会社の大切なデータを守りシステムの可用性を高めるためにはバックアップが重要です。しかし、自社に導入しているオンプレ型のシステムとクラウドバックアップでは、どちらが優れているのか気になる方も多いのではないでしょうか。
すでにオンプレ型のバックアップサーバーを構築しているからクラウドバックアップに踏み出せないという経営者やシステム担当者向けに、クラウドバックアップとオンプレ型の違いについて説明します。
目次
クラウドバックアップとは
クラウドバックアップとは、プロバイダーの用意したサーバー上の空間にデータの複製や保存を行う方法です。VeeamやDirectCloudといったクラウドバックアップ製品では、オンライン回線を利用してデータをクラウド上に転送するため、自社オフィスにはストレージサーバーの設置は必要としません。そのため、オフィス内の機器に限定することなく、テレワークや出張先などにも持ち運びのできる端末からでもセキュリティの高いバックアップを利用できるようになります。
さらに、毎月決まった金額の支払いだけで、物理的なストレージ容量の拡張や機械の故障といったシステム対応は必要なくなり、災害時のBCP(事業継続計画)対策にも強いといったメリットもあります。コストパフォーマンスでも信頼性でも高い評価を得ているのが、クラウドバックアップです。
オンプレとの違い1:転送速度が早い
バックアップの転送速度が早いのは、オフィス内にシステムを構築するオンプレ型です。クラウドバックアップの転送速度は、契約している通信回線の速度に依存して、100Mbpsの回線を契約しているならそれ以上の速度で転送されることはありません。
TCP/IPを利用するクラウドバックアップとは違い、オンプレ型では転送速度は内部の通信網に限定されます。そのため、ほとんどの場合でクラウドバックアップの転送速度がオンプレ型より早くなることはありません。ただし、重複排除という差分データのバックアップで完結する機能を利用した場合、バックアップにかかる所要時間はクラウドバックアップのほうが短くなります。
オンプレとの違い2:費用は高め
総合的なコストが安いのは、システムの刷新を必要としないクラウドバックアップです。クラウドバックアップはランニングコストこそかかりますが、サーバー機器を購入する費用やストレージ容量の拡張などのシステム保守を必要とするオンプレ型に比べると、初期導入費用を抑えて保守対応やサーバー監視機能といった人件費も節約できます。
サーバーの税務処理の減価償却資産でも6年程度が目安となるストレージサーバーは、耐久年数も同様に6年程度で限界を迎えます。24時間稼働し続けるサーバーに不具合があれば保守対応にも費用がかかることでしょう。
初期導入費用や更新費用、維持管理費用を効率よく捻出できるクラウドバックアップのコストパフォーマンスを超えるには、人件費の安い外国にシステムを設置して作業を丸投げするような方法しかないかもしれません。
オンプレとの違い3:災害時に強い
地震や洪水といった災害発生時のデータ保護で信頼性が高いのは、クラウドバックアップです。オンプレ型のほとんどは、自社のオフィス内にストレージサーバーを設置するケースが多いでしょう。24時間空調と警備員を完備して、災害に強い立地の調査、免震対策もされれているデータセンターを超えるオフィスは現実的ではありません。
さらにデータセンターでは、西日本と東日本といった広範囲に区切り、災害対策の施された建物を2つ以上持つことで、仮にどちらかが壊滅したとしても処理を止めることなく動き続ける恒久対策が取られています。バックアップのためにこれだけの予算を捻出できる企業はほとんど存在しないでしょう。
オンプレとの違い4:セキュリティは運用次第
セキュリティの高さの違いは、運用する状況によって異なりますが、ほとんどの場合でクラウドバックアップが優れています。例えば、外部からの侵入や不正アクセスに強いのは意外にもクラウドバックアップでしょう。
しかし、そもそも外部と接続せずにオフィス内だけでネットワークを組んでバックアップを取得しているオンプレ型こそ最強のセキュリティだと言えます。ただし、これを実現するには外部との通信を遮断してオフラインだけの利用に限定する必要があり、電話回線すらシステムにつなげることは許されません。
一方でクラウドバックアップは、外部と通信しなければデータの転送はできないため、ISMSやISO27017といった世界水準の高いセキュリティを要求されます。外部からの侵入者を許さずに、データの読み取りを防ぎ、高いセキュリティを保ちながら、利用者に不満を与えないユーザビリティのバランスを追求し続けています。
完全なセキュリティを確保するには社会から隔離したオンプレ型が有利ですが、利用者のユーザビリティも考えた現実的なシステムで考えるなら、強固な暗号化システムとブロック機能を備えたクラウドバックがセキュリティに優れていると言えます。
クラウドバックアップは安心できるツール
転送速度こそオンプレ型に劣る(重複排除機能を除く)ものの、ほとんどの機能でクラウドバックアップのメリットが高いことが分かります。トータルでのコストパフォーマンス、恒久性の高い信頼性、ネットワーク接続時のセキュリティ対策、いずれもクラウドバックアップが有利です。
クラウドバックアップは世界各国で開発されており、データの安全性とユーザビリティ、コストパフォーマンスのバランスを競い続けています。自社の基幹データのバックアップを取り続けるなら、オンプレ型からの移行も視野にいれましょう。