情報セキュリティの運用とは、会社や組織で使用しているシステムが常に正しく継続的に利用できるように管理することです。近年サイバー攻撃の多様化などにより、情報セキュリティは、業界・業種問わずどの企業においても重要視されています。
本記事では、情報セキュリティ運用の目的や手法、プロセスを解説します。情報セキュリティが抱える課題や課題の解決方法についてもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
情報セキュリティ運用を行う目的
情報セキュリティ運用を行う目的は、セキュリティの3要素と呼ばれる要素を保守するためです。セキュリティ3要素は英単語の各頭文字を取って、CIAと呼ばれることもあります。
機密性(Confidentiality)
機密性とは、使用権限を付与された人だけがアクセス・利用できる状態を指します。機密性を保つためには、アクセス権限の設定や2段階認証の導入が有効です。
また、システム内の脆弱性をあらかじめ調査・発見し、悪意のある第三者の侵入を防ぐために、ペネトレーションテストや脆弱性診断を実施すると良いでしょう。
完全性(Integrity)
完全性とは、システム内の情報が改ざんされておらず、正しい状態であることを指します。特に多いのが、データの改ざんです。悪意を持った第三者がシステムのデータベースに入り込み、システムやサイトにログインする際のパスワードやIDを改ざんするといった被害も多発しています。
データが改ざんされると、顧客情報流出の危険性が増して信頼を失う可能性があります。完全性を保つためには、定期的にセキュリティをアップデートするのが効果的です。また、万が一改ざんの被害にあった場合は、すぐにシステムを停止して早急に対応しましょう。
可用性(Availability)
可用性とは、アクセス権限を持つユーザーがいつでもスムーズにシステムを利用できる状態を指します。可用性を脅かす存在は、ハードウェア的脅威とソフトウェア的脅威の2種類です。
ハードウェア的脅威は、地震や火事、津波といった自然災害が該当します。対策としては、データの二重バックアップやサーバーの分散管理が効果的でしょう。ソフトウェア的脅威は、サイバー攻撃やシステムの不具合トラブルが該当します。対策としては、ファイアウォールの導入や人的ミスを減らすためにチェックシートを導入するのが効果的です。
情報セキュリティ運用のプロセス
情報セキュリティ運用のプロセスは、計画、実行、評価、対策のPDCAサイクルからなります。
- 計画(Plan)
どのような問題を解決するべきか、現状を分析して計画を立てます。
- 実行(Do)
計画を実行します。
- 評価(Check)
実行結果をもとに、想定した結果通りにセキュリティが働いているか評価します。
- 対策(Action)
評価で見つかった問題に対する対策を検討します。
これら4つのプロセスを繰り返すことにより、セキュリティの脆弱性や課題の改善に努めます。
情報セキュリティ運用の手法
情報セキュリティ運用を行うにあたっては、様々な手法があります。
情報セキュリティ運用ツールを導入する
情報セキュリティ運用ツールとは、業務で使用するPCやシステムをサイバー攻撃やウイルスなどの脅威から守るためのツールです。情報セキュリティ運用の効率化につながります。
無停電電源装置(USP)を設置する
無停電電源装置の導入により、地震や津波などの自然災害が発生した際にシステムがシャットダウンするまでの猶予時間を設けられます。これにより、データベースの破損を防げます。
データを二重にバックアップする
ハードウェア的脅威、ソフトウェア的脅威どちらの脅威においても、データが破壊される危険性は存在します。そのため、データは必ず二重にバックアップしておきましょう。二重バックアップすることにより、1台のデータベースが破壊されても残り1台のバックアップを利用してデータの復元が可能です。
情報セキュリティ運用を行う上での課題
情報セキュリティ運用を行うにあたって、様々な課題が発生します。本項目では、情報セキュリティ運用を行う上での課題を3点ご紹介します。
課題1:情報セキュリティ運用には、工数がかかる
ログの取り方や情報セキュリティシステムの設定方法にもよりますが、稼働中のシステムは日々様々なアラートを検知しています。これらすべてのアラートを解決するためには、膨大な工数がかかります。
課題2:情報セキュリティ運営を行える人材の育成と確保が難しい
情報セキュリティ運用には、専門的な知識と経験が必要です。これらの知識や経験はすぐに身につくわけではないため、多くの企業では技術者不足が深刻な問題となっています。
課題3:情報セキュリティ運営にはコストがかかる
情報セキュリティ運用における主なコストは、「ツール導入・運用コスト」「人材コスト」の2点です。規模の大きいシステムであればあるほど、コストも大きくなる傾向にあります。
課題の解決方法
情報セキュリティが抱える課題を解決するためには、以下の解決方法が有効です。
解決方法1:自社に適した情報セキュリティツールを導入する
情報セキュリティツールを導入する際には、自社に適したツールを導入することが非常に重要です。そのためには、情報セキュリティ運営を行う際に自社で抱えている課題の洗い出しを行った上で、どの課題を優先して解決すべきか検討しましょう。
解決方法2:情報セキュリティツールの設定を見直す
システムの異常を知らせるアラート機能は、過度に検知されたり誤検知されたりする可能性があります。情報セキュリティツールの設定を見直し、必要なアラートだけを取得しましょう。
解決方法3:情報セキュリティ運用の自動化を図る
情報セキュリティ運用ツールの中には、セキュリティ運用の自動化を図るツールもあります。自動化により、工数の削減が期待できます。
解決方法4:アウトソーシングする
情報セキュリティ運営における人材不足を抱えている企業は、情報セキュリティ運用の一部業務をアウトソーシングするのがおすすめです。現在では、情報セキュリティ運用を代行してくれる企業が多く存在します。社外企業に任せても問題ない情報セキュリティ運用作業を検討し、積極的にアウトソーシングしていきましょう。
ただし、情報セキュリティ運用全体を丸ごとアウトソーシングするのはおすすめしません。社外にセキュリティ運用を全てアウトソーシングした場合、自社でセキュリティの全体像が把握しにくくなります。また、セキュリティ運用をアウトソーシングする企業を選定する際は、企業や担当者の見極めを入念に行いましょう。実績のある有名企業でも、担当によっては満足な成果を得られない場合があります。アウトソーシングの契約を結ぶ前に、一度担当者と直接顔合わせを行うと企業選びに失敗するリスクを軽減できます。
正しい情報セキュリティ運用を行おう
情報セキュリティ運営を行う際は、自社の課題を適切に把握し、適切な運営を行う必要があります。本記事を参考にして、正しい情報セキュリティ運営を行いましょう。