「Web会議ってテレビ会議と何が違うの?」「何が便利なの?」「どんなときに使えばいいの?」─。そんなふうに周囲から問われたときに答えに窮することがよくある。そのような場面を少しでも減らすべく、Web会議システムの“あやふや”なところを、一つずつ明らかにしていく。
Web会議とは?
Web会議とは、インターネットとWebを介して会議を行うことを意味する言葉である。また、そうした会議を実現する仕組みが、「Web会議システム」と呼ばれ、インターネットとWebを使って映像/音声によるミーティングを可能にする機能を提供している。
Web会議が必要となる場面とは?
ならば、実際のビジネスにおいて、Web会議システムが便利に使えるのは、どのような場面なのだろうか─。そうした場面はさまざまに考えられるが、以下では代表的な2つのユースケースを紹介したい。
利用シーン-1:遠隔地にいる複数の仕事仲間とミーティングを行う
Web会議が重宝される代表的なケースの一つは、離れた場所にいる複数の仕事仲間とミーティングを行う場面である。
例えば、ともにプロジェクトを進める仕事仲間が2人いて、その2人が、自分のオフィスからドアツードアで1時間程度の距離にある仕事場で働いているとしよう。そして、自分のオフィスに2人を集めて30分程度の会議を行うとする。
この場合、仕事仲間の2人は、会議の場所と自分たちの働く場所との往復でそれぞれ約2時間ものときを「移動」に費やす計算になる。
また、2人の仕事場もドアツードアで1時間程度の距離にあるとすると、3者のどの仕事場で会議を行ったとしても、3人のうち2人は約2時間を移動に費やさなければならない。つまり、30分の会議のために、3人のチームは4時間もの貴重な時間を移動という非生産的な業務に使ってしまうことになるのである。
それが、Web会議システムを使うことで、3人は、各人のオフィスでPCを使いながら(場合によっては、自席にいながらにして)会議が行えるようになる。それだけで2人分の移動時間約4時間がセーブされ、チームの生産性が高められることになる。もちろん、30分の会議のためにミーティングの場所を探したり、3人の都合を調整したりする手間も減ることになる。
利用シーン-2:忙しい関係者を集めてアドホックな会議を開く
一方、社内の部門・部署においても、何らかの意思決定やブレインストーミングのために、アドホックに関係者を集めてミーティングを行いたいときがあるはずである。ところが、関係者全員が日々の業務に忙殺されていると、全員の都合調整や会議の場所の確保に手間取り、なかなかミーティングが行えず、時宜を逸してしまいそうになるケースが往々にしてある。
Web会議システムは、そんな場面でも便利に使える。というのも、Web会議システムがあれば、会議の参加者全員が物理的に一つの場所にいる必要はなく、仕事の都合上、どうしてもその場所にいることのできない人は、外部からモバイルPCやスマートフォンなどを使って会議に参加することが可能になるからである。これにより、会議に向けた参加者の都合調整や場所の確保は柔軟になり、スピードアップされるはずである。
Web会議に必要な機能とは?
以上の記述からも分かる通り、Web会議システムは、会議というアクティビティーから、時間と場所の制約を取り払うためのITといえる。また、そのように考えると、Web会議システムに必要とされる機能が何かもすぐに理解できる。それは、実世界で会議を行うのに近い環境を、インターネット上で創り出すための機能である。
例えば、実世界の会議では、次のようなことが行われている。
1.参加者全員が互いの顔を見ながら意見を交わす
2.参加者全員が同じ会議資料を手元で見ながら意見を交わす
3.会議の主催者などが会議資料を使ってプレゼンを行う
4.ホワイトボードを使って適宜アイデアを出し合ったり、メモしたりする
5.誰かが、議事録を取る
Web会議システムは、これらの行動を仮想世界で実現する機能を次のようなかたちで提供している。
実会議の基本 | Web会議システムにおける機能実装 |
①参加者全員の互いの顔を見ながら意見を交わす | ビデオ通話 |
②参加者全員が同じ会議資料を手元で見ている | ファイルの共有 |
③会議の主催者などが資料を使ってプレゼンを行う | デスクトップ画面の共有 |
④ホワイトボードを使う | ホワイトボードの共有 |
⑤誰かが、議事録を取る | 会議の収録/録画 |
また、実世界で会議を行う際には、「さあ、会議ですよ」と周囲に呼び掛けたりするが、Web会議システムでも、会議の開催を知らせるコールを参加者に通知するための機能を標準的に備えている。同様に、会議の招集をかけたり、参加を呼び掛けたりする機能も、Web会議システムが基本機能として備える一つだ。
一方、遠隔から会議に参加する際には、周囲の環境から、なかなか音声で会議の議論に加わりにくいことがある。そのような場面を想定して、ビジネスチャットとの連携機能を提供し、チャットを通じた会議への参加を可能にしているWeb会議システムも多い。
また、在宅勤務者などがビデオ会議に参加する場合、自分の周囲の風景をあまり見せたくないことがある。そうしたニーズに対応するために、自分の周囲の風景をぼやかして表示させることができるマスキングの機能を提供しているWeb会議システムもある。
同様に、自分の撮像/声をオフにしたり、ミュートしたりしたい場合があるが、大抵のWeb会議システムはそのための機能を提供している。
このほか、会議における海外(外国人)との意思疎通をスムーズにするために、リアルタイム翻訳の機能を提供しているWeb会議システムもある。翻訳の精度はそれほど高くはないものの、同じ会社で働き、ビジネス上の文脈を共有化できている海外スタッフとの会議であれば、多少粗い翻訳でも、意思疎通の効率化には十分有効とされている。
Web会議システムとテレビ会議システムとの違いとは?
ところで、Web会議システムと似た機能を提供する仕組みとして、「テレビ会議システム」と呼ばれる仕組みが従来ある。
会議相手の映像をリアルタイムに確認しながら、対話できるという点で、Web会議システムと従来のテレビ会議システムはよく似ている。ただし、両者には異なる点がいくつかある。
まず、Web会議システムはもともと、インターネットやPC/スマートフォン、Webブラウザなど、世の中に広く普及している汎用的なネットワーク、機器、ソフトウェアを使い、低コストでビデオ/音声通話を実現するために登場した。その最大の利点と言えるのは、専用のネットワークや設備、機器を導入することなく、「いつでも、どこからでも、遠隔にいる相手とビデオ通話/音声通話が行えるようになる」という手軽さである。
それに対してテレビ会議システムは、公衆回線のインターネットではなく、キャリアが提供する専用ISDNサービスや広域LAN/IP-VPNサービスをネットワークとして使用し、専用のソフトウェアや機材(撮像用カメラ、収音マイク、スピーカー、多地点接続装置など)を通じて会議を実現する仕組みである。その主目的は、特定の地点と地点をセキュアで性能の高い専用ネットワークで結び、品質の高い映像/音声による会議を実現することにある。そのため、例えば、本社と支所の会議室を相互に結び、多対多でのミーティングを行うのに適した仕組みといえる。
こうしたテレビ会議システムの大きな利点の1つは、セキュリティレベルの高さにある。例えば、先に触れた通り、テレビ会議システムのネットワークには、大抵の場合、インターネットのような公衆回線ではなく、プライベートな“閉域網”が使われる。そのため、盗聴などのセキュリティ侵害のリスクが低い。また、システムのOSも専用的で特殊性が高いことから、ウイルス感染の危険性も少ない。
さらに、テレビ会議システムは、高品質の映像と音声による通信を主目的としていることから、Web会議システムに比べて音声・画像の品質が総じて高いというアドバンテージがある。
一方、テレビ会議システムの最大のデメリットといえるのは、コストの高さである。Web会議システムに比べると、テレビ会議システムは高価であり、設置にも相応の費用がかかる。また、通常のインターネットに比べて、専用のISDN回線やIP-VPN/広域LANサービスの使用料金は圧倒的に高額である。そうしたことから、1つの会社が、テレビ会議システムを数多く導入し、拠点の全ての会議室に配備して、現場での活用を促進するといったケースはほとんど見受けられず、経営幹部と国内外の各支所長による定例ミーティングなど、限定的な用途に使われるのが一般的といえる。
テレビ会議との比較で見たWeb会議システムのメリットとデメリット
Web会議システムは、上述したようなテレビ会議システムの限界を打ち破り、“映像・音声を使った会議”を、現場で働く各人にとって、より身近な存在にしたITといえる。
インターネットへの接続が可能でマイクによる音声入力とスピーカーによる音声出力、Webカメラ、Webブラウザの機能を備えたPCがあれば、それだけでWeb会議が始められる。また、最近のWeb会議システムの多くは、スマートフォン向けのアプリも提供しており、それを使えば、スマートフォンから会議へ参加することも可能だ。
ただし、一般的なWeb会議システムで使われるインターネットは公衆回線であり、不特定多数が共用する通信インフラである。ブロードバンド化の流れによって通信速度は従来に比べて飛躍的に高まったとはいえ、常に一定のスピード(帯域)が確保される保証はない。ゆえに、会議中での映像/音声の品質が高いレベルで保たれる保証もないことになる。
また、前述した通り、ネットワークにインターネットを使う以上、Web会議のセキュリティにも細心の注意を払わなければならない。その点も、テレビ会議システムに比したWeb会議システムのデメリットといえる。
もう1つ、セキュリティの観点から見た、Web会議システムのデメリットといえるのは、あまりにも導入が簡単であるがゆえに、情報システム部門による管理の目が届かないところで、社内各部門・各部署での活用が勝手に進んでしまう可能性が高いことである。
会議(ビジネスミーティング)の場で話し合われる内容は、多くが関係社外秘の情報であるはずである。そうした情報が飛び交う場の管理は、やはり、情報システム部門や総務部門が一手に引き受けるべきといえる。その意味でも、Web会議システムの「シャドウIT」化は回避するのが無難であり、そのためには、自社のセキュリティポリシーに沿った運用管理が行えるWeb会議システムを全社的に導入し、それを社内標準のツールとして定めて、活用ルールの統制をきかせたほうがよいといえる。
Web会議に必要な環境・機材を確認
Web会議システムとテレビ会議システムとの違いについて確認したところで、次にWeb会議に必要とされる環境と機材について改めて確認しておきたい。
すでに述べた通り、Web会議に最低限必要される環境・機材は下記の通りである。
1.インターネットへの接続環境
2.Webプラウザ
3.スピーカー、マイク、Webカメラ
4.PC(またはMac*1)
*1 以下ではMacも便宜上、PCに含まれると見なす
今日のノートPCは、大抵の場合、インターネットへの接続が可能で、上記「1」「2」の機能を内蔵している。ゆえに、ノートPCがあれば、Web会議のために特別な機材を導入する必要は特にない場合が多い。
ただし、デスクトップPCの場合、Web会議で使うことを想定していない機種が以外と多くある。というのも、Web会議システムは、「場所を選ばず、自分の好きなところで会議ができる」といった“モビリティ”を大きなメリットの1つとしているからである。そのため、最新の機種であっても、デスクトップPCの中には、Webカメラやマイクによる音声入力の機能を備えていないものがある。
従って、仮に自席や自宅のデスクトップPCをWeb会議に使いたい場合には、Webカメラや音声入力のデバイスを別途用意する必要に迫られることがある。
また、オフィスの自席などでWeb会議を行うときに、会議で発言している自分の声がうるさく周囲に迷惑がかかるのでないかと気にして、迷惑をかけない方法をあれやこれやと思案する場合がある。こうした周囲への気遣いは大切だが、気にしすぎる必要は実のところない。というのも、オフィスでは、全員が電話に対して、自分の声で対応しているはずだからである。Web会議での対話もそれと同じと考えればよい。
もっとも、電話で相手と話す場合と同じように、周囲の雑音を気にせず、かつ、あまり大声を出さずにWeb会議を行いたいと思うことがある。そのような場合には、ヘッドセット等のマイクロフォン付きヘッドフォンを別途購入して使うのが適切といえる。
一方、Web会議システムを使って、テレビ会議のようなスタイルの会議を行いたい場合もあるに違いない。例えば、会議参加者の大半はオフィスの会議室に集まり、大画面を共有して会議を進め、数人は社外からWeb会議システムを通じて会議に参加するといったスタイルである。
こうしたスタイルの会議を、Web会議システムで実現するには、テレビ会議システムと同じような機器が別途必要になるはずである。
例えば、会議室にいる全員の姿を捉えるカメラや、それぞれの声をクリアにひろうマイク、さらには遠隔からの参加者の声を会議室にいる全員にクリアに伝えるスピーカーなどが、そうである。もちろん、大型モニターを通じて、ホワイトボードや会議資料、各自のデストップの切り替え表示もスムーズに行えるようにしなければならない。言い換えれば、Web会議システムを使ったテレビ会議システムの構築が必要になるということである。
今日、こうしたシステム作りを効率化するために、特定のWeb会議システム専用のテレビ会議システム(会議室システム)が提供されている。例えば、GoogleのWeb会議システム「ハングアウト Meet」専用のテレビ会議システムとして、「Chrome devices for meetings」と呼ばれるシステムが、各社から提供されている。これは、「Chrome OS」を搭載した専用端末「Chromebox」と、カメラやマイクなどテレビ会議に必要なデバイスがセットになったシステムだ。
また、シスコシステムズでは、Web会議システム「Cisco Webex Meetings」を包含した「Cisco Webex Teams」を使い、高品質のビデオ会議/音声会議をワイヤレスで実現するシステム「Cisco Webex Board」を提供している。このシステムでは、専用の大型モニターに4Kカメラ、マイクが一体化されているほか、ホワイトボード/資料を共有する機能や会議室にいるメンバーのデバイスを自動で認識する機能などを備えている。
さらに、Web会議の機能を備えたマイクロソフトのグループチャットツール「Microsoft Teams」専用のテレビ会議システムも、各社から提供されている。
Web会議システムを選ぶポイント
今日、Googleやシスコシステムズ、マイクロソフトのほかにも、多くのベンダーからWeb会議システムが提供されており、選択肢は多岐にわたる。よって、数ある製品(サービス)の中から、適切なシステムを選ぶ際のポイントをおさえておくことも大切である。以下、そのポイントについて確認しておきたい。
【ポイント①】使いやすさ
使いやすさは、Web会議システムを選ぶうえで最も重要なポイントの1つだ。というのも、Web会議システムは、自社内だけで使うものではなく、社外のビジネスパートナーとの対話にも使う可能性が大きいからである。従って、特別な教育やマニュアルがなくても、会議への参加が簡単に行えるものであることが重要となる。
もっとも、ときおり、「顧客との商談にもWeb会議システムは便利」というフレーズを目にすることがあるが、普通に考えれば、自社が利用しているWeb会議システムを使って、顧客と商談を進めるようなケースはまずないはずである。そのようなことを行うのは、自社の会議室に顧客を呼びつけて、商談を行うのと同じ行為だからである。
従って、Web会議システムをえり抜く際に、顧客のITリテラシーについて考えを巡らす必要はあまりなく、逆に、「このWeb会議システムに参加してほしい」と顧客から要請されたときに、自分たちはしっかりと対応できるかどうかのほうを心配したほうがよいといえる。
【ポイント②】コストパフォーマンス
Web会議システムは、多くがクラウドサービスとして提供され、アカウント単位での月額使用料金が設定されている。当然のことながら、製品(サービス)によって料金は異なる。ゆえにまずは、機能と料金のバランスが適切かどうかを見定めることが必要とされる。また、アカウント当たりの月額料金を見て、その料金の支払いに見合うコスト削減の効果(あるいは、生産性向上の効果)が得られそうなのは、社内の誰か(あるいは、どの部門・部署か)をシミュレートし、どの製品(サービス)の、どのプランを選ぶのが適切かを判断するのも一手といえる。
【ポイント③】会議の最大規模
Web会議システムでは、製品(サービス)によって、会議参加者の上限数が異なる。従って、Web会議システムによって、最大、どの程度の規模の会議を催す可能性があるかを想定しておき、その規模感に適合した製品(サービス)を選ぶことが大切である。
【ポイント④】セキュリティレベル
今日のWeb会議システムは、大抵の場合、暗号化による通信内容の保護や会議のロックなど、のセキュリティ機能をサポートしている。ただし、製品(サービス)によってセキュリティの機能やセキュリティ管理の機能が微妙に異なるので、どの製品が、自社のセキュリティポリシーに適合しうるか、あるいは、セキュリティポリシーに則った運用が簡単に行えるかを点検しておくべきである。
【ポイント⑤】音声品質
先に触れた通り、Web会議システムでは、公衆回線のインターネットをネットワークで使うことを前提にしているため、映像/音声の品質の確保にどうしても限界がある。ただし、その中でも、映像/音声の品質は、製品(サービス)ごとに違いがある。従って、無料のトライアルや無料版を使って品質をチェックしたほうが無難といえる。特に重要なのは、音声の品質だ。映像の動きが多少悪くても、音声さえクリアであれば、オンラインでの会議は滞りなく進むからである。逆に、映像がスムーズに動いていたとしても、音声の品質が悪いと会議参加者のストレスがたまり、会議の進行に支障をきたす可能性がある。
実利用者の評価でつかむWeb会議システムの使いどころと実力
Web会議システムが、実際にどのようなもので、製品(サービス)ごとにどのような利点があるかを知るうえでは、実際の利用者が、各製品(サービス)をどう評価しているかをつかむことも大切である。
その観点から、ITreviewでは、Web会議システムの実際の利用者のレビュー(評価・口コミ)に基づきながら、製品の比較・ランキング・おすすめ製品をリストアップしている。また、市場で評判の高いツールを一目で確認できる「Web会議のITreview Grid」も提供している。当Gridは、Web会議のカテゴリーページで掲載されているので、ぜひ、製品選びの参考にされたい。