既に国内企業の間で広く普及していると言われるRPA。しかし、自社でRPA導入を検討する際にはもう少し日本の導入事情を詳しく知りたいというのが本音だろう。実際、どのくらいの割合の企業がRPAを導入しており、また特にどのような業種で普及しているのだろうか。また、Excelのマクロやシステム開発との違いや期待される効果はどのようなものがあるのか? RPAにまつわるよくある疑問を、実際の事例を踏まえながら検証していこう。

 

RPAの業務自動化事例――どの業界・どんな業務で活用されているのか?

国内におけるRPA導入実績は確実に増加している。2019年1月時点でのMM総研が調査したRPA導入率の調査では32%となっており、2018年6月の前回調査時の22%から約半年間で10ポイントも伸びている状況だ。恐らく、2019年の1年間にさらに導入率が向上しているのは間違いないだろう。

MM総研 RPA国内利用動向調査(2019年1月調査)より

また同調査によると、企業規模別のRPA導入率では、年商1,000億円以上の大手企業が39%、年商1,000億円未満の中堅・中小企業では27%となっており、大手企業が先行しながらも、中堅・中小企業の間でもRPAは導入が進みつつあるのが分かる。業界別にみると、最もRPA普及率が高いのが金融で44%となっている。

(参照:https://www.m2ri.jp/news/detail.html?id=336)

 

RPA導入が進んだ業界は? 国内のRPA導入変遷を辿る

2016年頃までは、国内企業の間でRPAを導入しているのは大手銀行や保険会社など金融機関がほとんどだった。そうした先行する企業が何社か現れ、その後、同じ金融の同業他社も追いかけるように導入して拡がっていった。これが2017年上期になるとサービス業でのRPA導入が目立ちはじめ、企業数の多さやRPA活用による効果の大きさ(時間単価でサービスを提供するビジネスであること)もあって導入実績は金融業を上回るようになる。

そして、2017年下期から導入実績が最も目立つようになったのが製造業だ。とはいえ、特に製造業を中心にRPA導入が進んだというわけではなく、全産業で同じようにRPAの普及が始まった結果、国内で最も企業数が多い製造業が最大になったものと考えられる。こうした増加傾向は2018年以降も続き、冒頭の調査結果につながっている。

 

RPA、実際はどの程度の業務効率化が期待できるのか? 導入企業の声は

RPAは自動化された業務の現場のスタッフを中心に、他のシステム/アプリケーションと比べて導入効果が感じられやすいと言われることが多い。実際、冒頭で紹介したMM総研による調査でも、RPA導入済み企業対してRPAの満足度を質問したところ、実に59%が「満足」と回答しており、「不満」と回答した企業はわずか4%にとどまっている。それほどRPAは利用者の満足度が高いわけだ。

そして「業務が楽になった」という回答が全体の約7割を占めている点に満足度の高い理由がうかがえる。通常業務の自動化による現場の負荷軽減が、満足度の高さにつながっているのだろう。また、「人手不足対策につながった」「残業等を削減できた」という回答もともに43%と目立っており、経営層にとっても導入効果が感じられやすいことが伺える。

では具体的にどのような効果が感じられるのか、ITreviewに投稿されたユーザーレビューの一部を以下に紹介しよう。

 

・定型業務を自動化することで、業務の効率化をすることができた。

・ロボットが作業するので打ち間違い等のミスがなくなり、人間が本当に必要な業務に時間を使うことができるようになった。

・ExcelのデータをWebシステムへ入力する業務(例:勤怠情報の入力作業)のような単純作業の繰り返し業務が自動化できた。

・日常業務の自動化による工数削減

・社員の中での生産性向上の意識醸成。

・夜間に自動化で作業を実行しておけば日中にかかる負担がだいぶ軽減された。

 

Excelのマクロ、VBAとRPAの違いとは?

RPA導入検討時によく生じる疑問が、Excelによるマクロ処理との違いだ。端的に言うと、自動化する対象が異なってくる。というのも、マクロ処理はExcel内での作業に限定されるが、RPAはOffice系ソフトをはじめ、各種業務システム、さらにはフリーソフトに至るまで、あらゆるソフトウェアを自動化の対象にできるのである。さらにRPAならば、マウスやキーボードなどを使ったOSそのものの操作、つまり人の手でこれまで行っていた操作も自動化できる。

すなわち、RPAはWebブラウザの操作も扱える。そのため、Webブラウザから操作する各種クラウドサービスなどを用いた作業もほぼ自動化が可能となるのだ。

また他に、RPAのメリットとして属人化しにくい点が挙げられる。Excelのマクロは作業内容がブラックボックス化しやすい。関数を読み込み、指定されているセルやシートを正確に把握しないとマクロ処理の修正や変更を正しく行えないため、マクロ作成者が異動したり退職したりすると誰も中身を把握できず一向に修正できないような事態に陥りがちだ。

一方、ほとんどのRPA製品は、処理手順がフローチャートなどにより分かりやすく表示されており、作成者以外でも設定された作業内容などが把握しやすく、簡単かつ適切に修正・変更することができる。このようにメンテナンスが容易であることもRPAのポイントだ。

 

システム開発とRPA、どちらを選択すべきか?

業務を自動化するためのシステム開発とRPA導入とを比べた場合に、RPAの利点といえるのが「導入のしやすさ」だ。

ITを用いた従来ながらの業務効率化手段であるプログラミングベースのシステム開発では、システム化の対象となる業務要件の明確化をはじめ、コスト、時間、人員、スキルなどさまざまな面で大掛かりとなりがちだ。

また、現行の業務で運用している基幹システムの改修を考えた場合にも、別システムとの連携1つをとっても、影響範囲の調査から開発、テスト、実装までと意外に大きなコストを掛ける羽目になるケースも多い。

しかし、ノンプログラミングで現状の業務をロボットに代替させるのが基本となるRPAの場合はそれよりも遥かに導入コストが抑えられ、導入期間も規模も大幅に縮小できる。加えて製品によってはITの専門知識がなくとも業務を自動化できてしまう。RPAの特徴といえるだろう。

ただし、RPAの導入はすなわち新しいツールの導入と同義であるため、保守・運用やロボット開発のためのルール策定など新たな手間も必要になることは忘れてはならないポイントだ。

 

RPA導入におけるデメリットとは

RPAを本格的に導入した後は、前述した通り社内での継続的な運用保守作業が欠かせなくなる。しかし業務自体も業務システムも常に変更が伴うことから、RPAにもそうした変更に都度対応しながら管理していくことが必要になってくる。これらの運用体制を当初から意識せずに導入していたとしたら、ある段階からRPAが足かせにもなりかねないだろう。

導入に際し、関連する業務や連係する業務システムとの間の変更時の影響なども含めてRPAを導入すべきなのか、それとも業務システム自体の改修を行うのか、それとも人員で賄うのかは、影響範囲と工数を見極めた上で導入することが重要だ。

 

RPAの購買形態の違い、導入にかかる費用は

RPA製品は大きく2つの購買形態がある。1台のPCに1つのロボット(RPA)を導入する「デスクトップ型」と、サーバーで複数ロボットを一括管理し1台のPCに複数のロボットでの大量処理を可能にする「サーバー型」の2種類に分けられる。

RPA導入にかかる費用は、これらの導入形態の違いなどによってかなり差がある。具体的にはデスクトップ型の方が安価なケースが多い。また価格体系やライセンス体系も、ベンダーはもちろん仲介するSIerによっても大きく異なってくるため、一概に「ロボット○○なら○○万円程度」「○○業務の自動化なら○○万円ぐらい」などとは言えない。

それぞれの案件ごとに、重視したい機能や適用したい業務、導入により期待できる効果に対してコストが適切かどうかの見極めが必要だ。また、ベンダーやSIerによる研修などのサポートや、運用時の保守・メンテナンスにも別途費用がかかってくることが多い。

ただし、通常システム開発のような膨大なコストはかからず、デスクトップ型であれば数十万円程度で導入できるケースが多い。そのため大々的な社内稟議を経ずとも、部門内の決済だけで試してみるといった、一般的な業務システムでは難しいアプローチも可能となる。さらに、多くの製品では、“お試し導入”のための無料の評価版が用意されているので積極的に活用するといいだろう。

 

国内で人気のRPA製品は?

ここまで、日本国内におけるRPAの普及状況や導入時の注意点などを確認してきたが、実際にRPA製品を選定する上では、どの企業でどの製品が選ばれたかという実績や、どの製品の満足度が高いか、といった評判をチェックすることも欠かせない。

ITreviewでは、RPAを実際に利用するユーザーが各製品に対して評価したレビューを全件公開中だ。「使い勝手や、どの点が評価できるのか」また「どのような点が改善ポイントなのか」といったリアルな声に加え、全レビューのデータを可視化し、どの製品の顧客満足度が高いのかといったが一目で分かるITreview Gridを公開中だ。

ぜひ、他社で評判のツールをチェックした上で、自社に最適なRPA製品の導入へと進んでいただきたい。

 

 

執筆:小池晃臣(タマク)

 

 

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