近年、AIによる業務の自動化やデジタル化が急速に進み、人事戦略のあり方も大きく変化しています。企業が激しい競争の中で成長し続けるためには、DX時代に対応できる人材を確保しなければいけません。
その中で注目されているのが「リスキリング」です。リスキリングとは、技術革新に対応するために必要な知識やスキルを学ぶことを意味します。今回は、企業がリスキリングに取り組む意義と得られるメリットについて解説します。
目次
リスキリングが注目されはじめた背景
リスキリングが注目されるきっかけとなったのが、2020年のダボス会議(世界経済フォーラム)です。「第4次産業革命に対応するために、2030年までに全世界で10億人をリスキングする」と宣言されたことで、世界中から注目されるようになりました。今では世界各国および各企業による資金援助が活発化し、教育プログラムの提供なども行われています。
出典:リスキリングをめぐる 内外の状況について|リクルートワークス研究所
また国内では、2022年10月の岸田総理による所信表明演説でリスキリングが取り上げられ、今後5年間で1兆円の投資を進めることが表明されています。具体的には以下の3つが掲げられており、これらを拡充してリスキリングを進めるというものです。
・非正規雇用を正規雇用に転換する企業や、転職および副業を受け入れる企業への支援
・民間専門家に相談してリスキングから転職まで支援する制度の新設
・企業への支援金の補助率引き上げ強化
企業がリスキリングに取り組む必要性
企業がリスキリングに取り組むべき理由は、以下の3つです。
DXの加速
リスキリングが必要とされる理由の1つに、DXの加速があります。企業がDXを進めるためには、デジタル分野に関わる知識やスキルが必要です。しかし、いざDXを進めようとしてもDXに精通した人材がおらず、DX化のボトルネックになっているのが現状です。このようなデジタル人材を確保するために、リスキリングに取り組む企業が増えています。
働き方の多様化
働き方の多様化もリスキリングが必要な理由の1つです。ここ数年の間で働き方は大きく変化しており、フレックスタイムやリモートワーク、ワーケーションといった対面の少ない勤務形態が増えています。会議や商談などがオンライン上で行われることも多く、変化に対応するためにスキル習得が求められています。
世界の大手企業の取り組み
世界では、すでに大手企業によるリスキリングの取り組みが実施されています。たとえば米国に本社を置く世界最大級の電気通信事業者AT&Tでは10億ドルもの投資が行われ、世界最大の電子商取引サイトAmazonでは7億ドルを投じて従業員の底上げを進めています。さらにAT&Tでは、リスキリングによって「社内技術職の 80%以上が社内異動によって充足」という結果が得られています。
企業がリスキリングに取り組むメリット
リスキリングへの取り組みは企業にとってさまざまなメリットがあります。
ビジネスの拡大
従業員が新しい知識やスキルを身につければ、物事を多角的に捉えられるようになりアイデアが生まれやすくなります。発想が柔軟になることで新しいビジネスモデルの創出や商品開発が可能となり、企業を成長させることにつながります。
業務効率化、及び生産性の向上
新しいスキルは業務効率化や生産性の向上に役立ちます。たとえば手作業で行っていた業務の自動化やデジタル化、業務フローの改善、新たな発想によるデータ分析など、さまざまな場面で身につけたスキルを発揮することができます。効率化が実現されれば重要な業務に集中できるようになり、全体的に質の高い仕事が可能となります。
採用コストの削減
採用活動や新しい人材の育成にはコストがかかります。デジタル技術に精通した人材であっても、業務に関わる知識はゼロのため、入社後の研修や教育が必要です。リスキリングで在籍する従業員に知識やスキルを身につけてもらえれば、イチから育成するよりも低コストで人材確保が行えます。
企業の成長
既存の従業員をリスキリングすれば、文化や社風を継承したまま企業を成長させることができます。たとえば新たなビジネスを立ち上げる際、新規採用の人材だけを配属すると、これまで築いてきた企業精神やノウハウが継承できなくなる可能性があります。企業を熟知した従業員をリスキリングすることで、自社の強みを活かした新しいビジネスを展開することが可能です。
リスキリングを進めるための3つのステップ
リスキリングを進めるためには3つのステップがあります。詳しく見ていきましょう。
事業戦略を踏まえて習得すべきスキルを選定する
リスキリングを進める際は、自社の事業戦略を踏まえたスキルの選定が必要です。どれほど高度な知識を身につけたとしても、実践できなければ意味がありません。まずは、取り組むべき業務と必要とされるスキルの洗い出しを行いましょう。
学習環境を整えサポート体制を作る
通常業務と並行して学習するための環境整備を行います。たとえば就業時間内に学習時間を設けたり自由な時間に使える研修ツールを導入したりすれば、従業員の負担を軽減することができます。1人ひとりの意思を尊重し、モチベーションを低下させない工夫が必要です。
獲得スキルを実践できる場を提供する
学習プログラム終了後は、業務で実践できる場を提供しましょう。リスキリングは知識を習得すれば終わりというものではありません。業務に活用されてこそ意味があるものです。習得した知識を現場で生かすことは、従業員のモチベーションにもつながります。
リスキリングを進める上で注意するべきポイント
リスキリングは以下の点に注意して進めましょう。
従業員の理解を得る
リスキリングを円滑に進めるには、従業員の理解を得ることが重要です。まずは、リスキリングを行う目的と必要性をしっかりと説明し、全社的な協力体制を作る必要があります。また対象者を選定する際も、社員の自主性やキャリアプランを加味した上で進めるのがポイントです。
従業員のモチベーションを向上させる仕組みを作る
学習を継続していくには、従業員のモチベーションを向上させる取り組みも必要です。たとえばチームを組んで取り組ませることや、成長を体感するためにフィードバックを行う、対象者にはインセンティブを用意するなどの仕組みがあればモチベーション維持に効果的です。従業員の意見を積極的に取り入れて、意欲向上につなげましょう。
中長期的に継続できる環境を整える
リスキリングを中長期的に続けていくためには、そのための環境整備が必要です。たとえば受講時間に従業員の意見を反映させることや、終業後の学習は残業に充てられるなどの仕組みがあれば従業員の負担は軽くなります。受講後にアンケートを実施するなどしてコンテンツも定期的に見直せば、今後の改善に役立てられます。
リスキリング研修を取り入れてDX時代に活躍できる人材育成を!
人材不足と言われている昨今、企業が成長し続けるためにはリスキリングへの取り組みが重要です。リスキリングは従業員の有効活用だけでなく、業務効率化や生産性の向上にも役立ちます。
リスキリングを進めるにあたり、おすすめなのが研修プログラムの活用です。幅広い教材が備わっており、受講者ごとの学習進捗も管理することができます。気になる方はぜひ試してみてください。