企業のグローバル化が進んだことで、今や住んでいる国や地域に関わらず、自由にビジネスを立ち上げたり、商品を購入したりすることができるようになりました。そんな国籍を問わない企業活動や消費活動を支えているのが、世界中で高度に構築されているサプライチェーンマネジメント(SCM)です。

SCMはあらゆるモノの流れに大きく関わっていますが、具体的にはどのような領域を指す言葉なのでしょうか。本記事ではSCMの定義や、類義語でもある物流、そしてロジスティクスとの違いなどについて解説します。

サプライチェーンマネジメント(SCM)の定義

SCMは、供給者が製品を流通させ、最終的な消費者の手に渡るまでのモノの流れを、統合的にマネジメントする取り組みのことを指します。SCMの概念が普及する以前の流通は、製造業者、物流業者、卸売業者、小売業者など、各企業が個々に物流網に関与して消費者の手に届ける仕組みが一般的でした。

しかし技術革新や市場のグローバル化が進んだことで、従来の別個に対応する方式では、生産性やサービスの改善に限界が出てきてしまいました。そこで幾度とない改善を経て登場したのが、SCMの概念です。流通のプロセス全体を統合的に管理し、最適化を進めていくことが最も効率的であるという結論に達したのです。

SCMは現在、大企業において実践されている経営手法の1つとして広く認知されつつあります。国内でも、日系企業による採用が進んでいます。

物流とロジスティクスの違い

SCMと似たような言葉として、物流やロジスティクスというものが挙げられます。いずれも製品を流通させる取り組みのことを指す言葉ですが、それぞれのニュアンスは微妙に異なります。

まず物流という言葉についてですが、これは消費者へモノを運ぶ過程における活動全般を指す言葉です。どのように製品が輸送されるのかはもちろん、消費者の手に届くまでの在庫保管などのプロセスも物流に含まれます。

一方のロジスティクスですが、こちらは調達から生産、そして流通から販売に至るまで、一連の全てのプロセスを管理することを指す言葉です。流通計画や在庫管理、輸送の手配など、対応業務は多岐に渡ります。

物流とロジスティクスの大きな違いとしては、まず言葉の抽象度が異なります。物流はあくまで製品を流通させる過程のことを指しますが、ロジスティクスは生産過程なども含めた言葉なので、物流を内包した表現であることが特徴です。

ロジスティクスは物流も含めた、モノの流れ全体をコントロールするための管理業務を指す言葉です。単にモノの流れを指す物流とは、意味合いが異なっている点にも注目しておきましょう。

ロジスティクスの役割・メリット

ロジスティクスの整備によって、企業は多くの恩恵を受けることができます。たとえば、在庫や生産量の適正化は、ロジスティクス整備の大きなメリットだと言えます。必要十分なモノの量を正しくコントロールすることで、機会損失のリスクを軽減できます。また、在庫を必要以上に抱えてしまうことで生まれるコストの発生も回避できます。

さらに、物流コストそのものの削減や、現場の業務効率化にも貢献します。不要な在庫を過度に移動させる必要がなくなるので、そのための輸送費を削減したり、現場の在庫管理やピッキング作業の負担を回避したりできます。

あるいは、営業担当者の業務効率化にも役立つのがロジスティクスです。営業担当者が在庫管理を行う必要がなくなり、バックオフィス担当者に任せてコア業務の営業活動に従事できるようになります。

サプライチェーンマネジメント(SCM)とロジスティクスの違い

ロジスティクスは物流に関わる広い範囲の業務管理を指す言葉ですが、ここで気になるのがSCMとの違いです。SCMもまた流通に関する幅広い業務の管理を指す言葉であるため、一見するとロジスティクスとSCMは同義であるようにも思えます。

結論から言うと、SCMはロジスティクスよりもさらに広範なスケールで効率化を目指す取り組みで、規模の大きな表現です。具体的な相違点としては、社内で完結しているか、社内外を問わないスケールか、と言うところが挙げられます。

ロジスティクスは、基本的に会社が担当している業務範囲の中における一連の流通プロセスのマネジメントを指します。一方でSCMは、企業という垣根を超えて流通の最適化を図るマネジメント手法です。これまでは自社の業務範囲外であった領域にも、改善施策を施します。

そのため、ロジスティクスとSCMでは、その取り組み内容に違いが現れる点は覚えておくと良いでしょう。

ロジスティクスが抱える課題

SCMという言葉が注目されるようになった背景としては、ロジスティクスが抱える課題が表面化していることが挙げられます。たとえば、少子高齢化による働き手の不足です。熟練労働者が高齢化により引退し、少子化で新しい労働者を探すことが困難になっています。その結果、従来通りのマンパワーを発揮することが難しくなっています。

また、人材不足は全業界で慢性化しており、人件費が占める割合も大きくなっています。情勢不安や燃料費高騰に伴う物流コストの高騰も相まって、従来のビジネスモデルを維持することは難しくなってきました。

その一方、EC市場の急激な活性化により、物流そのものの需要は現在、急激に高まっています。労働者の確保を今まで通り行うのが難しくなっていながら、物流需要の増加に対応しなければならない現状は、業界関係者にとっては難しい状況であると言えるでしょう。

ロジスティクスが課題を乗り越えるために必要なこと

SCMという言葉に注目が集まっているのは、事業のグローバル化が進んで物流の需要が急激に高まったことにより、既存のロジスティクスのあり方に限界が出ていることが理由として大きいでしょう。

ロジスティクスの重要性は高まっていますが、幸いなことに現在の課題を解消するためのソリューションも次々と登場しています。大企業だけでなく、中小企業でも採用しやすいロジスティクス向けのパッケージ型システムの導入、現場におけるロボットの導入などによって、デジタル化・機械化を推進することは多大な恩恵をもたらすはずです。

あるいは、業務のアウトソーシングも直近の負担を減らす上では役に立ちます。課題に合わせて使えるサービスをフル活用し、会社に成長をもたらしましょう。

この記事の執筆

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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