VPNサービスの導入を検討されている企業担当者の中には、どのサービスを選ぶか迷われている方は多いと思います。アフターサービスなどを考えると、国産のサービスを検討されるのではないでしょうか。
しかし、VPNの種類によっては、国産のサービスよりも海外製のサービスの方が優れている場合があります。特にクラウドVPNは、世界規模で事業展開することで多くのユーザーを獲得し、高品質・低価格を実現した海外製のサービスも少なくありません。
一方、インターネットVPNやIP-VPNは、VPNルーターの設置・設定や専用回線の敷設が必要なので、国産のサービスが有利です。
日本と海外のどちらのサービスが適切かは、選択するVPNの種類によって違います。そして選択すべきVPNの種類は、企業の状況によって変わります。
そこで本記事では、日本と海外のVPNの事情とサービス内容の違いについて、取り上げたいと思います。最初に、サービスの違いの背景にある、VPN規制事情について見てみましょう。
目次
海外のVPN規制事情〜海外では罰金刑もあり
日本には、サイバーセキュリティ基本法をはじめ、インターネットなどの悪用を防止するための法律があります。しかし、VPNそのものを規制する法律がない上に、物理的なVPN規制もありません。
しかし、海外においては中国やロシアをはじめファイアウォールによる物理的な規制を行っている国が少なくありません。
特に中国では、金盾と呼ばれる強力なファイアウォールで、物理的にVPNの制限をかけていることで有名です。そして法律面でも、重慶をはじめ条例で規制をかけている都市があり、違反すると罰金を課せられる場合もあります。

また中東地域では、インターネット上で表現の自由が制限されている国も多く、VPNの利用率が高い傾向があります。それに対して、一部の国で行っているのがVPNの法規制です。アラブ首長国連邦ではVPNの不正利用が発覚すれば、最大で545,000ドル(約6,000万円)もの罰金が課せられます。
日本と海外のVPN利用目的の違い
海外では日本よりも、VPNが個人情報保護目的に多く利用される傾向があります。背景にあるのは、治安の問題とインターネット犯罪のリスクです。
日本よりも治安の悪い海外において、VPNはインターネットからの個人情報の漏えいによる犯罪を防ぐ役割も担っています。そのため、海外では日本と比較すると、個人でのVPN利用が多い傾向があります。
個人向けVPNの需要が高い海外では、個人で手軽に利用できる「クラウドVPN」が発展しています。
日本と海外のVPNの違い
VPNサービスを大別すると、以下の4種類です。
1.インターネットVPN
最も一般的な方式で、公衆インターネット回線を利用します。本社や支店など、拠点ごとにVPNルーターを設置することで、大きな仮想的社内ネットワークを構築します。
2.クラウドVPN
インターネットVPNの一種ですが、各拠点にVPNルーターを設置せずに、クラウド上のVPNサーバを使う方式です。インターネットVPNに比べて、導入費用とメンテナンス費用を軽減できるメリットがあります。海外ではこのサービスが発展しています。
3.IP-VPN
通信業者が提供する専用回線を、複数で共同利用する方式です。専用回線に近いセキュリティ性を確保できるメリットがある一方で、費用が割高になるデメリットがあります。
4.リモートアクセスVPN
社外に持ち出して使うノートPCなどの、モバイルデバイス向けのVPNです。モバイルデバイスにVPNソフトなどを導入することで、デバイスと拠点に設置したVPNルーターとの間で通信の暗号化を行い、セキュリティを高めます。
国産の場合、4種類のそれぞれに強みを持ったサービスがあります。そして、複数の種類のVPNを取り扱うサービスが多いのも特徴です。
一方、海外製のサービスの場合、前述の通りクラウドVPNが中心となります。専用回線が必要なIP-VPNサービスを日本で行うのは難しいからです。そして、インターネットVPNとリモートアクセスVPNの場合も、VPNルーターの設置・設定が必要なため海外製のサービスは不利となります。
しかし、クラウドVPNに限れば、海外製のサービスは価格面やサーバ設置数および性能面で、日本よりも優れているサービスが多くあります。では次に、クラウドVPNについて日本と海外を比較したいと思います。
日本と海外のクラウドVPNの違い
「価格」「VPNサーバ設置数」「VPNサーバへの接続方法」の3点で国産と海外製のクラウドVPNを解説してみます。
1.価格
全般的に、海外製のクラウドVPNは日本よりも割安な傾向があります。なお、海外製のサービスは、米ドル建てによるものが多く、円相場により金額は変動します。
2.VPNサーバ設置数
VPNサーバ数では、国内サービスよりも海外製のサービスの方が圧倒的に多い傾向があります。海外製のクラウドVPNは、複数の国々にVPNサーバを設置しているサービスもあり、国境を越えたVPN通信に便利です。また、VPNサーバの数が多いサービスは、政府のファイアウォールを回避する上でも有利です。
3.VPNサーバへの接続方法
海外製のクラウドVPNは自動設定が中心なので、国産のサービスより使いやすい傾向があります。VPNサーバへ接続するための設定方法が「手動設定」か「自動設定」かは、VPNの使いやすさに影響するので重要です。
手動設定の場合、VPNサーバが変わるごとに設定し直す必要があります。それに対して自動設定では、設定用のアプリケーションがVPNサーバへ接続を、自動で行ってくれるので手間が省けます。
日本or海外〜VPNサービスを選ぶポイントとは?
このように、国産のVPNサービスは4種類あるのに対して、海外製のVPNサービスはクラウドVPNに特化しています。そして海外製のサービスの方が、国産のサービスよりも価格やサーバ設置数などの面で優れています。
企業の規模や拠点数、海外に事業展開しているかなどによって、ふさわしいVPNは違ってきます。そのため、企業の状況に合わせて最適なVPNサービスを選ぶことが、費用対効果を高める上で大切です。
1.日本国内のみの事業展開の場合
日本国内のみの事業展開で、複数拠点の社内LAN間で安全に通信を行いたい場合は、国産のサービスがおすすめです。取り扱う情報に、高いセキュリティが求められる場合はIP-VPNが適しています。逆に、それほど高いセキュリティが求められない場合は、インターネットVPNが良いでしょう。
また、社員の人数が少ない場合、高いセキュリティが要求されなければ海外製のクラウドVPNサービスも、検討すべきでしょう。なぜなら国産のサービスでは、初期投資が必要なため、少人数では費用対効果が得られない場合があるからです。
2.海外に複数の拠点を持つ場合
海外に複数の拠点を持つ場合は、世界各地にサーバを設置している海外製のVPNサービスが良いでしょう。特に、拠点のある国にVPNサーバを設置しているサービスを選ぶのがおすすめです。また、ファイアウォールによる規制がある国では、規制に強いサービスを選ぶのが望ましいでしょう。
3.テレワークで使用する場合
テレワークでVPNを使用する場合は、2つの選択肢があります。国産のリモートアクセスVPNと、海外製のインターネットVPNです。
テレワークでVPNを使用する場合は、2つの選択肢があります。国産のリモートアクセスVPNと、海外製のインターネットVPNです。
在宅ワークの社員数が多い場合は、国産のリモートアクセスVPNサービスが有利です。逆に、在宅ワークの社員数が少ない場合は、海外製のインターネットVPNサービスの方が、初期費用を抑えて手軽に使えるので便利です。
まとめ
今回は、日本と海外製のVPN事情について取り上げました。国産、海外製のどちらのサービスを選ぶ上でも、重要なことは必要なセキュリティを保てるかどうかです。安いサービスを選んで、コストダウンしたとしても、セキュリティが保てなければ意味がありません。
情報漏えいは、大きな損失につながりかねないからです。企業で取り扱う情報の機密度に応じたセキュリティを保ちながら、費用対効果を高められる最適なVPNサービスを選ぶことが重要です。
ITreviewでも、日本と海外のビジネス向けVPNサービスの口コミ・評判を取り扱っています。ぜひ、以下のサイトをご参照ください。
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