近年、働き方改革によって求められている「働き方の多様性」。これまで一般的とされていた「1日8時間労働」「必ずオフィスへ出勤」という概念が見直され、仕事とプライベートを両立しやすい「在宅勤務」「モバイルワーク」といった働き方が普及し始めています。こうした柔軟な働き方を実現するためには、外出先のPCから社内ネットワークへシームレスに接続できる、VPN構築が欠かせません。
本記事では、多様な働き方を実現するためのVPN構築の必要性、VPN設定時のセキュリティ対策について解説します。
VPNとはや導入するメリット、種類などについては下記の記事をご覧ください。
VPNの環境構築が求められる背景
VPNネットワークの構築が求められる理由の1つは、テレワークの拡大です。外出先のPCやスマートフォンからオフィス環境へリモートアクセスできるVPNは、育児や介護などのプライベートな事情がある人でも柔軟に働けるテレワークの実現に不可欠といえます。こうしたテレワークの実現は、従業員の満足度向上につながるほか、企業の人材確保や業務効率改善にもつながることから、企業の労働生産性向上に向けて取り組まれています。
また、テレワークの普及が進む背景には、情報通信技術の発展が挙げられます。数年前までは、企業PCはデスクトップ型が主流であり、企業の拠点間通信やリモートアクセスといった通信回線も十分に整備されていませんでした。しかし、近年の技術進化により、高速かつ巨大なデータ通信をも可能にする通信回線が登場。さらには、特定のハードウェアやソフトウェアが不要な「クラウドサービス」が一般的となったことで、仕事の場がオフィスの外へと広がることとなりました。
高スペックなノートPCやタブレット、スマートフォンなどのデバイスも誕生したことから、リモートアクセスを可能にするVPN環境を構築する企業が増えてきています。
企業におけるVPNの必要性
テレワークの実現に不可欠なVPNですが、VPNを構築することによって企業における業務効率やセキュリティ管理の面でも効果が期待できます。
オフィス同様のインターネット環境で業務を効率化できる
オフィスの外にいながらオフィス同様の通信環境を実現するには、VPNが不可欠。VPNを構築して利用するPCにVPN設定を行えば、テレワークはもちろん、出張などの移動時間にも社内ネットワークへリモートアクセスが可能になります。空き時間での資料作成や、商談中に社内ファイルを確認することもできるため、業務の効率化に大きく貢献できるでしょう。
セキュリティを高める
PCへVPNを導入する際は、情報セキュリティリスクへの備えを忘れてはいけません。自宅やカフェなどで業務をする際、自宅に設置したWi-Fiや公衆無線LANを利用することが多いでしょう。しかし、セキュリティ対策がされていないインターネットに接続してしまうと、ウイルス感染や機密情報の流出、データ改ざんなどが起こる危険性があります。VPNのリモートアクセス機能を利用すれば、それらの回線を利用しても、通信時にトンネリングや暗号化が行われるため、データの盗み見や改ざんなどのリスクを極限まで抑えられます。よりセキュリティの強度が高いプロトコル(Open VPN)を選ぶことで、ウイルス感染等のリスク低減にも役立てられます。
使用するPCからの情報漏えいを防げる
VPNを構築することにより、会社にいなくともオフィス環境へ接続できるリモートアクセスが可能です。社内のデータを持ち出さずに社外のPCで作業できるため、情報漏えいのリスクを防げます。ただし、社内のノートPCやタブレットを持ち出して使用する場合は、盗難や紛失によって社内データが漏えいするリスクを考慮しなければなりません。使用したPCにデータが残らない「リモートデスクトップ方式」「シンクライアント方式」というリモートアクセス方法を採用することで、大切な機密情報の漏えいを防げます。これらのアクセス方法は、両者ともにVPNの構築が必須です。
VPN設定時にはセキュリティ対策も忘れずに
VPNを構築する際は、PCへのリモートアクセス設定に加えて、いくつかのセキュリティ対策をしておくと安心です。不正アクセスや情報漏えいのリスクを最小限に減らすためにも、下記の安全対策が求められます。
- 情報に応じたアクセス制御
- デバイス内のUSBやハードディスクの暗号化
- ログイン時の多要素認証
- システム管理者による遠隔での情報消去、アカウントロック
社内データの機密レベルに合わせてアクセス制御を設定することで、部署や情報種別に応じてセキュリティ管理体制を強化できます。また、PCなどのデバイスやUSBを社外へ持ち出す場合には、万が一の紛失に備えて暗号化を設定しておくことも重要です。システム管理者が遠隔で端末内の情報を消去する、アカウントロックを掛けるといった機能もVPN導入時に設定することをおすすめします。
テレワークの実現には、安全なリモートアクセスができるVPNが不可欠。従業員が安全で柔軟に働けるよう、VPNの導入を検討してみましょう。