システム構築などでは、データを管理・構築する場所としてデータベースを用意する必要があります。データベースの中でも、事実上標準的な規格といえるのが「RDB」です。この記事では、RDBの概要や導入のメリット・デメリット、活用事例や選び方などについて詳しく解説します。
目次
RDBとは?
RDBとは、「Relational Database(リレーショナル・データベース)」の略です。日本語では「関係データベース」と訳されます。複数の表で管理されたデータ同士を関連づけることで、複雑な処理を実現するデータベースのことです。
RDBはデータベースそのもののことであり、管理・構築のためには、「RDBMS(Relational Database Management System:データベース管理システム)」というシステムが求められます。
NoSQLデータベースとRDBの違い
RDBの比較対象として、NoSQLというデータベースが挙げられます。
NoSQLとは、「Not Only SQL」の略であり、データベース用の言語であるSQLを使わない新しい方式です。広義では、RDB以外のデータベースはすべてNo SQLに該当します。
NoSQLデータベースは、RDBよりもデータの格納・取得が最適化されている点が特徴です。RDBに対して、処理速度、拡張性に優れますが、検索性の弱さが欠点として挙げられます。
RDBMS(データベース管理システム)の基本機能
RDBを運用するためには、RDBMS(データベース管理システム)が必要です。データベース管理システムは、データに関する次のような処理を行います。
定義
データベース管理システムにはデータベースの「スキーマ」を定義する機能が搭載されています。スキーマとは、データベースの構造のことであり、設計図のような存在です。データベース管理システムを利用すると、DDL(Data Definition Language:データ定義言語)を用いて、スキーマを定義できます。
操作
データの登録、読み出し、更新、削除、といったデータに対する操作は、データベース管理システムの代表的な機能です。DML(Data Manipulation Language:データ操作言語)というSQLの一種を使って、この処理を行います。
制御
ユーザーによる操作の裏で、データの安全性や信頼性を維持するのもデータ管理システムの役割です。次のような機能が制御の機能として分類されています。
・排他制御:データを同時編集する際に矛盾が生じないように調整する
・機密保護:不正アクセスからデータを守る
・障害回復:データベースの障害が起こった際に復旧を行う
RDB導入のメリットとデメリット
データベースとしてRDBを選択すると、次のようなメリット・デメリットがあります。
RDB導入のメリット
1.データの一貫性
RDBはデータの一貫性が評価されています。ここでいう一貫性とは「処理が正しく実行されればその結果が表示され、処理が正しく実行されなければ前の状態が表示される」という性質のことです。この性質は、RDBの設計におけるルールである「ACID特性」によって実現されています。
2.処理コストの低減
RDBは複数のテーブルを活用することで処理コストを低減しています。テーブルとは、データベース内でデータを管理する単位のことです。RDBでは各テーブルが連結されており、追加・削除・更新といった処理に発生するコストを最小限に抑えています。
3.SQLによる標準化
RDBで使用されているSQLは、ISOで規格化された安定した言語です。複雑なデータの処理も、SQLによって標準化され、正確に実行できます。
RDB導入のデメリット
1.処理速度が遅い
RDBはプログラムが複雑化する傾向があり、処理が遅くなりやすい点がデメリットとして挙げられます。特に、膨大なサイズのデータを処理する場合は、業務効率に影響するほど速度が遅くなることも少なくありません。
上述したNoSQLデータベースは、RDBの処理の遅さを解消するために開発されたデータベースです。
2.拡張性が低い
RDBはサーバ1台で実行するように設計されている関係上、あとから拡張することは困難です。データの読み込みに関わる部分は比較的簡単に拡張できますが、書き込みに関わる部分の拡張は時間やコストの問題から現実的ではありません。
RDBMSの活用事例
RDBMSを導入したことで得られるメリットについて、ITreviewに集まったレビューをもとに活用事例を紹介します。
フロントエンドのシステムの軽量化が可能
「歴史が長いだけあって、書籍やWeb、各ドキュメントマニュアルなど技術情報が多くあり、情報を入手しやすい。SQLを書く側にとっては利便性の高い、PL/SQLも機能として充実しており、DBにある程度のビジネスロジックを埋め込むこともでき、フロントエンドのシステムの軽量化が可能になっている。ハイパーフォーマンスかつ可用性が高いDBのため、業務アプリケーションの安定化と高速化が可能になった」
https://www.itreview.jp/products/oracle-database-12c/reviews/4030
▼利用サービス:Oracle Database 12c
▼企業名:ソフトバンクコマース&サービス株式会社 ▼従業員規模:1000人以上 ▼業種:ソフトウェア・SI
構築コストを低くシステム構築ができた
「GUIで管理できるので比較的初心者でも扱える。DBMS利用のとっかかりにはいいです。ただ動かすだけ(レスポンスチューニング等をしないの)であれば、それほどスキルがなくてもDBの構築・管理がおこなえます。ライセンスコストだけでなく、構築・管理工数等含めたトータルでの構築コストを低くシステム構築ができた」
https://www.itreview.jp/products/sql-server-2017/reviews/12639
▼利用サービス:SQL Server 2017
▼企業名:株式会社LIXIL ▼従業員規模:20-50人未満 ▼業種:鉄・金属
複雑な設定無しで手軽に利用
「中小規模のプロジェクトで手軽に利用することが出来るデータベース。社内向けのツールやプロトタイプを作成するときに使う場合が多いが、場合によってはそのまま採用するケースもある。元々エクセルなどでを使用していた社内情報の管理が煩雑になってきたため、簡易な社内向け管理システムを構築した際に、複雑な設定無しで手軽に利用することが出来た」
▼利用サービス:MySQL Enterprise Edition
▼企業名:株式会社ネクシジョン ▼従業員規模:20人未満 ▼業種:情報通信・インターネット
https://www.itreview.jp/products/mysql-enterprise-edition/reviews/16947
データベースの選び方のポイント
現在は多くのデータベースシステムが提供されています。単にサイズだけを取り上げても、個人利用を想定した小規模なものから、企業用の膨大な規模のものまでさまざまです。また、機能やカスタマイズの幅もシステムによって異なります。自社に合ったデータベースを導入するために、以下のような選び方のポイントを意識してください。
コスト
データベースに限らず、システム選びにおいてコストは重要な要素です。データベースの場合は、ライセンス、ハードウェアの費用が代表的なコストとして挙げられます。その他、構築に発生するコストや運用開始後のコスト、人件費、利用する担当者の教育コストなど、トータルのコストを考えることが大切です。初期コストが低くても、運用後のコストがかさんでしまうケースもあります。
データベースの性能とコストの関係についても覚えておきましょう。処理できるデータ量、同時に操作できるユーザー数、動作の安定性、動作効率などはコストによって変わってきます。少しでもコストを抑えたい場合は、自社が何人でデータベースを操作するのか、どの程度の規模のデータを扱うのか、といった点をあらかじめ細かく検討しておくことが大切です。
また、データベースにはトラブルが起こり得るため、トラブル時のコストを見越しておくことも大切です。導入しただけで予算を使い切ってしまうような場合は、トラブル時のコストを負担できないケースがあります。
業務とのマッチング
業務ごとにマッチングのよいデータベースは異なります。どの業務にデータベースを導入するのか検討したうえで、最適なデータベースを選んでください。
現在は、特定の業務での利用を想定したデータベースが多数リリースされています。膨大な顧客情報管理用のデータベースなどが代表例です。実際の業務を意識して設計されているため、導入して簡単なカスタマイズを済ませれば、すぐに実務で利用できます。
また、複数の業務を統合できるデータベースのパッケージ製品もあります。業種によってマッチングが異なるため、同業他社の間ではどんな製品が評価されているのか調べてみましょう。上述した専門的なデータベースと比較すると構築の手間がデメリットとなりますが、運用開始後、業務に定着すれば大幅な効率化とコストダウンが期待できます。
提供形態
データベースの活用を想定しているビジネスモデルによっては、パッケージの製品ではカバーできないケースがあります。基盤となるデータベースから、業務に合わせてシステムを拡張していくことができれば理想です。その際には、ベンダーとのパートナーシップが求められます。データベースそのものに加え、ベンダーがシステム構築のサービスを提供しているか、信頼できるスキルをもっているか、といった点にも注目しましょう。
RDBの業界マップ
RDBのユーザーからの評価を知るには、ITreview Gridが便利です。ITreview Gridは、ITreviewに集まったユーザーのレビューを元に生成された4象限の満足度マップです。このマップでは、顧客満足度と市場での認知度を掛け合わせた結果が、4象限上でのポジショニングとして確認できます。
RDBMS製品おすすめ5選
実際に、RDBを活用されている企業の方々のレビューが多い製品を中心に、おすすめのRDBを紹介します。
(2022年1月5日時点のレビューが多い順に紹介しています)
PostgreSQL
「PostgreSQL」は、オープンソースタイプのRDBMSです。Linux、macOSのほか、Windowsでも利用できます。ソースが公開されており、無料で利用できることから、世界的に人気の高いデータベースです。機能面も非常に充実しており、商用のデータベースと比較してもひけを取りません。シェアが大きいことから情報を見つけやすく、日本語の参考資料が多い点も魅力です。
Oracle Database 12c
「Oracle Datab 12c」は、アメリカのオラクル社が手がけるRDBMSです。Oracle Databeseは世界初の商用RDBMSであり、市場ではトップシェアを占めています。12cは5年半ぶりのメジャーアップデートであり、世界初のクラウド対応を見越して設計されたデータベースとして注目されています。新しく実装された「Oracle Multitenant」により、データベース内に仮想的なデータベースをさらに構築可能です。
Oracle Database 12cの製品情報・レビューを見る
SQL Server 2017
「SQLServer 2017」は、マイクロソフト社が提供しているRDBMSです。Windowsとの相性がよいことから、Widows Serverでは一般的に利用されています。言語としてSQLに独自に拡張を加えた「Transact-SQL(T-SQL)」を使用するのが大きな特徴です。SQLに習熟している場合は、延長線上の感覚でさらに高度な操作を実施できます。また、通常の操作自体も直感的でシンプルなため、慣れていないユーザーでも比較的扱いやすいデータベースです。
MySQL Enterprise Edition
「MySQL Enterprise Edition」は、データベースのデファクトスタンダードである「MySQL」に開発・管理・解析・バックアップをサポートするさまざまな機能を追加したパッケージ製品です。安定性・速度が世界中の企業から高く評価されています。MySQL自体は無料ですが、こちらはエンタープライズ向けのパッケージとしてサブスクリプション形式で提供されています。WebサイトやWebアプリケーションの開発・運用では世界的に普及しているサービスです。
MySQL Enterprise Editionの製品情報・レビューを見る
Amazon Relational Database Service
「Amazon Relational Database Service」は、クラウド上のセットアップ、運用が可能なRDBです。AmazonのAWS(Amazon Web Service)上で提供されています。「Amazon Aurora」「Postgre SQL」「MySQL」「MariaDB」「Oracle」「SQL Server」など、6つのRDBMSから選択できる点が大きな特徴です。「従量課金」「定額制」という2種類の料金体系があり、利用状況に応じて選ぶことでコストを削減できます。
Amazon Relational Database Serviceの製品情報・レビューを見る
ITreviewではその他のRDBも紹介しており、紹介ページでは製品ごとで比較をしながらRDBツールを検討することができます。
RDB (リレーショナルデータベース)の比較・ランキング・おすすめ製品一覧
まとめ
データベースを導入すると、データを安全に管理することが可能になります。社内システムを構築する際は、自社に合ったデータベースを導入することでシステム構築や業務を効率化できるでしょう。RDBはデータの一貫性や処理コストに優れています。コストや業務とのマッチングを考慮して、バランスのよいRDBパッケージをお選びください。