バックアップの取得は、無料ツールでも十分だと思われている方も多いでしょう。しかし、いざランサムウェアや災害の被害を受けた際には、専用のバックアップ機をなぜ用意しなかったのかと後悔される方も少なくありません。

実際に震災被害を受けた方のなかには、設計データや顧客データなど事業の基幹となるデータを紛失して廃業を余儀なくされた方もいらっしゃいました。そこでおすすめなのが、バックアップアプライアンスの導入です。本記事では、バックアップアプライアンスがなぜ必要とされるのか、解決できる課題について説明します。

バックアップアプライアンスとは

バックアップアプライアンスとは、企業の保有データやシステム環境のバックアップを取得する専用の装置を指します。専用機であるため余計な機能を省くことができ、性能の高さに比べて安価なコストで設置できるのが特徴です。

バックアップアプライアンスには「ターゲット型」「統合型」の2種類があります。ターゲット型は、ストレージだけが対象となり、すでに使っているバックアップソフトを変更することなく利用できます。一方で統合型は、バックアップサーバーとターゲット型を包括しており、システム環境を丸ごと保存することにも利用されます。

データバックアップの目的は、マルウェアによるデータ破壊や災害時のBCP対策のデータ復旧などリスクに備えることです。バックアップアプライアンスを導入すれば、データ破壊や暗号化のリスクが起きたとしても、速やかにデータを復旧して事業継続を実現します。

解決できる課題1:リスクに備えてバックアップを取得できる

データバックアップには2つの目的があります。1つはデータを損失した場合の保険の役割、そしてもう1つはデータ改ざんに備えて証拠記録として残しておくことです。

データの損失には、次のようなものがあります。

  • 人的ミス:ファイルの削除や更新の誤りなど
  • ハードウェア障害:パソコンやサーバーの物理的な破壊、経年劣化など
  • ソフトウェア障害:仕様変更による不具合、バグなど
  • 災害:停電、火災、震災など
  • 犯罪:データ改ざんやウイルス感染など

データの損失や改ざんの被害から回復するにはバックアップの取得以外に方法はないため、リスクに備えて復旧データを確保しておきましょう。

解決できる課題2:肥大した転送容量を削減できる

バックアップツールのなかには無料で使えるものもありますが、データが肥大し始めると転送時間が長くなり、次第に営業時間にまで長引くようになります。営業時間中にバックアップを取得すると、システムの処理を圧迫してシステムリソースを取られる可能性があるでしょう。

そのため、バックアップアプライアンスの機能には、毎日フルバックアップを取るのではなく、差分データだけを取得する増分バックアップがあります。データ復旧に必要となるフルバックアップを残しながらバックアップ取得時間を90%以上カットできます。

解決できる課題3:マルウェアに対してセキュリティを確保できる

近年では利用者のシステムへのアクセスを制限し、解除するために身代金を要求するランサムウェアの被害が拡大しています。

一度被害を受けると解除するには暗号化キーがなければ絶望的です。

システムを復旧させるには、サブシステムにバックアップデータを復元させる方法があります。フルバックアップが残っていれば、環境設定も含めてまったく同じシステムを再構築できます。

また、マルウェアの監視機能によるリスクを検知すると通知する機能を搭載している機種もあります。バックアップアプライアンスによって、復旧データとセキュリティの確保を実現できます。

解決できる課題4:不足したストレージを増量できる

バックアップ専用機であるアプライアンスであれば、ストレージの増設は比較的簡単に行えます。

通常、ストレージを増設する際にはハードディスクを交換することで容量を増やしますが、バックアップアプライアンスではRAID構成を組むことにより、ハードディスクを交換せずに増設することで不足したストレージを増量できます。

バックアップアプライアンスは、設計時のサイジングが難しいストレージにおいて、将来的な業務拡大に伴うデータ増加に備えることができます。

解決できる課題5:災害時のデータ復旧に活用できる

大規模な災害が起きて拠点地域全体が被害を受けると、システムのバックアップも含めて一緒に被災する可能性があります。絶望的な被害を生んだ東日本大震災では、全体の33.1%に及ぶ企業や自治体が実際にデータ損失の被害に遭い、データの復元は叶いませんでした。災害時に備えてデータ保管は同じ地域に偏るのではなく、東日本と西日本または外国のように離れた地域に分散させる必要があります。

バックアップアプライアンスには、遠隔サーバーに保管する仕組みやクラウドへ2次保存する仕組みが用意されています。クラウドでは2拠点以上にデータを保存しているため、地域一体が被害を受ける大規模災害にあってもデータは守られます。

バックアップアプライアンスを導入して効率的にリスクへ備えよう

バックアップアプライアンスには、会社の基幹データを守り抜く備えがさまざま用意されています。ランサムウェアや災害の被害で失われたデータは、バックアップがなければ復旧することはありません。BCP対策、データ改ざんなどリスクに対して業務継続に備えられるバックアップアプライアンスを導入しましょう。

この記事の執筆

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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