IT用語で見かける「デジタルアセット」は、資産を意味する「仮想通貨」だと思っている方もいるでしょう。しかし、それだけの意味ではありません。本記事では、デジタルアセットとビジネスに活用するデジタルアセットマネジメント(DAM)について解説します。

デジタルアセットとは?

デジタルアセットとは、「資産として価値のあるデジタルデータ」を意味します。狭義には仮想通貨を指す意味でも使われますが、IT用語では仮想通貨だけでなく資産価値のあるデジタルデータの全てを意味します。例えば、過去に実施したアンケートの集計結果や一度だけSNSに投稿されて眠っている写真やイラスト、テキストデータや音声データなども含まれるのです。

デジタルアセットは、ほとんどの企業で管理されずに死蔵しており、その割合は全体の8割に及ぶとも言われています。

なぜ今デジタルアセットが注目されているのか?

デジタルアセットが注目を集めている理由について解説します。

非構造化データの発掘・活用ができる

企業に蓄積されながら、活用されないデータを非構造化データと言います。非構造化データは、日常的に管理されているわけではないため、一度使われたまま無意味に企業ストレージの容量を増やし続けています。

そこで、過去に撮影した写真やイラストなどを構造化データに置き換えて検索しやすくすれば、余計な経費をかけることなく再利用して企業資産を発掘できるでしょう。

このように、デジタルアセットを管理するツールを「デジタルアセットマネジメント(DAM)」と言います。デジタルアセットマネジメントを導入すれば、テキスト検索でデジタルコンテンツを検索できるようになるのがメリットです。

デジタル著作権などの管理が必要となった

デジタルアセットは、著作者の権利を守ると同時に著作権侵害のリスクも伴います。企業がデジタルデータを利用して著作権を侵害した場合、著作者はSNSや動画を用いて公然と違反を指摘できるようになっています。

アナログの時代に著作権を正確に管理していたのは、メディアや一部の大手企業だけだったのが実情です。しかし、デジタル活用の進んでいる現代では、中小企業、個人経営の店舗に至るまでコンプライアンスを守ってデジタルコンテンツを運用する必要があります。

デジタルアセットマネジメントのなかには、広告起用に採用したモデルの肖像権やイラストレーターの著作権などを管理する機能を搭載するツールもあります。著作権侵害を犯すリスクを回避する意味でも、デジタルアセットマネジメントが注目されているのです。

オンラインでのデータの共有が求められている

営業向けに販促動画をDVDやUSBに保存して持ち出して、貸出管理簿に媒体の利用日時を記入していた営業担当者もいることでしょう。しかし、このようなオフラインのストレージでは、持ち出し中に媒体を破壊したり紛失したりするリスクは避けられません。

また、クリエイション部が最新のコンテンツを作成しても、営業部が実際にデータを活用するまでに時間がかかるケースも多々見られます。近年の営業スタイルでは、営業資料をオンラインストレージからすぐに取り出すスピード感も求められています。

デジタルアセットを管理するツールを用いれば、このような問題も解決できます。DAMを活用すると、権限を与えられたユーザーはすぐにそのコンテンツを利用できるようになります。

オンラインストレージに保管しているような、誤操作によるデータ破壊の心配もありません。クライアントから営業資料を提供してほしいと言われても、URLにアクセスすることですぐに確認してもらうこともできます。

デジタルアセットの活用にはDAMを導入しよう

デジタルアセットの活用には、デジタルアセットマネジメント(DAM)が最適です。

デジタルコンテンツを一元管理

従来のデジタルデータの保管では、DVDや磁気テープなどの外部媒体に保存して記録するのが一般的でした。しかし、社内外でのファイル共有では、持ち出しに時間がかかるうえに、媒体の破壊や紛失などのリスクが伴います。DAMを導入すればデジタルアセットを一元管理できるので、URLを共有するだけでファイルを共有可能です。

ITリテラシーの高い企業のなかには、クラウドストレージを利用してデジタルアセットを保管しているケースもあるでしょう。しかし、ツリー構造のファイル保存では、日付データやカテゴリファイルで分類することがほとんどです。

いくつものファイルを経由して、なかなか目的のファイルが見つからなかった経験のある人も多いでしょう。担当者によってカテゴリの分類が異なっていたり、保管日時が分からなかったり、検索を困難にする要員はいくつも考えられます。

DAMの導入によってファイルを一元管理すれば、検索スピードが向上し、複数カテゴリに分類したデータ保存などで迷うことがありません。

デジタルデータにメタデータを付与

DAMは、デジタルコンテンツの1つひとつにメタデータを付与できます。例えば、スニーカーの画像に「スニーカー」「靴」といったメタデータを付与することで、時間をかけずに検索できるようになるでしょう。さらには、著作権管理の担当者でなくても、その画像に映っている著作権のデータを確認できるようになります。

将来的にはAIの画像認識や音声認識によって、デジタルアセットをインストールするだけで自動的にメタデータを付与する機能も期待されています。

ブラウザベースのデータ送受信

DAMでは、社内外の関係者に向けてオンラインで簡単にデータを共有することが可能です。コンテンツの変更やプレビューは権限によって制限できるため、クリエイターでない担当者にも安全にデータを共有できます。

フライヤーやCM動画において、複数のクリエイターと連携してコンテンツを制作することもあるでしょう。DAMは、デジタルコンテンツを制作する環境をブラウザベースで提供できます。したがって、クリエイター個人が所有するPC環境による不具合などが起こりません。

デジタルアセットを活用して企業の価値を高めよう

企業に眠るデジタルアセットの価値が見直され始めています。写真やイラストをその度に作り直さなくても、過去に使ったオリジナルデータを活用して、経費を削減することも可能です。

将来的には、AIによってデジタルアセットの自動分類も可能になる日が予想されますので、益々注目を集めることでしょう。

この記事の執筆

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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