い、製造現場でもIoTデバイスやクラウド連携が急速に進んでいます。その結果、制御システム(PLC、SCADAなど)が外部ネットワークと接続されるケースが増加し、サイバー攻撃のリスクが高まっています。制御ネットワークの可用性と安全性を両立させるセキュリティ対策が必要不可欠となっているのです。
事例としては、ドイツの自動車工場がランサムウェア攻撃を受け、稼働停止に陥ったケースや、北米の石油パイプラインが不正アクセスにより制御を遮断された事件などがあります。これらの事例からも、産業用ファイアウォールの導入は、生産停止という経営リスクを防ぐ最後の防壁として重要視されています。
産業用ファイアウォールの定義
・社内ネットワークとインターネットの間に壁を作り、通信の行き来を制御する
・ネットワークを監視し、不正なアクセスがあった際にアラートを上げる
・上記の機能を有する製品のうち、OT(産業)向け製品として販売されている製品
- 産業用ファイアウォールの機能一覧
- 基本機能
- 産業用ファイアウォールの比較ポイント
- ①:通信プロトコル対応で比較する
- ②:冗長化構成・可用性で比較する
- ③:運用管理性・可視化機能で比較する
- ④:セキュリティポリシー設定の柔軟性で比較する
- ⑤:他システムとの連携性で比較する
- 産業用ファイアウォールの選び方
- ①:自社の解決したい課題を整理する
- ②:必要な機能や選定基準を定義する
- ③:定義した機能から製品を絞り込む
- ④:レビューや事例を参考に製品を選ぶ
- ⑤:無料トライアルで使用感を確認する
- 産業用ファイアウォールの価格・料金相場
- オンプレ型(買い切り型)の価格・料金相場
- サブスク型(月額課金型)の価格・料金相場
- 産業用ファイアウォールの導入メリット
- OTネットワークの安全性を高められる
- 生産停止リスクを大幅に軽減できる
- セキュリティ運用を統合的に管理できる
- 産業用ファイアウォールの導入デメリット
- 初期導入コストや運用コストが高い
- ネットワーク構成の複雑化リスクがある
- 専門知識を持つ人材の確保が必要
- 産業用ファイアウォールの導入で注意すべきポイント
- 制御システムとの互換性を事前検証する
- 運用設計・ルール設定を標準化する
- 長期的なメンテナンス体制を確立する
- 産業用ファイアウォールの最新トレンド
- ゼロトラスト型セキュリティの採用拡大
- AIによる異常検知の自動化
- クラウド連携型セキュリティ監視の普及
- ハイブリッド構成(IT×OT)の標準化
- 規制対応と国際標準(IEC 62443)の強化
産業用ファイアウォールの機能一覧
基本機能
| 機能 |
解説 |
|---|---|
| 通信トラフィックのフィルタリング | 製造業の工場やインフラ設備の社内ネットワークとインターネットの間に壁を作り、許可された通信トラフィックのみを通すフィルタリング機能を有する |
| ネットワーク監視・アラート | ネットワークを監視し、不正なトラフィックがあった際にアラートを上げる |
| 各種セキュリティ機能 | ファイアウォール機能だけでなく、VPN/NAT/ルータ/スイッチなどの機能がオールインワンで搭載された産業用ファイアウォール製品もある |
産業用ファイアウォールの比較ポイント
産業用ファイアウォールの比較ポイント
- ①:通信プロトコル対応で比較する
- ②:冗長化構成・可用性で比較する
- ③:運用管理性・可視化機能で比較する
- ④:セキュリティポリシー設定の柔軟性で比較する
- ⑤:他システムとの連携性で比較する
①:通信プロトコル対応で比較する
産業用ファイアウォールを選ぶうえで最も重要なのが、産業用プロトコルへの対応範囲です。制御ネットワークでは、Modbus、EtherNet/IP、Profinetなどの独自プロトコルが使用されており、一般的なITファイアウォールではこれらの通信内容を理解できない場合があります。
対応していない製品を選ぶと、正規通信を誤検知して遮断してしまい、生産ラインが停止する危険性があります。具体的には、PLCとSCADA間のModbus通信をファイアウォールが不正と判断し、データ更新が止まるケースなどが報告されています。制御通信の可視化と正常動作を両立するプロトコル認識機能を持つかどうかが選定の要です。
②:冗長化構成・可用性で比較する
産業環境では24時間365日の稼働が前提であるため、機器の可用性と冗長化機能が欠かせません。もしファイアウォールが故障すれば、ネットワーク全体が停止し、生産に甚大な影響を及ぼすおそれがあります。
そのため、HA構成(High Availability)やバイパス機能を備えたモデルを選ぶことが重要です。たとえば、Palo Alto NetworksやFortinetの産業向けモデルでは、障害発生時に自動で通信をバイパスする機能が搭載されています。生産ラインを止めない可用性設計が製造業の命綱といえるでしょう。
③:運用管理性・可視化機能で比較する
多拠点にまたがる工場ネットワークでは、セキュリティの状態を一元的に監視・管理できる仕組みが求められます。ログ分析・アラート通知・可視化ダッシュボードが充実している製品は、運用負担を大幅に軽減します。
特に、Cisco Industrial Security Applianceなどでは、リアルタイムで異常通信を検出し、通信経路を可視化できるため、OTネットワークの脆弱性管理を効率化できます。もし管理機能が弱いファイアウォールを導入すると、異常検知が遅れ、被害の特定に時間がかかる危険があります。監視と運用のしやすさは、安定運用の鍵です。
④:セキュリティポリシー設定の柔軟性で比較する
産業用ネットワークでは、設備メーカーや通信機器の種類ごとに異なる通信要件が存在します。そのため、ポリシー設定の柔軟性が高いファイアウォールを選ぶことが重要です。
ポリシー設定が煩雑だと、誤設定により通信が遮断され、トラブル対応に時間を取られるリスクがあります。特に、更新作業時に一部ポートを一時的に開放するなど、現場運用に即した柔軟な制御が可能な製品が求められます。
⑤:他システムとの連携性で比較する
セキュリティ運用を高度化するには、SIEM(Security Information and Event Management)やIDS/IPSなど他の防御システムとの連携性も重要です。
ファイアウォール単体では防げない標的型攻撃に対して、異常検知ツールと連携して早期に対処できる環境が理想です。たとえば、FortiGateはOTセキュリティプラットフォーム「FortiOS」と連携し、AI分析による脅威検知を実現しています。セキュリティ全体を統合する連携機能が、将来的な拡張性を左右します。
産業用ファイアウォールの選び方
産業用ファイアウォールの選び方
- ①:自社の解決したい課題を整理する
- ②:必要な機能や選定基準を定義する
- ③:定義した機能から製品を絞り込む
- ④:レビューや事例を参考に製品を選ぶ
- ⑤:無料トライアルで使用感を確認する
①:自社の解決したい課題を整理する
まず重要なのは、どのようなセキュリティリスクを防ぎたいのかを明確にすることです。
例えば「制御ネットワークを外部からの侵入から守りたい」「工場間通信の暗号化を行いたい」「OTとITの境界を安全に分離したい」など、目的を整理することで、導入すべき製品の方向性が見えてきます。
課題を整理せずに導入を進めると、必要以上に高価な製品を選んでしまったり、逆に防御が不十分な構成になる危険があります。自社リスクの可視化が最適選定の第一歩です。
②:必要な機能や選定基準を定義する
セキュリティ要件を満たすためには、機能面の優先順位を明確にする必要があります。
プロトコル解析・VPN機能・冗長化・ログ管理・遠隔操作制御など、産業用ファイアウォールに求められる要素は多岐にわたります。
この段階で要件を曖昧にしてしまうと、運用フェーズで機能不足が判明することがあります。要件定義の精度が導入効果を左右すると言えるでしょう。
③:定義した機能から製品を絞り込む
要件定義を終えたら、候補製品を実際に比較して絞り込みます。
代表的な製品として、FortiGate、Cisco ISA3000、Palo Alto PA-220Rなどが挙げられます。これらの製品は産業用プロトコルに対応し、堅牢な筐体設計を持つのが特徴です。
導入コスト・保守体制・機能範囲などを総合的に評価することが重要で、単純な価格比較だけで決めてしまうと、運用フェーズでコストが膨らむことがあります。
④:レビューや事例を参考に製品を選ぶ
同業他社の導入事例やレビューを確認することで、実際の効果や課題を具体的に把握できます。
ITreviewやメーカー公式サイトには、導入後の運用感やトラブル対応に関する実体験が多数掲載されています。
特に、工場ネットワークのような複雑な環境では、現場での安定稼働実績を持つ製品を選ぶことがリスク回避につながります。
⑤:無料トライアルで使用感を確認する
多くのベンダーでは、評価機貸出やデモ環境を提供しています。導入前に設定操作や監視画面を確認することで、運用時の負担や習熟コストを事前に把握できます。
例えば、Fortinetは仮想環境で試せるFortiGate VMを提供しており、GUI操作性やアラート設定を体験できます。トライアル段階で違和感を感じた点を明確にしておくことが、導入後のトラブル防止につながります。
産業用ファイアウォールの価格・料金相場
産業用ファイアウォールの料金体系には、オンプレ型(買い切り型)とサブスク型(月額・年額課金型)の2種類があります。
| 費用相場 | オンプレ型(買い切り型) | サブスク型(月額課金型) |
|---|---|---|
| 小規模拠点 | 約30万円〜50万円 | 約5,000円〜10,000円/月 |
| 中規模工場 | 約80万円〜150万円 | 約15,000円〜30,000円/月 |
| 大規模プラント | 約200万円以上 | 約50,000円以上/月 |
オンプレ型(買い切り型)の価格・料金相場
オンプレ型の産業用ファイアウォールは、一度購入すれば長期的に利用できるコスト効率の高さが特徴です。一般的な価格帯は30万円から200万円以上と幅広く、冗長構成や冗長電源などのオプションによって変動します。
長期間運用を前提とする製造業においては、ハードウェアを自社で完全管理できる点が魅力です。安定稼働を重視する現場に最適な投資モデルといえます。
サブスク型(月額課金型)の価格・料金相場
クラウド型や仮想アプライアンス型として提供されるサブスク型は、初期費用を抑えて導入できる柔軟性がメリットです。
月額5,000円〜30,000円程度で利用できるケースが多く、クラウド監視やリモート設定機能を標準搭載している製品もあります。
更新や脅威情報の自動配信が常に行われるため、最新の攻撃手法にも迅速に対応できる運用型モデルとして注目されています。
産業用ファイアウォールの導入メリット
産業用ファイアウォールの導入メリット
- OTネットワークの安全性を高められる
- 生産停止リスクを大幅に軽減できる
- セキュリティ運用を統合的に管理できる
OTネットワークの安全性を高められる
産業用ファイアウォールの最大の利点は、制御システムを不正アクセスから守る防御能力にあります。
ITとOTの境界を安全に分離し、サイバー攻撃が工場内部に侵入するのを防ぎます。
特に、リモートメンテナンスの増加によるVPN経由の脅威に対して、強固な通信フィルタリングと認証制御が有効です。結果として、ネットワーク全体の安全性と稼働継続性を両立できます。
生産停止リスクを大幅に軽減できる
不正通信やマルウェア感染を未然に防ぐことで、制御システムの停止や操業中断のリスクを低減します。
実際、NIST(米国標準技術研究所)の調査によると、サイバー攻撃による工場停止1回あたりの平均損失は約2億円に上るとされています。
ファイアウォールを導入することで、経営的損失を防止するセーフティネットを確立できます。
セキュリティ運用を統合的に管理できる
産業用ファイアウォールの多くは、クラウドベースの管理プラットフォームと連携しており、各拠点の状況を一元管理できます。
これにより、遠隔地の工場でもリアルタイムにセキュリティ状況を把握でき、複数拠点の安全管理を効率化できます。
産業用ファイアウォールの導入デメリット
産業用ファイアウォールの導入デメリット
- 初期導入コストや運用コストが高い
- ネットワーク構成の複雑化リスクがある
- 専門知識を持つ人材の確保が必要
初期導入コストや運用コストが高い
産業用ファイアウォールは、高機能で信頼性の高いセキュリティ機器である分、初期費用や運用コストが高額になる傾向があります。
特に冗長化構成や24時間監視体制を構築する場合、機器本体だけでなくライセンス費用やサポート契約費用も発生します。例えば、FortinetやPalo Altoの産業向けモデルでは、年間数十万円規模の保守契約が必要になるケースも珍しくありません。
また、システム更新時の停止調整やポリシー変更など、継続的な運用コストが想定以上に膨らむリスクもあります。コスト削減の観点からは、オンプレ型とクラウド型のハイブリッド運用も検討するのが現実的です。
ネットワーク構成の複雑化リスクがある
産業用ファイアウォールを導入することで、既存のネットワーク構成が複雑化し、通信遅延やトラブルが発生するリスクがあります。
特に、制御ネットワークはリアルタイム性が重視されるため、過剰なセキュリティポリシー設定により通信遅延が生じると、生産ラインの動作に影響を与える恐れがあります。
事例として、PLC間通信の一部が遮断され、稼働データが収集できなくなるケースも報告されています。導入時は事前検証を徹底し、制御システムとの互換性を確認することが不可欠です。
専門知識を持つ人材の確保が必要
産業用ファイアウォールは、ITセキュリティと制御システム(OT)の両方の知識が求められるため、運用を担当できる人材の確保が大きな課題です。
一般的なIT部門のエンジニアでは、ModbusやEtherNet/IPなどの産業プロトコルに詳しくない場合が多く、誤設定や運用ミスにつながるリスクがあります。
対策としては、セキュリティベンダーの研修プログラムを受講するか、外部のマネージドサービスを活用する方法が有効です。専門人材の育成と外部委託のバランスが導入成功の鍵になります。
産業用ファイアウォールの導入で注意すべきポイント
産業用ファイアウォールの導入で注意すべきポイント
- 制御システムとの互換性を事前検証する
- 運用設計・ルール設定を標準化する
- 長期的なメンテナンス体制を確立する
制御システムとの互換性を事前検証する
導入前に最も注意すべきなのは、制御機器との通信互換性を事前に確認することです。
ファイアウォールが制御用通信を遮断してしまうと、最悪の場合、ライン停止につながるため、実環境を模したシミュレーションで検証することが不可欠です。
また、通信ログを収集して、どのプロトコルやポートが利用されているかを可視化することも重要です。既存システムとの整合性確認が安定稼働の第一条件です。
運用設計・ルール設定を標準化する
導入初期の設定段階で、ファイアウォールルールを標準化し、変更履歴を一元管理する体制を整えることが大切です。
設定ミスや一時的な変更がそのまま放置されると、セキュリティホールが発生するリスクがあります。特に複数拠点での運用では、ルール命名規則・承認フロー・監査体制などを明文化し、人依存を排除した標準化運用を目指す必要があります。
長期的なメンテナンス体制を確立する
産業機器は10年以上の長期稼働を前提としている場合が多いため、ファイアウォールについても長期保守とバージョンアップ体制の継続性が重要です。
メーカーのサポート終了(EoL)やOSアップデートの非対応が発生すると、脆弱性リスクが高まります。定期的なファームウェア更新やログ監査を行い、サイバー攻撃に対抗できる最新状態を維持する仕組みを整えることが大切です。
産業用ファイアウォールの最新トレンド
産業用ファイアウォールの最新トレンド
- ゼロトラスト型セキュリティの採用拡大
- AIによる異常検知の自動化
- クラウド連携型セキュリティ監視の普及
- ハイブリッド構成(IT×OT)の標準化
- 規制対応と国際標準(IEC 62443)の強化
ゼロトラスト型セキュリティの採用拡大
現在の産業セキュリティでは、「すべての通信を信用しない」ゼロトラストモデルの採用が進んでいます。
従来の境界防御モデルでは防ぎきれない内部侵入や不正アクセスを防止するため、通信ごとに認証・検証を行う仕組みが求められています。
例えば、CiscoやFortinetの産業向けモデルでは、ユーザーやデバイスごとに通信ポリシーを動的に適用する機能を備えており、侵入後の被害拡大を防ぐ新しい防御モデルとして注目されています。
AIによる異常検知の自動化
AIと機械学習を活用したネットワーク異常検知機能の自動化もトレンドの一つです。
通常時の通信パターンをAIが学習し、異常な挙動や未知の攻撃を早期に検出する仕組みが一般化しています。
これにより、専門知識を持たない運用者でも異常を素早く把握できるようになり、監視の自動化と効率化が実現されています。特に中堅製造業では、AI分析による省人化効果が高く評価されています。
クラウド連携型セキュリティ監視の普及
産業ネットワークの監視をクラウド上で集中管理するセキュリティ管理プラットフォームの活用が広がっています。
複数拠点や海外工場の状況をクラウド上で可視化し、セキュリティアラートを一元的に分析できる点が魅力です。
クラウド連携により、リモートでの即時対応とグローバル管理の両立が可能になり、スマートファクトリーの運用効率が向上しています。
ハイブリッド構成(IT×OT)の標準化
ITネットワークとOTネットワークを安全に統合する「ハイブリッド構成」の導入が進んでいます。
これまで分離されていた情報系と制御系の通信を安全に橋渡しするため、ファイアウォールが両者の境界に配置されるケースが増えています。
この構成により、製造現場データをリアルタイムにクラウド活用できるようになり、生産効率向上とセキュリティ強化を両立する新しい運用モデルが確立されつつあります。
規制対応と国際標準(IEC 62443)の強化
国際的には、産業制御システムのセキュリティ標準「IEC 62443」への対応が求められるケースが増えています。
特に欧州では、法令上この規格に基づいたセキュリティ対策が義務化されつつあり、国内企業もグローバル展開を視野に入れるなら対応が必要です。
IEC 62443認証を取得したファイアウォール製品は、国際的なセキュリティ要件を満たす信頼性の証明となり、海外プラントへの導入時にも優位性を発揮します。
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