給与担当者にとって、所得税の計算は身に付けておくべき知識です。しかし一般的に税金関係は複雑でわかりにくいため、間違った知識を持ってしまうことがあります。そこで今回は、給与計算の仕方と所得税を徴収する方法について解説します。

給与計算で所得税はどうやって決まる?

所得税は、個人の1年間(1月1日から12月31日まで)の所得に課される税金です。一般的に会社員は毎月の給与から徴収され、個人事業主であれば毎年3月に確定申告を行って所得税を納めます。

累進課税制度

所得税には「累進課税制度」が適用されており、収入が多い人ほど税率が高くなる仕組みです。具体的には以下のような税率が適用されます。

<所得税の速算表>

課税される所得金額 税率 控除額
1,000円 から 1,949,000円まで 5% 0円
1,950,000円 から 3,299,000円まで 10% 97,500円
3,300,000円 から 6,949,000円まで 20% 427,500円
6,950,000円 から 8,999,000円まで 23% 636,000円
9,000,000円 から 17,999,000円まで 33% 1,536,000円
18,000,000円 から 39,999,000円まで 40% 2,796,000円
40,000,000円 以上 45% 4,796,000円

出典:No.2260 所得税の税率|国税庁

たとえば所得金額が200万円だった場合、所得税は以下の金額になります。

2,000,000円×10%-97,500円=102,500円

所得税を求める計算式

所得税を求める計算式は以下のようになります。

所得税額=課税所得(①給与収入(年間収入)ー②給与所得控除ー③所得控除)×税率ー控除額

それぞれの意味について詳しく見ていきましょう。

①給与収入

手当を含めた総支給額のことで、税金および社会保険料などが引かれる前の金額を指します。

②給与所得控除

給与総収入から差し引きできる控除のことで、給与所得者だけに適用されます。個人事業主の場合だと、売上から必要経費を差し引いた金額に税金が課されますが、会社員にとっての必要経費にあたるものが「給与所得控除」です。通常は年末調整で適用して再計算を行います。

③所得控除

人的所得控除とも呼ばれ、給与所得控除を差し引いたあとにさらに差し引きできる金額です。各納税者の個人的事情を加味するためのもので、それぞれ要件が定められています。所得控除は以下の15種類になります。

所得控除の項目

  1. 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)
  2. 医療費を支払ったとき(医療費控除)
  3. 社会保険料控除
  4. 小規模企業共済等掛金控除
  5. 生命保険料控除
  6. 地震保険料控除
  7. 一定の寄附金を支払ったとき(寄附金控除)
  8. 障害者控除
  9. 寡婦控除
  10. ひとり親控除
  11. 勤労学生控除
  12. 配偶者控除
  13. 配偶者特別控除
  14. 扶養控除
  15. 基礎控除

出典:No.1100 所得控除のあらまし|国税庁

給与計算で所得税を計算する流れ

所得税を計算する流れは以下のようになります。

・ステップ1:給与所得の計算

・ステップ2:課税所得の計算

・ステップ3:所得税の計算

年収400万円の場合、どのような計算になるのか見ていきましょう。

ステップ1:給与所得の計算

1年間の給与収入から給与所得控除を差し引きます。給与所得控除額は給与等の収入金額に応じて以下のように定められています。

出典:No.1410 給与所得控除|国税庁

ステップ2:課税所得の計算

給与所得から所得控除を差し引きします。所得控除は全部で15種類あり、なかには年末調整で対応できないものがあります。その場合、給与所得者本人が確定申告を行う必要があります。

今回は配偶者の合計所得が45万円で、配偶者控除を適用する計算です。

ステップ3:所得税の計算

課税所得に「所得税の速算表」に記された税率を乗じます。そこから控除額を差し引きすれば所得税が求められます。

給与から所得税を徴収する方法

従業員の給与に課される所得税は、源泉徴収という方法で徴収します。源泉徴収は給与所得の金額によって定められており、毎月の給与と賞与から予定額を徴収する制度です。具体的な方法を見ていきましょう。

給与に課される源泉徴収税額の求め方

源泉徴収税額は「源泉徴収税額表」から算出します。源泉徴収税額表には「月額」「日額」「賞与」の3種類があり、給与の支給形態に応じて使いわける必要があります。

たとえば社会保険料控除後の給与が20万円の場合、扶養親族が1名なら源泉徴収税額は3,140円になります。ただし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が従業員から提出されていない場合は2万900円が適用されます。

賞与に課される源泉徴収税額の求め方

賞与では「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」を使います。

賞与の場合、賞与支給の前月に支払われた給与を基準として計算します。はじめに前月の給与から通勤手当などの非課税所得を除外して、さらに社会保険料を差し引きします。算出された金額と従業員の扶養人数を一覧表に照らし合わせると「賞与の金額の乗ずべき率」が決定され源泉徴収税額を計算することができます。

所得税の過不足精算は年末調整で

給与及び賞与から差し引きする源泉徴収税はあくまで予定の金額です。給与に反映されていない控除や給与の変更があることで誤差が生じてしまいます。その誤差を精算するのが年末調整で「年末調整のための算出所得税額の速算表」を用いて行います。

所得税を求める計算式ははじめに説明した通りで、年末調整ではさらに追加が必要です。ポイントは赤字で記した「所得控除」「住宅ローン控除」「102.1%」の3つになります。

年調年税額=(課税所得(①給与収入(年間収入)-②給与所得控除-③所得控除)×税率-控除額-住宅ローン控除額)×102.1%

・所得控除

所得控除に関わる証明書は、毎年10月中旬から11月にかけて従業員の元に送られます。所得控除を行うには、証明書とともに申告書を提出してもらわなければいけません。年末調整では提出された書類をもとに再計算を行います。

・住宅ローン控除額
住宅ローン控除とは、個人が住宅ローン等を利用してマイホームの新築、取得または増改築等をした際に、入居時から10年間にわたり所得税や住民税の一部が控除されるものです。「年末調整のための算出所得税額の速算表」で算出された金額からさらに差し引いて「年調所得金額」を計算します。

出典:一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁

・102.1%

102.1%というのは、所得税に「復興特別所得税」を加えた金額です。東日本大震災から復興するための施策として平成23年に交付され徴収が義務付けられています。

参考:個人の方に係る復興特別所得税のあらまし|国税庁

ツールを使えば所得税計算はラクになる!

所得税の計算はよく似た言葉と複雑な計算式が伴うため、給与担当者にとって手間のかかる業務です。しかし国に納めるべき税金は正確な金額で徴収しなければいけません。

そこでおすすめしたいのが給与計算ツールです。ツールを使えば社会保険料や税率が自動で最新の状態に更新されるため、所得税計算がラクになります。気になる方はぜひ試してみてください。

この記事の執筆

honyakuma

ライター

システム会社勤務のサラリーマン。これまで物流、バックオフィス系のシステムに従事。「ITをわかりやすく」をモットーにWEBライターとして活動中。

この記事の監修

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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