近年、サイバー攻撃の高度化やリモートワーク拡大を背景に、多くの企業でEDR製品の導入が加速しています。従来型アンチウイルスでは防げない攻撃への対策として注目されています。
しかし、EDRにはアラート過多の問題や運用の属人化といった課題があり、ツールの選定や運用を誤ってしまうと、最悪の場合、重要な脅威を見逃すリスクすら引き起こしてしまいます。
本記事では、EDRの基本的な役割を整理したうえで、情シス担当者の運用疲れを防ぐ3つの工夫を中心に、実践的な改善策を徹底解説していきます!
この記事を読むだけで、EDR運用の全体像と失敗しない考え方を把握できるため、日々のセキュリティ対応に悩む担当者にとっては必見の内容です!
目次
EDRとは?基本的な概要を確認
EDR(Endpoint Detection and Response)とは、エンドポイント(PCやサーバー)へのサイバー攻撃を検知し、迅速に対応するためのセキュリティ対策手法のことです。
近年、サイバー攻撃の巧妙化によって従来のウイルス対策では、防御できない脅威が増加しており、このような状況に対応するのがEDRシステムと呼ばれるものです。
EDRは、リアルタイムで監視する機能や高度な解析機能を備えているため、エンドポイントにおける不審な活動を早期に発見および対応することを目的としています。
具体的な活用事例としては、未知のマルウェアを検出できることで、感染拡大を防ぐための対策や内部不正による情報漏えいの兆候を早期に発見することができます。
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EDRの導入が重要視される理由
- サイバー攻撃の手段が高度化した
- ゼロトラストの考え方が普及した
- インシデントの重要性が高まった
サイバー攻撃の手段が高度化した
EDRの導入が重要視される理由の1つ目としては「サイバー攻撃の手段が高度化した」というものが挙げられます。
特に、近年のサイバー攻撃は単純なウイルス感染だけではなく、ランサムウェアの登場や標的型攻撃など、より巧妙かつ複雑な攻撃手法が増加してきています。
従来のアンチウイルスソフトでは防御できない攻撃が増加するなか、EDRはエンドポイント上の不審な挙動を検知し、迅速な対応を可能にするため、多くの企業で導入が進んでいます。
ゼロトラストの考え方が普及した
EDRの導入が重要視される理由の2つ目としては「ゼロトラストの考え方が普及した」というものが挙げられます。
ゼロトラストとは「すべてのアクセスを信用しない」という前提のもと、ネットワークの内外を問わず、常に監視・検証するセキュリティモデルのことです。
リモートワークの普及にともない、従来のセキュリティ対策では、内部端末からの脅威を防ぐことが難しくなっているため、エンドポイント単位での監視と対応が重要になっています。
インシデントの重要性が高まった
EDRの導入が重要視される理由の3つ目としては「インシデントの重要性が高まった」というものが挙げられます。
サイバー攻撃が発生した際に迅速な原因分析と対応が求められる中、EDRは攻撃の痕跡を詳細にログとして記録するため、適切なインシデント対応を支援します。
従来のセキュリティ対策では、攻撃の痕跡を見つけるのが困難でしたが、EDRを導入することで不正アクセスの経路や被害範囲を特定しやすくなるため、セキュリティレベル向上につながります。
EDRを導入しても安心できない3つの理由
- ①:アラート過多に陥ってしまう
- ②:属人化リスクを抱えてしまう
- ③:検知と防御を混同してしまう
①:アラート過多に陥ってしまう
EDRを導入しても安心できない理由の1つ目としては「アラート過多に陥ってしまう」という点が挙げられます。
EDRはエンドポイントの挙動を詳細に監視する仕組みであるため、検知精度が高い反面、通知数が非常に多いという特徴があります。実際には、すべてのアラートが重大インシデントにつながるわけではなく、業務アプリの挙動や設定起因の誤検知も多く含まれるのです。
この状態が続くと、情シス担当者は日常的に大量のアラート確認を強いられ、重要なアラートとそうでないものの判断に疲弊してしまいます。その結果、確認が形骸化し、本当に対応すべき脅威を見逃すリスクが高まる点が、EDR導入後も安心できない大きな要因となっています。
②:属人化リスクを抱えてしまう
EDRを導入しても安心できない理由の2つ目としては「属人化リスクを抱えてしまう」という点が挙げられます。
EDRの管理画面やログ分析には一定の専門知識が求められるため、特定の担当者しか運用できない状態になる傾向があります。その結果、夜間や休日の対応が一部の情シス担当者に集中したり、担当者不在時に適切な判断ができなかったりと、運用体制そのものが脆弱化してしまいます。
さらに、異動や退職が発生した場合、運用ノウハウが引き継がれず、ブラックボックス化するケースも少なくありません。このように、EDRが作業者である人間に依存した状態になってしまうと、せっかくツールを導入しているにもかかわらず安心できないという状況が生まれてしまいます。
③:検知と防御を混同してしまう
EDRを導入しても安心できない理由の3つ目としては「検知と防御を混同してしまう」という点が挙げられます。
EDRは、あくまで脅威の兆候を検知し、調査や対応を支援するための仕組みであり、自動的にすべての攻撃を防ぐツールではありません。しかし、現場では「EDRを入れたから大丈夫」という認識が先行し、初動対応の遅れや判断ミスが発生することがしばしばあります。
特に、対応フローが整備されていない場合にいたっては、アラートを確認しただけで対応が止まり、被害が拡大するケースも珍しくありません。このように、EDRの役割を正しく理解しておらず、検知=防御と誤解してしまうことが、導入後も安心できない原因のひとつとなっています。
情シス担当者の”運用疲れ”を解消する3つの工夫
- ①:すべてを情シスで抱え込まない
- ②:アラートを減らす前提で運用する
- ③:外部リソースの活用を前提にする
①:すべてを情シスで抱え込まない
情シス担当者の運用疲れを解消する工夫の1つ目としては「すべてを情シスで抱え込まない」という点が挙げられます。
EDRのアラート対応や判断をすべて情シスが担う前提で運用してしまうと、日常業務に加えて常時監視が求められ、担当者の負担は際限なく増えてしまいます。その結果、精神的な疲弊や対応品質の低下を招くケースも少なくありません。
役割分担や判断基準をあらかじめ整理し、一次対応と最終判断を切り分けることで、情シスが常に最前線に立ち続ける状態を避けることができます。運用を「個人の頑張り」に依存させない設計が、疲れにくい体制づくりの第一歩となります。
②:アラートを減らす前提で運用する
情シス担当者の運用疲れを解消する工夫の2つ目としては「アラートを減らす前提で運用する」という点が挙げられます。
特に、EDRを導入した直後は、検知精度の高さゆえに大量のアラートが発生しやすく、すべてを確認しようとすると大きな負担になります。しかし実際には、すべてのアラートに同じ対応を求める必要はなく、本当に重要なアラートにだけ注視すべきです。
重要度の高いアラートとそうでないものを整理し、誤検知をチューニングによって抑制することで、確認すべき情報量を大幅に減らすことができます。アラートを「我慢して見る」のではなく「見るべきものだけ残す」発想が運用疲れの解消につながります。
③:外部リソースの活用を前提にする
情シス担当者の運用疲れを解消する工夫の3つ目としては「外部リソースの活用を前提にする」という点が挙げられます。
少人数体制の情シスが、24時間365日すべてのアラートを監視し、高度な分析と迅速な対応を行うことは現実的とはいえません。それにもかかわらず、内製だけで完結させようとすると、担当者の負担はすぐに限界に達してしまうでしょう。
そのため、SOCやMDRなどの外部サービスを活用し、監視や初期分析を任せることで、情シスは本来注力すべき判断や社内調整に集中できます。外部の力を前提にした運用設計こそが、長期的に疲れず続けられるEDR運用を実現する鍵となります。
EDR運用改善のポイント整理
ここまで解説してきたとおり、EDRは導入そのものよりも、その後の運用設計によって効果が大きく左右されるセキュリティ対策です。運用が属人的であったり、アラート対応が整理されていなかったりすると、情シス担当者の負担が増えるだけでなく、セキュリティレベルそのものも低下してしまいます。
一方で、運用の考え方を少し見直すだけでも、EDRは「負担の大きいツール」から「安心を支える仕組み」へと変わります。完璧を目指すのではなく、無理なく続けられる仕組みを作ることが重要です。
特に意識すべきポイントは「誰が・どこまで・どのレベルで対応するのか」をあらかじめ明確にし、アラートは見るべきものだけに絞り、必要に応じて外部のリソースを前提に組み込むということです。
| 観点 | 改善前の状態 | 改善後の状態 |
|---|---|---|
| 運用体制 | 情シスがすべて対応 | 役割分担が明確 |
| アラート対応 | 全件確認・手動判断 | 優先度別に対応 |
| ナレッジ管理 | 属人化・ブラックボックス | ルール化・共有 |
| 監視体制 | 内製で常時対応 | 外部活用を前提 |
| 担当者負荷 | 負担が大きく疲弊しやすい | 無理なく継続が可能 |
このように、EDR運用は「高度な設定」よりも現実的な運用設計が何より重要です。情シス担当者が疲弊せず、かつインシデント時には確実に機能する体制を整えることが、EDR導入の価値を最大化するポイントだといえるでしょう。
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これまで、SaaSベンダーとのセキュリティチェックシートのやり取りは担当者の負担が大きく、SaaS導入の足枷となっていました。こうしたセキュリティ評価ツールを導入することで、SaaSのセキュリティリスクを軽減できるだけでなく、業務の効率化や生産性の改善を図ることができるでしょう。
まとめ:現実的な運用体制の構築が不可欠!
本記事では、EDRの基本的な役割を整理したうえで、情シス担当者の運用疲れを防ぐ3つの工夫を中心に、実践的な改善策を徹底解説していきました。
EDRは、高い検知力というメリットがある一方で、アラートの過多や運用の属人化といった注意点もいくつか存在するため、無理なく続けられる仕組み作りが何より重要です。
運用を成功させるには、記事で紹介してきたような、役割分担やアラートの整理、外部リソースの活用といった工夫を行うことで、担当者の負担を軽減することができます。
本記事を参考に、ぜひ自社に合ったEDR運用体制を見直してみてはいかがでしょうか?