働き方の多様化に伴い、注目を集めているのがリモートアクセスやVPNといった通信技術です。従来のオフィスワークをどこからでも実施できるようになる2つの技術は、それぞれ具体的にどのような役割を果たすのでしょうか。本記事では、リモートアクセスとVPNの仕組みや役割の違い、活用のポイントを解説します。
目次
リモートアクセスの役割
リモートアクセスは、特定の場所に設置されているPC端末やサーバーに、遠隔地からアクセスして利用できるようにするための技術です。
従来であれば、オフィスに設置されているPCやサーバーはオフィスに行かなければ使用ができませんでした。また、業務によっては、外に仕事を持ち出すことが技術的に不可能ということもありました。しかしリモートアクセスを会社に導入することにより、外部のPCやスマホからオフィスの端末にアクセスして、オフィスと同様の業務をリモートで実行することができます。
近年、働き方改革の一環としてリモートワークの導入が進んでいます。その際に役立つサービスの1つが、リモートアクセスツールというわけです。
リモートアクセスとリモートデスクトップの違い
リモートアクセスと似たような言葉に、リモートデスクトップと呼ばれるものがあります。リモートデスクトップはリモートアクセス技術の一種で、オフィスに設置されているPCのデスクトップを、遠隔地にあるPCに転送できるサービスです。
リモートデスクトップの場合、ただ遠隔からPC画面を表示できるだけでなく、実際の動作もオフィスのPCが処理を担当するため、ハイスペックな動作を期待できます。例えば高性能なGPUを積んだPCを動かしたいが、自宅には安価なラップトップしかないという場合でも、リモートデスクトップならオフィスのハイスペックマシンを利用可能です。
また、リモートデスクトップはVPN環境を整備しなくとも、社内マシンにアクセスができるという点でも評価されています。
VPNの役割
それでは、VPNとはどのような役割を果たす技術なのでしょうか。VPNは「Virtual Private Network」の略称で、仮想的に独自ネットワークを構築して、インターネット利用に伴う情報流出や第三者の介入を回避できるサービスです。
通常、インターネットを利用する際は世界中のWebサービスにアクセスできる一方、こちらもIPアドレスなどの個人情報を第三者に意図せず公開してしまいます。その結果、サイバー攻撃のリスクなどを高めてしまう可能性があるでしょう。
しかしVPNを利用することで、インターネット利用に伴うデータのやりとりやIPアドレスが暗号化され、外部に特定されることを回避できます。VPNは個人での利用はもちろん、企業がセキュリティ対策の一環としても広く導入を進めており、リモートアクセスの利用を問わず、活躍している技術です。
リモートアクセスとVPNの違い
結論から言うと、リモートアクセスとVPNは、同じタイミングで使われることがあるものの役割が大きく異なります。
まず、リモートアクセスは遠隔からPCやサーバーの操作を可能にするツールで、直接端末を活用する上で必要になります。一方、VPNはインターネット利用時の接続環境を暗号化することで、安全なインターネット接続を可能にします。
リモートアクセスを使ってネット利用が安全になる、あるいはVPNを使うとリモートアクセスができるようになることはありません。これらの技術を併用することで、安全なリモートワークが可能になる仕組みです。
なぜVPNの利用でリモートアクセスが安全になるのか
ここまでの内容を踏まえると、「リモートアクセスツールさえあればVPNは不要なのでは?」と考える方もいるかもしれません。確かに、リモートワークを円滑に行うことが目的であれば、リモートアクセスツールを導入すれば運用は十分に可能です。
しかし、課題として残るのがリモートアクセス導入に伴うセキュリティリスクです。リモートアクセスは、安全なインターネット環境下で行わないと、遠隔操作でやりとりしている内容を第三者が覗き見したり、ログイン情報を取得されて不正アクセスに発展したりする可能性があります。
こういったインシデントの発生を未然に防ぐ上で役立つのが、VPNです。VPNは主に以下2つの仕組みを活用して、ユーザーのインターネット利用を支援します。
- トンネリングカプセル化
- 暗号化および認証
トンネリングカプセル化は、VPNの匿名通信のあり方を端的に表したものです。インターネット接続の際、VPNを使うと独自のトンネル環境を構築し、通常のインターネット回線とは別のルートで接続を行います。
また、VPNの構築したトンネルを通過するのは、カプセルに包まれた状態のデータです。密閉されたカプセルに閉じ込めた状態でデータの送受信を行うことで、安全かつ確実にデータのやり取りを行えるというわけです。
また、VPNではデータの安全性を確実なものにするために、暗号キーを各データに当てはめ、送信者と受信者の認証がなければデータを展開できないようにしています。これにより、VPNを通過してやり取りされるデータは、いかなる人物であっても送受信者の許可なしに確認することはできません。
安全なVPN利用のポイント
安全なインターネット利用には欠かせないVPNですが、VPNにもいくつかのサービスがあるため、最適な製品を選ぶのは難しいものです。
利用価値の高い、安全なVPNを選ぶためのポイントは、まず有料のサービスを選ぶことです。VPNには無料で利用できるものもありますが、セキュリティや通信パフォーマンスの面で劣ったものが多く、企業として利用することは推奨できません。組織的なVPN活用を検討している場合、有料かつ導入実績の豊富なサービスを選びましょう。
また、VPN利用についてはあらかじめ社内で仕組み化を行い、確実に従業員に使ってもらえるよう促すことも大切です。
リモートアクセスはVPNを使って安全に利用しよう
リモートアクセスとVPNは、どちらのツールも安全で便利なリモートワークの実現には不可欠なサービスであるため、積極的な導入を検討したいところです。自社のニーズに合った製品を選んで、迅速に導入を進めましょう。