ヘルプデスクもテクニカルサポートも、どちらもコールセンターのようなものとして、なんとなく理解している人も多いでしょう。しかし販売業に例えると、ヘルプデスクとテクニカルサポートは小売業と卸売業ほどの違いがあるので、それぞれの業務領域について正しく理解する必要があります。この記事では、ヘルプデスクとテクニカルサポートの違いを業務領域の観点から解説します。
ヘルプデスクとテクニカルサポートの違い
ヘルプデスクは実際にお店を構える小売業に近いイメージであり、テクニカルサポートは専門の商品を取り扱う卸売業に近いイメージです。ヘルプデスクは幅広く軽微な問い合わせに対応し、テクニカルサポートは技術的に深いエラーに対応します。
障害の切り分けは1次切り分けと2次切り分けに分けられ、既知のエラーである1次切り分けはヘルプデスクでも対応できる可能性があります。しかし、根本原因を追求する2次切り分けはテクニカルサポートでなければ技術的に難しいでしょう。
ただし、ヘルプデスクのスキルが劣っているということでは決してなく、ITリテラシーの低い顧客から正しい情報を聴き取り、主観的で曖昧な情報を排除して客観的で正確な情報だけをテクニカルサポートにエスカレーションする必要があります。
ヘルプデスクはコミュニケーション能力に加えて論理的な思考が求められ、テクニカルサポートは技術的に高度なスキルが要求されます。
ヘルプデスクの業務領域
ヘルプデスクとは、製品の基本的な操作方法の説明から故障や不具合による障害対応の受付までを行う職種です。テクニカルサポートより技術的なサポートは浅く、公式サイトのQ&Aでも解決できるような軽微な操作説明まで対応する範囲の広さが特徴です。
ヘルプデスクでも解決できない技術的な問い合わせは、テクニカルサポートにエスカレーションします。販売業で例えるなら、実際に顧客と対面してさまざまな商品を取り扱う小売業に近いイメージです。
ヘルプデスクの必須スキル1:接客スキル
ヘルプデスクで求められるのは、小売店のように好印象を与えるコミュニケーション能力です。既知のエラーやマニュアルで解決できる簡単な操作説明、インシデントの手続きなど対応する範囲は広くなります。
ヘルプデスクで解決できないインシデントはテクニカルサポートにエスカレーションするため、技術的な知識の深さよりも利用者の要望や意見を正しく収集するスキルが必要です。ヘルプデスクには、一般のユーザーともエンジニアとも会話できるコミュニケーション能力が特に求められます。
ヘルプデスクの必須スキル2:パソコンの基本的な操作
ヘルプデスクは、コールセンターと同じように管理システムへアクセスする必要があります。そのため、顧客管理システムやインシデント管理ツールなどにアクセスするコンピュータ操作のスキルは必要です。
問い合わせを受け付けた顧客情報や質問内容の入力、既存案件の検索などをキーボードで操作します。また、個人情報保護などのITサービスマネージメントに関わる最低限の知識は身につけておく必要があるでしょう。ヘルプデスクには、システムを運用するための基本的なパソコンの操作スキルが求められます。
ヘルプデスクの必須スキル3:会話の要点をつかむスキル
ヘルプデスクに連絡を入れるのは、プロのエンジニアからIT知識のない一般のユーザーまでさまざまです。ヘルプデスクは、幅広い相手との会話を成功させなければなりません。製品に対する技術的な知識はもちろん、一般のユーザーにも伝わりやすい説明力が求められます。
また、漠然とした話し言葉であっても専門用語であっても、相手の意図を正しく理解する必要もあります。ヘルプデスクには、テクニカルサポートにエスカレーションする情報を利用者から正しく聴き出すために、会話の要点をつかむスキルが求められます。
テクニカルサポートの業務領域
テクニカルサポートとは、IT関連製品の問い合わせを解決に導く職種です。ヘルプデスクより技術的な知識が必要とされ、公式サイトのQ&Aでは解決できない専門的なサポートを提供します。
テクニカルサポートは、ヘルプデスクで解決できなかった技術的な問い合わせのエスカレーションを受けて解決に導きます。販売業に例えるなら、専門的な商品を取り扱う卸売業に近いイメージです。
テクニカルサポートの必須スキル1:製品に対する深い理解
テクニカルサポートは、ユーザーマニュアルでは解決できない技術的なサポートが業務の中心になります。製品に使われているシステムの理解に優れている必要があり、ハードウェアからソフトウェアに至るまで深い知識が求められます。
また、一般ユーザーだけでなく、ITスキルに知見のある企業のシステム部や社内SEが問い合わせることもあります。ヘルプデスクよりもSEに準ずる高度な知識を求められるのが、テクニカルサポートの特徴です。
テクニカルサポートの必須スキル2:ハードウェア、ソフトウェアに関する知識
システムの技術的な問題を解決するには、ハードウェアやソフトウェアに関する幅広い知識が求められます。クラウドが発展した現代では、システムが単独で動作することは少なく、ほかのシステムと連携して動作することがほとんどです。
そのため、自社のシステムに深い知見を有するだけでなく、顧客のシステム環境も含めたトラブル解決をしなければなりません。ハードウェアやソフトウェアに関する幅広い知識を求められるのが、テクニカルサポートです。
テクニカルサポートの必須スキル3:ログ解析や故障を特定するスキル
ユーザーマニュアルにも載っていないインシデントを解決するには、システムが出力するエラーメッセージや異常ログを検知しなければいけません。エラーメッセージにはエラーコードやシステム情報も含まれるため、トラブル解決の道しるべとして活用できます。
テクニカルサポートでは、これらのログ解析をして問題点を洗い出し、具体的な解決策の提示に役立てます。システムログやエラーログを解析するスキルが、テクニカルサポートには必須です。
ヘルプデスクとテクニカルサポートの業務領域を理解して組織を強化しよう
ヘルプデスクとテクニカルサポートには問い合わせ内容に関わる深さの違いこそありますが、どちらも専門的で論理的なスキルが必要とされます。テクニカルサポートの業務が煩雑になっていたり、ヘルプデスクの業務が技術的に深い知識を求められたりする場合は、それぞれの特徴を理解して組織の再編成が必要になることもあるでしょう。
また、ヘルプデスクとテクニカルサポートのどちらか一方しか設けていない場合は、部署の新設を検討に入れてもよいでしょう。ヘルプデスクとテクニカルサポートの業務領域を正しく理解して、組織の強化を実現してください。