筑波大学が研究開発を行っている大学発の「VPN Gate」は、従来の商用VPNにはない多くのメリットがあり、外国での安全安心な情報発信の有効手段として注目されています。

 そこで、外国で使用する場合の「VPN Gate」のメリットを、従来の商用VPNと比較しながら見ていきたいと思います。

VPN Gateとは?

 「VPN Gate」とは、筑波大学が2013年に、学術研究を目的に開始したVPNサービスです。営利目的ではないため、誰でも無料で使用できます。「VPN Gate」は、国外での安全安心な情報閲覧と情報発信を主な目的にしており、以下の通りWindowsをはじめ、主要な4種類のOSに対応しています。

「VPN Gate」が対応する端末と接続方式

・Windows

対応VPNプロトコル

(1)SoftEther VPN(推奨)

SoftEther VPNは、筑波大学が学術目的の研究プロジェクトとして開発した「大学発のプロトコル」です。SoftEther VPNの口コミ・評判は、以下をご覧下さい。

(2)L2TP/IPsec

(3)OpenVPN

(4)MS-SSTP

・macOS X

対応VPNプロトコル

(1)L2TP/IPsec(推奨)

(2)OpenVPN

・iPhone/iPad(iOS)

対応VPNプロトコル

(1)L2TP/IPsec(推奨)

(2)OpenVPN

・Android

対応VPNプロトコル

(1)L2TP/IPsec(推奨)

(2)OpenVPN

外国での安全安心な情報発信に有効なVPN

 外国において安全安心な情報発信を行う上で、VPNは大きな役割を果たすと期待されています。

 情報統制が行われている国においてよく行われるのが、政府が構築したファイアウォールによるインターネットの情報規制です。そうした国では、政府に都合の悪い情報を規制すると同時に、市民が発信する情報を監視する傾向があります。発信する情報がその国の政府に都合の悪いものだった場合、逮捕・拘束される危険性があります。

 政府などの検閲用ファイアウォールでは、情報規制のため不適切な情報を発信した経歴を持つIPアドレスを記録し、そのIPアドレスを「接続禁止IPアドレス」としてリスト化していると考えられます。

 この時、通信を通過させる判断基準は、発信元と宛先が「接続禁止IPアドレスと一致しないかどうか」だけの場合が多いようです。つまり、暗号化された「通信の内容」は見ていない場合が多いのです。

 そこで、情報統制が行われている国において外国の情報を閲覧する時にVPNを使うことで、政府の検閲用ファイアウォールを回避できます。VPNを使うと、「発信元」と「宛先」を国外のVPNサーバにすることができるからです。

 さらに、そうした国の市民が「公正な情報」を得るだけでなく、国外に向けてその国の実情を発信するなど、安全安心な情報発信を行う上で、VPNは有効な手段です。

日本人も無関係ではない外国の情報統制

 外国での情報統制は、日本人も決して無関係ではありません。なぜなら、そうした国に赴任した日本人が現地から発信した情報が原因で、逮捕・拘束されるリスクも少なからずあるからです。

 事実、日本人が赴任先の外国政府から、身に覚えのないスパイ容疑などで不当に逮捕されるケースも発生しています。あなた自身が、外国へ行くことがなくても、大切なご家族やご友人が外国で不当に逮捕・拘束されるという事態も起こりえます。そこで、そのような国に日本人が仕事などで赴任した場合にも、日本との情報伝達の手段として、VPNは有効です。

 VPNは、情報統制が行われている国において、市民はもちろんのこと、その国に赴任した日本人が安全安心に情報発信する手段としても、重要性が高まっています。

商用VPNが抱える課題とは?

 このように、自由な情報発信手段としてVPNは有効です。しかし、従来の商用目的のVPNは、ファイアウォールにより通信が不安定になりやすいという課題を抱えています。では、なぜ商用VPNは、通信不安定になりやすいのでしょうか。

 従来の商用VPNは、多くの場合において、運営する企業のデータセンターなどに設置されたVPNサーバが情報発信の拠点です。同じデータセンターにVPNサーバがあるとIPアドレスが似通ったものとなり、偏りが生じます。

 IPアドレスが似通った番号であることのデメリットは、その国のファイアウォールが原因で発生する通信不良の影響を受けやすい点です。

 また、ファイアウォールが特定VPNのIPアドレス群を遮断すべきであると判断した場合も通信できなくなります。

商用VPNの弱点をカバーする「VPN Gate」

 筑波大学が提供する学術研究目的の「VPN Gate」は、これらの商用VPNが持つ弱点をカバーし、安全安心な情報発信の有効手段として期待されています。

1. 世界各国約200台のVPNサーバが無料で使用可能→ファイアウォールによる通信不良の影響を受けにくい

 VPN Gateは、世界各国にある約200台が提携する中継VPNサーバを選択できるので、IPアドレスに偏りが生じません。そのため、ファイアウォールが原因で通信不良が発生した場合でも、他の連続性がないIPアドレスを持つVPNサーバに接続先を変えることで通信継続が可能です。
さらに、これらの提携VPNサーバは、筑波大学の学術研究に賛同した世界各国の個人・法人により、無償で提供されています。つまり、世界各国200台のVPNサーバを無料で使用できるのです。

2. ミラーサーバによる万全なバックアップ体制
→VPN Gateにアクセスできなくても通信可能

 VPN Gateには、中継サーバにアクセスする上で、大きな問題点がありました。各国の中継サーバにアクセスするには、まずVPN Gateのサイトにアクセスして、各サーバのIPアドレスを取得する必要があるのです。もし、その国のファイアウォールが原因で、VPN Gateのサイトにアクセスできない場合は、中継サーバにアクセスもできません。

 VPN Gateは、ミラーサーバを設置することでこの問題を解決しています。ミラーサーバは、筑波大学が設置したGateサーバと同じ情報と機能を持っています。中継サーバと同様に、VPN Gateの学術研究に賛同する世界各国の個人・法人によって設置され無償で公開されています。仮に、VPN Gateへのアクセスができなくなった場合でも、各国にある複数のミラーサーバにアクセスすることで、通信継続が可能です。

 ミラーサーバの数は変動があるため、Gateにメールアドレスを登録することで、1日3回最新のミラーサーバアドレス一覧が送付されます。

 2019年12月8日時点におけるミラーサーバは、日本、米国、英国、スリナム共和国の4カ国において、合計5カ所登録されています。

外国へ赴任する前にVPN Gateをインストールする事をおすすめします

 このように、外国でのファイアウォール対策として、安全安心な情報発信の手段として、多くのメリットがある「VPN Gate」。海外にPCを持って一定期間赴任される方は、事前にインストールしてみてはいかがでしょうか?

 既に、セキュリティの高い有料VPNを使用されている場合でも、万一の際のサブのVPNとして、インストールしておいて損はありません。インストール後、国内で試してみて使用方法に慣れておけば、海外ですぐに使えて便利です。

 以下の「VPN Gate」の公式Webサイトにアクセスして、各端末の種類・接続方法別に、案内に従うことで、VPN Gateを使用できます。

 VPN Gate公式Webサイト:https://www.VPNGate.net/ja/

 例えば、端末にWindowsを使用し、接続方法としてSoftEther VPNを選んだ場合、必要なソフトをインストールしてVPN接続するまで、わずか10分ほどです。

 VPN Gateを使用することで、海外で安全安心な情報発信が可能となるのはもちろんのこと、筑波大学の学術研究に協力することは、日本のVPN技術向上にもつながります。

 今後、多くの方がVPN Gateを使うことで、よりセキュリティレベルの高いVPN技術の革新を期待したいですね。

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