BIツールとはさまざまなデータを分析し、「見える化」することでビジネスにおける意思決定をサポートするソフトウェアです。BIツールを利用することで経営支援や営業支援などの意思決定を迅速化して、ビジネスチャンスを拡大する効果が期待できます。

しかし、実際にBIツールを用いる際の課題や必要なスキルが分からず、困っている方も多いでしょう。そこで本記事では、BIツールを導入する際に企業が知っておきたい課題や必要なスキルについて解説します。

BIツールの課題

実際にBIツールを導入しながらも、機能を使いこなせずに課題が見つかることもあります。どのような課題で悩んでいる企業が多いのか、いくつかの特徴を紹介します。

導入した目的が理解されていない

BIツールのメリットは、さまざまデータから次のアクションに必要な分析結果を得られる点にあります。例えば、収集したビッグデータの統計、グラフや図表による分析結果の可視化などのサポートです。

しかし、グラフィカルで分かりやすいレポートを取得しても、実際に改善を進める工程に至っていないケースも多くあります。統計情報をレポートで分かりやすく可視化できたとしても、実際の改善につながなければBIツールを用いる意味はありません。ツール導入による目的を的確に理解し、ビジネスの現場で活用することが求められます。

担当者のスキルが不足している

BIを本格的に運用するために、大手企業ではBIエンジニアを採用するなど、専門の担当部署を設けていることも少なくありません。しかし、スモールビジネスの経営で専門部署を立ち上げるのはあまり現実的ではないでしょう。

そこで、経営判断のサポートを実現するために役立つのがBIツールの導入ですが、思ったように機能しないことがあります。BIツールを用いるには専門的な知識が必要であり、OLAPや統計モデリングについての理解も深めておく必要があるからです。

BIツールの利用を成功させるポイント

BIツールを実際に利用して、成功させるためのポイントをご紹介します。

社内教育を充実させる

BIツールを活用するためには、分析結果を経営にどのように生かせるのかを判断するスキルを得るために定期的な勉強会が必要です。eラーニングの導入や講習の受講などが考えられますが、BIツールに関する試験を受けてもよいでしょう。資格試験の受験によって、基礎スキルの定着や目標に向けたステップアップがしやすくなります。

また、BIツールよりも経営戦略の意思決定に近い、BAツールについての知識もあわせて学んでおくのもおすすめです。

BIツールとBAツールの違いについては、こちらの記事も参考にしてください。

今更聞けないBI(ビジネスインテリジェンス)とBA(ビジネスアナリティクス)の違い

利用目的を明確にする

BIツールが取り扱うビッグデータは、さまざまな分析において重宝します。しかし、確認すべき項目が明確でなければ、膨大なデータを持て余してしまって宝の持ち腐れになるでしょう。

経営支援・顧客分析・ABC分析など、具体的にどのような支援が必要なのか、BIを活用する前にきっちりと定めておく必要があります。必要とするデータが明確になることで、収集データの精度が高まり作業効率も向上するはずです。

スモールスタートではじめる

将来的には、全社のデータをBIツールにまとめる計画を立てている人もいるでしょう。しかし、一度に改革を進めると大量のデータが蓄積されるばかりで、データ活用までの時間をロスしてしまい効果は期待できません。

まずは、一部の部署での限定的な導入や、データ入力を最小限度に抑えた試行期間を設けることで、段階的に導入するようにしましょう。現場の作業者が業務に慣れてきて、レポート情報をもとに経営戦略の見直しまでBIツールを活用できることを確認したら、全社に導入を検討してみてください。

BIツールを使いこなすために必要なスキル

企業でBIを実現するには、BIエンジニアと呼ばれる専門担当者を配置するのが一般的です。ここではBIツールの導入に必要となるスキルをご紹介します。

データベースに関する知識

BIツールによる分析には、大量の収集データを格納するデータベースに関するスキルが求められます。ERPから書き出したファイルをインポートするのか、データベースへ直接アクセスして取り込むかなどのシステム構成も、BIツールを導入する際に考えなければならないからです。

自社のシステムとBIツールの相性まで配慮するには、データベースに関する知識も修得しておくのがよいでしょう。

データラングリングによる整理

データラングリングとは、複雑でばらばらに散らばっているデータセットを取捨選択して整理するプロセスです。最適な分析結果を正しく手に入れるには、BIを活用する前段階となる、データラングリングが欠かせません。

例えば、オフラインで利用するデータであれば、未加工のままではBIツールにインポートすることが難しいこともあります。ファイル形式やデータ構成などをBIツールが扱いやすいデータに整えることで、実際にBIツールを活用する工程へ移ることができます。

スキルを証明する資格の種類

データベースに関する資格であればORACLEの「ORACLE MASTER Bronze DBA」、BIに関する資格であれば一般財団法人 統計質保証推進協会の「統計検定」もよいでしょう。

統計検定は1〜4級まであるため、自分のスキルに合わせた試験を受験しましょう。ただし、実際にBIツールに関わる人であれば3級以上を受験するのがおすすめです。また、AIを用いたアナリティクスであれば、人口知識の資格試験として認知度の高い一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)の「E資格」も適しています。

BIツールを用いて社内の意思決定をサポートしよう

BIツールを用いることで、社内の意識決定の確実性と迅速性を高めることが期待できます。ただし、ただレポートを眺めているだけではなく、実際の行動に移さなければBIツールを生かせません。

最近では、情報システム部だけでなく、現場で働く作業員がデータを操作して、ダッシュボードを作成する「セルフサービスBI」も増えてきています。さらにAI技術の進化にともない、データの分析から施策実行までを自動化できるBIツールも登場しています。BIツールを使いこなせるスキルを身につけておけば、経営戦略の効率化と戦略立案に役立てることができるでしょう。

この記事の執筆

成瀬ことおみ

ライター

大手金融機関にて勘定系システム運用を8年担当。男手ひとつで2人の息子を育てるためWebライターを志す。「正しい情報を、正しく伝える」を信念にIT業界の記事を数多く執筆している。

この記事の監修

ITreview Labo編集部

ITreviewの記事編集チーム。ITreviewの運用経験を活かし、SaaSやIT製品に関するコンテンツをお届けします。

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