業務効率化を目的として、ワークフローシステムの導入に踏み切る企業が増えています。正しく導入すれば大きなメリットを期待できますが、一歩間違うと導入コストが無駄になったり、現場の混乱を招いたりするなど、かえって損をすることもあるのです。
本記事では、ワークフローシステムの導入に失敗する理由、失敗のリスクを回避するために押さえておきたいポイントについて解説します。
なぜワークフローシステムを導入するのか
ワークフローシステムは、社内における申請手続きから上長の確認・承認までのプロセスをデジタル化して、効率よく遂行するためのシステムです。システムの導入によって、プロセスの簡素化が進み、従来よりも短いスパンで承認を得られます。
また、システムを導入すると承認プロセスを可視化できるので、確認が滞っている申請はないか、客観的に判断することも可能です。このように、ワークフローシステムは、業務をスムーズに遂行できるよう組織を改善できる効果が期待できます。
申請作業は全てデジタルで完結するので、オフィスに出向いて書類を記入したり、承認を得るために上司の元を訪問したりする必要がなくなるのもメリットです。紙を発行するコスト削減にもつながる点も、ワークフローシステム導入のメリットだといえるでしょう。
ワークフローシステムの導入に失敗する理由
ワークフローシステム導入時の判断を誤ってしまうと、システム導入が失敗に終わるリスクもあります。失敗する理由としては、大きく分けて以下の4つの要因が挙げられます。
自社の課題解決につながらない
まずは、ワークフローシステムの導入が、そもそも組織の課題解決に関係していないケースです。ワークフローシステムにはさまざまな種類があり、製品によって実装している機能が微妙に異なります。
例えば、申請者から承認者の手続きに問題があるのか、承認者から決裁者までの手続きに問題があるのかによっても、注目すべき機能は異なります。ペーパーレス化の流れを受けてワークフローシステムの導入を検討する場合でも、紙を使った業務の何が負担なのかがわからなければ、デジタル化の恩恵を受けづらくなります。システムが自社の要件に適しておらず、解決したい課題に必要な機能を実装していない場合、期待している導入効果は得られないでしょう。
高機能すぎて使いこなせない
ワークフローシステムが高機能すぎて、かえって使い勝手が悪かったというのもあり得る課題です。いろいろな機能を使えるのはメリットである反面、ユーザビリティに配慮した製品でなければ、業務をより困難なものとしてしまうリスクがあります。
多くの企業ではDXの推進が始まっており、ワークフローシステムの導入もその一環と言えます。しかし、DXを始めたばかりでデジタル活用に慣れていない会社の場合、何をどう操作して良いのかが分からず、誤操作などを招いて業務に支障をきたしてしまう可能性があります。
ワークフローシステムは、入力フォーム作成からワークフロー制御、権限管理に組織管理と、様々な機能を実装しています。デジタルツールに慣れていない企業が複雑すぎるシステムを導入すると、使いこなせずに失敗するリスクが高まるので注意しましょう。
連携機能が不足して効率化できない
ワークフローシステムは単体でも効果を発揮しますが、他のシステムとの連携によって、より高い業務効率化を実現します。ワークフローシステム選びにおいても互換性を重視しないと、データの共有が必要になるたびに転記作業やアプリの切り替え作業が発生し、現場のスムーズな業務遂行を阻害してしまいます。
例えば社内で運用しているコミュニケーションツールとの連携は、情報共有の円滑化には欠かせません。あるいは文書管理ツールとの連携も、申請業務を円滑にするためには必要な機能です。
ワークフローシステムと合わせて他のシステムの導入も考えている場合や、すでに自社で運用しているシステムを継続して利用する場合、互換性にも注意が必要です。
運用にスキルと時間が必要だった
デジタル活用が進んでいない組織の場合、新しいシステムに慣れるまでには時間がかかり、導入して間もない頃は成果を期待することはできません。短期的な成果を求めると期待していた結果が得られないこともあるため、ある程度時間に余裕のあるタイミングで導入しましょう。
ワークフローシステムの導入を成功させるポイント
失敗をおかさないためにも、ワークフローシステムの導入を進める際には、以下の点に注意することが大切です。
自社の課題を明確にする
まずは、ワークフローシステムを使って自社で解消したい課題を明確にしましょう。システム導入はあくまでソリューションの1つにすぎず、導入すればなんでも解決してくれるというわけではありません。
まずは、あらかじめ課題を明らかにした上で、ワークフローシステムの機能要件を確認します。漠然と機能要件を眺めても、それぞれの機能がどんな役割を果たすのかということまではイメージしづらいためです。課題をあらかじめ明確にし、その課題を解決するための手段として、システム選定を進めましょう。
無料トライアルの有無を確認する
無料トライアルは、期間限定でそのシステムの機能を無料で利用してみたり、導入の準備を進めたりすることができるサービスです。無料トライアルを活用すれば、導入に伴うコストやリスクを抑えて、自社に合う製品かどうかを確認できます。お試しでの導入で、製品が自社に合うものかどうかを確認しましょう。
導入に向けた研修や運用サポートを充実させる
ワークフローシステムの導入前には、社員向けの研修カリキュラムを構築しましょう。また、運用が始まった後のサポートを充実させられるよう備えておきましょう。
ワークフローシステムに限らず、新しいシステムの導入は現場に混乱を招きやすいものです。導入前に社員へ運用の研修を受けさせたり、ヘルプデスクを設置して困ったことがあれば相談できるように備えたりすれば、迅速に導入と運用を推進して成果を得られます。
もちろん、決裁ルートの確認やヒューマンエラーを回避するための要点の確認も、事前研修として不可欠です。知識不足やケアレスミスによって決裁手続きに失敗してしまうと、誤って申請を許可してしまったり、重大なコンプライアンス違反に発展したりする可能性もあります。
なかには、これらのサービスを提供してくれる事業者もあるので、アフターサポートの充実度で製品を選ぶのも選択肢の1つだと言えます。
自社に適したワークフローシステム選びを実現しよう
ワークフローシステムは、使いこなせれば便利なサービスではあるものの、漠然と導入するだけで問題を解決できるわけではありません。事前に性能要件と自社の課題をすり合わせておき、導入効果を期待できる製品を正しく選ぶことが大切です。