2025年のSaaS市場は、企業のデジタル変革(DX)が本格化するなかで、これまでにない多様性と成熟度を見せています。働き方改革やリモートワークの浸透、生成AI分野における加速度的な技術進展により、企業が求めるSaaSツールも大きく変化しました。

今回は、ITreviewが発表した『Best Software in Japan 2025』のランキングデータをもとに、TOP10にランクインした注目のSaaS製品を詳しく解説していきます。各製品の順位や特徴などから「なぜそのポジションにいるのか?」など、業界のトレンドも交えながら詳しく紐解いていきましょう。

Best Software in Japan 2025 とは?

Best Software in Japan 2025』とは、SaaS・ソフトウェアのレビュープラットフォーム「ITreview」が主催する年間アワードのことです。

2024年4月~2025年3月の期間のうちITreviewへ寄せられたユーザーレビューをもとに、日本国内で高い評価を得たSaaS・ソフトウェア、ITサービスをランキング形式で発表する年に一度の目玉企画です。

昨年まではTOP50までの製品選出にとどまりましたが、国内SaaS市場の成長と多様化を反映するため、今年は約13,000超の製品のなかから、ユーザーからの評価が高かったTOP100製品を選出しています。

また、2025年のランキングでは、スコア算出ロジックの見直しも行われており、昨年までのスコアロジックと比較して、これまで比重の低かったトレンドに少し重みをもたせた最適化が行われています。

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▶【2025年版】Best Software in Japan を見る
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TOP10ランクイン製品に見る2025年のSaaSトレンド

2025年のランキングでは、以下の10製品が企業からの高い評価を獲得しました。

順位 昨年順位 製品名 提供ベンダー 総合得点 レビュー数/年間
1位 23位 SKYSEA Client View Sky株式会社 74.1 246件
2位 圏外 kintone サイボウズ株式会社 64.1 54件
3位 圏外 Notion Notion Labs, Inc. 63.7 157件
4位 8位 Microsoft Teams 日本マイクロソフト株式会社 61.8 206件
5位 9位 Slack 株式会社セールスフォース・ジャパン 61.7 156件
6位 5位 freee会計 フリー株式会社 60.7 44件
7位 15位 Backlog 株式会社ヌーラボ 59.5 149件
8位 10位 Zoom Meetings ZVC JAPAN 株式会社 57.4 156件
9位 圏外 LINE WORKS LINE WORKS株式会社 57.2 72件
10位 4位 ChatGPT OpenAI, Inc. 56.7 77件

この結果から見るに、2025年のSaaSトレンドは「セキュリティ・コラボレーション・AI」という3つのキーワードが顕著に現れているといえます。これらのトレンドは、デジタル変革(DX)の加速とリモートワーク定着により生まれた新たな課題と機会を反映しており、企業のIT戦略においては今後重要な指針になってくることでしょう。

  • ①:セキュリティ意識の顕著な高まり
  • ②:コラボレーションツールの普及と浸透
  • ③:生成AIツールがスタンダードな存在に

①:セキュリティ意識の顕著な高まり

『SKYSEA Client View』が1位を獲得したことは「企業におけるセキュリティ意識の高まり」を象徴している出来事といえます。

サイバー攻撃の増加やリモートワークの普及、生成AIの台頭や法規制の強化など、さまざまな理由により、企業はセキュリティ投資を最優先課題としている印象です。また、従来までの境界型セキュリティからゼロトラストセキュリティへの転換が進んでいることも、包括的なセキュリティ対策需要が急増している要因といえるでしょう。

②:コラボレーションツールの普及と浸透

『Notion』や『Backlog』が順位を上げたことは「コラボレーションツールの普及と浸透」を象徴している出来事といえます。

ハイブリッドワークの定着が進むなかで、今年はより物理的な距離を超えた効果的なチームワークを実現するツールへの需要が急速に拡大している印象です。特に、ランキング上位のコラボレーションツールは共通して「使いやすさと機能の豊富さ」が特徴であり、一般的な業務担当者でも直感的に利用できることが普及の鍵となっているようです。

③:生成AIツールがスタンダードな存在に

『ChatGPT』が去年と比較して10位に下落したことは「企業における生成AI活用の本格化」を象徴している出来事といえます。

2022年ごろから爆発的な流行を見せている第4次AIブームですが、今年はより本格的にビジネスへの活用方法を模索するフェーズへと突入し、カテゴリー全体が成熟している印象です。昨年よりも順位が低下した原因としては、注目度が下がったというよりも、生成AIのビジネス活用がスタンダードになりつつあることを示しているものと思われます。

1位:SKYSEA Client View

2025年 2024年
順位 1位 23位
総合得点 74.10 64.19
レビュー数/年間 246件 71件

第1位は「Sky株式会社」の提供する『SKYSEA Client View』です。昨年の23位から今年は1位へと大幅に順位を上げ、総合得点は74.10という圧倒的なスコアを叩き出しました。IT資産管理やセキュリティ対策の一元化、PC操作ログを詳細に取得できる点が高く評価されています。

▶ 受賞の背景・要因考察

サイバー攻撃の巧妙化やリモートワークの普及により、企業のIT資産管理とセキュリティ対策は喫緊の課題となっています。特に、2024年から2025年にかけては、企業のセキュリティ投資が加速したことで、同製品への注目度が急上昇しました。従来のウイルス対策ソフトだけでは対応できない内部脅威への対策として、多くの企業が導入を検討しています。

2位:kintone

2025年 2024年
順位 2位 圏外
総合得点 64.13 圏外
レビュー数/年間 54件 圏外

第2位は「サイボウズ株式会社」の提供する『kintone』です。昨年の圏外から今年は2位へと大幅に順位を上げ、総合得点は64.13を記録しました。直感的な操作性や豊富なカスタマイズ機能の実装により、非IT部門でも業務アプリを簡単に作成できる点が高く評価されています。

▶ 受賞の背景・要因考察

IT業界全体で人材不足が深刻化するなか、現場部門が自らシステムを構築できるノーコードツールへの需要が急激に高まっています。kintoneは、同社の提供する豊富な導入支援サービスやパートナー企業との連携による導入・運用支援体制などが高い評価を受けたこともあり、DX推進の具体的な手段として、多くの企業がkintoneを選択している状況です。

3位:Notion

2025年 2024年
順位 3位 圏外
総合得点 63.76 圏外
レビュー数/年間 157件 圏外

第3位は「Notion Labs, Inc.」の提供する『Notion』です。昨年の圏外から今年は3位へと大幅に順位を上げ、総合得点は63.76を記録しました。ドキュメントの作成からプロジェクトの管理まで、豊富な機能の数々を一つのプラットフォーム内に集約している点が高く評価されています。

▶ 受賞の背景・要因考察

企業のリモートワークが常態化するなか、チーム間の情報共有とナレッジ管理の重要性が見直されつつあります。Notionはドキュメントの作成やプロジェクトの管理を一つのプラットフォームで提供しているだけでなく、柔軟なカスタマイズにより、各チームの業務フローに合わせた使い方で幅広い業種・職種で採用されています。

4位:Microsoft Teams

2025年 2024年
順位 4位 8位
総合得点 61.80 69.52
レビュー数/年間 206件 241件

第4位は「日本マイクロソフト株式会社」の提供する『Microsoft Teams』です。昨年の8位から今年は4位へと順位を上げ、総合得点は61.80を獲得しました。Microsoft 365エコシステムとの統合により、メールやカレンダー、Web会議がシームレスに連携できる点が高く評価されています。

▶ 受賞の背景・要因考察

2024年から2025年にかけては、多くの企業で新しい働き方を模索しています。特に、ハイブリッドワーク環境においては、オフィス勤務者とリモート勤務者が同じレベルでコミュニケーションできる環境が重要であり、なかでもTeamsはWeb会議ツールを超えたデジタルワークプレイスとして位置づけられているといえるでしょう。

5位:Slack

2025年 2024年
順位 5位 9位
総合得点 61.77 69.23
レビュー数/年間 156件 173件

第5位は「株式会社セールスフォース・ジャパン」の提供する『Slack』です。昨年の9位から今年は5位へと順位を上げ、総合得点は61.77を獲得しました。豊富な外部サービスとの連携により、コミュニケーションを効率化するだけでなく、情報のハブとして機能する点が高く評価されています。

▶ 受賞の背景・要因考察

Microsoft Teamsと同様、コロナ後のハイブリッドワーク環境の模索が大きな要因です。数あるビジネスチャットのなかでも、Slackは開発者向けの機能が充実しており、エンジニアチームでの採用率が特に高いのが特徴です。また、Bot機能やワークフロー機能により、定型業務の自動化が可能な点も大きな特徴といえるでしょう。

6位:freee会計

2025年 2024年
順位 6位 5位
総合得点 60.74 70.51
レビュー数/年間 44件 96件

第6位は「フリー株式会社」の提供する『freee会計』です。昨年の5位から今年は6位へと順位を下げましたが、総合得点は60.74と引き続き安定した評価を維持しています。銀行口座やクレジットカードとの連携による自動仕訳の機能は、特に中小規模の事業者から高く評価されています。

▶ 受賞の背景・要因考察

中小企業におけるデジタル化の遅れが課題となるなか、freee会計は直感的な操作性と自動仕訳により、経理業務の大幅な効率化を実現しています。また、税制改正への迅速な対応や税理士との連携機能も充実しており、企業の経理業務をサポートする包括的なソリューションとして、同カテゴリー内での地位を確率しています。

7位:Backlog

2025年 2024年
順位 7位 15位
総合得点 59.50 66.33
レビュー数/年間 149件 108件

第7位は「株式会社ヌーラボ」の提供する『Backlog』です。昨年の15位から今年は7位へと順位を上げ、総合得点は59.50を獲得しました。日本企業の働き方に適した国産のSaaSということもあり、IT企業以外でも導入しやすい直感的なインターフェースが高く評価されています。

▶ 受賞の背景・要因考察

プロダクト開発の現場におけるアジャイル開発の普及にともない、プロジェクト管理の重要性が増しています。特に、煩雑になりやすいプロジェクト管理やタスク管理、バージョン管理などを一つのプラットフォーム内で完結できるBacklogは、技術者と非技術者の橋渡し役として重要な役割を果たしているといえるでしょう。

8位:Zoom Meetings

2025年 2024年
順位 8位 10位
総合得点 57.49 69.16
レビュー数/年間 156件 199件

第8位は「ZVC JAPAN 株式会社」の提供する『Zoom Meetings』です。昨年の10位から今年は8位へと順位を上げ、総合得点は57.49を獲得しました。安定した接続品質と使いやすさはもちろん、大規模なウェビナーや録画機能など、多様なシーンに対応できる機能の豊富さが高く評価されています。

▶ 受賞の背景・要因考察

リモートワークの普及にともない、Web会議は日常的な業務ツールとして定着するようになりました。なかでも業界のデファクトスタンダード的なポジションを確立しつつあるZoomは、単なるWeb会議ツールとしての枠組みを超えて、オンライン研修や顧客対応、採用面接などの幅広いシーンで活用されている汎用性の高いツールです。

9位:LINE WORKS

2025年 2024年
順位 9位 圏外
総合得点 57.28 圏外
レビュー数/年間 72件 圏外

第9位は「LINE WORKS株式会社」の提供する『LINE WORKS』です。昨年の圏外から今年は9位へと順位を上げ、総合得点は57.28を獲得しました。既存のLINEユーザーとの連携機能により、社内外のコミュニケーションをシームレスに手間なく行える点が高く評価されています。

▶ 受賞の背景・要因考察

企業のデジタル化やDXへの取り組みが本格化するなか、デジタルに不慣れな高年齢層へのツールの利用促進が課題となっています。LINE WORKSは日本国内で圧倒的な利用者数を誇るコミュニケーションアプリ「LINE」と同じ感覚で使えるため、幅広い年齢層が違和感なく利用できるビジネスチャットとして注目を集めています。

10位:ChatGPT

2025年 2024年
順位 10位 4位
総合得点 56.78 70.64
レビュー数/年間 77件 185件

第10位は「Open AI, Inc.」の提供する『ChatGPT』です。昨年の4位から今年は10位に順位を下げましたが、総合得点は56.78と依然として高い評価を獲得しています。メール作成や資料作成、アイデア創出や翻訳作業など、自然言語処理による高度な文章生成機能が高く評価されています。

▶ 受賞の背景・要因考察

2024年から2025年にかけて、企業におけるAI活用が本格化するなか、ChatGPTは生成AIの代表的なツールとして多くの企業で導入が進んでいます。ただし、セキュリティやデータ保護の観点から慎重な運用が求められていることも事実であり、今後はより企業利用に特化した生成AIツールの需要が高まることが予想されます。

2025年の企業におけるSaaSの選定ポイント

  • ①:セキュリティ対策機能の充実度
  • ②:既存システム連携機能の充実度
  • ③:使いやすさと学習コストの低さ

①:セキュリティ対策機能の充実度

2025年のランキングが示すように「セキュリティ対策機能の充実度」がSaaS選定における最重要指標となりつつあり、包括的なセキュリティ対策を提供しているツールが高く評価される傾向にあります。

データの保護やアクセス制御、監査機能やコンプライアンス対応などを総合的に検討し、自社のセキュリティポリシーに適合するツールを選ぶことが重要です。

②:既存システム連携機能の充実度

Microsoft TeamsやSlackなどの上位ランクインは「既存システム連携機能の充実度」が重要であることを示しており、既存のITインフラとシームレスに連携できるツールが高く評価される傾向にあります。

API連携やSSO(シングルサインオン)への対応、既存データベースとの連携機能など、システム間での連携機能は製品選定における重要な判断基準となっています。

③:使いやすさと学習コストの低さ

NotionやLINE WORKSなどの上位ランクインは「使いやすさと学習コストの低さ」が重要であることを示しており、たとえ高機能であっても複雑で使いにくいツールは現場では定着しないといえます。

直感的な操作性や分かりやすいユーザーインターフェース、充実したサポート体制など、ユーザビリティに関する要素が企業の選定基準として重視されています。

まとめ

今回は、ITreviewが発表した『Best Software in Japan 2025』のランキングデータをもとに、上位TOP10にランクインした注目のSaaS製品を詳しく解説していきました。

2025年のSaaSランキングでは、企業のデジタル変革が新たなフェーズに入ったことを示しており、なかでも「セキュリティ・コラボレーション・AI」という3つのトレンドが、今後のIT戦略における重要指標であることがわかりました。

今後もITreviewでは、日々進化を続けるSaaS市場の最新情報について、ユーザーの皆様へ真に価値あるコンテンツをお届けしていきます。ツールの選定にお悩みの方や最新トレンドに関心のある方などは、ぜひ次回の記事もご覧ください。

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