労務担当者として勤務することになり、管理内容を勉強している人も多いでしょう。このとき、よく間違われるのが「労務管理」と「勤怠管理」の業務内容です。2つの管理業務が別物だと考え、複数人で分担して作業している企業も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、労務管理と勤怠管理の違いを詳しくご紹介します。労務管理の必要性や労務管理システムを導入するメリット、注意点も解説しますので、基礎知識の把握、労務作業を効率化する際の参考にしてください。
労務管理と勤怠管理の違い
結論として、労務管理と勤怠管理は別物の管理業務ではなく、ひとまとめに「労務管理」として表せます。つまり、勤怠管理は労務管理の作業のひとつであり、別物として管理するのは非効率です。具体的に同じ業務であることを理解しやすいよう、以下に作業内容を整理しました。
- 労務管理:給料や福利厚生、労働管理を行う
- 勤怠管理:労働時間などを管理する
上記のうち、給料を計算する労務管理では、勤怠管理で準備した労働時間などの情報を利用します。どちらの作業も企業の基幹業務であることから、労務管理としてひとまとめで考えられているのです。
労務管理が必要な理由
労務管理では、次のような管理を実施します。
- 勤怠
- 給与計算
- 社会保険の手続き
- 年末調整の準備・提出
- 福利厚生
- 人事関連規程
- 安全衛生
各項目は、従業員の働きやすさを生み出すために実施します。たとえば、従業員は利益を生み出す業務を行い、労務担当者は従業員をサポートするというイメージです。企業経営を行うのなら、必ず労務担当者を配置しましょう。労務管理が必要な理由を2つご紹介します。
従業員の給与を正確に管理する
労務管理では毎月、従業員の給与計算を行います。事前に勤怠管理を行って用意したデータを用いて、各従業員の条件に合う給与を算出する流れです。このとき、給与計算を従業員に任せてしまうと、次のような支障が生まれます。
- 従業員の給与計算ミスを把握できない
- 勤怠情報がブラックボックス化する
従業員各人が自身で給与計算を行うとミスが発生しやすいことはもちろん、経営者が把握しきれないため、虚偽報告が生まれる恐れもあるでしょう。安全かつ正確な給与計算を実施し、トラブルを起こさないためにも労務管理が必要なのです。
従業員が業務に集中できる環境をつくる
労務管理部門を設けずに、各従業員が労務管理を行ってしまうと、次のような問題が発生します。
- メイン業務の時間を割いて作業する必要がある
- 手続きや申請などの作業を自分で行わなければならない
- メイン業務の時間を取れずに利益率が落ちる
労務管理を個人化すると多大なミスが発生します。管理のずさん化も免れません。さらには、メイン業務に従事する時間が減るため、利益率が落ちてしまうこともあるでしょう。
また、確実に理解しておかなければならないのが「労働基準法」です。違反すると罰金や懲罰を受けることもあるので、確実に労務管理を実施しましょう。
労務管理システムを利用する3つのメリット
労務管理では、企業で働く従業員の情報をすべて管理しなければなりません。従業員数が多いほど作業量が増すことはもちろん、管理も複雑化するでしょう。
そこで、労務管理の負担を減らして効率的に作業を行いたいのなら、労務管理システムを導入してみてはいかがでしょうか。近年では、労務管理の自動化や効率化に役立つシステムが多数登場しています。システムのメリットを3つご紹介しますので、自社で実施する労務管理の内容に当てはめつつ、導入を検討してみてください。
勤怠管理を含む幅広い労務情報を管理できる
労務管理システムがあれば、勤怠管理を含む労務業務の情報をすべて管理できます。たとえば、従業員の情報として、役職や手当の内容、年末調整で必要事項などを管理可能です。
システムに組み込まれた機能を用いれば、従業員情報を登録するだけで、気軽に資料作成や手続きの準備を行えます。また、必要な情報を抽出したり、過去のデータを長期管理したりと、労働基準法に則った労務管理を行えるでしょう。
給料計算をほぼ自動化できる
労務管理システムには、給与計算を自動化する機能が備わっています。勤怠管理で収集した労働時間をベースに、各従業員の条件に合う給料や税金、保険料を自動計算してくれるので便利です。
従来の手入力や手計算の必要がなくなることから、勤怠管理の内容チェックが終われば、給与明細までの作業手順をショートカットできます。計算をすべてシステムに任せられるため、入力ミスを防止して従業員とのトラブルを回避できます。
労務担当者の負担を削減できる
労務管理システムを導入すれば、従来の労務担当者の負担を削減できます。たとえば、労務担当者は月末や年末などに忙しくなるなど、年間の労働時間に差があります。また、従業員の入れ替わりや制度の変更などに伴い、多大な調整作業が必要です。
一方、労働管理システムがあれば、従業員の基本情報を登録するだけで簡単に作業が終わります。法律や制度の変更は、システム自体が自動でアップデートされることから、自身で細かい調整を行う必要もありません。
労務担当者の負担を減らして別の作業に集中できるため、人件費の削減にも効果を発揮するでしょう。
労務管理システムの注意点
便利に利用できる労務管理システムですが、利用における注意点が2つあります。システムの導入をスムーズ化してトラブルなく活用するためにも、ぜひ参考にしてください。
従業員に対する事前研修が必要となる
労務管理システムは、初心者でも利用しやすいUI(ユーザーインターフェース)を搭載していますが、基礎知識がなければ操作できません。メイン機能を覚えることはもちろん、自社で必要な操作を担当者が把握する必要があります。
もし複数人の労務担当者でシステムを利用するのなら、運用前に事前研修を行いましょう。特に重要なのが次の研修です。
- 操作の確認
- システム導入前との変更点の共有
近年は、クラウドで利用できる便利な労務管理システムも登場しています。運用後に作業が重複するなどのミスを防止するため、担当者ごとに情報共有を行ってください。
労務管理システムをルール化する必要がある
労務管理システムを利用するなら、承認作業や作業フローのルールを決めておきましょう。労務管理の作業を効率化できる一方、ちょっとした入力ミスが出力内容を変えてしまう場合があります。
内容チェック・調整が必要になるため、段階的なチェックルールを定めたり、マニュアルを準備したりしてみてはいかがでしょうか。特に複数人で労務管理を行う場合は、管理の混同を避けるために、初期段階でルール化するのがおすすめです。
労務管理と勤怠管理の違いを理解したら必要な製品を探してみよう
「労務管理」「勤怠管理」は別物だと思われがちですが、実際には労務管理の一部として勤怠管理を行う必要があります。どちらも労務担当者の作業であり、作業負担がかかる場合もあるでしょう。そこで、効率よく労務管理を実施したいのなら、労務管理システムを導入してみてはいかがでしょうか。複数の製品を比較検討して、自社の労務管理に合うシステムを探してみてください。