安全なインターネット利用を促すための方法として、ポピュラーなのがVPNやプロキシの利用です。これらの技術は個人での利用はもちろん、組織に属する従業員のスタンダードなインターネット利用手段としても定着しており、多くの会社が導入を進めています。

本記事では、VPNとプロキシにはどのような違いがあるのかについて、役割やどちらを選ぶべきかの意見も踏まえつつ解説します。

VPNの役割

VPNはVirtual Private Network(仮想プライベートネットワーク)の略称で、独自に仮想ネットワークを構築することで、どこから接続しても安全にインターネットへ接続できる技術を指します。

「プライベートネットワーク」という名前からもわかるように、VPNを利用する際は、インターネットに接続した際のデータのやりとりが全て暗号化されるのが特徴です。情報の内容はもちろん、接続しているIPアドレスもユーザーは隠すことができるので、高いセキュリティレベルを実現しながらインターネットへアクセスできます。

第三者によってネット利用の内容を監視されたり、インターネット利用が原因でやりとりしたデータが流出してしまったりするリスクを大幅に低減できるのが強みです。また、セキュリティリスクが高いと言われる公共Wi-Fiや自宅のWi-Fiを利用する際にも効果を発揮するため、リモートワーク実施の際にも利用が推奨されています。

プロキシの役割

プロキシは、プロキシサーバーと呼ばれる仲介サーバーを介してインターネットに接続する方法です。プロキシサーバーを介してインターネットに接続すると、ユーザーは本来のIPアドレスを隠蔽した形でネット利用ができます。

プロキシにはいくつかの種類があり、それぞれの種類に応じて異なる用途で用いられています。たとえばHTTPプロキシは、Webページの閲覧に特化したプロキシサーバーを提供しているのが特徴です。一方のSOCKS5プロキシは、Webページの閲覧はもちろん、動画の視聴やオンラインゲームの利用など、さまざまアプリケーションの利用に対応しています。

プロキシはユーザーのIPアドレスを匿名化することにより、海外限定のWebサービスなどを利用する際に頻繁に用いられています。例えば北米地域限定配信の動画視聴サービスなどを閲覧したい場合、日本から直接アクセスすると拒否されてしまいますが、プロキシ経由でアクセスすることにより、問題なく視聴可能です。

VPNとプロキシの違い

それでは、VPNとプロキシにはどのような違いがあるのでしょうか。まず技術的には、インターネットへの接続プロセスが異なる点が挙げられます。VPNは仮想の保護されたネットワークを構築し、インターネットへと接続します。一方のプロキシは、プロキシサーバーと呼ばれる中継地点を間に挟むことで、インターネットに接続します。

VPNは仮想ネットワークを構築するので、全てのトラフィックは暗号化された状態で運用可能です。一方のプロキシは、あくまでIPアドレスをプロキシサーバー経由でうやむやにするだけなので、トラフィック全体を暗号化することはできません。

また、VPNはOSレベルで暗号化を実施するので、機密性を担保することが容易です。一方のプロキシは、アプリケーションベースで動作するため、特定アプリやWebブラウザ利用以外のトラフィックについては暗号化されません。

さらに、VPNサービスの多くはサービス利用にあたり、ログを保存していない点も高く評価されています。プロキシサーバーは、サービスによってはユーザーのログを第三者に販売している場合があり、完全なセキュリティを求める場合には適していません。

この点についてはVPNやプロキシサービスによって対応が異なるものの、サービスによってユーザーデータの扱いが異なる点は覚えておきましょう。

VPNとプロキシのどちらを選ぶべきか

VPNとプロキシの導入を検討している人の多くは、セキュリティ対策を強化する目的でこれらのサービスを導入したいと考えていることでしょう。結論から言うと、インターネット利用の安全性を高めたいのであれば、プロキシではなくVPNの利用をおすすめします。

上でも紹介した通り、プロキシはあくまでIPアドレスを隠すことが主な機能であるため、通信の秘匿性を高める上ではあまり役に立ちません。海外のコンテンツやサービスを利用するためであれば、無料でも利用できるプロキシサーバーを選べば良いのですが、本格的なネットワーク通信の暗号化を考えている場合、有料のVPNサービスを活用しましょう。

インターネット利用の暗号化を行ってくれるのはVPNならではの機能であるため、個人としても、企業としても安心の環境を実現可能です。また、VPNは仲介サーバーを必要とするプロキシに比べ、通信パフォーマンスがおおむねして高いと言う強みもあります。高速通信を暗号化しながら実現したい場合も、やはりVPNが適しているでしょう。

VPN利用の注意点

VPNは非常に便利で高いセキュリティレベルを実現できる魅力的なサービスですが、利用に当たっては注意点もあります。

まず、VPNとは一言で言っても多くの種類があり、無料と有料の違いだけでもパフォーマンスは雲泥の差です。有料サービスならまだしも、無料のVPNを利用する場合、セキュリティレベルに問題を抱えていたり、通信パフォーマンスが低かったりする可能性があります。

VPN導入の際には、このような無料VPN利用のリスクを避けるためにも、導入実績の豊富な純正のVPNを選びましょう。特に大手企業などで導入されているVPNであれば、安心してVPN導入の恩恵を受けることができるはずです。

また、VPNはあくまで通信の安全性を高めるためのものであって、通信速度を高めるためのサービスではない点にも注意が必要です。プロキシよりも通信速度は早い状態で利用ができますが、VPNを利用していない、通常のインターネット利用に比べると速度は低下することが多いため、気を付けておかなければなりません。

VPNの理解を深めて正しく導入しよう

セキュリティ対策を強化する目的で導入する場合、メリットが大きいのはプロキシよりもVPNです。しかし、VPNにも多くの種類があり、質の高いVPNでなければ業務に支障をきたしたり、セキュリティレベルに問題を抱えていたりすることがあります。自社に合ったVPNを数ある製品から正しくピックアップし、導入を進めましょう。

この記事の執筆

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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