近年、プライバシーマーク(Pマーク)やISMSなどでセキュリティを見直す企業が増えています。オフィス内では機密性の高い情報が扱われているため、コンピュータやネットワーク上だけでなく、外部からの不正な入室も防がなければいけません。しかし、入退室の管理においては手書きや口頭で運用されることが多く、管理が煩雑で正確性に欠けるといった課題があります。

そのような状況の中で注目されているのが入退室管理システムです。これまでのアナログによる管理がなくなるだけでなく、社外・社内ともにセキュリティを強化することができます。今回は入退室管理の必要性や認証方法について詳しく解説し、おすすめのツールもいくつか紹介します。

入退室管理システムとは?

入退室管理システムとは「誰が」「いつ」「どこに」出入りしたのか管理するものです。従来のような紙への記入が不要となり、建物やフロアなどに設置された認証機器で入退室を記録します。全て履歴として一括管理できるようになり、入室時刻や滞在時間なども把握可能です。

また認証にはICカード、スマーフォン、生体認証などさまざまな方法が用いられ、個人を識別して入退室の許可・制限を行います。それぞれ鍵と同じ開閉の役割を持っているため、より強固なセキュリティ環境が実現できます。

近年、入退室管理システムは企業以外でも、国の研究機関や大学などさまざまな場所で利用されています。その理由は、単なる部外者の侵入を防ぐ目的だけでなく、内部の人間による情報の持ち出しや特定エリアへのアクセス状況を確認するためです。

入退室管理が必要とされる理由

入退室管理が必要とされる理由はさまざまで、以下のような目的で利用されます。

部外者の侵入防止

社員が安心して働ける場所を整えるには、オフィスの安全性は重要です。誰でも自由に出入りできるような環境では、いつ外部の人間に侵入され機密情報を盗み出されるか分かりません。とくに取引先や配送会社、ビル管理会社など出入りの多い企業では、正確に入退室を管理する必要があります。

社内外の情報漏えい対策

一般的に、情報漏洩の原因はコンピュータウイルスかハッキングによるものと思われがちですが、実は3割近くが内部人間による持ち出しや不正行為によるものです。

出典:2018年 情報セキュリティインシデントに 関する調査結果 ~個人情報漏えい編~ (速報版) |NPO日本ネットワーク協会

このことから企業は機密情報にアクセスできるエリアや部屋を明確に区別し、そこに入退室する人物を細かくチェックしなければいけません。

情報漏洩は企業にとって大きな損失です。一度起きてしまうと、賠償の問題だけでなく企業の信用が損なわれてしまいます。外部・内部ともに強力な情報漏洩対策が必要です。

なりすましや共連れ入室を抑制

入退室で不正が発生する原因のなかには、他者の暗証番号を使ったなりすましや、入室許可者が第三者を招き入れる共連れ入室があります。いずれの場合もセキュリティに対する意識の低さから発生するものです。社員への注意喚起だけでなく、不正が起きにくい環境づくりも重要です。

入退室管理システムで利用される認証方法

入退室管理システムの認証方法には以下のようなものがあります。

・暗証番号

ドア近くに設置したテンキーを用いて開錠する方法です。コストを抑えられシンプルで導入しやすいことにより、古くから利用されています。認証アイテムが不要なため、鍵の盗難や紛失リスクもありません。

暗証番号は全員が共通で同じ番号を使う場合と、個人毎に番号を発行するものがあります。いずれも外部への流出リスクがあり、セキュリティ面が十分とは言えません。とくに共通で使う場合は、定期的に番号を変更して対策を講じる必要があります。

・ICカード

ICカードはドアに取り付けた認証装置にカードをかざして認証する方法です。操作する必要がないため、テンキーによる暗証番号に比べてスムーズに入室できます。ICチップを埋め込んだ社員証、もしくは個人の所有する交通系ICカードをそのまま使え、比較的低コストで導入可能です。またカードには個人情報が登録され機密性が高いという特性から、他者への貸し借りが発生しにくくなります。

ICチップは偽造されにくい点でリスクが低いものの、持ち歩かなければならないので置き忘れや紛失・盗難が発生する可能性があります。問題が起きた場合はカードの再発行が必要になり、異動や退職時も認証情報のメンテナンスが必要です。

・スマートフォン

個人が所有、もしくは会社から支給されたスマートフォンを使って認証する方法です。専用のアプリをインストールすることで、ドアの開錠が可能となります。スムーズな入室、個人を特定した入退室管理が行えるだけでなく、鍵として使用するカード類の管理が不要です。

常に身に付けるか置き場所が把握されていることが多いため、ICカードに比べて紛失や盗難のリスクは低いと言えるでしょう。ただし、本体の故障や電池切れ等が発生した際は入室できないデメリットがあります。

・生体認証

生体認証はバイオメトリクス認証とも呼ばれ、指紋や顔、静静脈、網膜などを用いて認証する方法です。身体的特徴を認証情報として使用するため、確実に個人を特定し高い精度で入退室管理を行えます。また認証アイテムが不要であることから、紛失・盗難のリスクやなりすましを防ぐことが可能です。

非常に高セキュリティである一方、導入と運用面ではコストが高額になることがあります。また一人ひとりの認証情報を登録するのに手間がかかるのも、デメリットだと言えるでしょう。

入退室管理でおすすめのツールをピックアップ!

ここでは勤怠管理に連携できる入退室管理など、おすすめのツールを3つ紹介します。

Akerun入退室管理システム

株式会社photosynthが提供する「Akerun入退室管理システム」は、既存のドアに後付けでスマートロックの設置が可能です。ICカードやアプリによるスマートキーでドアを制御し、入退室の情報は全てクラウドで管理されます。累計導入実績は7,000社にのぼり、PマークやISMSへの対応及び勤怠連携でも活用されています。

・利用者レビュー

事務所への出勤退勤時に利用しています。外部の人も勝手に入れないようにセキュリティも万全ですし、Akerunで簡単に入室退室できます。また勤怠システムとも連携できるので、正しい勤怠が取れます。

引用:https://www.itreview.jp/products/akerunnyutaishitsukanrisystem/reviews/135980

bitlock PRO

株式会社ビットキーが提供する「bitlock PRO」は、今ある扉に貼り付けるだけのスマートロックです。工事不要で低コストで取り付けられ、ICカードやスマートフォンのアプリで解錠することができます。オプションで顔認証にも対応しており、高いセキュリティ環境を整えられます。

公式:https://www.bitlock.workhub.site/

カギカン

Qrio株式会社が提供する「カギカン」は、アプリ・ICカード・PINコードなど複数の解錠方法に対応したスマートロックです。初期費用と工事費用が不要で、専用の管理画面から利用シーンに最適な合カギを発行可能です。レンタルプランであれば、機器の故障、不具合時は無料交換に対応しています。

公式:https://kagican.jp/

ITreviewで入退室管理システムを探してみよう

会計や給与など一般的な業務に比べ、入退室の管理はシステム化がやや遅れている部分です。しかし企業のコンプライアンスという観点からも、入退室におけるセキュリティ強化は今後ますます重要性が増していきます。

入退室管理システムを使えば社外・社内ともにセキュリティを高められ、従業員全員の動きを履歴管理できるようになります。入退室のデータは勤怠管理にも活用でき、労務管理の効率化にもつながります。入退室管理システムに興味がある方は、ぜひ「ITreview」で製品を比較検討してみてください。

この記事の執筆

honyakuma

ライター

システム会社勤務のサラリーマン。これまで物流、バックオフィス系のシステムに従事。「ITをわかりやすく」をモットーにWEBライターとして活動中。

この記事の監修

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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