ITreviewによるMEGA紹介
MEGAは、ニュージーランドのMega Limitedを中心に運営されているオンラインストレージサービスです。かつて世界で巨大なトラフィック量を誇りながら2012年1月に著作権侵害問題により封鎖されたMEGAUPLOADがその前身ですが、その事実を踏まえて新しいアーキテクチャに生まれ変わり、コンプライアンスに配慮したサービスとして2013年1月から提供されています。2019年現在は、世界で1億6000万人以上に利用され、アップロードファイル数は690億に迫るほどに成長しました。主な特徴は次の通りです。
無料で50GB以上のストレージ容量を入手可能
MEGAが好まれている最大の理由は、無料で50GB以上のストレージ容量が利用できることと、有料プランでも他のオンラインストレージサービスに比較して容量あたりコストが低いことでしょう。個人向けプランは5プラン、ユーザー管理機能が追加されるビジネス向けプランは1プランが用意されています。
プラン
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月額料金
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容量
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最大月間転送容量
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無料プラン
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なし
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15GB*
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制限あり*
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LITEプラン
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4.99ユーロ/月(605円)
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400GB
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1TB
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PRO Iプラン
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9.99ユーロ/月(1,211円)
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2TB
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2TB
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PRO IIプラン
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19.99ユーロ/月(2,424円)
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8TB
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8TB
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PRO Ⅲプラン
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29.99ユーロ/月(3,613円)
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16TB
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16TB
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ビジネスプラン※
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10ユーロ/ユーザー
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無制限
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無制限
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※ビジネスプランは最小3ユーザー。
※料金プラン、価格は2019年12月20日時点。
※すべての取引について、ユーロ表示の価格が請求されます。
*基本ストレージ容量が15GB、さらに新規登録のボーナス容量が35GBなので50GBが無料で使えます。ただしボーナス容量は30日間で有効期限が切れ、15GBを超過した保管データは自動削除されます。また、後述するMEGAsyncを利用すると20GB(有効期限180日、月間転送容量40GB)、モバイルアプリの利用で15GB(有効期限180日、月間転送容量30GB)、友人などを招待して、登録、MEGAsyncまたはモバイルアプリを利用してくれた場合は10GB(有効期限365日、月間転送容量20GB)のボーナス容量が無料で使えるようになります(MEGAは、このような条件を「達成プログラム」と呼んでいます)。
無料プランで得られる50GB以上の容量は、上記のように長期間変わらずに提供されるわけではありません。ビジネスユースでは、あくまで有料プランを契約する前の試用のためのプランとして利用するものと考えたほうがよいでしょう。おすすめなのはビジネスプランです。無制限の容量がユーザーあたり月額1300円前後で利用できると考えると、比較的低コストなサービスであることは間違いありません。
エンドツーエンドの暗号化
もう1つのMEGAの特徴は、独自技術を用いた暗号化です。データのアップロード前に、ユーザーが設定したログインパスワードをルート暗号化鍵とし、そこから派生した鍵による暗号化を行い、暗号化されたまま転送・保管され、ダウンロード時にデバイス側で復号される仕組みなので、ネットワーク経路上やMEGA内部での情報漏えいの心配がないというわけです。MEGA側でも何がアップロードされているのか関知する方法がないという点が、MEGAUPLOAD時代の悪評を払拭して普及を加速させているのかもしれません。
ただし、セキュリティ強度として他のオンラインストレージサービスと大きな違いがあるかといえば微妙なところです。暗号化鍵をユーザー自身が管理できるというところが他との違いと考えてよいでしょう。
もちろんユーザー側がパスワードを漏らしてしまうとどうすることもできません。またパスワードを忘れてしまうとアクセスできなくなり、データも失うことになります。それを防ぐため、MEGAは堅牢なパスワードを生成して管理できるパスワードマネージャの利用や、Authy、Duo Mobile、Google Authenticator、Microsoft Authenticatorによる二要素認証を利用することを推奨しています。
なお、パスワードを忘れた時に備えた回復キーは、ログイン中であればダウンロードできます。これを安全に保管することも万一の場合の備えになります。
Windows、Mac、Linux、iOS、Androidに対応する専用アプリケーション
Windows、Mac、Linuxに対応したファイル同期用のデスクトップアプリケーション「MEGAsync」が無償で提供されています。いったんMEGAに保管した音声や動画データはPC上のプレイヤーでストリーミング再生可能です。また、iOS、Android対応のモバイルアプリ(無償)では、音声・動画のストリーミング再生やローカル保存、カメラ画像や動画の自動アップロードが可能です。
MEGAsyncでは同期するフォルダを選択できるほか、グループでの読み取り・書き込み・実行の可否の設定が可能です。またアップロード、ダウンロード時の帯域制限、並列TCP接続数の設定、条件設定によるファイルやフォルダの同期除外、ファイル削除期限設定なども行えます。
Chrome、Firefoxにはブラウザ拡張機能を提供
もともとGoogle Chrome上からMEGAを使いやすくする拡張機能が提供されていましたが、現在はFirefox用のアドオンも追加されています。これら拡張機能はHTML、CSS、およびJavaScriptからなるクライアントコードなのですが、利用の都度MEGAサーバーからダウンロードするのではなく、ローカルデバイス上で直接実行されるので高速です。拡張機能の更新も暗号化されているため安全です。
テキストチャット、音声・動画通話が可能
同じ暗号化技術をベースにしたテキストチャット、音声・動画通話の機能があります。グループ内でのチャットや音声・動画通話を通してファイル共有や参加プロジェクトに関するコミュニケーションが行えるためコラボレーションが効率化します。他のツールを導入しなくともよいところが注目ポイントです。
バージョン管理機能
容量が許す限り、ファイルの古いバージョンを保持して、元に戻したり、古いバージョンをコピー、ダウンロードすることもできます。
外部パートナーや顧客からのファイル受信も可能
公開アップロードフォルダを作成すれば、外部パートナーや顧客がMEGAに登録していなくても、安全にファイルを受け渡しすることができます。
以上のように、MEGAはビジネス利用にも適した仕様をもっています。料金がユーロ建てであるのは珍しい特徴ですね。MEGA ではアカウントのメタデータはすべてヨーロッパのデータセンターに保存し、アップロードされたデータはヨーロッパ、または欧州委員会が適切なレベルのデータ保護があると承認した、ニュージーランドやカナダなどの国に保存され、アメリカ国内には一切データを保存しないというユニークな運営をしています。データの保管には、その保管場所である国や地域の法規制がありますから、アメリカの法規制に不安や疑問を感じる向きには好都合かもしれません。一方で日本国内のデータセンターが選べないのは他の多くのオンラインサービスと同様です。