インターネットVPNは、通常のインターネット回線を利用してサーバを構築できるため、VPNプロバイダーと契約をしなくとも自社構築が可能です。近年では市販のVPN対応ルーターやソフトウェアが幅広く登場していることもあり、拠点数や用途に応じてVPNを自社構築しやすい環境といえるでしょう。しかし、自社のみで構築する場合には、デメリットも把握しておかなければなりません。本記事では、VPNサーバを自社構築する前に知っておきたいメリット・デメリットを解説します。

VPNサーバの構築方法は主に2つ

 自社でVPNサーバを構築する方法には、以下の2つが挙げられます。

1. 固定IPアドレスを持ったPCに、VPNサーバソフトウェアをインストールする

 社内PCにVPNサーバソフトウェアをインストールして、外出先や自宅から社内PCへのリモートアクセスを可能にする方法です。VPNサーバとなった社内PCを経由して会社の共有ファイルサーバなどにアクセスできるため、直接オフィス環境に接続しているかのような通信環境を構築できます。従業員一人単位でPCにVPNサーバを構築して、外出先からリモートアクセスしたい場合などに活用されています。

2. 各拠点にVPNサーバ機能付きルーターを設置する

 各拠点にVPNルーター(VPNゲートウェイ)を設置してVPNサーバを構築し、拠点間通信を実現する方法です。WindowsやMacOS、Android 、iOSなどのOSにはVPNクライアントが標準搭載されているため、端末にソフトウェアをインストールしなくとも外出先から社内ネットワークへリモートアクセスが可能です。会社全体で拠点間通信が必要となるケースでは、主にこちらの構築方法が採用されています。

VPNサーバを自社構築するメリット

 VPN対応ルーターを使用してVPNサーバを自社構築するメリットには、以下の項目があげられます。

外出先からオフィス環境へアクセスできる

 社内にVPNサーバを構築することで、本社と各拠点を安全なプライベートネットワークでつなぐことができます。PCやモバイルデバイスへVPN接続設定をすれば、外出先や自宅からもオフィス環境と同様のネットワークを使用できるため、業務効率向上に役立てられます。

コストが安く抑えやすい

VPNプロバイダーと契約をしないため、契約料や月額料金を支払う必要がありません。拠点数が少ない、またはVPNへ接続する端末が少ない会社であれば、コストを最小限に抑えられるという利点があります。市販のVPN対応ルーターではサーバ機能を搭載したものが増えてきており、機能によって価格が異なるものの1万円~3万円台で購入できるものが登場しています(固定IPがない場合、ルーターの維持費に別途DNS費用がかかる場合があります)。

拠点が少なければ設置・管理が簡単

 自社でVPNルーターを購入して設置・設定するため、2~3カ所ほどの拠点数であれば短時間で設置することが可能です。また、拠点数が少なければ設定や管理にもさほど手間を要しないため、自社で必要な機器と人材を用意して、サーバを構築しているという会社も多くあります。

VPNサーバを自社構築するデメリット

 自社構築でVPNを導入するには、以下のようなデメリットがあることを理解しておかなければなりません。

 各拠点にVPNルーターの設置が必要になるため、拠点数が多くなるほど機器を揃えるコストが高額になります。また、既存ルーターがVPNに対応していない場合は買い替える必要性もあるため、拠点数が多くなればトータルコストがかさんでしまうといったデメリットがあります。

VPNの設定・管理が大変

 拠点数が少ない会社であれば比較的簡単に導入できるインターネットVPNですが、拠点数が多くなれば設定や管理に多くの労力が必要になります。各拠点にノウハウを持った人材が求められることから、自社のみでの構築が現実的に難しい場合があります。また、VPNの構築にあたり、万が一の障害にすぐ対処できる体制も必要となります。自社で適切な管理体制が整っていない場合には、VPNプロバイダーの利用を検討しなければなりません。

VPNサーバへの接続台数が限られる

 市販のVPNルーターでは、1台のVPNサーバへ接続できる拠点数やリモートアクセス数に上限がある場合が一般的です。接続したい拠点数やリモートアクセスするユーザー数が多い場合には、その数に応じて適切なVPNサーバを設置しなければなりません。

今後の運用を見据えて構築することが重要

 VPNサーバーの自社構築は、コストを安く抑えたい拠点数の少ない会社にはメリットといえます。しかし、拠点数が多くなるほどVPNルーターの購入・設置にコストや労力が必要なため、自社での構築や運営が難しい会社もあるでしょう。コストだけを優先せず、導入時の設定や導入後の運用、ランニングコストまでを見据えて構築方法を検討することが重要です。

 また、インターネットVPNは、通信事業者の閉域網を利用するIP-VPNと比べてネットワークのセキュリティ性が低くなっています。よりセキュアで安定した拠点間通信・リモートアクセス環境を構築したい場合は、IP-VPNの契約も視野に入れましょう。IP-VPNであれば、ルーターの購入から設定・運用までを代行してもらえるため、自社構築が厳しい会社にも導入可能です。


ユーザーによる顧客満足度をベースに、自社に最適なVPN製品を選ぼう!

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