アイティクラウド株式会社は「ITreview User Conference 2026」のスペシャルセッションとして「AIに選ばれるSaaSへ ― レビューとAEOでつくる第三者評価戦略」と題したパネルディスカッションを実施しました。

登壇したのは、Ahrefs 日本マーケティング統括の河原田隆徳氏と、GMO TECH株式会社 執行役員の中原卓馬氏です。モデレーターは、アイティクラウド株式会社 マーケティング部門部長の野島哉が務めました。

前編では、Ahrefsによる独自の調査データをもとに、AI OverviewsをはじめとするAI検索の普及によるクリック率の変化と、ITreviewに掲載されているユーザーレビューがAI回答の参照元として機能している実態を整理しました。

後編では、GMO TECHの中原氏が実施した大規模なプロンプト分析の結果をもとに、ITreviewのレビューがどのような文脈でAIに引用されているのか、そしてAIに引用されやすいレビューや情報にはどのような特徴があるのかを解説します。

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この記事でわかること

  • 約4万6,000件規模のプロンプト分析から見えた、SaaS領域でAIが回答を組み立てる傾向
  • 生成AIに引用されやすいレビューと、引用されにくいレビューの違い
  • アワードの受賞実績や具体性の高いレビューを、AEOの資産として活用する方法

本セッションについて

本記事は2026年6月にオフラインで実施された「ITreview User Conference 2026」内のスペシャルセッション「AIに選ばれるSaaSへ ― レビューとAEOでつくる第三者評価戦略」の内容をレポートするものです。

本セッションでは「Ahrefs・GMO TECH・ITreviewが語る、生成AI時代に“推薦されるブランド”の条件」として、AhrefsとGMO TECHの2社を迎え、AI検索時代における第三者評価の活用方法についてディスカッションが行われました。

ITreview User Conferenceとは?

ITreview User Conferenceとは、アイティクラウド株式会社が主催する、IT製品・SaaSのレビュープラットフォーム「ITreview」に製品・サービスを掲載するITベンダー向けの招待制イベントです。

登壇者紹介

氏名 所属・役職 プロフィール
河原田 隆徳氏 Ahrefs
日本マーケティング統括
Waze(現・Google)、Wix、monday.comのテルアビブ本社で、日本市場向け製品の立ち上げ、ローカリゼーション、日本マーケティング戦略に約15年間従事。2024年にAhrefsの日本マーケティング統括に就任し、認知度向上、ユーザーエンゲージメント、市場拡大に注力している。
中原 卓馬氏 GMO TECH株式会社
執行役員
GMOインターネットグループのSEO事業を統括するとともに、検索エンジンおよびAIのアルゴリズムを研究する部門を兼任。社内では検索領域の専門家として知られている。
野島 哉(モデレーター) アイティクラウド株式会社
マーケティング部門部長
ITreviewのプロダクトマーケティングを統括。本セッションでは進行役を務めた。

前編を受けて:モデレーターが語った「新鮮なレビュー」の重要性

「実際に投影された生データを拝見し、『このように引用されているのか』と大変勉強になりました。継続的にモニタリングしなければ、1週間で回答が変わってしまうという点も、今日初めて認識しました。新鮮なレビューをどう集めるかも、一つのポイントになるのではないかと感じました」(野島)

「ITreviewを長年お使いいただき、Ahrefsも長く活用されている中原さんだからこそのポイントをまとめていただいています」と野島は述べ、進行を中原氏へ引き継ぎました。

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プロンプト設計の質を左右する「検索需要」

「どのようなプロンプトを設計するかは、非常に重要です。検索需要のないプロンプトは、現実のニーズを十分に反映していません。私がAhrefsを好きな理由の一つは、プロンプトに関連するボリュームを丁寧にデータベースへ蓄積している点です。AEO施策において、需要の規模を上司へどのように説明するか悩んでいる方は、一度トライアルで試してもよいのではないかと思うほど、他では得にくい機能だと感じています」(中原氏)

そのうえで、中原氏は「ただ、Ahrefsが好きすぎて宣伝したかっただけです」と笑いを交えながら、自身のパートへ話を進めました。

ITreviewは「第三者評価データベース」として機能している

ITreviewは「第三者評価データベース」。AIはレビュー本文だけでなく、カテゴリ、価格、製品情報なども参照している。

「事前に野島さんから、『ITreviewがAIにどのように扱われているか見ておいてください』と言われました。自社の『MEO Dash! byGMO』について、『評判はどうか』という文脈では、実は引用されていないのではないかと思っていましたが、まったくそんなことはありませんでした」(中原氏)

「ITreviewは、AIがSaaS製品について回答を生成する際の言語資産になっていると感じています。カテゴリの情報を調べる場面や、価格・プランを比較する文脈でも、レビューだけでなく、Q&AやFAQ、製品ページの情報まで参照元として使われています。第三者評価のデータベースとして、しっかり機能しているという印象を持ちました」(中原氏)

中原氏は、この気づきをもとに、自社のマーケティング担当者にも「ITreviewを本格的に活用しよう」と伝えているといいます。

引用されるのは、レビュー本文だけではない

AIが参照するのはレビュー本文だけではない。カテゴリ情報、価格情報、製品情報も、回答を組み立てる材料になる。

「実際に引用されているのは、レビューだけではありません。情報がきれいに整理されているからこそ、カテゴリ、価格、製品情報に加えて、どのような用途、業種、企業規模で使われているのかを、AIは回答を生成する際に詳しく見ています」(中原氏)

AIがレビュー本文以外に参照する情報は、大きく次の3つに整理できます。

情報の種類 AIが参照するポイント
カテゴリ情報 どのような用途、業種、企業規模で使われている製品なのかを判断する材料
価格情報 無料プラン、有料プラン、エンタープライズプランなど、費用やプランを比較するための情報
製品情報 主な機能、連携サービス、対応環境などの客観的な情報

製品ページを充実させる際のポイント

自社サイトだけを整えればよいわけではありません。ITreview上で、自社製品がどのカテゴリに分類され、価格や機能、レビューの中でどのように説明されているかも確認する必要があります。ITreviewの製品ページやFAQが十分に整備されていない場合は、見直す価値があるでしょう。

AI回答には、平均4.15の「推薦軸」が含まれる

AIは「初心者向けならA」「コスト重視ならB」「本格利用ならC」のように、複数の条件に分けて候補を推薦する。

「本日のセッションに先立ち、Ahrefsを使って、コンバージョンにつながりそうなキーワードを35業種にわたって調べました。抽出された約4万6,000件のプロンプトを解析し、AIがどのような切り口で製品を紹介するのかを、52ページのレポートにまとめています」(中原氏)

この分析はForbes JAPANでも記事として取り上げられたといい、スライドでは次のようにまとめられていました。

AIは、単一の製品を一律に1位として提示するのではなく「初心者ならA」「コストパフォーマンスを重視するならB」「本格的に利用するならC」「サポートを重視するならD」「多機能性を求めるならE」といったように、条件別に複数の候補を提示する傾向があるといいます。

なお、SaaS領域に限って見ると、推薦の切り口は平均3.27軸でした。

「『おすすめを教えて』と聞かれた際、AIは1社だけを紹介するのではありません。初心者向けならA社とB社、コストパフォーマンス重視ならC社とD社、本格的に利用するならE社とF社というように、複数の切り口から条件別に推薦する傾向があります」(中原氏)

ブランドにとって重要なのは「何位に表示されるか」だけではありません。特に「どの文脈で推薦されるか」と「どの条件の選択肢に入るか」が、より重要になります。

「回答全体で引用されているかどうかだけではなく、どの文脈で推薦されているかを見ることが重要です」(中原氏)

自社サービスがどのような条件や利用シーンで紹介されるかによって、その後のCVR(コンバージョン率)は大きく変わるためです。

SaaSでは「契約のしやすさ」も比較軸になる

SaaSでは、機能だけでなく、提供形態、プラン、利用人数、契約期間なども比較材料になる。

「SaaSを比較する回答では、契約のしやすさが非常に多く取り上げられています」(中原氏)

SaaS領域でAIが特に重視する比較軸として、次の4つが挙げられていました。

比較軸 具体例
提供形態 無料/有料、サブスクリプション/買い切り
プラン階層 Free/Standard/Pro/Enterprise
ユーザー数 1人/10人/チーム/全社導入
契約期間 月契約/年契約/長期契約・長期割引

「機能面では、スマートフォンやイヤホンと同じように、機能を軸に比較されます。ただしSaaSの場合は、それに加えて、契約や導入のしやすさも比較材料になります。AIは、料金ページ、FAQ、比較ページ、サポート体制のページなどをかなり参照しています」(中原氏)

「契約条件まで整理して初めて、AIに正しく説明されやすくなります。そこがSaaSの面白いところである一方、情報整備の手を抜けない部分でもあると、今回の分析を通じて強く感じました」(中原氏)

レビューは、AIが推薦理由を組み立てる材料になる

レビューは、AIが推薦理由を組み立てるための材料になる。重要なのは、件数だけでなく、内容の具体性。

「『使いやすかったです』『満足しています』といった内容は、推薦理由の材料にはなりにくいレビューです」(中原氏)

レビューの件数は重要ですが、件数だけでは十分ではありません。短く抽象的なレビューからは、AIが推薦理由を組み立てるための具体的な情報を得にくいためです。

引用されにくいレビュー 引用されやすいレビュー
「使いやすかったです」「満足しています」といった、抽象的な満足度の表明 導入前の課題、利用シーンや部門、活用した機能、導入後の成果・変化、向いている企業、注意点・改善点などが具体的に書かれた内容

「一方で、引用されているレビューを分析すると、導入前の課題や利用シーン、導入後の成果、さらに向き・不向きまで具体的に書かれているケースが多く見られました」(中原氏)

大切なのは、AIのためだけにレビューを書くことではありません。人間の比較検討に役立つ具体的なレビューは、結果として、AIにとっても推薦理由を説明しやすい情報になります。

アワードは「文脈」を伝える第三者評価資産になる

アワードを第三者評価資産として活用するには、評価の種類、理由、評価者の立場、掲載先・掲載文脈を明確にする必要がある。

「アワードを獲得したという事実だけでは、AIにはその意味が十分に伝わりません」(中原氏)

アワードは、「高く評価された」という事実だけでなく、「誰から、どのような理由で、どの領域について評価されたのか」まで説明することで、初めて第三者評価資産として機能するといいます。

文脈化する際に整理すべき要素は、次の4つです。

要素 示すべき内容
評価の種類 Leader、High Performerなど、どの評価カテゴリで、どの領域について高く評価されたのか
評価の理由 ユーザーの声をもとに、どのような強みや特徴が評価されたのか
評価者の立場 どのような属性や立場のユーザーから支持されているのか
掲載先・掲載文脈 自社サイト、営業資料、比較ページなど、どこで、どのような文脈で活用されているのか

「実際には、アワードの受賞をきっかけにAIから参照されるブランドと、そうでないブランドがあります。その違いの一つが、受賞理由や評価内容を、自社サイトのニュースやプレスリリースとして発信しているかどうかです。どのような理由で、どのような立場の人から評価されたのかという文脈まで伝えることで、『20代におすすめの〇〇を教えて』といった質問に対しても、AIから名前が挙がりやすくなります」(中原氏)

GMO TECH自身もITreview Grid Awardの受賞企業であり、自社で生じた変化について紹介しました。

「私たちのサービスでは、実際にAI上での言及が増えました。それをきっかけに、大手企業からお問い合わせをいただいたこともあります」(中原氏)

実際に、ITreviewのPR件数を昨年の同期間と比較すると、今年は約170%増加しており、各社がプレスリリース配信の重要性を認識していることがうかがえます。

GMO TECHが語る、明日から整えるべき第三者評価資産

明日から整えるべき第三者評価資産。「CVに直結するクエリを決める」「ITreview上の見え方を確認する」「レビュー依頼を具体化する」「アワードを文脈化する」の4つ。

中原氏は、自身のパートの締めくくりとして、次の4つのアクションを挙げました。

  • コンバージョンに直結するクエリを決める
    「おすすめ」「評判」「料金」「競合比較」など、資料請求や商談につながりやすい質問を10~20件選定する
  • ITreview上での見え方を確認する
    カテゴリ、レビュー、価格、比較ページなどで、自社製品がどのように説明されているかを確認する
  • レビュー依頼を具体化する
    導入背景、選定理由、利用機能、成果、注意点などが自然に集まるよう、依頼内容を見直す
  • アワードを文脈化する
    受賞カテゴリ、評価軸、評価された対象者や利用シーンを明文化する

「最初に整えるべきなのは、製品データだけではありません。“説明される理由”を支える第三者評価資産です」(中原氏)

GMO TECH自身も直面した「自社ページのメンテナンス不足」

「少し前のことですが、『ITreviewは非常に引用されやすい』と自分で説明しておきながら、自社のITreviewページをほとんどメンテナンスできていないことに気づき、急いで更新しました。ITreviewの価格ページはよく引用されるため、料金情報をできる限り具体的に記載しました。製品情報もQ&A形式に作り直し、より引用されやすい形にしています」(中原氏)

「現在は効果を計測中ですが、Ahrefsも契約しているので、自社ブランドがどのように引用されているのかを追っていきたいと思っています」(中原氏)

クロストーク:3社で深掘りした論点

クロストークでは、3社の視点を交えて議論するテーマとして、次の3つが用意されていました。

  • Q1.ITreviewをどのように位置づけていますか?
    レビュー収集/ブランド説明/営業資料
  • Q2.AIに引用されるレビューとは?
    導入背景/使い方/成果/注意点
  • Q3.アワードをどのように文脈化しますか?
    カテゴリ/評価軸/対象者/安心材料

このうちQ2に関連して、野島は河原田氏に、Ahrefsのレビューの中で引用されやすいものに共通点があるかを尋ねました。

「Ahrefsのレビューの中で、AIに引用されやすいものには、何か共通点がありますか?」(野島)

「私たちのレビューは、ITreviewの審査を通過したうえで掲載されています。一定の品質が保たれたレビューが集まっていることも、AIから参照される要因の一つだと思います」(河原田氏)

「私たちもユーザーミートアップを開催する際には、ITreviewさんからユーザーをご紹介いただくなどして、エンゲージメントの高い方にレビュー投稿をお願いしています。質の高いレビューをできるだけ増やす取り組みを、約1年間続けてきました」(河原田氏)

「レビューには十分な分量があり、非常にリアルで読み応えがあります。AIも、構造化された情報がなければ推薦できないという点では、人間と同じだと思います。自分が推薦したものを否定されると困るのと同じように、AIにも判断の根拠となる適切なデータを渡すことが、正しく評価されることにつながるのだと思います」(野島)

後編まとめ:明日からできるAEOの3つの具体的なアクション

セッションの締めくくりとして示された「明日からできる3つのアクション」は、次のとおりです。重要なのは、単なるAI対策ではなく、人間の比較検討にも役立つ情報へ整えることです。

1.コンバージョンに近いAI検索クエリを定点観測する

「カテゴリ名+おすすめ」「カテゴリ名+比較」「製品名+評判」「競合製品名+比較」など、重要なクエリを10~20件選定します。それぞれのAI回答について、自社と競合の言及状況、引用元、推薦されている文脈を継続的に確認します。

2.自社サイトを、AIにも人にも理解しやすい構成にする

用途、機能、対象者、料金・契約条件、サポート、向いている企業・向いていない企業などを明確に整理します。情報を単に増やすのではなく、ユーザーが比較しやすく、AIも回答の根拠として扱いやすい構成にすることが重要です。

3.具体的な言葉が集まるレビュー収集を設計する

導入背景、選定理由、利用している機能、導入後の成果、サポートへの評価、改善してほしい点などが自然に書かれるよう、レビューの依頼方法を見直します。

「プロンプト設計には難しさもありますが、コンバージョンに近いAI検索クエリを継続的に定点観測していきたいと考えています。また、せっかく蓄積したレビューですので、自社サイトや営業資料でも活用していただきたいです。最終的には、熱量のあるレビューが継続的に集まる仕組みにしていただければと思います」(野島)

AI検索が情報収集の入口として存在感を増す中、ITreviewに蓄積されたレビューは、単なる比較検討の参考情報から、AIが回答を組み立てる際の「言語資産」へと、その役割を広げつつあります。前編・後編を通じて紹介した内容が、自社のレビュー活用やAEO施策を見直すきっかけになれば幸いです。

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