給与計算は、毎月正確に行わなければならない作業で、ミスは許されません。しかし従業員が増えたり、ルールが変わったりすることで、ミスが起こることもあるでしょう。

そこで今回は、給与明細でミスが発生した場合の対処法をご紹介します。ミスが起こる原因や改善策も解説しますので、ミスが頻発している場合は参考にしてください。

給与明細でミスがあったらどうなる?

給与明細でミスがあった場合は、下記のリスクが想定されます。

  • 労働基準監督署から是正勧告や罰則を受ける可能性がある
  • 遅延損害金が発生する
  • 納税額が変わる

給与計算のミスによって賃金未払いが発生すると、労働基準監督署から是正勧告や罰則を受ける可能性があります。なぜなら給与計算の間違いによる賃金未払いは、法律違反になるためです。故意であるか否かにかかわらず、法律に抵触することを理解しましょう。

また遅延損害金も発生します。遅延損害金とは、給与の支払いが遅延したことによる利息に相当します。ミスがなければ支払わなくてもよいお金を払うことになるため、給与計算のミスは会社の利益にも影響が及ぶということです。

最後に納税額を誤ることで、結果的に会社の信頼を損ねることがあり得ます。給与の額によって税金の額が変わる場合もあるため、給与計算が間違っていると納税額も誤っています。納税額に誤りがあると、遅延損害金が発生するだけでなく、社会的にも信頼を損なうでしょう。

このように給与計算のミスは、従業員との問題だけではなく、さまざまなところに影響を及ぼします。

給与計算でよくあるミス

給与計算では、下記のようなミスが頻繁に起こり得ます。

  • 確認漏れなどの単純ミス
  • 日割り計算のミス
  • 入力ミス

給与計算の中でもかなり多いミスは、確認漏れなどの単純なミスです。時間がない場合に確認を雑に行い、エラーに気づけないなどのミスが起こります。手入力が多い場合や、複数人で作業を分担している場合に頻出するミスでしょう。

次に起こりやすいのが、日割り計算のミスです。中途入社の方や退職者がいる場合は、日割り計算が発生します。日割り計算の場合は、日数を正しく計算することが当然必要です。加えて適応除外となる手当もあるため、制度面でも正確な情報を知っておく必要があります。

最後は入力ミスです。名前や数値を見誤って入力ミスするケースもあれば、焦っていて押し間違えることもあるでしょう。入力ミスの中でも特に多いのが、残業代の入力ミスです。残業代は人や日によって計算が違うため、ミスが多くなる項目だと考えられています。また割増賃金も同様の理由で、ミスが多い項目です。

給与明細でミスがあった場合の対処法

給与明細にミスがあった場合の対処法は、支払い不足なのか、過払いなのかで大きく変わります。いずれにせよ即座に本人へ謝罪し、正式な金額を支払うことが重要です。具体的に給与明細でミスがあった場合の対処法を解説します。参考にしながら、冷静に対応しましょう。

謝罪と給与明細の修正

給与明細にミスがあった場合は、まず本人に謝罪しましょう。給与明細にミスがあると、従業員に不信感を抱かれても仕方がありません。信頼を回復できるよう、いち早く丁寧に謝罪するのがポイントです。また不備があった理由も丁寧に説明してください。

謝罪が済めば、給与明細の修正をします。ほかの業務より優先順位を上げて、迅速に対応しましょう。焦って再びミスをしないよう、入念なチェックが必要です。

不足時の対応方法

支払いに不足があった場合は、速やかに調整します。給与は「全額支払いの原則」があるため、翌月の調整などは労働基準法違反になります。

振込での対応は、即時受け取りが可能な場合のみ認められます。振込日が翌営業日にならないよう気を付けてください。振込で即日受け取りができない場合は、現金で調整します。現金で対応する場合は、従業員から領収書をもらいましょう。

過払い時の対応方法

過払い時は当月内に調整することが望ましいです。ただし従業員から同意が得られていたり、労使協定で翌月調整が可能である旨が定められたりしている場合は、当月内でなくても問題ありません。

過払いの場合は、従業員の給与が結果的に少なくなることとなります。そのため従業員の同意を得ず、勝手に給与から過払い分を差し引くことは控えましょう。従業員の信頼を失う可能性があります。また過払い金が多い場合は、可能な限り早い対応が望ましいですが、多くない場合は急ぎすぎても印象が良くありません。従業員と会話をしながら、双方が納得いく形で調整を進めましょう。

給与明細のミスをなくすためには

給与明細のミスをなくすためには、下記の対策を検討しましょう。

  • ルール整備を行う
  • ソフトを導入する
  • アウトソーシングをする

まずは自社で比較的簡単にできる対策として、ルール整備を徹底しましょう。休日出勤や残業に関するルールを明確にすることで、イレギュラーの対応がなくなります。現状の就業規則を確認し、実態に見合ったルールを設定するようにしてください。ミスをしてしまうことはあり得るため、その後の対策が重要です。

従業員が増えるなどしてルールだけで対応できない場合は、ソフトの導入を検討します。給与計算ソフトを使うと、各種手当や社会保険、住民税なども自動で計算してくれるため、ミスがなくなります。給与計算において計算ミスなどの人為的なミスが多い場合は、システムを導入することで改善されるでしょう。

3つ目の対策方法は、アウトソーシングをすることです。給与計算には税制などの最新の知識が必要です。税制は変更が頻繁にあるため、即座に対応できなければミスが起こってしまいます。そこで税制や社会保険に詳しいプロへのアウトソーシングを検討しましょう。ミスが減るだけでなく経理を雇うコストや、時間も創出することができます。もちろん費用はかかりますが、ミスを防ぐために有効な手段です。

給与明細のミスは必ずなくそう

給与明細にミスがあると信頼問題にかかわります。従業員の信頼なくして会社は継続できません。ミスが起こった場合は、今回紹介した内容を参考に迅速に対応しましょう。

また対応する際は、「誠実に丁寧に」を意識してください。ミスをしてしまうことはあり得るため、その後の対策が重要です。まずは、給与明細にミスが起こらない仕組みづくりを徹底して行いましょう。

この記事の執筆

キサラ

ライター歴5年。IT、ビジネス、会計、その他ライフスタイルのジャンルも執筆しています。「読まれる記事」を書くことをモットーに活動中。

この記事の監修

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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