高度なセキュリティ環境を構築するためには、プログラムの安全性を確かめるための受け皿を用意することが大切です。いわゆるサンドボックスの導入は、不正プログラムの直接的な攻撃を回避する上で有効だと注目を集めています。
本記事では、具体的な仕組みが分かりづらいサンドボックスについて、目的や活用方法をご紹介します。
目次
サンドボックスは仮想環境のこと
サンドボックスとは、直訳すると「公園の砂場」を意味する言葉です。セキュリティ領域においては、プログラムの安全性を確認するための仮想環境を指しています。
普段の業務で使用しているコンピュータに直接新しいプログラムをインストールすると、そのプログラムが不具合や不正な動作を可能にするものであった場合、なす術なくシステムが乗っ取られてしまう可能性があります。
そこで一度サンドボックス上でプログラムを動作させ、不審な動きがないかを確かめた上で本番環境に移行することで、不審なプログラムが直接侵入することを回避できます。サンドボックス上は完全に隔離された環境であるため、本環境がマルウェア攻撃などの被害を受けることはありません。
サンドボックスの目的と活用方法
サンドボックスを導入することで、新たなマルウェアの攻撃を高い確率でシャットアウトすることができます。
すでに本環境に侵入している不正プログラムを除去することはできませんが、これから新たに導入するプログラムに対しては、強力な予防効果を発揮し、サンドボックス上で水際対策を実現できます。
サンドボックスの仕組み
サンドボックスは、以下3つのステップを踏むことでユーザーのセキュリティ向上に努めます。
- 安全性不明のファイル確認
- サンドボックス環境で展開、セキュリティチェック
- 問題なければ実環境へ、脅威を検知すれば隔離・駆除
サンドボックス上に移された不明なプログラムは、まず安全性をチェックするべくファイルの確認を実行します。次にサンドボックス環境でファイルを展開し、不審な動きがないかをチェックします。
最後に、不審な動きを検知しなかった場合は実環境へ移行し、不審な動きを検知した場合にはプログラムの隔離・駆除を実行します。
サンドボックスのメリット
サンドボックスを運用する主なメリットとしては、以下が挙げられます。
- 未知の不正プログラムを分析できる
- 標的型攻撃に強い
- 容易に導入できる
サンドボックスは未知の不正プログラムのパターンを分析して、駆除に向けた対処法を発見するきっかけをもたらします。
未知の攻撃の分析を有効活用できれば、近年流行している標的型攻撃と呼ばれるサイバー攻撃にも耐性を発揮し、攻撃の被害が甚大になるリスクを抑えられます。通常のアンチウイルスソフトだけでは既知のウイルスにしか対応ができないため、サンドボックスとの併用によって強力な相乗効果が期待できるでしょう。
また、セキュリティの強化が遅れる理由の1つに、導入負担が大きく、既存のシステムを刷新する負担が発生することが挙げられます。サンドボックスは後付けで気軽に導入できるので、現場への負担を抑えて事業を継続可能です。すぐに実装可能な汎用性も魅力です。
サンドボックスのデメリット・懸念点
サンドボックスは優秀なセキュリティ対策と言えますが、導入に際しては懸念点もあります。例えば、次のような問題です。
- サンドボックスを検知できるマルウェアもある
- 導入費用が高額になりやすい
- 検証に時間がかかる
サンドボックスは、あくまで仮想的な環境であるため、実環境とは仕様が異なります。近年は実環境と仮想環境を区別できる不正プログラムも登場しており、サンドボックスに検知されないよう、安全なプログラムになりすまそうとするケースが見られます。実環境に到達して初めて、悪意あるコマンドを実行するため、サンドボックスでこれらのマルウェアを回避することはできません。
また、サンドボックス環境は導入コストがそれなりに高額であるため、アンチウイルスソフトのように気軽に利用できないという問題も抱えています。リソースに余裕のある大企業であれば用意に導入できるかもしれませんが、個人や中小企業が気軽に導入できるものではない点に注意しましょう。
サンドボックスによる検証は、場合によっては長時間にわたってしまうこともあります。不正プログラムによっては検証中に作動してしまい、実環境に被害を与えるケースもあります。100%サンドボックス上で脅威を排除できるわけではない、ということは覚えておきましょう。
サンドボックスをうまく活用してセキュリティ対策を充実させよう
サンドボックスは、仮想環境を活用した優れたセキュリティ対策です。実環境への不正プログラムの侵入を防ぐだけでなく、これまでに遭遇したことのない脅威に対しても一定の効果を発揮します。
しかし、近年ではサイバー攻撃の複雑さが急速に高まっていることから、最新のマルウェアなどを全てサンドボックス上で防ぎ切るのは難しくなりつつあります。
導入に際してはサンドボックスの強みと弱みを理解した上で、サンドボックスの弱点を補える環境構築を目指すことが大切です。