近年、DX推進やテレワークの拡大を背景に、業務でのクラウド活用が急速に進んでおり、その一環として、無料プランや完全無料型のITサービスを業務にも利用する企業が増加しています。

一見すると非常に便利なようにも思える無料プランの数々ですが、とりわけ企業での利用においては、その中に潜むセキュリティリスクと継続性のリスクを正しく理解することが不可欠です。

なぜなら、無料で使えるサービスの多くは、障害時の保証がなかったり、ログの保存期間が短かったりといった様々な制約があり、使い方を誤ってしまうと、情報漏洩や業務停止などの重大なリスクを引き起こしてしまう可能性があるからです。

本記事では、無料のクラウドサービスが安全ではない理由の解説に加えて、企業が誤解しやすいポイントや無料製品にありがちな失敗事例など、現場担当者に役立つポイントを徹底解説していきます!

この記事を読むだけで、無料のサービスに潜む危険性や安全な使い方までの全体像を把握することができるため、コストとセキュリティの両立に悩む情報システム担当者にとっては必見の内容です!

【結論】無料で使えるサービスは安全とは言えない!

結論から言えば、SaaSやクラウドサービスの無料プランは「まずは使ってもらって価値を感じてもらう」ための提供形態であり、可用性やサポート、損害補償までを約束するものでは到底ありません。

これは、製品やプランそのものの善し悪しに関わらず、ビジネスモデルの性質から起こることであって、特に企業での利用においては、製品の利便性と責任の所在を区別して判断する必要があります。

無料プランは原則お試し用

多くの無料サービスは「お試し用」あるいは「マーケティング目的」で提供されており、機能・容量・サポートが制限されているケースが一般的です。また、有償プランへのアップセルを前提として提供されているため、ミッションクリティカルな業務には不向きな前提条件を抱えていることが多いです。

例えば、無料プランの多くには、ログの保存期間が短く過去の操作履歴が追えない、SLA(サービス品質保証)が明示されておらず障害時の補償がないなどといった構造的な制約があります。IPAが公表するクラウドサービス安全利用の手引きでも「サービスの内容とリスクの事前確認は利用者側の責任である」として、その重要性が指摘されています。

利用者側の責任が問われる

また、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が発信しているガイダンスでは、クラウドサービスの利用にあたっては、仕様や約款などの変更点を確認し、必要に応じて事業者に問い合わせることが求められています。これらは裏を返せば「仕様変更が頻繁なサービスでは利用者側の監視と判断が不可欠」であるということにほかなりません。

特に企業利用では、情報漏洩や業務停止時の損害の責任は誰が負うのかという問題が常に付いて回ります。無料だからといって安全だと短絡的に判断するのではなく、無料のサービスを利用する場合は「どの業務にどこまでの範囲で利用するのか」適切な利用のためのルール設計が重要といえるでしょう。

無料サービスで企業が誤解しやすい3つの落とし穴

  • ①:障害や停止などで「保証がある」という思い込み
  • ②:仕様や規約などは「変更されない」という思い込み
  • ③:支援やサポートは「なんとかなる」という思い込み

①:障害や停止などで「保証がある」という思い込み

無料のサービスで企業が誤解しやすいポイントの1つ目は「無料でもビジネス用途ならそれなりに保証されるだろう」という思い込みです。

多くの無料プランでは、サービス停止時の補償やサポートを否定する旨の利用規約が明文化されているケースが多く、システム停止時は業務が滞ってしまうリスクが存在します。

例えば、システム障害により業務が停止したり、データが消失したりといった場合であっても、事業者側からの補償は期待できないものと考えた方が良いでしょう。また、問い合わせ窓口すら用意されていないケースや返信まで数日かかるといったサービスも多くあります。

一般的なSaaSの利用規約には「サービスは現状有姿(As is)で提供される」や「いかなる損害についても事業者は責任を負わない」といった文言が盛り込まれており、特に無料プランではその傾向が顕著です。IPAのクラウド安全利用ガイドでも、利用者は提供条件からリスクを許容できるか確認すべきだとされていますが、規約やSLAを読まずに使い始める企業は少なくありません。

②:仕様や規約などは「変更されない」という思い込み

無料のサービスで企業が誤解しやすいポイントの2つ目は「無料だけど頻繁な仕様変更はそこまで起こらないだろう」という思い込みです。

こちらも実際には、無料プランは有償プランに比べて仕様変更やサービス終了のリスクが高い傾向にあり、突然の機能制限やAPI廃止に振り回される運用リスクが存在します。

例えば、業務で使っているダッシュボードやアラート機能が仕様変更により利用できなくなってしまった場合には、短期間で代替手段を用意しなければならず、開発や運用の現場では、無料サービスの前提が変わることによる隠れた移行コストがしばしば問題になっています。

NISCのクラウドガイダンスでも、クラウド事業者側の仕様変更や約款変更がある場合には、変更内容と業務への影響を利用者側で確認することが重要だと述べられています。ただし、無料プランでは、そもそも変更の事前通知が十分でないケースも見られ、ある日を境にログの出力機能が削減されたり、保存期間が短縮されたりといったリスク事例もしばしば耳にします。

③:支援やサポートは「なんとかなる」という思い込み

無料プランで企業が誤解しやすいポイントの3つ目は「困ったときには問い合わせすればなんとかなるだろう」という思い込みです。

無料プランのなかには、メールやチャットでの有人サポートや電話サポートを提供していない製品も多く、トラブル発生時には、自己解決しか選択肢がない状況も珍しくありません。

例えば、障害が発生したときの切り分けや、ログの調査のやり方、各種設定のベストプラクティスなどが分からず、社内にいる限られたメンバーが情報を探し回ることになります。無料のサービスに過度に依存したワークフローはセキュリティ事故の温床になりかねません。

総務省のクラウドセキュリティガイドラインでは、クラウドサービスを安全に提供・利用するためには、事業者と利用者がそれぞれの役割を果たすことが重要だと述べられています。しかし、無料サービスでは、事業者側がユーザー企業との個別コミュニケーションに十分なコストをかけられないため、双方向的なコミュニケーションが難しいというのが実情です。

無料サービスで企業が陥りがちな実際のトラブル事例

  • ログが残っていないため原因調査ができない
  • 保存期間の問題で法令や規制に対応できない
  • 障害や仕様の変更で業務が一時的に停止する

ログが残っていないため原因調査ができない

無料サービスの利用で起こりがちなトラブルの1つ目としては「ログ保存期間の短さによってインシデント調査ができない」という事例が挙げられます。

多くの無料サービスでは、保存される監査ログや操作履歴が数日〜数週間に限定されていることがあります。特にセキュリティ事故は、発生から発覚まで時間がかかることも多く「不正アクセスに気付いた時にはすでにログが削除されていた」という状況は珍しくありません。

社内から「なぜこのファイルが削除されたのか」や「誰が設定を変更したのか」といった疑問が出ても、証拠が残っていなければ原因究明は困難です。証跡が残らないサービスに依存した監査体制の脆弱性は、コンプライアンスの観点から見ても大きな問題になります。

保存期間の問題で法令や規制に対応できない

無料サービスの利用で起こりがちなトラブルの2つ目としては「法令や業界ガイドラインが求めるログ保存期間を満たせない」という事例が挙げられます。

例えば、金融分野では、取引履歴や監査ログを一定期間保管することが法令で定められており、こうしたルールは、医療や行政分野でも類似の要求があります。こうした業種で30日分しかログを保持しない無料サービスに重要なデータを預けるのは、現実的な選択肢とは言えません。

また最近では、取引先や親会社からサプライチェーン全体のセキュリティ水準をチェックされるケースも増えています。ログ保存期間が要件を満たしていないことが判明すると「このサービスを使っているなら取引範囲を限定する」といったビジネス上の制約を受ける恐れもあります。

障害や仕様の変更で業務が一時的に停止する

無料サービスの利用で起こりがちなトラブルの3つ目としては「サービス障害や仕様変更によって業務が一時停止してしまった」という事例が挙げられます。

例えば、チームで使っている無料のタスク管理ツールが突如ダウンし、1日中アクセスできない状況を想像してみてください。バックアップもエクスポートもしていなければ、誰が何を担当していたのか分からなくなり、最悪プロジェクト全体が停止してしまう可能性だってあります。

無料プランでは、こうした緊急事態に対する補償や個別対応を期待することは難しく、復旧を待つしかない状況に陥りがちです。無料プランを利用する場合は、単一のサービスに依存した業務プロセスの停止リスクを前提として、代替手段やバックアップを用意しておく必要があります。

無料サービスでも安全に使える製品はある?

結論から言えば「無料でも安全か?」という問いに対しては「一律にYES/NOで答えることはできない」というのが答えです。

なぜなら「どの要素について安全と言えるのか?」や「その前提でどこまでの業務に利用するのか?」を議論する必要があるからです。そしてこれは、技術面の安全性だけでなく、ガバナンス面を含めたトータルリスクを評価したうえで、自社のポリシーを満たしているかを判断する必要があります。

技術的な安全性とサービスの安全性は別軸で評価すべき

まずはじめに「無料でも安全」という考え方は、特定の条件を満たす場合にのみ成り立つ「極めて限定的な安全性の概念」だと考えるべきです。ここで言う「安全」とは、暗号化や認証方式などの技術的な安全性だけでなく、継続性や可用性、サポート体制や証跡管理といった運用面を含めた総合的な概念です。

例えば、E2EE(エンドツーエンド暗号化)メッセンジャーのような製品は、送信者と受信者の端末間でのみ復号できる仕組みであるため、通信路の秘匿性は期待することができます。一方で、メッセージの保存期間やログの取得範囲、障害発生時の復旧や問い合わせ対応などは、サービスごとに大きくバラつきがあります。

このように、企業利用の観点では、技術的なセキュリティとサービスそのものの安全性を切り分けて評価する多面的な見方が欠かせません。E2EEであれば何でも安全というわけではなく、何が守られていて、何が守られていないのかを具体的に把握したうえで、利用する範囲を慎重に定めることが重要です。

自己責任で利用するという言葉の意味を正しく理解しよう

一見ありきたりなようにも思えますが、無料で使えるサービスの利用規約には、しばしば「利用は自己責任で行うものとします」という一文が含まれている場合があります。しかしこれは、企業で使う場合「事故で生じた損害や責任などの一切はサービスを利用した企業が負担する」ということにほかなりません。

例えば「なぜこのデータが消えたのか」や「どの時点で誰が誤操作したのか」を問われたとき、無料サービスの仕様上、十分なログが残っていなければ、説明責任を果たすことはできません。結果として、リスクの大部分は利用者側が負うことになる自己責任型の構図となり、その是非を判断するのは利用者自身です。

そして、この構図をコントロールする唯一の手段が社内ルールや運用ポリシーです。具体的には「無料サービスでは機密情報を扱わない」や「重要データは必ずバックアップを取得する」といった運用上のルールを事前に定義しておくことで、自己責任を組織としてマネジメントすることができるでしょう。

無料サービスを使うときの注意すべきポイントは?

無料サービスの公開情報を確認する

まずは、公式に公開されている情報をどこまで読み込めるかが出発点です。トップページだけでなく、サービスのトラストページや利用規約などから、以下の情報を一通り確認することが重要です。

必ず確認しておくべき公開情報
会社概要・運営者情報
利用規約・プライバシーポリシー
セキュリティに関するページ
コンプライアンスに関するページ
有料プラン・無料プランの機能比較
データ削除・エクスポートについての説明
障害情報・ステータスページ・更新履歴 など

そのうえで「公開情報からわかること」と「公開情報からはわからないこと」を切り分けておくと、後々のリスクの判断がしやすくなります。こうした最低限の確認を怠っている企業も珍しくはないため、必ず確認するようにしましょう。

無料サービスの公開情報からわかること

公開情報は「このサービスに何の業務をどこまで任せてよいか」を考えるための土台になります。特に、以下のような項目は、公式サイトや利用規約、プライバシーポリシーなどから、ある程度までは読み取ることができます。

運営主体の情報 所在地や連絡先は明示されているか
個人による運営か法人による運営か
想定される利用目的 商用利用可か個人利用のみか
禁止されている用途はあるか
無料プランの制限内容 ユーザー数やアカウント数に制限はあるか
利用できる回数やデータ容量に制限はあるか
データの取り扱いに関して どのようなデータを収集するか (入力データ / ログ / クッキーなど)
どのようにデータを取り扱うか (第三者提供 / 広告利用の有無など)
セキュリティ・コンプライアンス 認証方式の対応状況 (SSO / 二要素認証の有無)
外部認証の取得状況 (ISO / SOCの取得の有無)
サポート体制・問い合わせ窓口 無料プランにサポートは含まれるか
問い合わせ窓口は設置されているか

無料サービスの公開情報からはわからないこと

一方で、どれだけ公開情報を読み込んでも、外部からは見えない領域も少なくありません。特に、以下のような項目は「原則わからない」と考えておいた方が安全です。今の規約は問題なくとも、将来的な規約がどうなるかは外部からはわかりません。

内部統制の実態 非公開の内部統制ルールや運用の状況
権限管理や職務分掌がどこまで遵守されているか
監査結果の詳細 公表されていない監査報告書の全文
報告書内の具体的な指摘事項や是正内容
環境固有の情報 自社テナントやアカウントの個別の設定値
管理者がどこまで本番データにアクセスできるか
トラブル対応の優先度 障害発生時に優先して対応する機能や復旧にかかる時間
重大インシデントと判断されないレベルの小さな障害の扱い
将来的な変更の可能性 いつどのタイミングで料金や利用規約が変わるのか
どの機能が急に廃止・縮小される可能性があるのか

SaaSのセキュリティ評価なら?ITreviewの『SaaSセキュアチェック』がおすすめ!

SaaSやクラウドサービスのセキュリティ評価なら、アイティクラウド株式会社が提供する『SaaSセキュアチェック Pro』がおすすめです。このセキュアチェックでは、SaaSの導入時および導入後のセキュリティ評価を効率化し、標準化された評価項目をもとに、対象のSaaSのセキュリティ対応状況を一括で取得・管理することが可能です。

これまで、SaaSベンダーとのセキュリティチェックシートのやり取りは担当者の負担が大きく、SaaS導入の足枷となっていました。こうしたセキュリティ評価ツールを導入することで、SaaSのセキュリティリスクを軽減できるだけでなく、業務の効率化や生産性の改善を図ることができるでしょう。

無料サービスの個別の問い合わせは不可

セキュアチェックの方針としては「無償プランに対する個別のベンダー照会(問い合わせ)は不可」としており、公開されている情報の確認・整理・転記に限定して対応を行っています。

弊社では、公開情報を「企業が自社のリスクを自己判断するために必要となる最低限の一次情報」と位置付けています。本サービスは、その公開情報の整備・可視化に特化し、非公開情報の確認や詳細な条件調整については「契約で解決していただく」という役割分担を推奨しています。

対応不可の無料プランの問い合わせ例
ベンダー公式の公開情報を収集・整理してほしい (トラストページ、利用規約、プラポリ、機能比較、公開FAQ など)
公式の公開情報から“分かること/分からないこと”を仕分けしてほしい (SLA有無、監査ログ可否、認証機能 など)

個別の問い合わせ対応が難しい5つの理由

  • ①:契約上の前提の問題
  • ②:回答責任の所在の問題
  • ③:有償版との差別化の問題
  • ④:継続性と再現性の確保の問題
  • ⑤:リスクの適切な配分の問題

個別のベンダー照会を非対応とする理由は、以下の通りです。

①:契約上の前提の問題

無償プランは保証しない前提で提供されているため、ベンダー側に回答義務は通常ありません。当社が第三者として照会しても、正確性や完全性を担保する回答は得られないことが多いです。

②:回答責任の所在の問題

ベンダーからの口頭かつ非公式での回答は、将来の変更や解釈違いが発生し得ます。誤情報の伝達リスクや責任の錯綜を避けるため、一次情報は公開ドキュメントに限定しています。

③:有償版との差別化の問題

仕様詳細・監査報告・SLA・個別見解などは、有償契約で初めて入手できる差別化資産であります。無償の前提で“有償相当の回答”を期待するのは、モデルとしての齟齬が生じます。

④:継続性と再現性の確保の問題

個別照会は、どうしても担当者依存・非再現的になりがちです。公開情報ベースなら、引用・保全・更新トラッキングが可能で、社内監査や将来の説明にも耐えることができます。

⑤:リスクの適切な配分の問題

企業は公開情報で判断し、受容できない不確実性は契約(有償)で低減するのが原則です。無償のまま不確実性を低減することは、ビジネス上とても困難なことなのです。

無料サービスでよくある質問|Q&A

Q:無料でも通信を暗号化していれば安全ですよね?

A:いいえ。

HTTPSなどの通信の暗号化は「やっていて当たり前の前提条件」であって「それだけで安全」とは到底いえません。暗号化で守ることができるのは、対象の端末からサービスの入口までの通信経路だけです。

Q:会社が小さいから狙われる心配は少ないですよね?

A:いいえ。

会社の規模が小さいことと狙われにくいことは、あまり関係がありません。むしろ、最近のサイバー攻撃の多くは、いきなり本社システムを狙うのではなく、セキュリティが弱そうな取引先や中小企業が狙われる傾向にあります。

Q:トラブル発生時は誰が助けてくれますか?

A:無償プランのサポートは限定的な場合がほとんどです。

無償プランのサポートは、個別に問い合わせても回答までに時間がかかったり、返信がなかったりすることが多いため、過度な期待は厳禁です。いざというときは「自分たちで何とかする」という前提で使用するのが無難でしょう。

まとめ:重要なのは“会社としての線引き”

本記事では、無料のクラウドサービスが安全ではない理由の解説に加えて、企業が誤解しやすいポイントや無料製品にありがちな失敗事例など、現場担当者に役立つポイントを徹底解説していきました。

無料のサービスは、コストをかけずに業務を効率化できるという大きなメリットがある一方で、その安全性については、利用者側が負うべき責任として、ある程度のリスクは許容することが求められます。

  • どのような業務に使用してよいのか
  • どの用途までなら使用してよいのか
  • 使う前にどの公開情報を確認するのか

無料のサービスを利用する際には、あらかじめ利用のルールと線引きをしっかりと決め、公開情報のチェックから、受け入れられる範囲を明確にすることが重要です。

そして、どうしても不確実性を受け入れられない領域については、無料のサービスに任せるのではなく、契約にもとづく有償サービスでリスクを下げるのが鉄則です。

無料の便利さを上手に活かしながら「どこから先は契約で守るべきか」という境界線を、会社としてキチンと決めておくことが、これからのSaaS活用には求められるのではないでしょうか。

セキュリティ用語ミニ解説

利用規約

サービス利用の前提条件を定める基本契約文書です。ユーザーの権利義務、禁止事項、責任制限、知的財産・データ取扱、料金・解約/停止、準拠法・裁判管轄などを規定します。特に、改定手続(通知方法・発効日)と事前同意の扱い、事業者の変更権限と免責範囲などは必ず確認するようにしましょう。

約款

不特定多数との取引に用いる定型契約条項の総称です。適用範囲・料金・免責・準拠法・紛争解決等を定め、個別交渉なく一律適用されるのが特徴です。特に、サービスを導入する企業側は、変更権限や通知方法を確認し、受容できない条項がないかを事前に点検することが重要です。

SLA

Service Level Agreement(サービス品質保証)の略称です。稼働率、応答・復旧目標、サポート体制(窓口・優先度)、測定方法や除外条件、違反時の救済(クレジット等)を定めます。無償プランでは未提供や参考値が多いため、対象範囲・測定定義・例外などを必ず確認するようにしましょう。

監査ログ

だれが・いつ・どこから・何を操作したかを記録する証跡です。評価指標としては、改ざん耐性(書換防止/署名)、時刻同期、保持期間、出力粒度(管理操作・認証/権限変更・データ閲覧/削除)やエクスポート可否などがあり、ログによってインシデント対応や不正調査、法令/監査での再現性を担保することができます。

プライバシーポリシー

事業者が行う個人情報の取り扱い方針です。個人情報の取得・利用目的・保存期間・第三者提供・共同利用・国外移転、安全管理措置、開示/訂正/削除手続、問い合わせ窓口等を示します。クッキー/行動計測の扱いと同意・撤回方法、改定時の通知と発効などは必ず確認するようにしましょう。

多要素認証

ログイン時の認証方法として、2つ以上の要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。パスワードだけでなく、スマホアプリの承認やワンタイムコード、ICカードや指紋認証など、パスワードが漏えいしたとしても、追加の要素がなければログインすることができないため、なりすましや不正アクセスのリスクを大幅に低減することができます。

IPアドレス接続制限

あらかじめ許可したIPアドレスの通信だけを受け付ける仕組みです。会社拠点やVPN経由のアドレスなど、許可するIPアドレスを事前に設定しておくことで、不正な場所からのアクセスを遮断することができます。また、IDやパスワードが盗まれたとしても、許可されていないネットワークからはそもそもシステムに接続することができないため、リモート攻撃に対する防波堤としての役割を果たします。

パスワード堅牢性

パスワードに設定する文字列の複雑性を表す言葉です。パスワードの設定においては、他者に類推されにくい複雑なパスワードにすることが重要です。例えば「123456」や「password」のような単純な文字列は、攻撃者が使うリストやプログラムであっという間に突破されてしまうため危険です。そのため、パスワードを十分な長さにしつつ、英大文字・小文字・数字・記号を混ぜて作ると安全性が高まります。

特権管理者と一般ユーザーの違い

「特権管理者」とは、ユーザーの追加や権限の変更、システム設定の変更やログの閲覧など、システム全体へ影響を及ぼす強力な操作ができるユーザーを指します。一方の「一般ユーザー」は、自分の業務に必要な範囲だけ操作できるよう権限が絞られているユーザーを指します。適切な権限設定を行うことで、誤操作やアカウントの乗っ取りが発生した場合でも、システム全体ではなく限定的な範囲に被害を抑えることができます。

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