生成AIの機能は多岐に渡りますが、個人的には「リサーチ機能」が最推しです。特に、ChatGPTの「Deep Research」やCopilotの「Researcher」などは、普段から活用しているという方も多いのではないでしょうか?
となると、みなさまも気になるのではないでしょうか?「最良の結果を得られるのは一体どのベンダーのリサーチ機能か?」と。もちろん私もその一人です。ならばやるしかありません!
本記事では、主要な生成AIのリサーチ機能について、同じプロンプト、同じ前提条件を指定し、出力結果の比較検証を通して「最も優秀なAIリサーチ機能*」を発表したいと思います!
題して「Deep Research 頂上決戦」の開幕です!ぜひ最後までご覧ください!
※ 本記事は「SB C&S株式会社 AI推進室」からコンテンツ提供を受けて掲載しています。
* 本調査は、2025年7月上旬時点における、あくまで個人的な感想にもとづいたレポートです。実際のAI性能や生成結果を保証するものではありません。
参加選手の紹介
開幕の挨拶もそこそこに、まずは今回参加するAI製品を紹介します。AI関連での主要ベンダーを押さえてみました。
ChatGPT(OpenAI) 選手
- リサーチ機能名:Deep Research
- モデル:GPT-o3(Deep Researchy用に調整済み)
リサーチといえば「Deep Research」そんなイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?今回の参加選手の中では一番最初にリリースされたリサーチ機能になっています。
Claude(Anthropic) 選手
- リサーチ機能名:Research
- モデル:Sonnet4(リサーチ機能では固定?複数モデルが並列するエージェント方式?)
最近では「Claude Code」が大人気のAnthropicですが、2025年4月15日に新たにリサーチ機能が追加されたことで話題になりました。個人的には一番期待している選手です。
Gemini(Google) 選手
- リサーチ機能名:Deep Research
- モデル:Gemini 2.5 Pro(リサーチ機能では固定?)
Googleアカウントがあれば無償で使用できる範囲が広いことから爆速で人気を集めているGeminiです。ユーザーからの評価も好調ということで、結果に期待したいです。
Microsoft 365 Copilot(Microsoft) 選手
- リサーチ機能名:Researcher
- モデル:GPT-4系
エンタープライズ利用といえば!のMicrosoft 365にもリサーチ機能が完備されています。こちらは他社の製品に比べて利用者が少ない印象ですが、Microsoftの底力やいかに…!
対戦ルール
①:使用プロンプトの統一

プロンプトの内容としては「自分自身が知らない内容では正誤判断に時間がかかる」ということで、誠に勝手ながら、今回は審判である私の得意領域(製品)に対するリサーチで対決させていきます。
プロンプトとしては抜け漏れも多い(我が社とだけ記載し詳細を伝えていない等)ですが、あまり細かく指示してしまうと内容の差分が分かりにくい可能性があるのに加えて「不明確な部分をどうカバーしてくるのか」も気になったので、あえてこのような内容にしています。
②:追加条件の統一
リサーチツールの中には最初のプロンプトの発行後に、リサーチのために必要な追加情報を聞いてくる場合があります。その場合は、以下を前提に「聞かれたことについては同じ内容で回答する=聞かれなかったことについては回答しない」という条件で進めていきます。
- 全社員数は1000人、開発担当は600人で、開発チームは5~20名で構成
- 選定は有償前提(無償による制約はなし)
- オンプレミスでの開発もチームによっては必要
- 海外拠点を含むチームもある
- Webアプリ開発が中心だが、モバイルアプリやエンプラソフトなど複数の開発を行っている
試合開始
それでは、先ほどの条件をもとに、それぞれのプロンプトを実行していこうと思います。最終出力も気になるところですが、まずはルールでも触れていた「最初のプロンプトの聞き返し」をそれぞれ見ていきましょう。
ChatGPT 選手

やはりシェアナンバーワン、安定の聞き返しです…!内容もシンプルでありながら、要点はしっかりと押さえている気がします。運用環境について触れている点もポイントが高いです。
Claude 選手


なんと2段階で聞き返しがされました…!合計6項目もの追加質問がされ、ユーザーのリサーチ観点をしっかり絞ろうとしているのが見て取れます。拠点に関する質問も好印象です。
Gemini 選手

聞き返されない…だと?!とはいえ、実行プランを見ることは可能なので、この段階である程度の軌道修正が行えるという前提でしょうか。個人的には追加質問は重要視しているので、ちょっと残念です。
Microsoft 365 Copilot 選手

聞き返しは行われましたが、正直なところ「なぜそれが気になった…?」と思う内容もチラホラ。この追加質問がどのようにリサーチ結果に反映されるのか期待しておきましょう。
対戦結果
それでは実行結果(生成結果)の発表です!それぞれ全て表示してしまうと、ものすごい文量になってしまうため、ここからは結果の一部を抜粋して紹介していきます。
ChatGPT (参考ソース数:25)

ChatGPTの出力では、まず冒頭に「会社要件と選定基準」が出力されました。こちらから提案した内容をまとめてくれているため、目を通してから全体を見ることで内容の理解がしやすいのが印象的でした。一部内容に関しては、こちらのプロンプトを補足するような説明もあり「何を前提にこの出力結果となったのか」を明確化できる点が良いですね。

また、比較表がシンプルながら要点としてはしっかりまとまっており、時間がない場合はここだけ見ても十分に理解できる、一目見れば分かる内容になっているのも嬉しいポイントです。この比較表の内容を見ると、私が指示した内容をしっかり押さえていることが分かります。

加えて、説明内容によっては「規模による優位性」や、現状に留まらない今後の予測を含む言及もされており、よりコンサルチックな内容になっていると感じました。もちろん、判断までの時間によっては現状機能での比較および決定が必要になりますが、このような考察まで言及してくれることで判断視野が広がりますね。
Claude (参考ソース数:50)

比較した製品の中では最速の約5分で出力されました。もちろん、環境や内容、プランによっても差が出てくるところではありますが、他の製品が10分程度かかったことを考えると、その速さは高く評価できるポイントといえるでしょう。
また、今回のリサーチ要望に合わせて「エグゼクティブサマリー」が冒頭に出現しているというのもポイントが高いです。どうしても文章が増えてしまうリサーチ機能において、このような冒頭に「ユーザーが最も必要としている情報」を短くまとめてくれるというのは、エージェントとして優秀といえるのではないでしょうか。

GitHubとGitLabの比較において、比較表が多用されているのも一目で結果を把握したい場合に大変役立ちます。単純なデザインではありますが、このような比較表は他のツールよりも多く出力されていました。

加えて、各比較内容において「ユーザーの状況にマッチする結論」をしっかりと言及してくれているため、聞き返しの質問の多さがしっかりと良い影響を与えているなと感じました。アクションの提案も、こちらの状況を把握しているからこその提案が散りばめられています。
先ほどのエグゼクティブサマリーについても言えることですが「ユーザーの要望をどれだけ汲み取ってくれているか?」という点で、Claudeは一歩抜けている印象を受けました。

ただし、細かく見ると、星取表の理由についての言及がなかったり(あったとしても表にも記載して欲しかった)と、一部不満は残る結果となりました。
Gemini (参考ソース数:67)
金額の安さや聞き返しがなかった点と合わせても「さくっと調べたい」であったり「リサーチ機能を試してみたい」というニーズにしっかり答えてくれている印象です。

内容も教えていない会社の体制を考える考慮不足は否めませんが、こちらもエグゼクティブサマリーが冒頭に出力されており、一般的な比較であれば、このまま報告書として採用しても遜色ないレベルです。

主要機能ごとの比較が文章でしっかり説明されている点もポイントが高いです。この辺りは実際に使ってみないと分からない部分も多くあるので、客観性を持って出力してくれるのは大変助かります。

グラフィカルな挿絵がコードも含めて採用されているため、別の資料に添付する場合にも応用が利くようになっています。
また、今回は直接のリサーチ結果比較のため割愛していますが「Canvas」機能を利用すれば、このリサーチ結果をワンクリックで様々なタイプの資料に変換できるというのはかなり高ポイントです。ビジュアライズ化が必要な場合、他ツールだとワンクッション挟む(別ツールへ委譲する)ことが多いため、1ツールでの完結はユーザー体験の向上に大きく貢献すると考えられます。
ただし、追加質問がなかった影響か「ユーザーの現状」を把握しておらず、海外拠点のような要素についても言及できていないため、このままでは少々情報不足になる可能性があります。
Microsoft 365 Copilot (参考ソース数:12)

グラフや図の差し込みが他のツールよりも洗練されており、数も多く、出力された文章の読みやすさとしては個人的に一位であると感じました。この辺りはさすがMSというべきでしょうか。

出力された文章も、全体的に他ツールよりも「非エンジニアでも読みやすい/理解しやすい」内容になっていました。具体的には、専門用語(特に英語表記の単語)に対する日本語での追記が行われている部分などは、読み手を限定しないという配慮を感じました。

それ以外にも、項目として「ユーザー評価」や「満足度」の比較といった、他ツールでは出力されなかった内容が充実しており、この辺りはビジネスに対する理解度の高さを感じました。やはりこのような内容があると説明もしやすいですよね。内容も納得できるものでした。
しかし、逆を返すと技術的な深掘りは他ツールに比べて薄い印象です。どちらかというとビジネス観点やユーザー評価がメインとして出力されていました。もちろん、今回のプロンプトに依存する部分もありますが、もう少し技術的な観点からの深掘りが欲しかった、と個人的には感じました。そしてやはり、追加質問に意味はあったのだろうか…?(0とは言いませんが)という疑問は残ります。
各製品の感想
ということで、それぞれの出力結果についての感想を発表していこうと思います!この評価はあくまで「審判=私(人間)」のため、個人的趣向や偏見もある中での感想になりますが、なるべく公平を意識して、それぞれのキャッチコピーと総評を書かせていただきます!
ChatGPT
「誰でも、知識がなくても、いい感じの結果を与えよう」
さすが老舗だけあって、安定した結果を得ることができました。聞き返しも漏れが少ないかつ難易度が高くなく、要点を押さえた出力となりました。誰もが使いやすい機能になっていると感じます。調査内容の深さも出力内容も、個人的には最も好ましかったです。
出力結果のビジュアライズについては、若干シンプルを極めている部分はありますが、その点を鑑みても「まずは最初に使ってみるリサーチ機能」としては、ぴったりではないでしょうか。
Claude
「ユーザーファーストで補ってくれる、シンプルイズベスト」
聞き返し数の多さから「ユーザーの思考をしっかり反映させたい」という意思を感じました。出力された結果も具体的な導入スケジュールが計画されていたりと、最もユーザーを補佐してくれるツールだと感じました。出力も比較表が多く用いられ、シンプルながら洗練された出力でした。
逆に言えば「ユーザーがちゃんと考えられていない」場合には、その真価を発揮しきれない可能性が最も高い製品ともいえるかもしれません。
Gemini
「安い!手軽!応用可!だけどちゃんと教えてね!」
出力結果の各種ビジュアライズ変換(スライドやHTMLなど)まで一気通貫で行えるという手軽さは、他には代えがたいポイントです。そのため「出力結果をもとに色々と展開したい」という場合は、Geminiを使っておけばハードルがぐっと下がります。
しかし、出力結果については聞き返しがないため「ユーザー主観」のデータになっておらず、内容によっては「ユーザー自身の要望をどれだけはっきりプロンプトに反映できるか」が最も試されるツールだと感じました。とはいえ、やはり安い。しかもワンクリックでビジュアル化できる。このメリットは外せないポイントだと思います。
Microsoft 365 Copilot
「エンプラ利用ってこういうことでしょ、任せな」
視点が他の3つに比べて、明らかにエンタープライズ寄りでした。そもそも企業ユースのグループウェアの一部であるため、それに合わせた何かしらの調整がされているのかもしれません。さすがです。
挿絵的に挟まれる画像もパワーポイントにそのまま持っていけるようなレイアウトですし、出力結果にアイコンが最も多用されている点からも、ITに深く精通していないJTCのような会社(表現としてはあまりよろしくないですが、あえてこのような表現とさせていただきます)で、特に「ウケる出力」になっていると感じました。
個人的AIリサーチ最強を発表!
では、この評価をもとに個人的なランキングを発表していこうと思います!
個人的なランキングということで、今回は「AIに関する前提知識がある程度あるエンジニア目線」での評価となりますことをご容赦ください。その他、若干主旨からはズレてしまいますが、リサーチ以外の機能や拡張性等も考慮した内容になっています。
順位 | 製品 |
---|---|
1位 | 👑 Claude 👑 |
2位 | ChatGPT |
3位 | Gemini |
4位 | Microsoft 365 Copilot |
やはり、聞き返しの鋭さとユーザー観点を捉えようとする姿勢が個人的に高評価かつ内容の充実さでClaudeを1位とさせていただきました!ある程度AIへの理解がある前提のツールであるという点はありますが、その部分が問題ないのであれば、いくらでも活用可能だと感じます。他ツールとの連携も柔軟に対応しているため、データ連携や出力結果の加工も可能であることを考慮すると、やはり優秀であるといえるのではないでしょうか。
ただし、逆に言えば「前提知識がない or セキュリティ要件的な連携やそもそものツールインストールが不可」である場合、このランキングはひっくり返ったり、激しく入れ替わったりします。特に、Microsoft 365 CopilotやGeminiは「すでにある環境」で動作できる可能性が高いため、導入ハードルや連携ハードルが低くなっており、この部分に対するメリットは重大です。
そして、このようなランキングを作成してはいますが、思った以上の接戦でした!正直僅差です!今回の結果に関しては大きく誤った情報などもなく(ものすごく詳細にチェックしているわけではないので100%正しいとは限りませんが)、どのツールも自分で調べるよりも格段に素晴らしい結果を出力してくれました。やはりリサーチ機能は素晴らしいですね。
まとめ
いかがだったでしょうか?個人的には、このように改めて比較してみることで「それぞれのツールの性格」が明らかになった気がしてとても楽しかったです。
同時に、同じリサーチ機能であっても「そのツールがどういう特性を持っているか」を理解することで、今の自分やリサーチ内容に最も適したツールを選べるようになると感じました。もちろん、こういったことはAIツールに限った話ではありませんが、今後も色々と比較していきたいと思います!