書類での契約に慣れている人の中には、タイムスタンプや電子署名などの電子文書は契約の効力が薄いと思う人も多いでしょう。しかし、コロナ禍で加速したインターネット網を利用したオンライン取引は、契約のデジタル化も加速させています。

そこで本記事では今後の契約のあり方を変えるであろう電子契約サービス、その中でもタイムスタンプの概要や法的効力について解説します。

タイムスタンプとは?

タイムスタンプとは、郵便局の消印のように、記録された日時より以前に電子文書が存在していたことを証明する技術です。タイムスタンプで認定された日時以降にデータが書き換えられていないことも証明します。

かつては、電子データで税務関連の書類を保管するには、「電子帳簿保存法」に定められたタイムスタンプでの証明は欠かせない要件でした。電子署名や電子証明書の技術が進化しても、電子ファイルでは改ざんや日時変更が簡単にできてしまうからです。

そのため、「電子帳簿保存法」では、第三者機関による正確な日時情報を付与するタイムスタンプで電子文書に法的な効力を持たせていたのです。

しかし、2022年に「電子帳簿保存法」が改正されたことにより、会計ソフトやPDFの取り込み履歴が残るなどの条件を満たせばタイムスタンプは不要となっており、今ではタイムスタンプで整合性を保つことは必須ではなくなっています。

電子契約の目的

デジタル改革が起きるまでは、企業間の取引時には書類を用いた契約書で締結するのが当然でした。しかし、電子署名法やIT書面一括法などの電子契約に関する法律が世界各国で整備されたことで、企業間の契約もデジタル化に移行する動きが進んでいます。

電子契約を採用すると、契約のために現地へ赴いたり、契約書を郵送したりすることによる費用や時間を削減できます。また、契約書類の整理や検索速度の向上など事務労力の軽減にも役立つことでしょう。

電子契約を導入することによって、企業はリモートワークの推進や契約締結までのリードタイムの短縮など様々なメリットを受けることができます。

電子契約の法的効力

紙の契約書に慣れていると、電子契約書に不安を感じる人も多くいます。ここでは実際の法律と照らし合わせて電子契約の法的効力について解説します。

電子署名

電子署名とは、紙の書類にサインしたときと同じように電子ファイルに執筆した自筆のサインです。2001年に制定された電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)と呼ばれる法律により、電子署名が行われているときは真正に成立したものと推定すると定められています。

店舗での支払いや宅配の受け取り時にサインを求められて、タブレットにタッチペンで自筆のサインを書いた経験のある人も多いのではないでしょうか。このように電子署名は、書面での契約を簡略化してデジタルデータで管理する機能を提供します。

電子証明書

電子証明書とは、インターネット上で効力を持つ「印鑑証明書」にあたるものです。マイナンバーカードに搭載されているように電子的な「身分証明書」としての側面もあり、官公庁の公的個人認証サービスにも利用可能です。

電子証明書は、「認証局」と呼ばれる官公庁や民間の発行機関から取得できます。マイナンバーカードであれば、所得税の確定申告やコンビニでの住民票の写しの取得などを電子証明書の機能を用いて実現します。

タイムスタンプ

タイムスタンプとは、記録した日時にその電子ファイルが存在していたことを証明する仕組みです。また、その日時以降にデータが改ざんされていないことも証明します。

電子帳簿保存法などの法律により法的効力が認められており、総務省による認定を受けた第三者機関「一般財団法人日本データ通信協会」で認証されます。電子署名の存在証明や電子データの改ざん防止などに、タイムスタンプの機能を利用することが可能です。

海外の企業との電子契約は有効か?

日本国内で海外企業と締結する際には、日本法が準拠法となるため電子契約は有効です。しかし海外で締結する場合には、必ずしも日本法が準拠法となるわけではありません。日本法が準拠法でない場合、電子契約の有効性は現地の法律に基づき判断されます。

アメリカやEU加盟国、アジアの多くの地域では、電子取引は活発になってきており、法的にも整備されていることがほとんどです。しかし、電子契約が有効となる要件は国ごとに異なるため、事前に細部まで確認しておきましょう。

また、契約締結時には訴訟や裁判はどちらの国で提起するのか定めておくことも重要です。将来的なリスクを回避するためにも、契約締結前に弁護士へ相談しておくと安心でしょう。

タイムスタンプの仕組み

タイムスタンプが法的効力を持つほど信頼されているのか、不思議に思う人も多いでしょう。パソコンで記録した日時とタイムスタンプの仕組みには、どんな違いがあるのでしょうか。

電子契約書類を作成したパソコンの日時は、驚くほど簡単にファイルの作成日や更新日時などを修正できるため、法的効力を持たせると改ざんにより不正が横行してしまいます。

一方で、タイムスタンプはハッシュ値と呼ばれるデジタルデータの刻印を残すことによって、第三者認証機関が登録日時の正しさを証明する仕組みです。そこで、タイムスタンプの正しさを証明する第三者機関は、総務大臣の認定を受けており、ファイルの記録した日時に間違いがないことを確実にしています。

タイムスタンプの名前から印影のようなデジタル図形を想像される方も多いでしょう。しかし、郵便局の消印のように人が見て分かるものではなく、暗号化されたデジタルデータを用いて記録した日時の正しさを証明しています。

国内の企業であれば電子契約にタイムスタンプは有効

タイムスタンプは、インターネットを通じた電子契約を円滑にして正しく管理するための技術です。日本国内では法整備が整っており、タイムスタンプは法律的に有効だと言えます。

一方で、海外では相手国の法律に準拠するものの、多くの国ではすでに法整備が整っており、電子契約による手軽さとスピード感の恩恵を受けています。

現在ではタイムスタンプが法的に求められる必要性は減りましたが、確実性を高めたいなら正確な契約の締結にはタイムスタンプを利用するのも1つの方法です。紙での契約書を習慣としている企業も、恐れずに電子契約の導入を検討してみてください。

この記事の執筆

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

おすすめ記事