広告にはさまざまな種類があるため、自社にとってどの広告が効果的なのか、あるいはすでに実施している広告は効果が出ているのかなど、広告に対する評価を行う必要があります。このようなときに費用対効果を評価すべき指標として、CPAが有効です。

本記事では、CPAの意味から計算方法や改善方法、類似の指標について解説します。 

CPAとは?

CPAは「Cost Per Acquisition」もしくは「Cost Per Action」の略で、「顧客獲得単価」や「コンバージョン単価」と呼ばれ、新規顧客を獲得するために費やしたコストを示します。一般的には1人の顧客や1件の成約を獲得するためにかかった広告費を指します。

CPAは広告の費用対効果を把握できる指標なので、たとえば広告の出稿量が増えたとしても、CPAが低ければ費用対効果が高く広告費以上のリターンを得ていると判断できます。

このときのリターンとは、商品・サービスの購入や入会、サンプルや資料の申し込みを示します。

なぜ、CPAが必要か?

広告の費用対効果を数値で確認できなければ、その広告の運用を継続すべきかどうか、あるいは強化すべきかどうかの判断ができません。

そのため、CPAを使用して、広告でコンバージョンが獲得できているかどうかを確認する必要があります。

コンバージョン(Conversion)とは「変換」や「転換」「交換」を表す英語ですが、マーケティングでは広告によって商品・サービスの購入や、入会や資料取り寄せなど、広告主にとって価値のある行動に至ることを意味します。 

CPAの値が小さければ、少ない広告費で多くのコンバージョンを獲得できたことを意味します。逆にCPAの値が大きくなることは、コンバージョンを獲得するための広告費がかさんでおり、費用対効果が低いことを意味します。

したがって、CPAの値が大きい場合は、広告の運営に関して改善すべき点があること判断して見直しを行う必要があります。

CPAの計算方法

CPAはコンバージョン1件当たりの広告費を求める次の式で算出できます。

CPA = 広告費 ÷ コンバージョン件数

たとえば、ある月に広告費を50万円投入した結果として新規顧客を5人獲得できていれば、

CPA = 50万円 ÷ 5人 = 10万円

とCPAが10万円になります。そして次の月に70万円の広告費を投入した結果、新規顧客を10人獲得できていれば、

CPA = 70万円 ÷ 10人 = 7万円

とCPAが7万円になります。

この結果から、前の月のほうが広告費は安く済んでいますが、費用対効果はあとの月のほうが高かったことになり、効果的な広告運用ができたことがわかります。

目標CPAの決め方

費用対効果の高い広告運用を行うために、目標CPAを算出しておく必要があります。

目標CPAを設定するためには、商品原価や人件費、広告費などを算出しておきます。

広告は利益を上げるために行う施策ですから、目標CPAは利益が出ることを前提に設定します。そのために、採算が合わなくなる限界CPAをあらかじめ算出しておく必要があります。

しかし、コンバージョンに直接利益が出ない資料請求や無料トライアルの申し込みなどを設定している場合は、必ずしも直接的な利益が出る設定をする必要はありません。

以下、限界CPAと目標CPAについて解説します。

限界CPAとは?

限界CPAは、コンバージョン1件にかけられる広告費の上限です。式は次のとおりです。

限界CPA = 売上単価 - 原価 - 経費

たとえば、売上単価が2万円で原価が7,000円、経費が3,000円だとすると、限界CPAは1万円になります。1万円はあくまで上限値ですから、この上限まで広告費をかけては利益がなくなってしまうことに注意が必要です。

また、限界CPAは損益分岐点ですから次の式でも算出できます。

限界CPA = 顧客単価 × 利益率

前出の例をこの計算方法に当てはめると、顧客単価は2万円で利益率は50%でしたから、やはり限界CPAは1万円になります。

ただし、会員登録や資料請求、無料トライアルなど、直接利益が出ないコンバージョンを設定している場合は、成約率を加味した計算式になります。

限界CPA = 顧客単価 × 利益率 × 成約率

目標CPAとは?

目標CPAはコンバージョン1件あたりにかけられる費用の目標額なので、計算式は次のとおりです。

目標CPA = 限界CPA - 確保したい利益

たとえば、限界CPAが1万円で7,000円の利益を確保した場合の目標CPAは3,000円となります。

つまり、利益の何%を広告費に当てるのかによって目標CPAを設定するので、次の計算式にもなります。

目標CPA = 限界CPA × 広告費の割合

たとえば、2万円の商品で利益率50%の限界CPAは1万円です。この中から確保したい利益が70%だとすると、広告費には30%を当てられるので、目標CPAは3,000円となります。

売上が成果となる場合の目標CPA

コンバージョンが売上になる場合の目標CPAは比較的シンプルに算出できます。

たとえば、商材の価格が3万円、製造原価が9,000円、人件費が6,000円の場合、

限界CPA = 売上単価 - 原価 - 経費 = 3万円 - 9,000円 - 6,000円

なので、限界CPAは1万5,000円となります。

確保したい利益が8,000円だった場合、

目標CPA = 限界CPA - 確保したい利益 = 1万5,000円 - 8,000円

なので、目標CPAは7,000円となります。

直接売上にならない場合の目標CPA

コンバージョンが直接売上にならない場合の目標CPAは次のように算出できます。

たとえば、コンバージョンが資料請求で、成約率が資料請求者の50%とします。商材は8万円で製造原価が3万円、人件費などの経費に1万円かかっている場合、限界CPAは次の式で求められます。

限界CPA =(売上単価 - 原価 - 経費)× 成約率 =(8万円 - 3万円 - 1万円)× 50%

したがって限界CPAは2万円となります。

目標とする利益を1万円とした場合、

目標CPA =(限界CPA - 確保したい利益)× 成約率=(2万円 - 1万円)× 50%

ですので、5,000円となります。

CPAの改善方法

広告の費用対効果を高めるためにはCPA改善する必要があります。つまり、CPAを低く抑えるのです。

以下、CPAを改善する方法を解説します。

1.クリック当たりの広告費を下げる

CPCは「Cost Per Click」の略で、クリック当たりの広告費を表し「広告費用 ÷ クリック数」で算出できます。つまり、CPCの値が小さいほど、低い広告費で多くの反応を得られたことになり、費用対効果が高いことを示します。

広告の費用対効果を高めてCPCを下げるためには、ユーザーの注意や興味を引くクリエイティブ(広告用に作成した成果物)になっているかどうか、あるいはターゲットに届いているのかどうかを見直す必要があります。

また、一度効果があったからといって同じクリエイティブを使用し続けると新鮮さが失われてくるため、CPCが高まってしまう可能性もあります。クリエイティブは定期的に新しくすることが望ましいでしょう。

特にリスティング広告では「品質スコア」を上げることでGoogle広告における評価が上がり、表示順位によい効果があります。品質スコアを上げるためには、キーワードと広告の関連性を見直したり、移動先のランディングページの利便性(見やすさや読み込み速度など)を見直したりする必要があります。

さらに、広告の掲載順位を決める要素である入札単価の上限を低く設定することでも広告コストが下がり、CPCを下げる可能性があります。ただし、この方法では同時に掲載順位と露出度が下がってしまうリスクもあるので、慎重さが必要です。

2.広告の文章を改善する

長期間広告文を変更せずに使用していると、広告文がターゲットやキーワードに合わなくなってしまい、コンバージョンを減らしてしまうことがあります。ターゲットを取り巻く環境などが変化することで、ターゲットが興味をもつ対象も変化し、競合の増加と競合の戦略の変化によりキーワードの重要性が変化するためです。それを防ぐためにも、広告文は定期的に見直す必要があります。

3.キーワードを変更する

広告がクリックされても成約につながっていない場合は、商材を購入する動機をもつユーザーが求めているキーワードと関連性が薄いキーワードを設定している可能性がありますので、見直しが必要です。

その場合は、関連性の薄いキーワードを除外設定することも検討してみます。無駄にクリックされることを防ぐことで、広告費の無駄を削減できる可能性があります。

一方、クリック自体が少ない場合は、適切なキーワードが設定されていない可能性があります。キーワードを新たに選定し直すことも検討すべきです。

4.ターゲットを再確認する

広告文やキーワードを見直した結果、クリックはされるようになったが成約には至らない、という場合は、そもそものターゲットの選定に問題がなかったかを見直します。

つまり、実際にクリックしているユーザーが想定していたターゲットと異なっていたり、あるいは想定していたターゲットのニーズと商材が応えられるニーズが適合していなかったりする可能性もあります。その場合は、たとえクリックされるような広告文やキーワードが選定されていても、肝心の商材の特性がターゲットに響いていない可能性があります。

5.移動先の再確認

広告がクリックされているにもかかわらず成約率が上がらない場合は、クリックした移動先が適切かどうかを見直す必要もあります。

たとえば、ダイエットサプリの広告に興味をもってクリックしたのに、健康食品全般を扱うECサイトのトップページに誘導されても、ユーザーは困惑したり面倒に思ったりして離脱してしまう可能性があります。

6.LPの改善

LP(Landing Page:ランディングページ)とは、広告をクリックした直後にユーザーが閲覧するWebページを示します。つまり、ユーザーが着地する(landing)ページを示します。

LPには通常、広告で紹介した商品の説明ページや会員登録を促すページ、あるいは資料を請求するページなどが作成されます。

このとき、LPが広告に興味をもったユーザーにとって違和感がなく、コンバージョンに結びつく内容になっているかを見直す必要があります。

広告運用ツールでCPA改善

インターネットでの広告には、Web検索サイトやSNSなどさまざまな媒体があり、これらの媒体への広告出稿や分析などの運用を手作業で行っていたのでは効率が悪くなります。

そこで、これらの運用管理や分析を自動化することで、広告担当者の労力を削減し、運用コストを抑えるために、広告運用ツールを活用することが考えられます。

広告運用ツールの比較検討を行うためにも、ITreviewの「広告運用の比較・ランキング・おすすめ製品一覧」をぜひ、参考にしてください。

広告運用の比較・ランキング・おすすめ製品一覧

CPAに類似の指標の比較

広告を運営するに当たって、CPA以外にも覚えておきたい類似の指標がありますので紹介します。

CPO 広告費 ÷ 受注件数
CPR 広告費 ÷ 登録や申し込み件数
CPC 広告費 ÷ 獲得したクリック数
ROAS 売上 ÷ 広告費 × 100
CTR クリック数 ÷ インプレッション数 × 100
CVR コンバージョン数 ÷ サイトへのアクセス数(訪問数) × 100

CPO

CPOは「Cost Per Order」の略でOrderは注文の意味ですから、1件の受注を得るためにかかるコストを表します。計算式は次のとおりです。

CPO = 広告費 ÷ 受注件数

たとえば、20万円の広告費をかけて5件の受注をすればCPOは4万円です。

CPAがコンバージョンあたりの広告費であったのに対し、CPOは受注当たりの広告費となります。コンバージョンには問い合わせや資料請求などを設定することもできますが、受注を設定した場合はCPAとCPOは同じになります。

CPR

CPRは「Cost Per Response」の略で、Responseとは無料の登録や申し込みなどの反応を示します。つまり1件の登録や申し込みを得るためにかかるコストを表します。計算式は次のとおりです。

CPR = 広告費 ÷ 登録や申し込み件数

たとえば、10万円の広告費をかけて4件の無料サンプルの申し込みを獲得できた場合のCPRは2万5,000円となります。コンバージョンに無料登録や無料サンプル申し込み数を設定した場合は、CPAとCPRは等しくなります。

CPC

CPCは「Cost Per Click」の略で、ユーザーからのクリックを1回得るためにかかる費用を表します。計算式は次のとおりです。

CPC = 広告費 ÷ 獲得したクリック数

たとえば、30万円の広告費を費やして獲得したクリックが2,000回だったとき、CPCは150となります。これは、1回のクリックを獲得するために150円の広告費を費やしたことを表します。

注意しなければならないのは、クリックしたユーザーが必ずしも商品やサービスを購入したり無料サンプルの申し込みをしたりするわけではないため、CPCが下がったからといって、広告の効果が高かったとは評価できないことです。

ROAS

ROASは「Return On Advertising Spend」の略で、広告費の回収率を表します。計算式は次のとおりです。

ROAS = 売上 ÷ 広告費 × 100

たとえば、60万円の広告費をかけて120万円の売上があったとき、ROASは200%となります。つまり、広告費に費やした金額の2倍の売上があったことを示します。

ROASは、総合的な広告の効果を示す指標といえます。

CTR

CTRは「Click Through Rate」の略で、インプレッション数(ユーザーに広告が表示された回数)に対して、クリックされた回数の割合を表します。CTRの計算式は次のとおりです。

CTR = クリック数 ÷ インプレッション数 × 100

たとえば、広告が1万回表示された内、クリックされた回数が200回の場合は、CTRは2%となります。また、商品の購入ページやイベントの申し込みページのURLを記載したメールを2万件配信したときに、URLをクリックしたユーザーが500人いた場合、CTRは2.5%となります。

CVR

CVRは「Conversion Rate」の略で、顧客転換率と呼ばれます。Webサイトへのアクセスの内、登録や申し込みなどのコンバージョンが発生した割合を示します。計算式は次のとおりです。

CVR = コンバージョン数 ÷ サイトへのアクセス数(訪問数)× 100

たとえば、無料サンプルの申し込みサイトへのアクセス数が2万だったときに、実際に申し込まれた数が500件の場合、CVRは2.5%となります。

CPAを下げる際の注意点

CPAの低さだけに注目してしまうと、広告効果を正しく把握できない場合があります。

近年、カスタマージャーニーが複雑になってきています。カスタマージャーニーとは、ユーザーが商品やサービスを認知することから検討、そして購入へ至るまでの顧客体験を示します。

たとえば、自社の製品を購入した顧客は、検索で見つけたリスティング広告をクリックしたことで自社オウンドメディアを閲覧することになり、その結果表示されるようになったリターゲティング広告をクリックしてたどり着いたLPから商品を購入したかもしれません。

しかし、ここでCPAを算出すると、LPに対するコスト評価しかできません。実際には、リスティング広告が決め手だったのかもしれませんし、オウンドメディアで醸成された信頼感が購入に踏み切らせたかもしれないのです。

このようにCPAというのは、直前の広告の効果しか測れないことを理解しておく必要があります。

まとめ

CPAは広告を運営するうえで費用対効果を把握するためには重要な指標です。しかしCPAを下げることだけに固執すると、コンバージョンと売上を下げてしまう可能性もあります。

広告を評価する際には、CPOやCPR 、CPC、ROAS、CTR、CVRなどの指標にも注意を払いつつ、さらにカスタマージャーニーも考慮したうえで、複合的な検証を行う必要があります。

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