VPNの導入を検討されている企業担当者の中には、予算の都合上から無料VPNの使用をまず検討される方も多いのではないでしょうか。しかし、無料VPNには、広く知られているデメリット以外にも「意外な落とし穴」が潜んでおり、注意が必要です。
本記事では、無料VPNの「落とし穴」について、危険度が高い順に「悪意を持ったVPN運営者の存在」、「サイバー犯罪目的のユーザーの可能性」、「無料VPNのデメリット」の3点を取り上げます。
無料VPN 3つの落とし穴
1.悪意を持ったVPN運営者の存在

無料VPNを使用する上で、危険度が高い「最悪の落とし穴」といえるのが、VPN事業者側からデータを盗み取られる可能性です。利用者の情報を盗み取るなどの「悪意を持ったサイト運営者」が存在するのと同様に、「悪意を持ったVPN運営者」の存在も、否定はできません。現に、海外ではそのようなVPN事業者からの情報漏えいがあった調査も発表されています。
「悪意を持ったVPN運営者」が存在した場合、利用者の情報を盗み取り、売却する目的などでVPNを設置すると推測されます。万が一、そうしたVPNに引っ掛かってしまった場合、懸念されるのが顧客情報を盗み取られるなどの被害です。
そして、顧客情報が流出して悪用された場合、企業の信用問題にも発展し、取り返しのつかない重大な損失にもなりかねません。
VPN運営者に悪意があるかどうかを見分ける大きなポイントは「ログを保持していないか」と「運営費用の出どころがはっきりしているか」の2点です。
ログを保持していないか
仮に、「悪意を持ったVPN運営者」が存在した場合、データを盗み取るための手段としてログを保持することが考えられます。ログを保持しているVPNは、運営者に悪意がない場合でも、利用者の情報を商業目的で使用している可能性が高くあります。ログからさまざまな情報の取得が考えられますが、カード情報などのより深い個人情報を、盗み取られる可能性も否定できません。
そこで、顧客・個人情報の悪用を防ぐためのVPN選びをするには、最初に「ノーログポリシー」など、ログを保持しないと宣言しているかどうか、確認することが重要です。
運営費用の出所がはっきりしているか
悪意を持ったVPN運営者は、顧客・個人情報の売却などの不正な方法で運営費用を賄っています。そのため、後述の「広告収入で運営費用を賄っている場合」や、「有料VPNのお試し無料」など、収入源がはっきりしているものに比べて、運営費用を明示しない傾向があります。
運営費用の出どころがはっきりしない無料VPNは、選択肢から外すのが望ましいでしょう。
2.サイバー犯罪目的のユーザーの可能性
無料VPNの運営元に悪意はなくても、サイバー犯罪目的の悪意を持ったユーザーが少なからず存在するのも事実です。なぜなら、無料VPNは有料VPNに比べると利用ハードルが低いため、不特定多数の人がアクセスするからです。
また無料VPNは、有料VPNと比較してセキュリティが低い傾向があります。使用料を徴収しない分、セキュリティに十分予算をかけられないからです。そこで、そのセキュリティ面の弱点を、サイバー犯罪者に狙われやすい傾向があります。
その点で有料VPNは、サイバー犯罪目的に使用されることが無いとは言い切れませんが、費用をかけてセキュリティ面での悪用防止対策を講じている場合が多いので、悪用の可能性は低いといえます。
3. 無料VPN使用のデメリット
無料VPNの中には、運営体制がしっかりとしていて、セキュリティが高いものもあります。しかしこの場合でも、企業が業務を進める上でネックとなる「落とし穴」があります。
データ送信量に上限がある
多くの無料VPNに共通するのが、データ送信量に10GBや15GBなど上限が設けられている点です。そして、接続できるデバイス数が制限されている場合もあります。企業で利用する場合は、一括契約するとすぐに上限を超えてしまうので、社員ごとに別々に申し込まなければなりません。
しかし、各社員が個別に申し込むと、管理の手間が増えると同時にセキュリティの一括管理が不可能となります。セキュリティを保つためには、社員が使用するデバイス毎に、ログを確認するなどの手間と労力が必要となります。
そのため無料VPNの個別使用は、有料VPNによる一括契約と比較して多くの業務が発生するため、かえって経費がかさんでしまうデメリットがあります。
使用期間が限定されている
多くの有料VPNで無料版サービスを提供しています。運営体制がしっかりしているため、セキュリティ面で優れているのが大きなメリットです。しかし、これらの無料版サービスの多くが「お試し期間」として30日間など限定されています。
「お試し期間」が過ぎる前に、他社の有料VPNの「無料お試し」への切替を繰り返すことで、無料使用を継続する方法も考えられますが、この方法では切替えごとに新しいVPNに慣れるまでの労力がかかるため、業務効率が低下するデメリットがあります。
突然の機能変更の可能性がある
多くの無料VPNの共通リスクとして、予告なしに突然の機能変更が行われる可能性があります。無料VPNは、運営費を広告収入など別の収入源から賄っているため、利用者の利便性よりも自社や広告主などの意向が優先されるためです。
ある日突然、予告なしの機能変更が行われた場合、十分な準備ができずに業務に大きな支障をきたす恐れがあります。また、例え予告が行われたとしても、その対応作業に労力を取られて、本来の業務に支障をきたす可能性もあります。
広告が表示される
無料VPNでは、その運営費用を利用者向けの広告収入で賄っているケースが多くあります
この場合、VPN運営費用の出どころがはっきりしているので、顧客・個人情報を悪用される可能性は低いといえます。
一方で、表示される広告により業務効率が低下するというデメリットがあります。画面を進めるたびに表示される広告を、1つ1つ閉じる作業は数秒程度かもしれませんが、積み重なると大きな時間の損失です。
では、実際にどれくらいの損失になるのでしょうか。例えば、社員数50人規模の企業で考えてみます。1日1人当たり5秒間の広告を閉じる作業が、20回発生した場合、1カ月で約27.8時間もの時間損失となります。
※5秒×20回×50人×20日=10万秒=27.8時間
(1カ月の労働日数を20日とした場合)
しかも、27.8時間の損失以外にも、広告により集中力を乱されることによる業務効率低下も発生します。業務中であっても、興味ある商品の広告が表示されてしまった場合、ついついクリックして見てしまうのが人間の心理です。
こうした、集中力を乱す誘惑は、有料VPNの採用により、可能な限り遠ざけるのが望ましいでしょう。
無料VPNの利用は有料VPNの切り替えを前提に
今回は、無料VPNを企業で利用する場合の落とし穴について、危険度の高い順に3つお伝えしました。無料VPNはセキュリティ面でのリスクや機能の制限、業務効率の低下など、多くの落とし穴があります。
企業での無料VPNの使用は、有料VPNの「お試し無料使用」のみに限定した方が良いのでは無いでしょうか。お試し期間で最適なVPNを見つけたら、有料へ切り替えることをおすすめします。
有料VPNの多くが、データ送信量が多いほど1GB当たりの単価は下がります。つまり企業や子会社などを含めたグループで一括して契約することで、お値打ちに利用できるのです。
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