サンドボックスは、インストールするプログラムの安全性を確かめるための仮想環境のことです。セキュリティ対策の必要性が高まる中、サンドボックスの有用性に注目が集まる一方、導入に際しては課題もあります。
なかでもコストの問題は、導入を検討する際の大きな壁として立ちはだかるため、サンドボックスの導入に踏み切れない原因となっています。今回は、有料・無料で使えるサンドボックスの特徴や各ツールを比較する際のポイントについて解説します。
サンドボックス導入の課題
サンドボックスの導入によって、組織のセキュリティ対策は大きく向上するものの、探知できない脅威もあるため、完璧な対策方法であるとは言えません。
また、サンドボックスは性能に優れる分、導入費用が他の対策方法に比べて高額になりやすいというデメリットもあります。セキュリティ予算が潤沢にある組織でしか、本格的な運用ができない点は見過ごせません。
有償のサンドボックス
高額な費用を支払って使えるサンドボックスには、そもそもどのような機能が備わっているのでしょうか。
・FireEye NX
ファイア・アイ株式会社が提供する「FireEye NX」は、サンドボックスの採用で多層的な防御を実現するための草分け的な製品です。
防御が困難な標的型攻撃や、検知困難なサイバー攻撃の予防が可能となっており、ネットワークへの侵入や機密情報の流出被害を最小限に抑えられます。
・SandBlast Agent for Browsers
チェック・ポイント・ソフトウェア・テクノロジーズ株式会社の「SandBlast Agent for Browsers」は、実環境から隔離された安全なサンドボックス上でファイルを実行することにより脅威を検出します。
脅威を検出した場合はその場で隔離・排除ができるのはもちろん、ファイルを即時PDF化することにより、サンドボックスで検知できなかったコマンドが実行されることをあらかじめ回避します。
このように有償で使えるサンドボックス製品は、いずれも価格相応の高いパフォーマンスが期待できると言えます。
無償のサンドボックス
最近では無償で提供されているサンドボックス製品も登場しています。
・Windows サンドボックス
Microsoftが2019年に実装したWindows向けサンドボックス機能「Windows サンドボックス」は、「Windows 10 Pro」または「Windows 10 Enterprise」のユーザーであれば誰でも無償で利用可能なサービスです。
仮想化ツールを別途用意したり、ハードディスクを用意したりする必要がないため、サンドボックスを利用したいタイミングですぐに運用を開始できるのが最大の特徴です。立ち上げるたびに初期化された状態で運用できるので、運用履歴が残ることもなければ、実環境に何らかの影響をおよぼす心配もありません。サンドボックス上で起こったことは全て破棄され、使い捨て感覚での運用を実現します。
一方で、Windows サンドボックス上で行われた実行内容が全て破棄されるということになるため、実行結果を保存したい場合には不向きです。それでもWindowsユーザーであれば無料で基本的なサンドボックスの機能を利用できるというのは、魅力的なメリットです。
現在Windows OSを使用していて、サンドボックスがどういうものか試してみたい、操作感を知りたいという場合は、同製品を試してみることをおすすめします。
有償・無償のツール比較ポイント
有償・無償のどちらのサンドボックス製品も、一定のパフォーマンスが期待できるため、条件さえ合えば無償のもので問題ないと考える方も多いでしょう。
有償・無償のツール比較のポイントとして、以下の項目を確認しておくと、より確実なサンドボックス製品選びが実現します。
・カスタマイズ性:無償製品はカスタマイズ性に劣る場合がある
カスタマイズ性については、無償製品よりも有償のサンドボックス製品の方が優れているケースがあります。上記で紹介したWindowsサンドボックスは、利用のたびに設定を細かく行う必要があるため、何度も同じ環境を利用する際に手間が増えてしまいます。カスタマイズ対応製品であればこの点を考慮して導入できるので、ユーザビリティの面では優れています。
・人材の有無:自社にサンドボックスへの知見がある人材がいなければ有償の方が良い
サンドボックスの運用に際しては、ある程度情報セキュリティに関する知見がなければ適切なリスク管理が難しいものです。有償の製品はその点も見越して、多くの機能を自動化するなど利用しやすいよう改善されています。初めて運用する人でも、利用しやすい製品開発が充実しています。
一方で、無償製品は最低限の機能を提供しており、利用に際してはユーザー側の知見が求められることもあります。
・人材と用途:小規模なセキュリティ対策に使うのであれば無償でも良い
サンドボックス製品の利用が初めてで、その仕組みを理解したい、あるいは個人用のセキュリティ対策として利用したいという場合には、無償の製品でも問題はないでしょう。サンドボックスとしての機能を、正しく利用できれば十分に効果を発揮できます。
必要な対策要件を満たしたサンドボックスを導入しよう
サンドボックスは魅力的なセキュリティツールですが、導入費用の問題などの弱点も存在します。確実なツール導入を進めるためには、サンドボックスの性質や製品ごとの違いを理解した上で、自社に必要な機能を有した製品を選ぶことが大切です。