ITエンジニア不足を課題にする企業では、プログラミングの知識を必要としない開発手法が求められます。ノーコードは、エンジニア不足の課題を解決するための開発手段です。プログラミング経験のない非IT担当者が、直感的な操作だけでアプリケーション構築できる開発スタイルです。

本記事では、ノーコード開発の特徴やメリット・デメリット、ローコードとの違いなどについて解説します。ノーコード開発アプリを導入する際のポイントも紹介。エンジニアではないけれどアプリ開発をしたい方はぜひ参考にしてみてください。

ノーコードとは?

ノーコードとは、コーディングしないでアプリ開発する形式のことです。ノーコードは、GUI操作により直感的(ドラッグ&ドロップやクリック操作のみ)にアプリ開発ができます。専門的な知識が不要で、エンジニアでなくてもアプリ開発に携われることが特徴です。

ノーコード開発が求められる背景

ノーコード開発が求められる背景は、主に次のような理由です。

・IT人材の不足

・競合優位性の向上

・スモールスタートでの市場参入

IT市場やWeb業界そのものが急成長している中、IT人材は不足しています。つまり、人材がビジネスニーズに追いついていない状況が考えられるのです。少子高齢化が進み、IT技術者が高齢化していることも人材不足の要因の1つでしょう。

企業は人材不足の課題を抱えながら、短期間で低コストなアプリ開発を求められます。IT市場の技術そのものが変化しており、競合優位性の向上が求められるためです。

消費者の求めるニーズも多様化しており、ビジネスの個別化が進んでいます。このため、スモールスタートによるコストを抑えた開発手法として、ノーコード開発が注目されている状況です。

ノーコードとローコードの違い

ノーコードと似た開発スタイルとしてローコード開発があります。ここではノーコードとローコードの具体的な違いについて説明します。

ノーコードは、コーディング不要な開発スタイルです。それに対して、ローコードは最小限のコーディングを必要とします。

ノーコード開発は、Microsoft Office製品(Excel・Word・PowerPointなど)を使えるレベルで開発可能です。一方のローコードは、多少の基本的なプログラミングスキルが必要になります。

ローコードは、再利用可能なライブラリやオープンAPIを活用し、最小限のコーディングを実現するため、ノーコードよりも機能拡張性やカスタマイズ性が高いことが特徴です。

ノーコード ローコード
・コーディング不要
・ソースコードの記述をまったく行わなくても開発ができる
・プログラミングに関する知識が一切不要で開発ができる
・機能拡張ができない
・小規模、単一機能のシンプルなアプリケーション開発に向いている
・Microsoft Office製品(Excel・Word・PowerPointなど)を使えるレベルで開発可能
・最小限のコーディング
・少ないプログラムコードでアプリケーション開発ができる
・機能を拡張できる
・外部のソフトウェアと統合できる
・多少の基本的なプログラミングスキルが必要
・ノーコードより機能拡張性やカスタマイズ性が高い

ノーコード開発アプリの基本機能

ノーコード開発では、コーディングが不要な開発アプリを活用します。ノーコード開発アプリの基本機能を紹介します。

モジュールなどを組み合わせたアプリ開発機能

ノーコード開発アプリは、あらかじめ用意されているモジュールやパーツを組み合わせる構築形式で、アプリ開発します。直観的なドラッグ&ドロップ操作なので、プログラミング言語を理解していない担当者でも開発が可能です。

ベースになるアプリテンプレートの選択機能

ノーコード開発アプリは、ベースになるテンプレートを選び、カスタマイズしながら構築できます。ベースが出来上がっているため、アプリ開発における時間の短縮が可能です。

Excelデータのアプリ化機能

ノーコード開発では、Excelデータのアプリ化ができます。顧客管理や受注管理などで活用していたExcelやCSVデータを直接取り込む形式です。

必要に応じて開発ツールの提供

ノーコードでは、必要に応じて開発ツールの提供ができます。あらかじめ用意されているコーディングやデバッグに必要なツールがフレームワークで利用可能です。

テスト環境の提供

問題の検出に役立つ、テスト環境が提供されます。テスト環境は、アプリケーションの機能や動作をテストするプラットフォームの提供です。

クロスプラットフォーム対応

ノーコード開発のプラットフォームは、あらゆる開発環境に対応しています。クロスプラットフォーム対応環境は次のとおりです。

  • パソコン
  • スマートフォンをはじめとするモバイルデバイス
  • Windows OS
  • macOS
  • iOS

データ同期機能

データ同期機能では、外部データソースから1回だけではなく、継続的に同期できます。そのため、ノーコードで外部データの取り込みや更新が継続的に実行可能です。

ノーコード開発アプリのメリットとデメリット

ノーコード開発アプリには、非IT担当者でも開発に携われるメリットと拡張性の低いデメリットがあります。詳しくは、次のとおりです。

ノーコード開発のメリット

1.非IT担当者でも一定のIT知識があればノーコード開発ができる

ノーコード開発は、非IT担当者でも一定のIT知識があればノーコード開発できます。ノーコード開発に必要な一定のIT知識とは、Excelをはじめとするビジネスツールが操作できる範囲の程度です。

ノーコード開発ツールは、Webサイト上のボタンやパーツの直感的な操作で開発できるGUI(グラフィック・ユーザー・インターフェース)で操作できます。

2.クラウド環境の需要が高まることで手持ちのパソコンでブラウザ上から開発できる

コロナ禍を機に最近のITツールは、リモート対応を中心としたクラウド環境の需要が高まっています。ノーコード開発アプリは、ブラウザを経由したクラウド環境にアクセスできれば場所を選ばず開発ができます。

3.時間と費用を抑えられる

ノーコード開発は、時間と費用を抑えられるのがメリットです。コーディングが不要な分、開発時間が短縮されて開発工数や制作費用の削減ができます。

4.イメージ通りのアプリ開発ができる

ノーコード開発アプリは、非ITの要件提案者のイメージ通りのアプリ開発が可能です。通常のアプリ開発では、非ITの要件提案者とエンジニアの間でイメージを一致させることに時間や労力がかかります。

ノーコード開発は、プログラミング知識のない非ITの担当者も開発できることから、要件提案者が開発の戦力になるでしょう。そのため、イメージ通りのアプリ開発ができます。

ノーコード開発のデメリット

1.大規模で複雑な開発には向かない

ノーコード開発は、大規模で複雑な開発に向いていません。コーディングを必要とするアプリ開発に比べると、開発範囲が限られています。システム規模が複雑で大きいアプリ開発の場合、ノーコードでは実現が難しくなります。

2.コーディングによる制御範囲が狭く拡張性が低い

ノーコード開発は、コーディングによる制御範囲が狭いため拡張性が低くなります。ノーコード開発は、あらかじめ用意されているパーツを組み合わせるドラッグ&ドロップ操作での開発です。複雑な要件を処理するためには、コーディングが必要な開発にすべきでしょう。

3.開発アプリに依存しなければならない

ノーコード開発は、開発アプリに依存します。開発アプリサービスで用意されたインターフェースや機能以外を必要とした場合、外部の開発アプリと連携できないことが考えられるでしょう。また、提供されるプラットフォームに依存してしまうと、ツール利用料金の見直しに従う必要もあります。

ノーコード開発アプリの活用事例

ノーコード開発アプリを導入したことで得られるメリットについて、ITreviewに集まったレビューをもとに活用事例を紹介します。

処理の流れがビジュアル化され顧客と認識を合わせやすい

「データの取込や変換処理をノン・プログラミングで実施可能なため、プロムラム未経験者でも開発ができます。また、処理の流れがビジュアル化されているので、お客様にフローをお見せしながら会話ができ、認識合わせがしやすいというのも、強みだと感じています。元々他社製品を使用されていたお客様から担当者引継に伴うリプレイスのご相談を受け、ASTERIA Warpを導入することが決まりました。従来使用していたツールには属人化している部分が多々あったのですが、ASTERIA Warpに変えることで作成のハードルが下がり属人化の解消を図ることができました。同様の製品と比較しても、ASTERIA Warpの操作性と作成したフローの読みやすさは大きく勝っています。開発だけでなくお客様にとっての運用のしやすさまで考えると、ベストな選択なのではないでしょうか」
▼利用サービス:ASTERIA Warp
▼企業名:株式会社ネオシステム ▼従業員規模:100-300人未満  ▼業種:ソフトウェア・SI

https://www.itreview.jp/products/asteria-warp/reviews/26214

「働き方改革への取り組み」として外部にPRできる

「当初はデータ連携を目的に導入したのですが、機能が豊富なので様々な用途で活躍しています。現在は給与明細書のペーパーレス化に取り組んでいます。恥ずかしながら、弊社は未だ給与明細を紙に印刷して手渡しの運用をしていまして、紙代や運用コスト削減を目的にASTERIAでペーパーレス化を実現する予定です。ノンプログラミングで開発できるので開発工数が大幅に削減できるところが大きなメリットです。また、Excelから基幹システムへの転記処理自動化など、単純作業の削減については「働き方改革への取り組み」として外部にPRできるのもメリットですね」
▼利用サービス:ASTERIA Warp
▼企業名:株式会社ユタカ技研 ▼従業員規模:300-1000人未満 ▼業種:自動車・輸送機器

https://www.itreview.jp/products/asteria-warp/reviews/25858

スマホ活用と併用することで働き方を変革

「当社グループのような複数企業間でも細かな権限設定による情報共有が可能です。勿論、1つの会社でも部門間での情報伝達やステータス管理に役立ちます。過去のバージョンでは、IT部門での開発に限定する方が良いケースもありましたが、メーカーの努力によりマニュアル/サポートサイト/ユーザ会兼勉強会が充実してきた事に加え、新バージョンではドラッグ&ドロップにより開発の閾が下がった事もあり業務を理解している現場担当者が管理簿やワークフローを作成し易い環境になった事です。スマートフォンIFも最適化され通知もバッチで届く等、スマホ活用と併用する事でより働き方を変革できると思います」
▼利用サービス:SmartDB
▼企業名:株式会社サーラビジネスソリューションズ ▼従業員規模:1,000人以上  ▼業種:ガス

https://www.itreview.jp/products/smartdb/reviews/70635

これからの業務がより楽しく、効率化が図れそう

「驚くほど簡単に業務アプリが作れるので非常に便利です。Microsoftが提供しているサービスなので社内での承認も降りやすいと思いますのでお試しで利用するのも良いと思います。簡単な業務アプリが手軽に作成できるのでこれからの業務がより楽しく、効率化がはかれそうです。お試し程度で簡単なアプリ作成しか行っておりませんが、調べればもっと色々なアプリが作成できそうなので楽しみです」
▼利用サービス:PowerApps
▼企業名:株式会社ワールドインテック  ▼従業員規模:1,000人以上  ▼業種:人材

https://www.itreview.jp/products/powerapps/reviews/19059

ノーコード開発アプリを導入する際のポイント

ノーコード開発アプリは、コーディングを必要としない部分が共通する以外、多岐にわたります。アプリの導入では、次のようなポイントが選定基準になるでしょう。

利用目的が明確になっているか

ノーコード開発アプリを導入するには、コーディングが不要だという理由だけでなく、利用目的を明確にして選ぶ必要があります。ノーコードを基準にして選ぶ前に、「どのような目的を実現するのか」を明確にしなければ、導入しても目的を果たせなくなるでしょう。自社ビジネスの課題と導入対象の業務を明確にすることが大事です。

料金体系は?トライアル期間があるか

ノーコード開発アプリを導入する際は、料金体系を事前調査しておくことをおすすめします。導入することでコーディングが不要となり、コストを抑えられるのに、開発コストが高くなるアプリでは本末転倒です。時間や労力なども含めて、従来のアプリ開発コストより抑えられる料金体系か、検討する必要があります。

また、ノーコード開発アプリ選びは、トライアル期間があることも選定基準の1つです。実際に利用することで、料金以上の価値ある機能が見つかる可能性もあるでしょう。

搭載されている機能と開発用途が一致しているか

ノーコード開発アプリの導入ポイントは、コーディングを不要とする部分が中心になりがちです。特に非IT担当者は、「どこまで簡単で自由度の高いアプリ開発ができるか」を基準に考えてしまいます。導入に際して重要なのは、搭載されている機能と開発用途の一致です。いくら操作性がよくても、目的の成果を得られなければコストが増える結果になってしまいます。

セキュリティは高いか

ノーコード開発は、システム開発を簡単にできることから、セキュリティの甘さを懸念する企業も少なくありません。導入にあたっては、セキュリティの高さも選定基準となります。開発アプリを導入する際は、ツールへの認証機能やデータアクセス制御など、具体的な提供内容を理解しておくことが必要です。

ノーコード開発アプリを活用・定着させるためのポイント

ノーコード開発を進める場合、社内で利用する際に導入に反対する層への対処も欠かせません。円滑なアプリ活用を進めるには、ノーコード開発アプリを社内に定着させるポイントを理解しておきましょう。

生成したアプリの保守をどうするか決めておく

ノーコード開発アプリは、従来型の開発アプリ同様、システムの保守運用が必要になります。そのため、生成したアプリの保守を「誰が担当するか、どのように運用していくか」を決めることが大切です。開発したアプリは、リリース後にあらゆるシステム問題を起こす可能性があります。保守トラブルを想定した運用体制も、事前に用意しなければなりません。

非IT経営層に開発工数やコスト削減効果を伝える

ノーコード開発アプリを活用する前に、非ITの経営層にエンジニアありきの開発工数から「どれほど工数削減になるか」を明確に伝える必要があります。ノーコード開発アプリの活用が売上拡大とコスト削減につながれば、経営層の後押しを得られ、社内への定着に向けてトップダウン効果も得られます。

高機能ツールであれば学習コストも必要になる

ノーコードアプリは、いくらコーディングが不要であっても、高機能ツールであれば学習期間を設けることが重要です。開発アプリの操作性では、直感的な部分にも個人差が生じます。そのため、自社で活用するノーコード開発アプリに学習コンテンツ(ナレッジサービス)があるか、ノーコード開発者向けのオンラインフォーラムの利用なども必要となるでしょう。

おすすめのノーコード開発アプリ5選

おすすめのノーコード開発アプリは、実際にノーコード開発アプリを使った企業の方々のレビューが多い製品から5つ紹介します。

(2021年12月11日時点のレビューが多い順に紹介しています)

ASTERIA Warp:クラウド型データ連携ツール

ダイアグラム

自動的に生成された説明

「ASTERIA Warp」は、100種類以上の複雑なデータソース間の連携処理を実現するノーコード開発アプリです。用途は、多彩でシステム間連携やデータ分析、業務自動化など幅広いデータ連携を可能にします。特徴は次のとおりです。

・ノーコード環境による構築時間の短縮

・複数システムへの受発注処理業務やExcelデータ更新の効率化

・用意されているテンプレートによる迅速な自動化を実現

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SmartDB:ワークフローシステム

アプリケーション が含まれている画像

自動的に生成された説明

「SmartDB」は、クラウド型業務デジタル化ツールです。個別部署の業務から全社で共有する業務までノーコードでワークフロー管理できます。 

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PowerApps:ビジネスアプリケーション作成ツール

「PowerApps」は、ノンプログラミングで業務用のアプリケーションを開発するツールです。ドラッグ&ドロップによる操作で開発未経験の担当者がアイデアを数時間単位で具現化できます。

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h3:Yappli:クラウド型のアプリ開発プラットフォーム

グラフィカル ユーザー インターフェイス, アプリケーション

自動的に生成された説明

「Yappli」は、300社以上の企業が導入している実績のあるモバイル技術に特化したクラウド型アプリ開発プラットフォームです。Yappliには、次のような特徴があります。

・iOSやAndroidアプリをノーコードでスピード開発できる

・管理画面や分析機能を直感的な操作で運用できる

・新機能やOSバージョンアップなどクラウド経由で追加・更新できる

・アプリ開発の成長支援に向けてサポート体制が充実している

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Glide:PWAアプリ開発ツール

「Glide」は、Googleスプレッドシートをもとにシステム開発するWebデータベースのノーコード開発ツールです。Glideでは、Googleスプレッドシートをインポートしてデータベースに活用します。Glideで構築したアプリのデータベースは、モバイルアプリと自動同期される仕組みです。そのため、社内で更新したスプレッドシートの情報は、モバイルアプリですぐに確認できます。

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まとめ

ノーコード開発アプリは、コーディングが不要なので、従来のアプリ開発以上に時間と労力をかける必要がありません。しかし開発範囲が限られるため、複雑な大規模アプリ開発の場合にはあまり向いていません。ノーコード開発アプリの活用は、定型的な用途を自動化するような小規模なアプリ開発に限定されることになります。

ただし、非ITの担当者が開発に携わることで、アプリ開発のイメージを具現化しやすくなります。要件を提案する非ITの担当者が開発戦力となれば、要件提案から開発までのプロセスを短縮した円滑なコスト削減の効果が期待できるでしょう。

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