皆さんは、毎年アメリカで開催されている世界最大級のSaaSカンファレンス「SaaStr(サースター)」の存在をご存じでしょうか?

世界中のSaaSプレイヤーが集まる本イベントですが、今年は会場のいたる所でAIの話題が飛び交うという、まさに「AIが当たり前に浸透した世界」を実感することができる3日間でした。

今回も、ITreviewのスタッフが提携ベンダー様と一緒に本イベントに参加してきましたので、会場の熱気やセッションの内容など、現地の様子を写真とともにお伝えしていきます!

▶ 関連記事:世界最大級のSaaSカンファレンス「SaaStr Annual 2024」へ潜入!現地リポートまとめ

SaaStr AI Annual 2025とは?

今回、米国サンフランシスコベイエリアで開催された「SaaStr AI Annual × AI Summit 2025」は、世界各地のSaaS創業者やVC、エグゼクティブなどが参加する業界最大規模のSaaS関連イベントです。

2015年にスタートした本カンファレンスですが、今年はイベント名が「SaaStr Annual」から「SaaStr AI Annual × AI Summit」に変更され、300人以上の業界トップスピーカーによる講演から、AIを活用した最新のSaaS動向まで、盛りだくさんの内容で開催されました。

▶ SaaStr 公式サイト

イベント概要

今年のSaaStrは、下記の場所・日程で開催されました。

名称 SaaStr AI Annual × AI Summit 2025
日程 2025年5月13日〜15日(現地時間)
場所 サンフランシスコベイエリア(サンマテオ郡イベントセンター)
参加者数 10,000人以上
セッション数 1,000以上

イベント参加企業

今回、弊社と一緒にSaaStrへご参加くださった企業様は以下の通りです。

企業名 氏名 役職/部署
株式会社インフォボックス 平沼 海統 様 代表取締役CEO
株式会社クラフター ⼩島 舞子 様 代表取締役社長
株式会社クラフター Fei Yang 様 CTO
株式会社Conoris Technologies 井上 幸 様 代表取締役
株式会社Mer 澤口 友彰 様 Co-Founder & CEO 
株式会社Mer 服部 真 様 執行役員

現地会場の様子

今年のSaaStrで最も印象的だったのは、やはりイベント全体が「AI一色」だったことです。昨年までの「SaaStr Annual」から「SaaStr AI Annual × AI Summit」への名称変更は、まさに時代の変化を象徴しているものといえるでしょう。

会場を歩いていると、ほぼ全ての企業ブースでAI機能を搭載したプロダクトが紹介されていました。特に目立ったのは、営業やマーケティング領域でのAI活用事例です。これまで人の手に頼っていた業務を、AIが代替するソリューションが数多く展示されていました。

さらに面白かったのは、参加者同士のネットワーキングにもAIが活用されていたことです。今年から新たに始まった「SaaStr’s Who Do You Want to Meet AI Networking Program」では、SaaStr専用アプリを通じて、講演スケジュールの確認や会議予約はもちろん、AIが参加者の興味関心に応じて最適な相手をマッチングしてくれる仕組みが導入されており、AIが「スタンダードな存在になった」ことを肌で感じることができました。

オフィシャルサイトでも「Indoor/Outdoor Event」と明記されているとおり、メインステージや展示ブースは屋内にありながら、小規模ステージや休憩スペース、フードトラックなどは屋外に配置されています。

晴天のもとで気持ちよく交流できる環境は、参加者同士のコミュニケーションを自然と促進していました。日本の展示会では見られない、まさにアメリカならではの開放的なイベントです。

アメリカらしいエンターテイメント精神も随所に感じられました。SaaStrのノベルティがもらえる人間クレーンゲームをはじめ、各企業ブースでもスクラッチゲーム、ハンマーゲーム、ダーツなど、参加者を楽しませる工夫が満載です。

ジェイソン・レムキン氏「20〜40%の従業員がAI時代に適応できない」

SaaStrの主催者であるジェイソン・レムキン氏のキーノートでは、SaaS業界が歩んできた過去と、これから向かうべき未来についての講演が行われました。同氏によると、SaaS業界は主に「2023年以前の成長時代」と「2024年以降の競争時代」という2つの時代に大別できると語りました。

〜2023年:成長の時代

  • 年に一度の新機能追加が主流
  • 5年ごとにパラダイムシフトが発生
  • 10億円規模に到達すれば成功が約束

2024年~:激変の時代

  • 競争の激化により成長が鈍化する企業が増加
  • AIの進化により従来の方法では勝てなくなる企業が続出
  • 新しいAIファーストの競合が既存企業のシェアを奪っていく

このキーノートで特に印象的だったのは、AIが単なるツールではなく「ビジネスの根幹を変える存在」になっているという指摘です。

製品開発やサポート、営業活動の自動化が進み、従来のやり方では競争に勝てなくなっている企業が増加していることに加えて、従来のプレイブックや働き方に固執する企業や人材は淘汰され、およそ20〜40%の従業員がAI時代に適応できない可能性があると指摘しました。

こうした変化に対応していくためにも「実験レベルではなく、本気でAIを活用し、絶えず学び続け、イノベーションを起こし続ける執念が必要」と強調しており、変化に適応できない企業や人材は取り残される時代に突入したことを実感しました。

ARTISANの「STOP HIRING HUMANS(人を雇うのをやめよう)」が物議

会場でひときわ注目を集めていたのが「ARTISAN」というスタートアップのブースでした。

ARTISANは、2023年設立のAIを活用したアウトバウンド営業自動化プラットフォーム「Ava」を提供する企業です。AI BDR(ビジネス開発担当者)がアウトバウンド営業における一連の業務を自動化し、300万件以上のB2Bデータベースを活用して国際的なリード発掘を自動的に行うことができます。

しかし、最も話題になったのはブースに大きく掲げられた「STOP HIRING HUMANS(人を雇うのをやめよう)」というコピーでした。このメッセージは、レムキン氏のキーノートで語られた「AIが人を代替していく時代」を象徴しているものだと感じられました。実際、多くの参加者がこのブースの前で足を止め、熱心に議論を交わしている光景が印象的でした。

元テスラのエンジニアコンビが開発した「Mosaic」がAIデモピッチで優勝

今年はベンチャーキャピタルのメイフィールド氏が主催するAIデモピッチも開催され、AIを活用したプロダクトのスタートアップがエントリーし、ファイナル3社が会場でピッチを行いました。

優勝したのは、元テスラのエンジニアコンビが2024年に設立した、AIエージェントを活用した次世代動画編集プラットフォーム「Mosaic」です。

従来の動画編集にかかる手間と時間を大幅に短縮し、字幕や吹き替え、テキスト挿入や音声改善、サイズ変更などの諸々の編集を自動化することができます。若いエンジニアが身近な困りごとからイノベーションを生み出したストーリーを直接聞くことができ、とても印象深い体験でした。

ITreview特別企画:G2 CEO ゴダード氏との特別セッション

今年もITreviewでは、世界最大規模のソフトウェアレビューサイト「G2.com」を運営するG2社のゴダードCEOとの特別セッションを開催しました。

ゴダード氏からは、まず自身の経歴をお話しいただいた後、参加者の質問に答えていただく形で進行しました。ここからは、特に印象的だった質問を抜粋して紹介していきます。

G2.comとは?
米国イリノイ州に本社を置く世界最大規模のソフトウェアレビューサイト「G2.com」の運営会社。ビジネスソフトウェアやサービスに特化してレビューの収集やランキング評価を行っている、まさに私たちITreviewのお手本とも呼べる存在です。

Q1:AIがどのような変化を市場にもたらしているか?

ゴダード氏の回答で興味深かったのは、情報収集方法の根本的な変化についてでした。

  • 従来:検索エンジンでの情報収集が主流
  • 現在:ChatGPTのようなテキスト生成ツールでの情報収集

この変化により、Webサイトのトラフィックが減少傾向にあり、Webマーケティングにおいては、従来のSEO(検索エンジン最適化)から新しいGEO(生成エンジン最適化)への対応が重要になってきているとのことでした。

▶ 関連記事:LLMO(GEO)とは?SEOとの違いやAI時代の流入戦略を徹底解説!

Q2:SaaSビジネスにおいてAI以外で注視すべきポイントは?

ゴダード氏はAI以外で注視すべきSaaSのポイントについて、以下の5つを挙げていました。

  1. プロダクトの価格設定
  2. ハイブリッドワーク vs リモートワーク
  3. インテントデータ vs 個人情報の規制
  4. AIネイティブプロダクト vs 既存製品へのAI機能の追加
  5. 業界特化型SaaSの需要増

特に興味深かったのは、SaaS業界全体では「ホリゾンタル(横断的)ではなくバーティカル(業界特化)な市場が活発化している」という指摘でした。AI時代においては、汎用的なプロダクトはもちろん、専門性の高い領域での活用が加速しているようです。

参加企業様の声

今回ご参加いただいた企業様から、貴重な感想をお聞かせいただきました。

株式会社インフォボックス:平沼様

参加の目的:「今年より株主になったG2のゴダード氏への挨拶と近況報告、また、AIに対するグローバル全体の温度感を知るために参加しました。」

印象に残ったセッション:「HubSpotのセッションとG2のセッションが印象的でした。特にAI導入によるGo-to-Market指標の”動かせなかった”領域へのインパクトや、トップダウンでのリードと”Weekly Wrap”文化の醸成、Go-to-Marketにおける”量”から”パーソナル”への議題など、自社にとっても関わりのある貴重な体験となりました。」

ITreview企画について:「多様なバックグラウンドを持つ皆様とカジュアルに意見交換できたことが大きな収穫でした。特に、業界横断で抱える課題や成功体験を直接聞くことで、Infoboxが提供すべき価値のヒントを多く得られました。」

株式会社Mer:服部様

参加の目的:「グローバル最先端の最新トレンド調査、特に成功企業の戦略や新たなビジネスモデルを肌で感じ、学ぶことを目的として参加しました。」

印象に残ったセッション:「最も印象に残っているセッションはG2 CMOとのセッションで、GEOについて知ることができたのは非常に大きな収穫でした。自社でも調査し、取り組みを始めたいと思います。AIの活用に関しても日本の数年先をリードしているイメージで、衝撃の連続でした。」

ITreview企画について:「国内外のリーダーの方々とリラックスした雰囲気の中で深く意見交換ができたことが最大の収穫です。G2社の豊富なデータに基づいた客観的な市場分析はとても参考になりました。」

株式会社Conoris Technologies:井上様

参加の目的:「自社もSaaSのスタートアップであることから、主にAIにおけるSaaS業界での活用と影響についてウォッチしたいと思い参加を決めました。」

印象に残ったセッション:「HubspotのCEOのセッションとBessemerとSaaS企業たちのパネルが特に印象的でした。グローバルな大手SaaSのAIに対する姿勢、今やらねば自社が沈没するという覚悟でAIに向き合っている覚悟は、自分自身のAIへの認識を改めざるを得ないレベルの気迫がありました。早速自社でもAI活用の推進を今まで以上に進めています。」

ITreview企画について:「ゴダード氏とのセッションが非常に興味深く、長年SaaS業界を見てきた彼の目線から見た今後の展望を聞くことができたのは、大変価値ある体験だったと思います。」

私たちと一緒に次回のSaaStrへ参加しませんか?

いかがだったでしょうか?今回のSaaStrは、まさに「AIが当たり前に浸透した世界」を象徴する大変意義深いイベントだったように思います。

世界最先端のSaaS動向を肌で感じ、グローバルで活躍するリーダーたちと直接交流できることは、日本では決して得ることのできない貴重な体験となりました。

来年も同様の企画を予定しておりますので、参加をご希望のベンダー様は担当CSまでご連絡ください。一緒にSaaSの未来を体験し、日本のSaaS業界の発展に貢献していきましょう!

【次回開催予定】

  • 日程:2026年5月(詳細日程は後日発表)
  • 場所:サンフランシスコベイエリア

皆様のご参加をお待ちしております!

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