ITreviewによるProself紹介
Proself(プロセルフ)は、北海道の株式会社ノースグリッドが提供している、オンラインストレージサービスを自営するためのソフトウェアツールです。他の多くの製品がサービスそのものをサブスクリプション販売しているのに対し、こちらは社内での情報共有・ファイル送受信を主眼としたオンプレミスシステムを構築するための、サーバー単位のソフトウェア買取ライセンスを提供するものであることに注意してください。一般に公開する商用サービスの基盤としても利用可能ではありますが、その場合はベンダーに問い合わせが必要です。このツールの主な特徴は次のとおりです。
オンプレミス構築するオンラインストレージのメリットは?
一般的なオンラインストレージサービスはユーザー単位で課金されるか、契約容量単位、または期間内での転送可能容量による課金となっています。ユーザーの増減が頻繁だったり、利用容量や転送容量が見積もりにくい場合には、都合に合わせたプラン変更や他サービスへの乗り換えが可能な点で有利ですが、ユーザーが自社内やグループ企業などの特定可能な人数に限られ、保管すべきデータ容量や月間の転送容量もある程度予測可能な場合には、自社のニーズにフィットするストレージ容量だけを確保し、事情が変わったら自由にストレージを(自費ではありますが)追加していけるほうが、コスト面で有利になる場合があります。
また、サブスクリプション型のサービスのほとんどはサービスプロバイダのセキュリティポリシーが固定的で選択の余地がほとんどありません。オンプレミス構築システムでは、自社独自のセキュリティポリシーが確実に適用できます。また国内構築の場合は、データの保管場所が自社内(自社契約のデータセンター内を含め)に限られますから、外国の法規制を考慮せずに、国内法に対応していればよいこともメリットの1つでしょう。海外拠点では国内設置のサーバーによるサービスを利用すればよいのです。なお、Proselfは日本の輸出規制(外国為替令)の規制対象外であり、特段の支障なく海外拠点での導入も可能です。
ライセンスコストは見あうのか?
ライセンス購入コストやサーバーなどの調達コスト、ランニングコストはどうしても気になりますね。一般にパッケージを利用してもオンプレミス構築には費用がかさみがちなのですが、Proselfのライセンスは、100人以下の規模での利用が推奨されているスタンダードエディテョンで16万2000円(税抜、1年間のサポート含)です。サーバーマシンはWindows ServerまたはRed Hat系Linuxを搭載し、Xeon 2コア(推奨は4コア)、メモリは1.5GB以上推奨ということですので、エントリークラスのサーバー機種で対応可能です。HDDは必要に応じて調達することにはなりますが、全部合わせて多くとも100万円、少なければ50万円以下でスタートできそうです。ユーザーが50人程度で3年間運用するとすれば、構築に100万円かけても月額にならすと1ユーザー550円台になりますね。運用管理コストを上乗せしても、他のオンラインストレージサービスより割安かもしれません。また各種のオプションはオープンプライスまたは無償で提供されています。
101人を超える規模ではエンタープライズエディション(オープンプライス)が必要になります。こちらの場合はサーバーのメモリが4GB推奨となりますが、あまりハイスペックなハードウェアは求められません。
エディション
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税抜価格/サーバー
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推奨ユーザー数
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Standard Edition
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162,000円(1年サポート込)CPU数無制限
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100以下
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Enterprise Edition
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オープンプライス CPU数無制限
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10,000以下
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※商用サービスに利用する場合は別途問い合わせが必要(非商用の場合は制限なし)
WebDAV準拠のファイルアクセス
ProselfはWebDAV準拠のファイルアクセスを行います。WebDAV対応のさまざまなOSやソフトウェアでアクセスできます。標準的には、IE11、Edge、Firefox、Safari、Chromeの各ブラウザから各種操作を行いますが、場合によっては専用のデスクトップアプリケーションProself Diskを利用して、サーバー上のファイルをローカルにあるかのようにさまざまなソフトウェアで直接編集することもできます。Proself DiskはWindows、Macで動作し、スタンダードエディションには5CAL(クライアントアクセスライセンス)、エンタープライズエディションには50CALが付属しています。追加CALは5CAL単位で15,000円(税抜)です。
また、Windowsのエクスプローラと統合されたクライアントソフトウェアProself Client(無償)、WindowsとMac対応の同期ツール(無償)も提供されています。
iOS、Android対応のスマートフォンオプション(無償)は専用アプリとして提供されます。アップロード、ダウンロード、音声や動画のストリーミング再生も可能です。
3ヶ国語に対応
Webブラウザ画面の表記は日本語、英語、中国語に対応しています。
クライアント証明書、アクセス制限などセキュリティ機能が豊富
ID/パスワード運用ではセキュリティ上の不安がある場合、利用デバイスを認証してアクセス許諾を行うクライアント証明書運用が可能です。またユーザー個別にアクセス権限の設定が可能なうえ、ソースIP制限を設定することもできます。さらに、指定したIPアドレスやドメインからのみにアクセスを制限することも可能です。サーバー上のファイル暗号化機能も搭載しています。
またWindows、iOS、Androidデバイスの停止・再開・削除のアクティベーションやリモート消去が行えるデバイス管理機能も備えています。iOSアプリの場合は、デバイスにダウンロードしたファイルの保存禁止、保存期間設定などをグループ単位で行う機能も利用できます。
登録ユーザー以外とのファイル送受信はWeb公開機能で
ユーザーアカウントをもっていない外部パートナーや顧客などとのファイル送受信を安全に行う仕組みとして、Web公開機能があります。これは送りたいファイルの公開用のURLを生成し、メールでURLを送って公開ページにアクセスしてもらう機能です。相手からファイルを送ってもらうための「受け取りフォルダ」機能も搭載されています。Web公開を行う場合には上長などの事前承認プロセスを設けることができます。
Proself経由以外のサーバーアップロードファイルも利用可能
FTPなどでサーバーに直接保存したファイルもProself上で認識し、ダウンロードが可能です。エンタープライズエディションではフォルダ管理やファイルのアクセス権限変更や設定が可能です。
ブラウザで運用管理が可能
管理者はブラウザの画面でアクセス統計情報の閲覧・確認、SSL証明書の設定、時限ファイルの一括設定・公開期限の一括設定、ログのダウンロードなどが可能です。
エンタープライズエディションではディレクトリサービス連携可能
エンタープライズエディションではActive Directory、LDAPとの連携が可能です。既存ユーザーの管理情報がそのままProselfで利用できます。またコマンドラインでユーザー管理可能な管理ツール、CSVからのユーザー一括登録、外部コマンド実行機能なども備えています。
その他のオプション
・文書内検索オプション:テキスト、Word、Excel、PowerPointドキュメント内の検索機能
・レポートオプション:教育期間向けのレポート課題配布・回収支援機能(エンタープライズエディションが別途必要)
・MailProxyオプション:メール添付ファイルをProselfに自動アップロード、パスワード設定可能なダウンロードアドレスを生成してメール本文に自動挿入して送信する機能(エンタープライズエディション、SMTP対応メールサーバーが別途必要)
・統合認証オプション:Active Directoryとの連携で、WindowsログインアカウントでProselfにアクセスする機能(エンタープライズエディションが別途必要)
・SAML認証オプション:SAML準拠のシングルサインオン機能(エンタープライズエディションが別途必要)
(以上はすべてオープンプライス)
以上のように、Proselfは従来のファイルサーバーの使い勝手とは大きく異なり、サブスクリプション型の多くのオンラインストレージサービスに非常に近いサービスが構築可能です。Active Directory連携やシングルサインオン実現も視野に入るため、より自社のセキュリティポリシーを踏襲したサービスを展開しやすいと言えるでしょう。ただし、オンプレミスシステム運用には、環境の管理者が必要で、他のシステム同様に管理負荷がかかることには配慮しなければなりません。ベンダーが提供する保守サービス、時間外サポートサービス、リモートメンテナンスサービス(それぞれ有償)を利用して、管理負荷を軽減することも考えて導入・構築・運用されることをお勧めします。