近年、生成AIの進化により、リサーチ業務の効率化や情報収集の高度化を目的として、ChatGPTのDeep Researchを活用する人が増加しています。特に、調査量が多いテーマでは、人間の作業を大きく肩代わりしてくれる力強い味方ともいえる魅力的な機能です。

しかし一方で、使い方を誤ると誤情報の混入や理解が浅いまま鵜呑みにしてしまうリスクなどもあり、「便利そうだけど正直どう使えばいいかわからない」と感じている方も多いのではないでしょうか。

本記事では、Deep Researchの基本的な仕組みを整理したうえで、精度を高めるための考え方や具体的な活用のプロセス、実際に筆者が意識している使い方のコツまで、徹底的に解説していきます。

この記事を読むことで、Deep Researchを「ただ使う」状態から、知識を深めるための強力なリサーチパートナーとして使いこなす視点が身につくはずです。調査の質を一段引き上げたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

※ 生成AIはモデルの進化による精度向上が進んでおり、ハルシネーションの発生率も改善傾向にあります。そのため、本ブログ執筆時と比較し、回答精度は上昇しておりますが、それでも正確性を完全に保証するものではありません。そういった点でも、本ブログの内容を活用いただき、ハルシネーション対策の一助としていただけると幸いです。

Deep Researchとは?

すでにご存知の方も多いと思われますが、改めてその機能を一言で説明すると「1つのプロンプトで最新のオンライン情報を検索・統合し、詳細なリサーチタスクを完成する機能」です。これまでのGPTのように「プロンプト ⇒ 生成」と1度の問い合わせで完了するのではなく、モデル自身が「どのような順序で調べるか」というワークフローを思考しながら結果を出力してくれるという特徴(AIエージェント)もあります。

ちなみに、私も最近になって知ったのですが、ChatGPTのDeep Researchは2025年5月現在、o3にDeep Researchのために手を加えた「Deep Research専用モデル(※)」で動いているそうです。

なので、ChatGPTのチャット欄の左上にあるモデル選択は、Deep Researchに関しては関係ないそうです(もっと早く知りたかった)。

(※)プランによっては制限を超えた場合、自動で軽量版であるo4-miniをもとにしたモデルに切り替わります。

DeepResearchの例

とても詳細なリサーチを行ってくれることで業務に大きく貢献してくれるDeep Researchですが、ユーザーが少し使い方を工夫することで、その威力を最大限に発揮します。

今回ご紹介する個人的に考える工夫ポイントは以下の2点です。

①:リサーチ対象に関する基礎知識は事前に身に着ける

間違った情報の出力や意図しない回答、ハルシネーションを含む回答を生成することも十分に考えられるため、正誤の判断をある程度可能にするための事前情報は、信頼できる公式情報等から自分自身でリサーチする

②:知識を、横に、縦に、広げる手段として使用する

出力結果は「情報の羅列」に過ぎないため、出力結果を読み解き、知らない内容や気になった点をさらに深掘りすることで「知識」に昇華し、知見を広げていく

では、具体的に普段の私がどのようにDeep Researchを使用しているのか紹介していきます。

Deep Researchの個人的活用術!

①:まずは自力での調査(対象の知識が乏しい場合)

Deep Researchを実行する前に、まずはある程度リサーチ対象についての情報を身に着けておきましょう。とは言ってもガッツリ調べるということではなく、ざっと全体像を見渡し「なるほど理解した」レベルまでもっていく程度でOKです。こうしておくことで、Deep Researchの結果の誤情報や意図しない出力を(100%は無理でも)見分けることができます。加えてDeep Researchの出力結果は結構な量になることも多いので、なかなか頭の中の情報整理が難しいということもありました。事前知識があればこういった問題も緩和することが可能です。

また、調査段階で気になった点があれば箇条書きでメモを取るようにしています。このひと手間をかけておくことで、Deep Researchでの深掘りがさらに捗ります。

調査では、以下のようなソースを主に調べます。上の項目ほど優先度が高いです。

・公式情報:公式サイトや公式ドキュメント・リポジトリ

こちらは言わずもがな、最も信頼できるソースです。特に企業情報や製品情報といった公式サイトが存在する場合には必ず目を通しておきましょう。OSSのような公開ソースがあるものの場合は、そちら(READMEレベルでもOK)にざっと目を通すとより具体化できます。

英語サイトや英語ドキュメントを調査する場合は「最初から全体翻訳」ではなく「ざっくり見渡した後に段落区切りで翻訳(たとえ意味が2割程度しかわからなくても)」していくと、文脈の取り違えや翻訳ミスによる理解の齟齬、専門用語のおかしな翻訳(プログラミング用語である「Python」が「ニシキヘビ」に翻訳される等)による混乱を避け、結果的に理解度を高めることが可能です。

・Wiki:Wikipediaや関連情報がまとめられたサイト

こちらは、公式情報よりは信頼度が低くなりますが、複数人によって編集されていることで情報の精度はある程度期待できますし、新しい観点をゲットできることも多くあります。技術要素であればその技術を扱う企業のエンジニアブログ(Engineer Voiceのようなサイト)からピックアップして眺めるのも良い手です。ただし、古い情報がアップデートされていない可能性も多くありますので、その点はご注意ください。

・評判や実体験:個人の感想ブログやSNSでの反応

これは付加的なものにはなりますが、特に製品や技術系を調査する場合は、実際に触るのが難しいことがあったり、自分の知識やスペックでは補えない感想があったりなども多くあります。そのため、まずはSNSで調べてみて、使用者や有識者の素直な反応を見ることも大切です。とはいえ、有象無象になりかねないので、この調査は「確実にその手の人間である」ことがわかるアカウントや反応が大きいものに絞って確認したりしています。

②:Deep Researchの実行

いよいよAIの登場です!実際にプロンプトを流す際には、以下のような点に注意しています。

・①で知らなかった内容を軽くリサーチする

関連用語でわからない、もしくは誤解しているものがある場合、リサーチ結果の理解度に大きく影響します。そのため①の自己調査で初めて出くわした単語に関しては、本リサーチの前に擦り合わせの意味を込めて軽く1度リサーチします。ここはDeep Researchでなくても問題ありませんが、最新情報を取ってこれるような設定(Web検索をONにする等)を加えておいてください。

・①で気になった内容をプロンプトに加える

①の自己調査で「わからない」訳ではないけれど、なぜそうなったのかイマイチ理解できていないと感じた点については、しっかりとその旨とその部分を重点的、もしくは付加説明をしてもらえるようプロンプトに追加します。こうすることにより「今の自分向けにカスタマイズ」された調査報告を得ることができます。

・専門用語は簡単な説明を追加するよう指示する

すでに軽く調査済みであっても、リサーチ結果に知らない単語、特に専門用語が出てくる可能性は大いにあります。そのため、プロンプトで「専門用語については必ず150文字以内の簡単な説明を追加してください」と記述しておくと、都度別途で調査をしなくても概要であれば掴むことが可能です。特にChatGPTであれば、ヒストリー機能により過去のチャットも参照されるので、自分の知識レベルに合わせた解説をしてくれる可能性が高まります。

このような指示を追加すると…。

文末に用語解説が!便利ですねぇ。

・公式情報と公式以外の情報は区別するよう指示する

リサーチ結果には出典が付きますが、毎回リンク先を確認するのは骨が折れるので、特に製品や企業といった公式サイトがある場合、プロンプトで公式の出典、もしくはそれ以外を一目で区別できるよう指示しておくと情報の選別が楽になります。例えば「公式サイト以外からの情報の場合は文字色をグレーにすること」というように指示しておくことで、後々の真偽や重要度の判定が楽になります。

・競合の製品や類似の企業などがわかる場合は加える

DeepResearchの場合、最初のプロンプトの後には、ほぼ必ず指示に対する追加質問が行われるため、その際に聞かれることもありますが、競合や類似する製品や企業、技術が判明している場合、それらとの比較を最初から指示しておくと理解度も深まりますし、追加で指示する必要もなくなります。もちろん、具体的な名称がわからなくとも「競合や類似がある場合はメリデメを比較して」と追加するのも効果的です。

・比較や数字データはなるべく表形式で出してもらう

どうしても文字量が多くなりがちなので、表やグラフといったデータ類は図として可視化してもらった方が読みやすくなります。リサーチ結果を報告する場合にも参考になるので、これは積極的に追加したい指示です。

・タスクを切り分けて徐々に深掘りするよう指示する

AIの特性上、あまり幅広い内容を聞いてしまうとコンテキスト量が増えてしまい、出力結果の精度が落ちる可能性があります。その場合は一度で気になったことをすべて聞くのではなく、調査したい内容をタスク分解してからリサーチを開始するのも効果的です。これにより、最初に行ったリサーチの内容を後から行うリサーチに反映するような効果もあります。例えば、まずは①で気になった点について質問をしてから、本題のリサーチを行うというように分解することで、最終出力の量を減らすだけでなく、ユーザーの知識レベルや聞きたいことの本質を理解した状態でDeepResearchを実行できます。

③:調査した内容との擦り合わせ

リサーチ結果が出力された後は、まずは一通り読み込みます。そして、①で自己調査した内容と異なる内容が出力されている点や、なんとなく認識が違いそうな内容をピックアップして再度自己調査、もしくは出力結果の出典や再リサーチで詳細を確認します。曖昧な部分をはっきりさせることで、知識の強化や実はハルシネーションが発生している部分に気付くことができます。出力結果が素晴らしいと意外とすんなり鵜呑みにしてしまいがちですが、少しでも違和感を感じたらぜひ再調査してみてください。

また、①では調査しきれていなかった部分に対する出力があった場合、そういった部分は自分の知識外、もしくは興味外の内容である場合が多く、なかなか自分だけの調査では触れることができない部分である可能性が高いため、その部分を重点的に再調査することもポイントです。以降の調査の質が格段に上がります。

④:疑問点や周辺知識の深堀り

そして、ここからがある意味真骨頂です!ここまで調べた内容をもとに、横に、縦に、深掘りしていきます。

特に深掘りして欲しいポイントとしては、以下の3点です。

  • 理解できなかった点や深掘りが必要だと感じた点は自己調査や再質問を繰り返す
  • メイン文脈以外の部分でも知らなかった単語や気になった点があれば質問してみる
  • 技術から商材、商材から技術といったようにレイヤーを変えながら理解していく

このように広げることで「1つの知識」から「ネットワーク化された知識」に昇華され、新たな視点やアイデアが生まれたり、その知識から未来予測をしたりといったことも考えられます。ここまでを一人で行うにはこれまでは膨大な時間がかかっていましたが、DeepResearchを使うことでかなりの時間が短縮されます!

ちなみに、曖昧な単語や適当な文章で質問しても「それは〇〇のことで合っていますか?」のように、それまでの文脈からAIが推測して聞いてくれるので、とてもありがたいです。

手間はかかりますがこのような部分を少し意識するだけで調査の質が向上するのはもちろん、自分自身の知識が飛躍的に強化されますので、是非試してみてください!

まとめ

長文になってしまいましたが、今回は私のDeep Research活用術について書かせていただきました。

特に「本リサーチの前の事前調査」や「知識の幅広げに活用する」というポイントは、Deep Researchのみでなく、通常のチャットやOpenAI以外のDeep Research系の機能でも応用できる部分なので、ぜひこのような使い方で自分自身のレベルアップに活用してください!

とはいえ、事前調査している時間がない場合や本当にちょっとした調べ物、対象に対する知識が元々十分にあるといった場合は、いきなり②から始めてしまってもOKです!それでもハルシネーションが不安な場合は、出典の確認だけでも最小限やっておくのがオススメです。

便利なDeep Researchをより正確かつ安全に、そして最大限活用できるようこれからもいろいろと試していこうと思います。

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