現代のビジネス環境では、リモートワークや外出先でのデータ共有が一般的になっています。セキュアな通信が当然のように求められる状況下では、VPN(Virtual Private Network)の導入が不可欠です。本記事では、VPNの導入に必要な機器や手順を詳しく解説します。ビジネス環境で安全な通信を実現するために、ぜひ参考にしてください。

VPNの導入に必要な機器

すべてのネットワークトラフィックを保護および暗号化するためには、VPNルーターが必要です。また、端末にアプリケーションをインストールすることで、VPN接続を実現できる製品もあります。

ルーターまたはゲートウェイ

VPN接続を実現するためにまず必要なのは、ルーターまたはゲートウェイです。これらの機器はパブリックなインターネットとプライベートな企業内ネットワークを接続する役割を果たします。VPNルーターを利用することで、レイヤーの深いところまで保護されるため、次に紹介するアプリケーションを用いたVPNよりも強固なセキュリティを実現します。

OSに対応したアプリケーション

専用機器を用いなくても、専用のアプリケーションをインストールすることでVPN接続を実現することもできます。Windows、Mac、iOS、Androidなどの各種OSに対応したVPNクライアントソフトウェアが提供されており、社員の自宅といったパブリックな通信網であっても、デバイスから安全に企業内ネットワークにアクセスすることができます。

なお、筑波大学の研究プロジェクトとして開発されているVPNサービス「SoftEther VPN」のように無料で使えるアプリケーションがあるのも特徴です。

拠点ごとにVPNを導入する手順

VPNは、インターネットVPN・IP-VPN・エントリーVPN・広域イーサネットの4種類に大きく分けられます。ここでは、特に代表的なインターネットVPNとIP-VPNの2つのVPNの接続手順を解説します。なお、詳細な手順については利用するプロバイダの手順書に従ってください。

インターネットVPNの導入方法

インターネットVPNは、パブリックなインターネット環境を利用して仮想的な専用線を構築する技術です。導入手順は以下のとおりです。

1. VPN対応ルーターまたはゲートウェイを各拠点に設置する

2. ルーターの設定画面から、VPN接続用のパラメータ(暗号化方式・認証方式など)を設定する

3. VPN接続用のネットワークアドレス(IPアドレスやサブネットマスク)を設定する

4. 接続テストにて通信できることを確認する

以上の手順により、拠点間の通信を確立します。事前に他社のVPNアプリケーションを導入している場合は、競合の問題が起きる可能性があるため、削除しておく必要があります。

IP-VPNの導入方法

IP-VPNは、通信事業者が提供する閉塞網を利用して拠点間を接続する技術です。そのため、高いセキュリティと安定した通信品質が実現されます。導入手順は以下のとおりです。

1. 通信事業者と契約する

2. 各拠点にVPN対応ルーターまたはゲートウェイを設置する

3. VPN接続用のネットワークアドレス(IPアドレスやサブネットマスク)を設定する

4. 接続テストで通信できることを確認する

以上の手順により、拠点間の通信を確立します。IP-VPNでは専用線への接続が必要であるため、VPN対応ルーターやゲートウェイは通信事業者からレンタルするのが一般的です。

社員宅やスマートフォンへVPNを導入する手順

拠点間の通信ではなく、社員宅やスマートフォンでVPN接続を実現するには、一般的にインターネットVPNを使用します。インターネットVPNのなかにはアプリのインストールでVPN接続できる製品もあるため、手軽に導入するにはおすすめです。以下にその手順を説明します。

1. 利用デバイスにVPNクライアントソフトウェアをインストールする

2. 社内のVPNサーバーの接続情報(サーバーアドレス・認証情報など)を設定する

3. 接続テストにて通信できることを確認する

以上の手順により、社員宅やスマートフォンの通信を確立します。詳細な手順については、利用するプロバイダの手順書に従ってください。

インターネットVPNとIP-VPNの違い

インターネットVPNとIP-VPNは、どちらも仮想プライベートネットワーク(VPN)を提供する技術ですが、通信技術やセキュリティ強度に違いがあります。それぞれの違いについても理解しておきましょう。

回線の違い

インターネットVPNでは、主に一般的なインターネット回線を利用します。インターネット環境があれば、VPN対応ルーターや専用アプリケーションの利用によって手軽にVPNを導入することが可能です。

一方で、IP-VPNは、通信事業者が用意した専用の閉塞網を介してVPNを実現します。専用線であることにより通信データの傍受が難しくなり、セキュリティの強化および通信速度の高速化が期待できます。

セキュリティの違い

インターネットVPNでは公的な通信回線を利用しますが、IP-VPNは通信事業者の専用回線を利用します。セキュリティ面ではIP-VPNが高いものの、コスト面での負担も大きくなります。VPNを選ぶには、セキュリティ面とコスト面を比較して考えるのがよいでしょう。

回線速度の違い

インターネットVPNは、利用している通信環境によって速度が左右されます。また、通信回線の速度表示は一般的にベストエフォートであるため、回線利用者が多いときにはさらに速度の低下が起こるでしょう。

一方で、IP-VPNは閉塞網の利用であるため、一般的に安定した速度で通信が継続されます。回線速度で選ぶ場合は、ほとんどのケースでIP-VPNが優れています。

サポート体制の違い

一概には言えませんが、一般的にはIP-VPNのサポートのほうが優れていると言えます。設備投資にコストがかかるIP-VPNは参入障壁が高いため、予算の潤沢な有名企業が提供している場合が多いからです。

インターネットVPNは参入企業が多いことから、価格競争によりサポート面での待遇を落としている可能性もあります。したがって、事前にサポート体制について確認することが重要です。

VPNを導入してセキュアな通信を実現しよう

VPN接続は、ビジネス環境において安全かつ効率的な通信を実現する重要な技術です。適切な機器の選定と導入手順を理解し、セキュアなリモートワークや拠点間のデータ共有を実現しましょう。VPN接続は、企業の情報資産を守り、ビジネスの効率化に役立てることができます。

この記事の執筆

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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