クラウドストレージが人気を集めていますが、選び方が分からないまま契約している企業も多いでしょう。さまざまプロバイダーがクラウドストレージのサービスを提供しているため、違いが分からない方も少なくないはずです。

しかし、クラウドストレージの種類によっては、BCP(事業継続計画)対策が不十分であったり、通信速度の負荷がかかったりしてトラブルが起こる可能性もあります。

そこで、クラウドにストレージを持つ際のポイントについて解説します。契約しているプロバイダーのバックアップを見直して、安全性や汎用性の高いクラウドストレージを見つけましょう。

クラウドストレージはバックアップの面でも頼れる

企業の抱える顧客データや機密データといった重要データは、ハードウェアの故障やウイルス感染などのさまざまなリスクにさらされています。そこで各企業は、自前のサーバーやプロバイダーの提供するデータセンターなどに分散して重要データをバックアップしています。

その中でも、インターネット通信を介してファイルの保存領域をつくるのがクラウドストレージです。ファイル保存だけでなく、ユーザー情報やOSといったシステム情報の保存にも活用できます。クラウドストレージの利点は、初期費用の安さやシステム担当者がいなくても使える手軽さにあります。

特に効果が期待されるのは、BCPやDR(災害復旧)です。地震や紛争といった大規模な災害が起こったとしても、遠く離れた土地に退避した基幹データが生存するため、リカバリすることにより業務を円滑に進められます。

ただし、契約しているクラウドストレージによっては、BCP対策や対応デバイスへの懸念が残されている可能性があります。さまざまな種類のあるクラウドストレージについて、データ容量、費用、対応デバイス、転送速度の4つのポイントから確かめてみましょう。

見直すポイント1:データ容量の必要性

自社サーバーにバックアップを取るオンプレ型とは違い、クラウドバックアップでは無制限に容量を追加できます。ただし、容量が増えれば増えるほど毎月のコストも高くなるため、必要十分なプランを選択しなければなりません。

例えば、社員が1,000人を超える大規模な企業では、データ保存量が無制限のプランを選んでおけば、毎月の支出が安定して運用予算が立てやすくなります。

一方で、社員数10人程度の企業では、無制限のプランは必要ないでしょう。最低限のデータ容量から導入して、必要があればデータ容量を増やす選択もできます。

事業規模が拡大してもスムーズに容量を増やせるので、ムダな大容量の課金は必要ありません。

見直すポイント2:ランニングコストの必要性

コストには、初期費用とランニングコストがあります。初期費用の少ないクラウドストレージで重要なのは、毎月のランニングコストです。例えば、「ファイルバックアップ」か「イメージバックアップ」かによってもランニングコストは変わってきます。

「ファイルバックアップ」とは、ファイル転送ソフトを使って必要なファイルのみバックアップする手段です。イメージバックアップでは、システムの設定やユーザー情報、OSのバックアップなど、システムを再構築するために必要なすべてのデータをバックアップに残します。

「イメージバックアップ」によって完璧にバックアップするのが理想ですが、リカバリを急ぐ必要のない業種であれば、基幹データだけ残しておけばよいわけです。

また、BCP対策に優れたクラウドストレージであるか、複数のデータセンターを持っているかという点を確認しておいたほうがよいでしょう。コスト面で高くなることがマイナスに感じられるかもしれませんが、地震や津波のような地域全体への被害に対処できないプロバイダーとは契約するべきではありません。

コストが安ければよいわけではなく、サポート体制やBCP対策などの総合的なケアのできるプロバイダーを選びましょう。最近では無料のオンラインストレージもありますが、180日でデータを削除するといった事例もあるので、法人向けには適していません。

見直すポイント3:対応デバイスの必要性

対応デバイスは、多ければ多いほど円滑な業務遂行に役立ちます。例えば、オンプレ型では自社のオフィスでしかバックアップが取れないものの、クラウドストレージであればテレワーク先の自宅のパソコン・スマホ・タブレットからでもバックアップを取得できるようになります。

将来的にテレワークを導入したり、出張先からでもセキュアPCを使えたり、業務プロセスを改革したりしている企業であれば、対応デバイスが多いほどビジネスは加速します。企業の目指すビジョンに適したクラウドストレージを選択しましょう。

見直すポイント4:転送速度の必要性

オフィス内の社内ネットワークで転送するオンプレ型と違い、クラウドストレージではオンライン回線を利用してデータを転送します。オフィスや自宅で契約している通信回線によってファイルの転送速度が変わると思われがちですが、バックアップの方法によっても転送速度が変わります。

例えば、1GBの大容量のファイルがあったとして、文字列を1行変えただけの僅かな修正であっても、1GBのファイルをそのまま転送しなければなりません。もしこれを、100人の社員が同時に行ったら、回線速度を圧迫してクライアントからのアクセスにも影響を与えるかもしれません。

実はクラウドストレージには、ファイルに修正を加えたポイントだけを転送して、クラウドストレージ上で差分を上書きする「重複排除」という優れた機能があります。1GBのファイルを修正しようが、通信回線で転送されるのは差分データの文字列1行分のデータだけなのです。

動画ファイルや大規模データベースの修正の多い企業であれば、「重複排除」機能によってデータ転送速度は驚くほど改善されます。回線速度を見直す前にクラウドストレージの機能を見直すことで、転送速度が改善される可能性があります。

クラウドバックアップは定期的に見直そう

クラウドストレージは、プロバイダーによってさまざまなサービスを提供しています。世界各地にデータセンターを持っていて災害に強いプロバイダー、差分データで転送速度に有利なプロバイダーもあります。

クラウドストレージはどこでもよいわけでなく、自社の将来も見据えたビジョンを実現できるプロバイダーへと定期的に見直すことをおすすめします。

この記事の執筆

成瀬ことおみ

ライター

大手金融機関にて勘定系システム運用を8年担当。男手ひとつで2人の息子を育てるためWebライターを志す。「正しい情報を、正しく伝える」を信念にIT業界の記事を数多く執筆している。

この記事の監修

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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