最近よく耳にするのが「メタバース」です。IT関連の話題としてメディアで取り上げられることが増えたため、気になる方も多いのではないでしょうか。

メタバースとは、簡単に言えば仮想空間を表します。しかし仮想空間と一口に言っても、技術に関わる部分と空間そのものの呼び方が変わります。そこで今回はメタバースの正しい定義や、仮想オフィス、ビジネスへの活用事例などを詳しく解説します。

メタバースとは何か?

メタバースは、現実を超越した「メタ(meta)」とどこまでも広がる空間「ユニバース(universe)」を組み合わせた言葉です。インターネット上に構成される3次元の世界のことで、コンピュータグラフィックスを用いて仮想空間として表現されます。

メタバースの世界に入るには、自身をアバターと呼ばれる分身に置き換えます。アバターを操作することで3次元の中を自由に移動し、仲間と集まって会話を楽しめます。またメタバース内でショッピングができるサービスもあり、日常生活をそのまま体験できます。

一方、メタバースと混同されがちなのがVRです。VRは「バーチャルリアリティ(Virtual Reality)」を略した言葉で、日本語では「人工現実感」「仮想現実」を意味します。分かりやすく言うと、専用ゴーグルなどで限りなく現実に近い実体験を得るための「技術」のことです。つまりコミュニケーションなどの交流が行える仮想空間をメタバース、現実のようにリアリティのある体験ができる技術がVRという位置づけになります。

メタバースが注目される理由

メタバースが注目されるきっかけとなったのが、2021年のFacebook社による社名変更です。新たな社名を「Meta」とし、メタバース分野への投資を1兆円規模で行うことが発表されました。それを皮切りに、GoogleやMicrosoftなどの大手企業も次々と投資を始め、世界的な市場拡大が進んでいます。

参考:メタバース、次世代技術プラットフォームの市場規模は8000憶ドルに達する可能性 | Bloomberg

また、IT分野における技術革新も注目される理由の1つです。インターネットが当たり前のように使える今、誰でもメタバースの利用が可能です。加えて、コンピュータグラフィックスの技術も向上し、よりリアルな空間やアバターの動き、顔の表情などが実現されています。ゴーグルが軽量化されワイヤレス利用もできるようになり、コンテンツ全体のクオリティも進化し続けています。

コロナ禍の経験によって、社会全体が対面しないコミュニケーションにシフトしている点も、メタバースが注目される理由の1つです。メタバースを利用すれば仮想空間の中で臨場感のあるコミュニケーションが可能となるため、新たなビジネスチャンスとして参入する企業も増えています。

メタバースによって仕事はどう変わる?

メタバースによって今後の仕事はどう変わるのか、見ていきましょう。

ゲーム業界

メタバースとゲームは親和性が高く、すでにいくつかのタイトルで採用されています。アバターを操作して世界中の人々とコミュニケーションを取ったり、建物を建築したり、敵と戦ったりするなどのコンテンツが提供されています。今後も市場規模の拡大が予想され、関連技術者の需要が増える見込みです。

不動産業界

すでに一部の企業で導入が始まり、住宅展示場の内見会をメタバースで提供しています。立地や交通環境、部屋の奥行き、室内から見た景観などが立体的に表現され、臨場感を持って体験することができます。遠方の利用者も増えるため、成約率の向上につながります。

医療業界

医療業界の団体や企業が参入し始め、アバターを用いたオンライン診療やメンタルケアサービス、注射手技の研修、手術支援ロボの操作などの実用化が進められています。業務の一部をメタバースに置き換えることで、医療従事者の業務効率化に役立ちます。

観光業界

コロナ禍をきっかけに、観光業界でも導入が進んでいます。メタバースによる観光は、時間や場所、世界情勢、身体的事情などに関わらず誰でも参加可能です。実際の旅行よりも低価格で体験できることから、今後も利用者の増加が見込まれます。

小売業界

バーチャルショッピングが普及することで、オンラインに比べてより現実に近い商品選びが可能となります。店員またはAIと会話をしながら商品を選定し、購入者の体型に合わせたアバターのモデルで試着できます。また、メリットがあるのは顧客だけでなく、経営側も店舗出店にかかるコストや人件費の削減につながります。

オフィス関連

メタバースによってオフィスを再現し、その中で勤務や作業状況を可視化します。各社員の状態はアバターの状態や表情、位置で表現されるため、「商談中」「取り込み中」などが確認できます。通常のテレワークに比べると他のメンバーと一体感が得られ、臨場感を持って業務が行えます。

メタバースによるビジネス活用事例

ここからは、よく知られているメタバースの活用事例をご紹介します。

あつまれ どうぶつの森

任天堂株式会社が提供する「あつまれ どうぶつの森」は、アバターを操作して無人島生活を楽しめるゲームです。他者と交流しながらショッピングや釣り、DIYなどを仮想世界で楽しめます。

マインクラフト

スウェーデンのMojang Studios(モヤンスタジオ)が提供する「マインクラフト」は、他のプレイヤーと交流しながら独自の世界を冒険するゲームです。ブロックを自由に配置して建築を楽しんだり、サバイバル生活を体験したりできます。

バーチャル伊勢丹新宿店「REV WORLDS(レヴワールズ)」

株式会社三越伊勢丹ホールディングスが提供する「REV WORLDS」は、仮想の新宿を舞台としたショッピングモールです。デパ地下やファッション、ギフトなどさまざまなショップが出店されており、実際に販売されている商品の購入が可能です。

バーチャルOKINAWA

株式会社あしびかんぱにーが提供する「バーチャルOKINAWA」は、沖縄を観光しながらショッピングやイベントを楽しめるコンテンツです。世界遺産はもちろんのこと、商店街の雰囲気や伝統文化まで臨場感あふれる体験が可能です。

メタバースの進化に合わせてビジネスツールを見直してみよう

一昔前まで、メタバースは映画や小説などフィクションのものでした。しかしIT技術の革新によって、今では現実社会のビジネスにまで浸透しつつあります。世界的な企業が参入し始めたこともあり、いち早くビジネスに取り入れることが大きな成功につながる可能性があります。メタバース関連ツールの動向は今後も要注目です。

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この記事の執筆

honyakuma

ライター

システム会社勤務のサラリーマン。これまで物流、バックオフィス系のシステムに従事。「ITをわかりやすく」をモットーにWEBライターとして活動中。

この記事の監修

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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