総務・労務業務の負担やコストで悩んでいる企業は多いでしょう。作業範囲が広く、簡単に対処できず困っている担当者も少なくないはずです。それなら、総務・労務業務の効率化に役立つHRテックの導入を検討してみてください。

本記事では、HRテックの概要、総務・労務業務に導入できる4つのシステムをご紹介します。HRテックの導入ステップも解説しますので、総務・労務業務の効率化に悩んでいる人は参考にしてください。

総務・労務業務に役立つHRテックとは?

HRテックとは、Human Resource(人事)とTech(テクノロジー)を掛け合わせた造語で、文字通り人事・労務業務に導入できるテクノロジーのことをいいます。次に示す最新技術を用いて、人事・労務が抱える課題を解決に導く技術として注目されています。

  • ビッグデータ
  • クラウド
  • IoT
  • AI

幅広い作業を行う人事・労務業務では、莫大な量の資料やデータを扱います。人力での対応に限界があることはもちろん、属人化によってブラックボックス化しやすいのが特徴です。

HRテックがあれば、バラバラに管理しているデータを一括管理して、データ収集・整理・分析などの作業を高速化できます。ビジネスパフォーマンスを向上させる効果があることから、多くの企業が導入を進めています。

総務・労務業務が抱える課題

ここでは、総務・労務業務の実情を踏まえつつ2つの課題をご紹介します。働き方改革やIT化などと関係するポイントなので、自社の課題に当てはまるのか確認してみてください。

「何でも屋」として莫大な業務を抱えてしまう

現在の日本では、総務・労務業務に明確な線引きがありません。厚生労働省が公開している「事務職系職種」の情報をみると、ある程度分類されていますが「何でも屋」という風に扱われているのが実情です。

書類作成はもちろん、人事業務、処理業務など作業量が幅広いことから、莫大な業務を抱え込んでしまう人がいます。企業規模が大きいほど負担が増えていくため、働き方改革が求められる部署だといえるでしょう。

少数精鋭であるため業務が属人化する

総務・労務業務に携わる人材は、他の部署に比べて少数精鋭になりがちです。また、人材の入れ替わりが少なく、長期間働く担当者も多いでしょう。この働き方は従業員個人にとって魅力的な面があるものの、作業内容が属人化しやすいというデメリットもあります。

特に、ルール決めが明確に行われていない企業では、属人化の傾向が強まるのが特徴です。属人化が進むと、業務内容がブラックボックス化したり、担当者の引継ぎが困難になったりするのが課題です。

総務・労務業務に導入できる4つのHRテック

次に、総務・労務業務を効率化できる4つのHRテックについてご紹介します。各種システムには、データの自動化・可視化といった魅力があるため、自社の課題を解決できそうなシステムをチェックしてみてください。

労務管理システム

労務管理システムは、企業全体で必要となる「労務業務」を効率化できる機能を搭載しています。主な機能は次のとおりです。

  • 給与明細の発行
  • 年末調整
  • マイナンバー管理
  • 入退社の手続き
  • 雇用契約書の通知・管理

システムに従業員を登録しておけば、各種手続きに必要な情報を一括管理できます。また、一度入力した情報はクラウド上で永続的に保存でき、場所を問わずいつでも確認できるのがメリットです。

管理画面上から自動で整理された情報をチェックできることも含め、人的ミスを削減できます。各種管理・手続きを電子化できるため、社内のペーパーレス化を推進できるのも魅力です。

勤怠管理システム

勤怠管理システムは、従業員の「業務状況」を一括管理できる機能が充実しています。具体的には、以下のような機能です。

  • 出勤・退勤の打刻
  • 出勤・退勤状況の確認(グラフ化)
  • 有給休暇申請および申請状況の可視化
  • 打刻忘れアラート

従来の勤怠管理では、従業員がタイムカードを利用してアナログ的に出勤・退勤を打刻していました。また、タイムカードのデータを総務・労務担当者が手入力している企業も数多くあります。

勤怠管理システムがあれば、従業員が打刻した情報が自動で収集・整理され、総務・労務業務の大幅なコスト削減を実現できます。また、勤務状況が労基法に基づいているのか即座にチェックできるのもメリットです。従業員の入力忘れを防止するアラート機能なども搭載しているため、入力・確認といった作業を効率化できます。

給与計算システム

給与計算システムは、従業員の「給与に関わるすべての作業」をシステム内で一括管理できるのが特徴です。主に次の機能を利用できます。

  • 自動給与計算
  • 計算方法のカスタマイズ
  • 振込口座登録
  • 勤怠管理システムとの連携

システムに従業員情報を設定すれば、役職や経験年数を管理したり、条件に合わせて自動的に給与計算したりできます。また、手当や計算方法などを任意でカスタマイズして、自社独自の給与計算システムに合わせることも可能です。

勤怠管理システムと連携できるシステムも多く、従業員が打刻した勤怠データをベースに、自動で給与計算まで実施します。連携機能を活用すれば、ほとんど操作不要となるため、給与計算にかかっていた作業を大幅にコストダウンできます。

健康管理システム

健康管理システムは、従業員の心と身体の健康維持に役立つシステムです。長期的に働いてもらうために、近年多くの企業が注目しています。主な機能は次のとおりです。

  • 健康診断の予約・管理
  • 労働基準監督署に提出する書類作成
  • ストレスチェック
  • オンライン面接

厚生労働省が公開した「地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会」によると、近年の日本では、精神疾患を有する患者数が年々増加していることが分かります。

出典:地域で安心して暮らせる精神保健医療福祉体制の実現に向けた検討会|厚生労働省

ストレスやうつ病の影響で会社を辞めてしまう人材も多く、企業でもメンタルケアが求められるようになりました。健康管理システムを導入することによって、従業員の精神状況をチェックしやすくなり、必要なメンタルケアを検討できます。

HRテックの導入ステップ

現在、HRテックの導入を検討している企業も多いでしょう。しかし、何も考えずに導入してしまうと、自社が抱える課題を上手く解決できない場合があります。

そこで最後に、HRテックの導入手順を4ステップでご紹介します。余計な費用を使わずに総務・労務業務を効率化できる手順なので、ぜひ参考にしてください。

課題を抽出する

総務・労務業務といっても、抱えている課題は異なるでしょう。まずは、自社が抱える課題を次の方法で抽出してみてください。

  • 作業量が莫大で後回しになりがちな業務を抽出する
  • 人件費が多く発生する業務を抽出する
  • 担当者によって属人化している業務を抽出する

上記の項目は、どれも課題として挙がりやすい要素です。あらかじめ課題を抽出できれば、自然と解決策を導きだせるので、事前準備として実施してください。

製品を比較検討する

抽出した課題をベースに、製品を比較しましょう。製品選びを行う際には、次の項目を押さえるのがポイントです。

  • 自社の課題を解決できる機能
  • 製品のライフサイクルコスト

機能が充実していることは大切ですが、予算オーバーや無駄な機能の導入を避ける必要があります。まずは自社の課題を解決できる製品を3つほど抽出し、各製品の費用をライフサイクルで比較してください。

テスト導入を行う

製品を決定できたら、まずは無料体験やデモ体験を利用してテスト導入を実施しましょう。テスト導入を行うべき理由は次のとおりです。

  • 使いやすさを確認する
  • 機能が自社の目的と合っているのか確認する

使いやすさや解決の可否を確認する前に導入してしまうと、大幅なコストを要するので注意してください。

本格導入を行う

テスト導入で自社の抱える課題を解決できることが確認できたら、最後に本格導入を行いましょう。また、本格導入後に、さらに便利なHRテックが登場する可能性もあります。システムの導入後は、定期的に移行計画なども考えつつ、総務・労務業務の効率化を検討してみてください。

HRテックは今後の総務・労務業務の効率化に欠かせない要素

総務・労務業務の中で、作業量や作業コストに課題を感じているのなら、業務効率化に役立つHRテックを導入してみましょう。自動化処理、連携機能を用いることで、労務管理はもちろん、勤怠管理や給与計算、健康管理など、効率化できるポイントが数多くあります。課題を解決することにより、企業利益を生み出せるシステムもあるため、この機会にHRテックの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

この記事の執筆

ももひき

ライター

WEBライター(ライティング、編集、構成、SEO対策)やイラストレーター(キャラクター、WEB画像)として活動するフリーランスライター。現在はグルメ・IT・仮想通貨ジャンルを中心に執筆、福岡県で活動中。

この記事の監修

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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