良いポイント
複数の国で事業を営む企業が会計基準に沿った業務管理を行う場合に必須となるシステムとなります。競合にはグローバルですとオラクル、ローカルですとBandit等が存在しますが、グローバル基準に沿った運用を行う上ではほぼ他の選択肢を選択することは難しい状況となっています。ソフトウェアには基幹業務に必要な機能が網羅されており、管理会計・一般会計、販売管理、在庫管理、製造管理、輸送管理などモジュールが多岐にわたり、設定について専門的な知識が必要となるため通常は導入に外部の力を借りて時間をかけて実施し、導入後も継続的に運用にリソースが必要なシステムとなります。
カスタマイズ等も可能ですが、こちらを実施しすぎるとバージョンアップ等の際に問題となり、その反省からSAPは現在クラウドの標準システムを導入し、そちらをそのまま使うことを推奨しています。欧米のように業務プロセスが明確でSAPに落とし込みしやすい場合はよいのですが、日本の場合はプロセスが個別最適されているケースが多く、標準で提供される仕組みとは差異があるため問題となるケースが多いです。導入時も導入後も現場は大変苦労する傾向があります。
改善してほしいポイント
グローバル企業の経営者視点からは理想的な仕組みで、経営指標の可視化が可能となります。その実現のために現場は通常よりも多くの情報をメンテナンス・提供する必要があるため、入力の手間が増えます。こちらの改善を標準で提供してくれると効果的かと思います。また現場レベルが活用しやすくなるような工夫は少なく、レポートの閲覧方法、情報の出力・加工方法等については多くの手間を要します。こちらについても改善の余地が大きいと思います。UIに慣れてしまえば大きな問題ではないのかもしれませんが、多くの場合不要な項目がたくさん存在するため、非常に煩雑にも見えると思います。マスタデータ・主要データはエクセルで別管理しているケースも多く、こちらも課題が大きいです。
これまではマイクロソフトとの連携を推進してきていたため、Google Spreadsheetとの連携も弱いと感じます。このあたりの改善も期待したいのですが、グローバルへ問い合わせて対応をする流れのため、中々対応がされない点が不満です。
どのような課題解決に貢献しましたか?どのようなメリットが得られましたか?
導入後は国ごとの会計基準に沿った会計管理・業務管理を実現することができます。監査法人も知見を持っているケースが多く、監査対応については管理しやすくなると思います。また経営視点での業務管理は達成することが可能となります。SAPは大企業を中心に利用者・導入経験者が多く、対応リソースを見つけやすいのもメリットだと感じます。
検討者へお勧めするポイント
SAPはグローバル大企業が複数拠点を効率的に管理する場合に力を発揮するシステムで、ここに経営者が注力する場合に導入をするとメリットを享受しやすいと思います。そうでない場合は他のソリューションの方が短期で導入でき運用後も改善を行いやすいと思います。システム導入の目的はお題目と実際が乖離するケースが多く、何を目的に基幹業務システムを導入するのかを見極めて進めないと、よい結果を生むことは難しいと思います。現場を効率的に回すための仕組みではないので、この点をよく認識する必要があると思います。導入時にも導入後もコストがかかりますので、費用対効果をしっかりと見極めてプロジェクトを進めることをお勧めします。