オンラインストレージとは

 オンラインストレージとは、インターネット上で利用できるファイル保存のためのディスクストレージサービス(外部記憶装置)のことで、別名クラウドストレージとも呼ばれる。オンラインストレージを利用すれば、作成したファイルをPCや外付けHDD等に保存することなく、クラウド上でのデータ保存が可能になる。

 PC内のドライブやサーバの容量不足といった問題を防げるほか、保存されたデータはアクセス権があれば「場所を選ばず、どのデバイスからも」アクセス可能だ。膨大なデータの容量を気にせず保存できること、複数人が同時にファイルを閲覧・編集できることから、企業の情報共有や作業効率向上を後押しするサービスとして導入されている。

 なお、導入にはオンラインストレージサービスへの登録、または契約が必要となるため、容量制限やコスト、補足機能などを加味して選択するべきといえる。

オンラインストレージの定義
・クラウド上のストレージにファイルやフォルダ単位でデータをアップロードできる
・オンラインストレージ上のファイルを他人に共有し、ローカルにダウンロードができる
・さまざまなデバイスからファイルにアクセスできる
・ファイルへアクセス/ダウンロードできる人に制限を設けられる

オンラインストレージの必要性

 オンラインストレージの導入メリットは後述するが、活用にあたりまずはオンラインストレージの必要性を理解しておかなければならない。オンラインストレージが必要となる背景には、以下の3つの課題が挙げられる。

  • ・膨大なデータを管理できるファイルサーバを保有していない

  • ・複数拠点でのデータのスムーズな受け渡し、情報共有が困難

  • ・災害時のデータ損失、バックアップの安全性が不安

 現代では、企業や個人ともに誰しもがインターネットを活用する時代となっている。ビジネスにおける重要なITインフラの1つであることから、日々の業務や営業に至るまで、膨大なデータを管理する必要が出てきた。画像や動画に至るまでやりとりするデータ容量が大きくなったため、メールの送受信だけでは容量オーバーとなり、共有に支障をきたしているケースも少なくない。

 また、複数の拠点を持つ企業では、大容量のデータを安全に保管・管理する必要があるだろう。とはいえ、社内サーバやPC内ドライブで保存・管理することは容易なことではない。データを格納するスペースには限界があるほか、保存できたとしても、複数拠点にあるデータを一元管理するためには、わざわざメール等でデータを収集する必要が出てくる。

 さらには、現時点でデータ共有や保存容量について問題がない企業であっても、災害時や故障などのトラブルによって、データ損失のリスクがあることを忘れてはならない。

 こうした「共有の手間」を改善し、安全かつスムーズなデータ管理をするには、オンラインストレージの活用が不可欠だ。業務におけるインターネット活用が常識となったいま、オンラインストレージの活用によりデータを効率よく共有・安全にバックアップすることは、適切な情報管理、業務効率化といった面でも重要なことだろう。

 データの管理や運用はサービス事業者が担っているため、企業ユーザーが自社サーバの管理や運用に触れる必要はない。自動更新によって、常に最新版のソフトウェアを利用することが可能である。ストレージ容量は事業者によってさまざまだが、プランによって保存容量を選択することや、容量追加ができることが一般的。毎月のコストのみで安全なデータ保管が実現するため、継続的なコスト管理にも役立てられるだろう。

オンラインストレージの導入効果

アクセス性の向上による業務効率化

 インターネット環境があれば、拠点から離れた場所や社内PC以外のデバイスから、必要な情報にいつでもアクセスできる。外出先で打ち合わせ中に必要なファイルや資料を確認・共有できるため、時間を無駄にせず効率的な作業が可能になるだろう。

 また、チーム内で同じデータに同時アクセスし、編集する場合にも効果的だ。例えば、1つのタスクを完了させるまでに複数の担当者によって作業やチェックが必要な場合、メール送受信であれば進捗状況が掴めなかったり、最新版と過去のファイルが混同したりと、スムーズに作業が進められないケースがある。

 オンラインストレージでは、同時に複数人がデータを共有・編集できるため、お互いに作業状況を把握できるという利点がある。常に最新版のデータが確認できるため、古いバージョンと混同する心配も無いだろう。こうしたアクセス性の向上により、社内業務の効率化だけでなく、取引先とのスムーズなやりとりにも役立てられる。

ファイルサーバの一元管理による、データ管理の効率化

 各地に複数の拠点を持つ企業において、それぞれの拠点で管理しているデータを把握、管理することは難しい。必要な情報が別の拠点にあれば、データを個別にメールで受け取るなどの作業が必要となるため、管理者、従業員の手間を要するだろう。

 オンラインストレージを利用することで、各拠点に散らばったデータをインターネット上で集約して一元管理できる。拠点間のやりとりが頻繁な企業ほど、こうした一元管理によって、サーバ管理にかかるコストや労力を大幅に削減できるという利点がある。大量のデータの共有・編集が必要な企業、自社サーバの運営や管理の負担を減らしたい企業にとっては、もはや不可欠なサービスといえるだろう。

災害対策やバックアップとして、企業データを守る

 社内のファイルサーバだけで重要な企業データを保存している場合、サーバ自体の故障や災害による障害によって、データ損失が起こるリスクが少なからずある。また、誤操作によってデータを消去してしまう可能性もあるだろう。こうした事態に備え、企業では社内ファイルサーバ以外でバックアップを取っておくと安心だ。

 オンラインストレージでは、サービス事業者が提供するクラウド上のサーバにて、データを自動的、あるいは設定された頻度でバックアップを取ってくれる。万が一、サーバに障害が出た場合やデバイスが故障した場合にもデータを安全に保管できるため、企業の重要データを守るために対策しておくべきといえる。

多様化する働き方に対応できる

 昨今では働き方改革を実現するために、自宅や外出先などの場所を問わず、さらにはPCだけではなくスマートフォンやタブレットなども含めたマルチデバイスで、「社内のファイルへ容易にアクセスしたい」「離れた社員、あるいは社外の関係者との共同作業を効率的に行いたい」というニーズが高まっている。オンラインストレージの利用によって、こうしたユーザー側の要求をかなえつつ、同時に、システム管理者をハードウェアの運用管理、継続的な容量拡張、そして、セキュリティ対策の徹底といった負担から解放させることが可能だ。

オンラインストレージはこんな方におすすめ


導入検討ユーザー
 ・外出中の社員が社内の資料や書類などへアクセスできるようにして、業務効率化を図りたい業務部門
 ・社外関係者と共同作業を行うことが多い業務部門
 ・ファイルサーバのハードウェア運用管理や容量拡張に伴う負荷を軽減したいIT部門

オンラインストレージの機能一覧


ファイル共有機能

機能 解説
Webインタフェースでの利用 アプリケーションなどをインストールすることなく、Webブラウザを用いてドキュメントのアップロード/ダウンロードができる
多様なファイル形式への対応 オフィスドキュメント、画像、動画など、あらゆるファイル形式をサポートし、主要なファイル形式についてはブラウザ上でのプレビューや直接編集にも対応する
ファイルの検索・分類 キーワード、もしくは詳細条件を指定して、必要なファイルを容易に検索できる
バージョン管理 ファイルが更新された際に、古いファイルを削除せずに保持し、バージョン(世代)履歴を管理する。これにより、何か不具合が生じた際には、古いバージョンのファイルをダウンロード、あるいは最新バージョンへと変更することが可能
同期ツール 専用のアプリケーションなどをインストールすることで、PCやモバイルデバイス内のフォルダをオンラインストレージと同期して、ファイルの変更を自動的に反映させる


コラボレーション機能

機能 解説
ファイル更新通知 ファイルの更新、追加、削除、移動などが行われた際に、フォルダあるいはファイルを共有しているメンバーへ通知する
コメント機能 ファイルに関するコメントを書き込むことで、ファイル共有の付随的なコミュニケーションツールとして活用できる
ゲスト招待 組織外のユーザーを招待して、ファイルやフォルダを共有できる
モバイルアプリ対応 モバイルデバイス用のアプリを提供し、どんなデバイスからでもスムーズに利用できる


管理、セキュリティ機能

機能 解説
ユーザー管理 オンラインストレージを利用するユーザーの追加、削除、変更を行う。Excelファイルなどを用いた一括追加や一括編集などにも対応するものもある
アクセス制御 登録されたデバイス以外のアクセスを制御したり、グループやアカウントごとにユーザーの追加やアクセスレベルの変更などを行える
モバイルデバイス制限 モバイルデバイスからのアクセスの場合、ファイルのダウンロードや記載内容のコピーといった機能の一部に制限をかけられる
二要素認証  IDとパスワードの組み合わせに加え、登録された電話番号へ確認コードを送り、そのコード入力による二段階の認証を設けることで成りすましの登録を防ぐ
デバイスデータの遠隔削除 デバイスの紛失や盗難被害に遭った際、管理ツールから該当デバイス上のオンラインストレージのデータを遠隔削除できる
ログ管理 誰が、いつ、どのファイルに、どんな操作を行ったかというログを出力することで、監査証跡に役立てられる


オンラインストレージを選ぶ際のポイント

ツールごとの違い
 オンラインストレージの最も基本的な機能はクラウドへのファイル保管だが、導入する企業や組織によって「グループでの共同作業に活用したい」「メール添付の代替手段にしたい」「クライアントPCのバックアップを行いたい」「大容量ファイルを扱いたい」など、用途はさまざまだ。

 サービス側も、コンシューマー向けオンラインストレージに管理機能やセキュリティを強化して法人向けへ発展させたもの、もともとオフィスドキュメントの共同編集を主眼に開発されたもの、バックアップ用途に重点を置いたもの、さらにはWindowsのファイルサーバと同じ感覚で利用できるもの(クラウド型ファイルサーバとも呼ばれる)など、それぞれにフォーカスしている部分は異なっている。そのため、自社の用途とサービス側の特性を十分に把握した上で、選定を行う必要がある。

料金形態
 料金体系については、ユーザー数や容量にもとづいた月額(あるいは年額)費用となっているものがほとんどだが、法人向けオンラインストレージの場合は初期費用が発生するケースもある。また、最低利用人数や最低利用期間などが設定されていることもあるため、注意が必要だ。

 Webインタフェースを利用する場合でも、同期ツール(アプリケーション)を用いる場合でも、Windows環境であれば特に問題は生じないだろうが、社内にMac OS環境が存在するのであれば、サービスによって対応状況が異なる。無料プランを用意しているサービスは多くないものの、無料トライアルにはほとんどのサービスが対応しているため、使い勝手や機能、レスポンスなどについて、事前に確認しておきたい。

サポートの有無
 国内事業者と海外事業者ではサービスの内容や傾向は異なり、各々「安心して使える」「先進的な機能をいち早く利用できる」といったイメージを持っているかもしれないが、一概にはそうともいえないケースがある。特に確認しておきたいことは、サポート体制についてだ。日本語による手厚いサポートを求める企業もあるだろうし、海外拠点も含めて導入する場合には、基本的なサポートで問題ないが多言語で対応してほしいと考えるかもしれない。

 また、万が一、保管していたオンラインストレージ上のデータが消失した場合、適用される法律や情報保護などを考慮する必要がある。国内事業者が最善という考え方もあれば、コストパフォーマンスやリスク分散などの観点で、海外事業者を選ぶというケースもありえるだろう。

セキュリティについて
 ファイルのウイルスチェック、ファイル保存や通信経路の暗号化などは、法人向けオンラインストレージでは大部分のサービスが備えているものの、より高度なセキュリティ機能については対応状況が異なる。企業の重要な情報、業務に不可欠なデータなども預けることになるため、セキュリティはもちろん、可用性なども含めて、自社の環境やポリシーに見合っているかという観点で吟味すべきだろう。


オンラインストレージの導入方法

 オンラインストレージは、基本的にはクラウドサービスとして利用できるため、インターネット環境があればどこからでも利用できる。利用するサービス会社やプラン、オプション機能等を選択し、申込後数日で利用スタートとなることが一般的だ。サーバ管理や運営、障害時の復旧作業などはすべてベンダー側に任せることになるため、社内でシステムの構築や運用などをする必要はない。

 また、ユーザーはWebブラウザやアプリからサービスにアクセスすることになるが、既存のファイルサーバと同じ使い勝手を求める場合には、Windowsのネットワークドライブとして使えるサービスを選ぶこともできる。

他製品との連携方法
 オンラインストレージを、他のさまざまなツールやシステムと連携させて業務効率化を図ることも可能だ。特にチーム単位でのプロジェクトやタスクの進捗管理が可能なプロジェクト管理ツールとの連携は多く、プロジェクト管理機能を内蔵したオンラインストレージもある。個々のプロジェクト/タスクにオンラインストレージ上のファイルなどを紐付けることで、必要な情報を一元的に管理できるというわけだ。

 また、CRMやSFAとの連携にも適しており、営業活動に必要な資料をオンラインストレージへ保存して他の社員と効率的に資料を共有したり、顧客情報に映像や動画などのリッチメディアをリンクさせたりといった使い方ができる。

 社内SNSなどのコミュニケーションツールとの相性もよく、アップロードされたファイルをオンラインストレージへ直接保存したり、オンラインストレージ上のファイルを共有しながらチャットでやりとりしたりすることで、コラボレーションに役立てられる。

 その他、オンラインストレージと連携が可能な複合機/スキャナーなどもあり、PCなどを介すことなく、スキャンしたデータ、あるいはFAXが受信したデータを文書ファイルとして直接アップロード/ダウンロードできるようになっている。これにより、社内はもちろん、社外からも容易に閲覧できるほか、OCR処理機能を併用すれば、検索も簡単にできるようになるというわけだ。

オンラインストレージの基礎知識

 オンラインストレージとは、インターネット上で利用できるファイル保存のためのディスクストレージサービス(外部記憶装置)のことで、別名クラウドストレージとも呼ばれる。オンラインストレージを利用すれば、作成したファイルをPCや外付けHDD等に保存することなく、クラウド上でのデータ保存が可能になる。

 PC内のドライブやサーバの容量不足といった問題を防げるほか、保存されたデータはアクセス権があれば「場所を選ばず、どのデバイスからも」アクセス可能だ。膨大なデータの容量を気にせず保存できること、複数人が同時にファイルを閲覧・編集できることから、企業の情報共有や作業効率向上を後押しするサービスとして導入されている。

 なお、導入にはオンラインストレージサービスへの登録、または契約が必要となるため、容量制限やコスト、補足機能などを加味して選択するべきといえる。

オンラインストレージの定義
・クラウド上のストレージにファイルやフォルダ単位でデータをアップロードできる
・オンラインストレージ上のファイルを他人に共有し、ローカルにダウンロードができる
・さまざまなデバイスからファイルにアクセスできる
・ファイルへアクセス/ダウンロードできる人に制限を設けられる

オンラインストレージの必要性

 オンラインストレージの導入メリットは後述するが、活用にあたりまずはオンラインストレージの必要性を理解しておかなければならない。オンラインストレージが必要となる背景には、以下の3つの課題が挙げられる。

  • ・膨大なデータを管理できるファイルサーバを保有していない

  • ・複数拠点でのデータのスムーズな受け渡し、情報共有が困難

  • ・災害時のデータ損失、バックアップの安全性が不安

 現代では、企業や個人ともに誰しもがインターネットを活用する時代となっている。ビジネスにおける重要なITインフラの1つであることから、日々の業務や営業に至るまで、膨大なデータを管理する必要が出てきた。画像や動画に至るまでやりとりするデータ容量が大きくなったため、メールの送受信だけでは容量オーバーとなり、共有に支障をきたしているケースも少なくない。

 また、複数の拠点を持つ企業では、大容量のデータを安全に保管・管理する必要があるだろう。とはいえ、社内サーバやPC内ドライブで保存・管理することは容易なことではない。データを格納するスペースには限界があるほか、保存できたとしても、複数拠点にあるデータを一元管理するためには、わざわざメール等でデータを収集する必要が出てくる。

 さらには、現時点でデータ共有や保存容量について問題がない企業であっても、災害時や故障などのトラブルによって、データ損失のリスクがあることを忘れてはならない。

 こうした「共有の手間」を改善し、安全かつスムーズなデータ管理をするには、オンラインストレージの活用が不可欠だ。業務におけるインターネット活用が常識となったいま、オンラインストレージの活用によりデータを効率よく共有・安全にバックアップすることは、適切な情報管理、業務効率化といった面でも重要なことだろう。

 データの管理や運用はサービス事業者が担っているため、企業ユーザーが自社サーバの管理や運用に触れる必要はない。自動更新によって、常に最新版のソフトウェアを利用することが可能である。ストレージ容量は事業者によってさまざまだが、プランによって保存容量を選択することや、容量追加ができることが一般的。毎月のコストのみで安全なデータ保管が実現するため、継続的なコスト管理にも役立てられるだろう。

オンラインストレージの導入効果

アクセス性の向上による業務効率化

 インターネット環境があれば、拠点から離れた場所や社内PC以外のデバイスから、必要な情報にいつでもアクセスできる。外出先で打ち合わせ中に必要なファイルや資料を確認・共有できるため、時間を無駄にせず効率的な作業が可能になるだろう。

 また、チーム内で同じデータに同時アクセスし、編集する場合にも効果的だ。例えば、1つのタスクを完了させるまでに複数の担当者によって作業やチェックが必要な場合、メール送受信であれば進捗状況が掴めなかったり、最新版と過去のファイルが混同したりと、スムーズに作業が進められないケースがある。

 オンラインストレージでは、同時に複数人がデータを共有・編集できるため、お互いに作業状況を把握できるという利点がある。常に最新版のデータが確認できるため、古いバージョンと混同する心配も無いだろう。こうしたアクセス性の向上により、社内業務の効率化だけでなく、取引先とのスムーズなやりとりにも役立てられる。

ファイルサーバの一元管理による、データ管理の効率化

 各地に複数の拠点を持つ企業において、それぞれの拠点で管理しているデータを把握、管理することは難しい。必要な情報が別の拠点にあれば、データを個別にメールで受け取るなどの作業が必要となるため、管理者、従業員の手間を要するだろう。

 オンラインストレージを利用することで、各拠点に散らばったデータをインターネット上で集約して一元管理できる。拠点間のやりとりが頻繁な企業ほど、こうした一元管理によって、サーバ管理にかかるコストや労力を大幅に削減できるという利点がある。大量のデータの共有・編集が必要な企業、自社サーバの運営や管理の負担を減らしたい企業にとっては、もはや不可欠なサービスといえるだろう。

災害対策やバックアップとして、企業データを守る

 社内のファイルサーバだけで重要な企業データを保存している場合、サーバ自体の故障や災害による障害によって、データ損失が起こるリスクが少なからずある。また、誤操作によってデータを消去してしまう可能性もあるだろう。こうした事態に備え、企業では社内ファイルサーバ以外でバックアップを取っておくと安心だ。

 オンラインストレージでは、サービス事業者が提供するクラウド上のサーバにて、データを自動的、あるいは設定された頻度でバックアップを取ってくれる。万が一、サーバに障害が出た場合やデバイスが故障した場合にもデータを安全に保管できるため、企業の重要データを守るために対策しておくべきといえる。

多様化する働き方に対応できる

 昨今では働き方改革を実現するために、自宅や外出先などの場所を問わず、さらにはPCだけではなくスマートフォンやタブレットなども含めたマルチデバイスで、「社内のファイルへ容易にアクセスしたい」「離れた社員、あるいは社外の関係者との共同作業を効率的に行いたい」というニーズが高まっている。オンラインストレージの利用によって、こうしたユーザー側の要求をかなえつつ、同時に、システム管理者をハードウェアの運用管理、継続的な容量拡張、そして、セキュリティ対策の徹底といった負担から解放させることが可能だ。

オンラインストレージはこんな方におすすめ


導入検討ユーザー
 ・外出中の社員が社内の資料や書類などへアクセスできるようにして、業務効率化を図りたい業務部門
 ・社外関係者と共同作業を行うことが多い業務部門
 ・ファイルサーバのハードウェア運用管理や容量拡張に伴う負荷を軽減したいIT部門

オンラインストレージの機能一覧


ファイル共有機能

機能 解説
Webインタフェースでの利用 アプリケーションなどをインストールすることなく、Webブラウザを用いてドキュメントのアップロード/ダウンロードができる
多様なファイル形式への対応 オフィスドキュメント、画像、動画など、あらゆるファイル形式をサポートし、主要なファイル形式についてはブラウザ上でのプレビューや直接編集にも対応する
ファイルの検索・分類 キーワード、もしくは詳細条件を指定して、必要なファイルを容易に検索できる
バージョン管理 ファイルが更新された際に、古いファイルを削除せずに保持し、バージョン(世代)履歴を管理する。これにより、何か不具合が生じた際には、古いバージョンのファイルをダウンロード、あるいは最新バージョンへと変更することが可能
同期ツール 専用のアプリケーションなどをインストールすることで、PCやモバイルデバイス内のフォルダをオンラインストレージと同期して、ファイルの変更を自動的に反映させる


コラボレーション機能

機能 解説
ファイル更新通知 ファイルの更新、追加、削除、移動などが行われた際に、フォルダあるいはファイルを共有しているメンバーへ通知する
コメント機能 ファイルに関するコメントを書き込むことで、ファイル共有の付随的なコミュニケーションツールとして活用できる
ゲスト招待 組織外のユーザーを招待して、ファイルやフォルダを共有できる
モバイルアプリ対応 モバイルデバイス用のアプリを提供し、どんなデバイスからでもスムーズに利用できる


管理、セキュリティ機能

機能 解説
ユーザー管理 オンラインストレージを利用するユーザーの追加、削除、変更を行う。Excelファイルなどを用いた一括追加や一括編集などにも対応するものもある
アクセス制御 登録されたデバイス以外のアクセスを制御したり、グループやアカウントごとにユーザーの追加やアクセスレベルの変更などを行える
モバイルデバイス制限 モバイルデバイスからのアクセスの場合、ファイルのダウンロードや記載内容のコピーといった機能の一部に制限をかけられる
二要素認証  IDとパスワードの組み合わせに加え、登録された電話番号へ確認コードを送り、そのコード入力による二段階の認証を設けることで成りすましの登録を防ぐ
デバイスデータの遠隔削除 デバイスの紛失や盗難被害に遭った際、管理ツールから該当デバイス上のオンラインストレージのデータを遠隔削除できる
ログ管理 誰が、いつ、どのファイルに、どんな操作を行ったかというログを出力することで、監査証跡に役立てられる


オンラインストレージを選ぶ際のポイント

ツールごとの違い
 オンラインストレージの最も基本的な機能はクラウドへのファイル保管だが、導入する企業や組織によって「グループでの共同作業に活用したい」「メール添付の代替手段にしたい」「クライアントPCのバックアップを行いたい」「大容量ファイルを扱いたい」など、用途はさまざまだ。

 サービス側も、コンシューマー向けオンラインストレージに管理機能やセキュリティを強化して法人向けへ発展させたもの、もともとオフィスドキュメントの共同編集を主眼に開発されたもの、バックアップ用途に重点を置いたもの、さらにはWindowsのファイルサーバと同じ感覚で利用できるもの(クラウド型ファイルサーバとも呼ばれる)など、それぞれにフォーカスしている部分は異なっている。そのため、自社の用途とサービス側の特性を十分に把握した上で、選定を行う必要がある。

料金形態
 料金体系については、ユーザー数や容量にもとづいた月額(あるいは年額)費用となっているものがほとんどだが、法人向けオンラインストレージの場合は初期費用が発生するケースもある。また、最低利用人数や最低利用期間などが設定されていることもあるため、注意が必要だ。

 Webインタフェースを利用する場合でも、同期ツール(アプリケーション)を用いる場合でも、Windows環境であれば特に問題は生じないだろうが、社内にMac OS環境が存在するのであれば、サービスによって対応状況が異なる。無料プランを用意しているサービスは多くないものの、無料トライアルにはほとんどのサービスが対応しているため、使い勝手や機能、レスポンスなどについて、事前に確認しておきたい。

サポートの有無
 国内事業者と海外事業者ではサービスの内容や傾向は異なり、各々「安心して使える」「先進的な機能をいち早く利用できる」といったイメージを持っているかもしれないが、一概にはそうともいえないケースがある。特に確認しておきたいことは、サポート体制についてだ。日本語による手厚いサポートを求める企業もあるだろうし、海外拠点も含めて導入する場合には、基本的なサポートで問題ないが多言語で対応してほしいと考えるかもしれない。

 また、万が一、保管していたオンラインストレージ上のデータが消失した場合、適用される法律や情報保護などを考慮する必要がある。国内事業者が最善という考え方もあれば、コストパフォーマンスやリスク分散などの観点で、海外事業者を選ぶというケースもありえるだろう。

セキュリティについて
 ファイルのウイルスチェック、ファイル保存や通信経路の暗号化などは、法人向けオンラインストレージでは大部分のサービスが備えているものの、より高度なセキュリティ機能については対応状況が異なる。企業の重要な情報、業務に不可欠なデータなども預けることになるため、セキュリティはもちろん、可用性なども含めて、自社の環境やポリシーに見合っているかという観点で吟味すべきだろう。


オンラインストレージの導入方法

 オンラインストレージは、基本的にはクラウドサービスとして利用できるため、インターネット環境があればどこからでも利用できる。利用するサービス会社やプラン、オプション機能等を選択し、申込後数日で利用スタートとなることが一般的だ。サーバ管理や運営、障害時の復旧作業などはすべてベンダー側に任せることになるため、社内でシステムの構築や運用などをする必要はない。

 また、ユーザーはWebブラウザやアプリからサービスにアクセスすることになるが、既存のファイルサーバと同じ使い勝手を求める場合には、Windowsのネットワークドライブとして使えるサービスを選ぶこともできる。

他製品との連携方法
 オンラインストレージを、他のさまざまなツールやシステムと連携させて業務効率化を図ることも可能だ。特にチーム単位でのプロジェクトやタスクの進捗管理が可能なプロジェクト管理ツールとの連携は多く、プロジェクト管理機能を内蔵したオンラインストレージもある。個々のプロジェクト/タスクにオンラインストレージ上のファイルなどを紐付けることで、必要な情報を一元的に管理できるというわけだ。

 また、CRMやSFAとの連携にも適しており、営業活動に必要な資料をオンラインストレージへ保存して他の社員と効率的に資料を共有したり、顧客情報に映像や動画などのリッチメディアをリンクさせたりといった使い方ができる。

 社内SNSなどのコミュニケーションツールとの相性もよく、アップロードされたファイルをオンラインストレージへ直接保存したり、オンラインストレージ上のファイルを共有しながらチャットでやりとりしたりすることで、コラボレーションに役立てられる。

 その他、オンラインストレージと連携が可能な複合機/スキャナーなどもあり、PCなどを介すことなく、スキャンしたデータ、あるいはFAXが受信したデータを文書ファイルとして直接アップロード/ダウンロードできるようになっている。これにより、社内はもちろん、社外からも容易に閲覧できるほか、OCR処理機能を併用すれば、検索も簡単にできるようになるというわけだ。