IaaSやPaaS、SaaSは名前が似ており、同じサービスだろうと思っている人も多いでしょう。全てクラウド上で提供される点では同じですが、受けられるサービスについては全く異なります。今回は、IaaSやPaaS、SaaSの違いについて、身近なスマートフォンに例えて解説します。

IaaSとはどういう意味?

IaaSとは「Infrastructure as a Service」の略語で、サービスとして基盤を提供するという意味です。アイアースもしくはイアースと読みます。クラウド上のコンピュータリソースを借りることで、まるで自社専用のコンピュータを所有しているかのように利用できます。

一般的に従量課金制を導入しているので、使用リソース量に応じたコストがかかります。そのため、オンプレミス型のようにリソースを使用しない待機時間のロスが発生することはなく、必要なときに必要なリソースだけを確保できます。繁忙期にはリソースを強化して、閑散期にはコストを抑えることでムダが発生しません。

PaaS・SaaSとはどういう意味?

続いて、IaaSと名前のよく似ているPaaS・SaaSの意味について解説します。

PaaSとはどういう意味?

PaaSとは「Platform as a Service」の略語で、サービスとしてプラットフォーム(OS)を提供するという意味です。パースと読みます。ハードウェアのリソースを貸し出すIaaSとは違い、PaaSではWindowsやMacといったOSを搭載したシステムをクラウド上で貸し出すイメージだと分かりやすいでしょう。

貸し出されるOSやミドルウェアはすでに決まっているので、プラットフォームに適したアプリケーションでなければPaaSで作動できません。

SaaSとはどういう意味?

SaaSとは「Software as a Service」の略語で、サービスとしてソフトウェアを提供するという意味です。サースもしくはサーズと読みます。PaaSではOSを貸し出しますが、SaaSはユーザーにプラットフォームやリソースは貸し出しません。SaaSでは、アプリケーションをクラウド上で貸し出すイメージだと考えると分かりやすいでしょう。

たとえば、経理会計のSaaSや人事評価システムのSaaSなど、実際にエンドユーザーが利用するサービスをクラウド上で提供するのがSaaSです。

IaaSとPaaS・SaaSの違いは?

それぞれの違いは、クラウド上でスマートフォンを使うイメージに例えると分かりやすいでしょう。

IaaSでは、スマートフォン本体を貸し出しますが、AndroidOSは搭載されていないので自分自身でOSをインストールしなければなりません。PaaSでは、AndroidOSも搭載したスマートフォンを貸し出すので、自分自身でアプリを自由にインストールできます。SaaSでは、Androidに搭載したアプリだけを貸し出すので、スマートフォンは貸し出しません。

つまり、IaaSではOSを選ぶところから自由に開発でき、PaaSでは決められたOS上で動作する開発を進められます。SaaSではそもそも開発はできません(開発に特化したSaaSは除く)。

参考にしたいIaaSの導入事例

実際にIaaSを導入した企業の事例を紹介します。

150日間で10,000台のマシンに拡大したCoca-Cola Freestyle

Coca-Cola Freestyleは、100種類以上のフレーバーを味わえる自動販売機のタッチレス注文システムにAWSのIaaSを採用しました。

QRコードでスマホとディスペンサーを接続するこのシステムは、プロトタイプの開発から150日間で10,000台の自動販売機を稼働させるほどスピード感のある拡大を見せています。

最初の数台は低スペックの開発から始めて、10,000台分のシステムを稼働させるほどのハイスペックなリソースになるまで全てIaaS上で稼働させています。プロジェクトの規模に合わせてリソースを拡大できるIaaSのメリットを活用した導入事例だと言えるでしょう。

参考:https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/coca-cola-freestyle/?hp=tile&tile=customerstories#:~:text=Coca%2DCola%20Freestyle%20%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6,%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

オンプレミスとレガシーデータベースから脱却したExpedia

Expedia Groupは、20を超える予約サイトと70ヶ国以上80種類超の通貨に対応したオンライン旅行プラットフォームにIaaSを導入しました。

それまでは、商用データベースベンダーを用いたオンプレミス型でサービスを提供していました。しかし、業務が拡大するにつれてトランザクションが増えた結果、消費者から集金した代金をホテル・航空会社などに送金するバッチ処理に24時間以上を要していたのです。

AWSのIaaSを活用してJavaマイクロサービス主導のアーキテクチャに移行したところ、処理時間は2.6 秒まで短縮され、旅行代金の支払いをほぼリアルタイムで完結するシステムを実現しています。オンプレミス型からIaaSに移行したことで処理速度が格段に向上した事例です。

参考:https://aws.amazon.com/jp/solutions/case-studies/expedia-aurora-case-study/?hp=tile&tile=customerstories

IaaSを使って必要なシステムリソースを確保しよう

IaaSを利用することで、高性能なCPUやストレージに独自のシステムを構築できます。必要なリソースを必要なときだけ確保することができるため、オンプレミス型のように閑散期のリソースの待機時間をムダにすることもありません。

開発初期はわずかなリソースを借りてコストを抑え、プロジェクトが拡大するにつれて必要なリソースを増やすといったこともできるでしょう。IaaSを導入することでムダのないシステムリソースを確保できます。

この記事の執筆

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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